実施団体について

弘道老人福利基金会

高齢化にともなう大きな人口構造の変化に危機を感じ、ひとり暮らしの高齢者をサポートしようと生まれたのが、弘道老人福利基金会です。2006年、CEOである林依瑩さんが30歳のとき、84歳の頼清炎さんと出会い、プロジェクトの発足へと繋がりました。

実施までの流れ

身体が変わっても、
夢だけは、ずっと老いない。

弘道老人福利基金会のCEO・林依瑩さんは、2006年、頼清炎さんと出会いました。ふたりの年齢差は、林さんが当時34歳で、頼さんが84歳と、じつに50歳。しかしふたりは不思議と意気投合し、プロジェクトを立ち上げるに至ったのです。林さんが惹かれた頼さんの想いとは、当時社会に染み付いていた、ステレオタイプな高齢者への眼差しでした。高齢者は、みんなの考えるような老いた存在じゃない。夢なんて諦めなきゃいけないような存在じゃない。そんな頼さんの訴えに、林さんは一念発起。頼さんの夢であった、80代、オートバイでの台湾一周ツアーを実現させるプロジェクトを提案したのです。

2007年には、平均年齢81歳、17名のライダーが参加した台湾一周ツアーが実現。13日をかけた、1178kmの旅でした。当然、高齢者の長旅を企画することは簡単ではありません。それでも、彼らの夢と情熱をサポートしたいという想いで、プロジェクトは動きました。ツアー前にはトレーニングと交通安全指示、警察や医療スタッフの協力も得ながら、老いることのない夢は実現に至ったのです。彼らは「不老ライダー」と呼ばれ、ドキュメンタリー映画にも。このプロジェクトをきっかけに、高齢者の野球チームや高齢者が出演するショーの公演など、様々な場面で、夢を諦めない不老の方々が活躍を続けています。

実施のポイント

point1

ツアーを乗り切ることで、
健康的な身体を手に入れる。

高齢者の体力を強化し、チームワークを深めるために、基金会は出発の3ヵ月前から8週間にわたる特別プログラムを実施しました。主には、身体トレーニングと、交通安全指導など。高齢者がツアーを無事乗り切る目的に加え、プログラム参加を通じて日常を規則正しく過ごし、運動の習慣をつけることも、狙いのひとつ。身体の状態を自分自身で検査できるようにすることも考えられていました。

point2

同じ高齢者に、
夢を与えるライダーであれ。

不老ライダーに参加することは、より多くの人へ活力を与える存在になるということです。高齢者へは、高齢者のステレオタイプをともに打破していこうと呼びかける。人生の価値を高めるため、勇気や夢を持つように励まし合う。各参加者の参加目的は様々であったものの、参加を通じて自信と活力を取り戻し、積極的に自らの人生を楽しむようになることが期待されました。

参加者の声

王乃弘さん

王乃弘さん

弘道老人福利基金会董事長

不老ライダーの活動は、高齢者の健康を大いに増進します。ツアー前のトレーニングを通じた身体の健康はもちろんのこと、仲間とのつながりを得て心の健康も得られていたように思います。

林依瑩さん

林依瑩さん

弘道老人福利基金会第二代執行長

不老ライダーたちとの台湾一周を企画し始めたときは思いもよらなかった素敵な展開が、プロジェクトの立ち上げ以後、見られていると思います。どれだけ身体が衰えても、ライダーは夢を諦めることはありません。

陳阿香さん

陳阿香さん

弘道老人福利基金会ボランティア兼ライダー

元々はボランティアの立場からプロジェクトに携わり、自分自身でも挑戦してみたいと思うようになりました。これは、自分自身への挑戦。自転車チームで参加し、夢を叶えることができました。

頼秀昇さん

頼秀昇さん

アメリカを旅する不老ライダー

自動車事故を経験して以降も、夢をかなえようという気持ちは、私の中では何も変わりません。車椅子に乗った私は依然として、海を渡って米国に行き、不老ライダーの精神を広めてこようという気持ちです。私の行動こそが、不老ライダー精神の最高のシンボルであるはずです。

邱壬妹さん

邱壬妹さん

不老ライダー

普段は荷物を運ぶために乗っていたオートバイ。あるときから台湾を一周し、各地の美しい景色を見られたら、と考えるようになりました。実際にオートバイで走った台湾は本当に美しかったです。

曾冠宇さん

曾冠宇さん

弘道老人福利基金会総会企画スタッフ

「老いることのない夢」に参加している自分は、スタッフでありながら、高齢者と同じ視点で夢を追いかけている気持ちになります。スタッフは高齢者をサポートしているだけなのではなく、彼らから学ばせてもらっていることも多くあるのだと感じます。

次への課題

高齢者のイメージを
塗り替え続けるライダーたち。

弘道老人福利基金会のサービス理念は、高齢者へのフレンドリーなケアを行いながら、地域社会で高齢者の自発的な参加を支援すること。健康増進、自己実現、アクティブエイジングの達成を目標としています。これらの試みを重ねていくことで、社会の高齢者に対するステレオタイプなイメージを、これからも引き続きつくりかえていくことが、大きな目標。高齢者のイキイキとした一面を、もっと見たいと考えています。普段どおりの生活をなるべく続け、その中で輝ける活動を見つけることこそ、目指されるべき新たな「介護」の形です。

台湾一周にとどまらない。
多くの人の、多くの夢を、
みんなで実現する。

不老ライダーは、夢を実現することで社会への影響力を生み出し始めました。地域社会での高齢者向けサービスのほか、老いることのない夢の社会的な影響力をフォローし、高齢化社会を活性化する様々なプログラムの推進を続けていくことも、プロジェクトの続きです。同じような志をもつ多くの団体が、高齢者向けの特別プログラムを開発し、社会をよりよくし、高齢者が素晴らしい、楽しい経験をする生活空間をつくれるように。社会をよりよくしていく使命を、このプロジェクトと、一人ひとりの不老ライダーが担っているのです。