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2013/11/12

イベントレポート

第二夜:クリエイターは復興期の被災地とどのように関わっていくべきか レポート

「コミュニティ・アーキテクト イカプトラ」三夜連続レクチャー
2013年10月17日(木)

二夜目は、クリエイターと復興期の被災地との関わりについて取り上げました。

インドネシア・銀細工職人支援
まずイカプトラさんより取り組み事例をご紹介いただきました。歴史的な町の構成を持ち、銀細工の職人たちが暮らすインドネシアの村、KOTAGEDE(コタゲデ)は、2006年5月ジャワ島中部地震で被災しました。イカプトラさんは翌月に地域に入り、まず町並みや伝統的な建物の復興に着手しました。その中で、地域の銀職人と話をする機会があり、彼らが経済的に厳しい状況に置かれていることを知りました。職人組合に加入している場合、政府による援助の対象となりますが、経済状況が厳しく組合費を払えない職人は対象外となってしまうのです。そこで、援助をする側と受ける側を結びつける仕事をすべきだと考えました。

ちょうどその折、援助を申し出てくれた企業があったため、職人が職を得て被災から立ち直るシステムづくりに着手しました。個人個人に生活支援をしても、生活を立て直すことで精一杯になり仕事の復興まで行き着かないと考えたからです。

まず100人ほどの職人をリストアップ。若者が好むアクセサリーのデザインを学生に考えてもらい、カタログやパッケージもデザインしてもらいました。それぞれの商品には、デザイナーではなく職人の写真と連絡先を記載し、購買者が職人に直接発注できるようにしました。その結果、震災後2年で職人が生計を立てられるようになったといいます。

この取り組みにおいて重視したことは「三つのC」だと説明されました。
文化(Culture):コタゲデ村の文化をいかにいい状態にもっていくかを考えること。
職人(Craft):地域社会で職人が働けるよう、売る場づくりや技術向上に努めること。
コミュニティ(Community):働く場、住む場としてのコミュニティを作っていくこと。

日本・EAST LOOP
次に、株式会社福市の髙津 玉枝さんをゲストに迎え、東北の被災地支援プロジェクトである「EAST LOOP」をご紹介いただきました。

被災地では生活物資や人的支援を与えられる状況が多くなりがちです。人間の尊厳を保つためには誰かの役に立つことが大切であり、そういう仕事をつくらねばならないと思い、震災から約一ヶ月後の2011年4月に被災地に入られたそうです。その時は、地域で活動されている方に「被災された方に仕事をさせるなんてとんでもない!」と断られましたが、その後も大阪から被災地に通い、徐々に理解を得、プロジェクトを立ち上げることができました。

プロジェクトの目的として、(1)仕事を通じて尊厳を保つ、(2)悩みを仲間とシェアする場づくりなど、プロジェクトに参画することで精神的なサポートにつなげる、(3)一般の人々が商品を通じてサポートできる機会を作る、という三点を設定。また、場所や道具、技術が限られる中で作れる手編み製品とすること、支援していることを誇りとして身につけられ、コミュニケーションを生み出すものにすることがポイントでした。

また、商品を買うことで利益が誰に届くかが購買者にわかるようにしました。髙津さん自身のフェアトレードの経験を生かして、作った人に売上の50%を届けることとし、販売経費や諸経費、原材料を50%におさえました。
魚を贈る→一緒に魚を採る→魚の採り方を教える、という段階があるように、単に寄付するのではなく、自立を支援する取り組みが必要だといいます。

ディスカッション
制作者に十分な利益を分配するためには、地域に根付く人々に、任せられる部分は任せていくことが大切だと髙津さん。プロジェクトを継続させ、東北支援グッズから東北ブランドに育てることに繋がるといいます。

二つのプロジェクトに共通する点として、状況を把握し必要な支援を行っていること、プロジェクトの継続を見据えて支援期間を設定すること、専門性を活かしていることなどが挙げられます。会場からだけでなくゲスト同士も沢山質問し合い、刺激的な時間となりました。

会場ではコタゲデの銀細工、EAST LOOPのブローチなどを販売し、多くの方にご購入いただきました。

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撮影:伊東俊介