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2014/11/9

イベントレポート

神戸「食」プロジェクト 基礎編その2「自分に合った珈琲の選び方を学ぶ」 レポート

2014年9月23日(火)

珈琲にかかわる様々な方を講師として招き、珈琲を基礎から学び、愉しむための知識を身につける「神戸珈琲学」。第2回目の今回もマツモトコーヒーさんにご協力いただき、カッピング(珈琲におけるテイスティング)を通してコーヒーについて学ぶ講座を、ワークショップ形式で開催しました。

第2回目のテーマは「自分に合った珈琲の選び方を学ぶ」です。
第1回目では「スペシャルティコーヒー」について学びました。その中で、スペシャルティコーヒーとは栽培からカップに注がれるすべての工程で高い品質管理をされているものであることを学びました。珈琲は抽出の仕方や保存の仕方で大幅に味が変わってしまいます。例えば気になる珈琲に出会い、豆を購入して帰ったとしても自宅で適切な抽出ができなければ、せっかくの珈琲の魅力を打ち消してしまうことになります。自分にあった珈琲を選べるようになるための方法の一つとして、スペシャルティコーヒーの定義も踏まえながら、今回は抽出する段階で珈琲の味を阻害する様々な要因を挙げ、欠点のない味のものと飲み比べることで、適切な抽出について掘り下げて学びました。
まずはじめはカッピングの前に珈琲の飲み比べを行いました。珈琲は抽出したものを冷やし、アイス珈琲にしたものを用います。飲み比べには産地の異なる豆や、同じ豆でも浅煎り、中煎り、深煎りと焙煎の度合いを変えたもの、品種の異なるものなどを用意しました。どれがどんな豆なのかは伏せた状態での試飲です。飲み終えたあと一番好みだった珈琲を各自で選びました。
飲み終えたところで皆さんの好みをうかがうと「さわやかな酸味が好きなので。」という方や、「深煎りの苦い感じが一番珈琲らしくて好き。」という方など、それぞれ異なる意見が出ていました。
今回飲み比べた珈琲は

1.イルガチャフィG1浅煎り
2.マンデリン浅煎り
3.ニカラグアナチュラル浅煎り
4.ニカラグアナチュラル中煎り
5.ニカラグアナチュラル深煎り
6.ロブスタ

以上の6種類でした。
それぞれ個性のあるものを今回は用意し、大枠ではありますが自分の好む珈琲の味についてとらえてもらえる機会となりました。
それぞれの珈琲の特徴をお話いただいたあと、3のニカラグアナチュラル浅煎りの抽出失敗したものを体験してもらいました。適切な珈琲と比べて粉量が多く、メッシュ(挽目)が細かいものを用意しました。珈琲は豆から珈琲の成分が液体に移動したものです。その液体へ移行させる成分量を間違えると本来美味しく飲めるはずの珈琲も嫌な味を出してしまうという結果になってしまいます。

次はいよいよカッピングに移ります。
ここでのカッピングではすべて同じ豆を使います。
同じ豆を5つの方法で抽出したものを飲み比べます。

1.バランスのとれた味
2.粉量が少ないもの
3.粉量が多いもの
4.メッシュが粗いもの
5.メッシュが細かいもの

以上の5種類で、1を軸にしてそれぞれを飲み比べ、その差異を体験してもらいました。
粉量が少ないと後味が短くなり水っぽい印象に、逆に多くなると珈琲の成分が多く抽出されすぎて、後味が長く、イガイガした感覚が口に残りました。
メッシュが粗いとうまみが出ず、細かいと湯に触れる表面積が増え、うまみ以外の雑味が出やすくなってしまいます。
珈琲を抽出する際には適切な豆の量、適切なメッシュの粗さを調節することはとても大切であることを知ることが出来る場となりました。
次のカッピングでは抽出条件によるその他の欠点によって出る味について学びました。

1.欠点のない味
2.ミルの汚れによる味
3.低湯温での抽出
4.鮮度の落ちた豆

以上の4つを比べました。
それぞれ体験したあと、前回も同じ意見を話された方がいましたが「家で淹れて飲んでいる珈琲と同じ味がする・・・」といった声が上がっていました。
ミルは清掃を怠ってしまうと珈琲の油分などが刃の表面に残り、雑味となって出てしまい、珈琲を 飲んだ際の印象が暗く沈んだものになってしまいます。
酸味は低い湯温でも抽出することができますが、苦味は高い湯温でなければ抽出されません。そのため、少し前までは質の悪い珈琲でも深煎りにし、低い湯温で抽出することで苦味を弱め、雑味を隠していたようです。故に湯温については「○○℃でそそぐべき」といったことがうたわれた本や雑誌などが多くありました。ですが昨今では欠点の無い上質な豆を手に入れることは一般でも十分に可能になってきました。上質な豆は、自宅で淹れる際に、沸騰した湯を使用して問題ないと説明いただきました。
鮮度の落ちた豆は単純に味の成分が少なくなって行ってしまいます。折角新鮮な豆を手に入れても、鮮度を落としてしまうと本来の素晴らしい味を損なってしまいます。イメージしづらいことですが、珈琲もあくまで生鮮食品であることを体験する場となりました。

最後は鮮度について掘り下げたカッピングを行いました。
保存状態を豆のものと粉のもの、さらにそれぞれを焙煎後常温保存で2日経過したもの、2週間経過したもの、冷凍保存で2週間経過したものの計6種類を用意しました。

1.豆のまま常温保存 焙煎後2日経過
2.豆のまま常温保存 焙煎後2週間経過
3.豆のまま冷凍保存 焙煎後2週間経過
4.粉で常温保存 焙煎後2日経過
5.粉で常温保存 焙煎後2週間経過
6.粉で冷凍保存 焙煎後2週間経過

以上の珈琲で鮮度と保存状態による味の差異を体験します。
カッピングの用意をしながら「粉にすること」「そして冷凍で保存すること」 には様々な珈琲の味を落とすリスク があることを説明していただきました。粉の状態で豆を保存すると豆の状態と比べ、空気に触れる表面積がとても大きくなります。すると酸化を早めてしまい味が落ちてしまいます 。冷凍は買って持ち帰った段階での珈琲が酸化することを止めることができるので鮮度を保つことは可能です。しかしその分リスクがあり、例えば解凍した際に結露が出て珈琲の味を落としてしまったり、冷蔵庫の匂いが移ってしまう、といった問題が起きる可能性があります。
全員がカッピングし終えたあとの感想を聞いてみると「ここまでなら美味しい」と感じるラインにかなりばらつきがありました。この回についてはこれまでのどの回よりも答えがなく、豆屋さんによってもそれぞれ意見が異なる部分になってきます。そういった中でも鮮度や保存状態でどういった変化が起きるのかを知ることで自分の好む味を保つ方法を選択することを知る機会となりました。また、マツモトコーヒーさんはこういったことに神経を使うよりもせっかく美味しい珈琲なので1~2週間で飲めるだけ量の豆を購入し、新鮮なうちに飲むようにして欲しい、とお話されました。

以上で神戸珈琲学その2を終了しました。
終了後、マツモトコーヒーさんのご好意で希望者を募り、今回はそういった細やかな技術に注力せずとも家庭でもできる、美味しく珈琲を抽出する方法をレクチャーして頂きました。
ハンドドリップは細い湯でゆっくりと円を描くように、といったような高度な技術が求められているイメージがあるかと思います。もちろんそこにはきちんとしたノウハウがあり、そうすべき理由 がありますが、今回お教えいただいたのはそういった難しい事は全て抜きにして淹れる方法です。ドリッパーはペーパーの物を使用します。形状は円錐の物、台形の物、どちらでも構いません。ポットは細口の物を使用します。お湯は今回のお話にもあった通り、沸騰したものを使います。
ポイントはお湯の注ぎ方のみです。まず、豆全体にお湯を行き渡らせ、蒸らしを行います。お湯を全体にかけると、豆がゆっくり膨らみ始めます。これはガスが豆から発生するためです。この膨らみが止まり、へこみ始めた時がお湯を注ぎ出すタイミングです。膨らみがへこみ始めたところでもう一度全体にお湯をかけ、表面を崩します。あとは中心をめがけ、一定のペースでお湯を注ぎます。ドリッパー内で豆の高さを一定に保つことがポイントです。最後はドリップしきる前にカップからドリッパーを外すことで雑味がカップに落ちるのを防ぎます。こうする事でカッピングと同じ状態の珈琲をドリップできるのだそうです。
試飲の際、多くの方が「カッピングで味わったものと同じ味で出ている!」と話していました。

最後におみやげとしてニカラグア農園のシングルオリジンの豆と植えて育てることができるコーヒーノキの種をお渡しし解散となりました。

今回の神戸珈琲学もリラックスした雰囲気の中で行われ、参加者同士でも自分の好みの珈琲についてや、お気に入りのコーヒーショップを紹介し合うなど、珈琲についての意見交換が行われる場ともなりました。

今後も神戸珈琲学は様々な方面から珈琲についての知識を深める場を設けていく予定です。

神戸「食」プロジェクト 神戸珈琲学基礎編その2「自分にあった珈琲の選び方を学ぶ」
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