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2015/8/12

イベントレポート

+クリエイティブゼミ vol.16 まちづくり編 「神戸まちラボ CASE01 医療産業都市」第3回レポート

ゼミ第三回目となる今回は、IDEOの石川俊祐さまをお招きし、特別講義「IDEO流アプローチに学ぶ」を開催しました。

IDEOは、デザイン思考を活かし、世の中に良いインパクトを与えるグローバルデザインコンサルティング会社です。人間を中心に置くデザイン(human-centered design)を基本手法として、プロダクトや空間、ソフトウェアなど、幅広い分野の活動を行っています。
今回、石川さまには、1を100にするアイデアではなく、0を1にするためのアイデアのプロセスやメソッドについて、さまざまな事例をもとに共有して頂きました。

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■IDEO+DESIGN THINKING
IDEOのデザイン思考は4つのフェーズからなり、チームでのプロジェクトでは、意識的にこの段階を揃えて進めている。アイデアの拡散の時には拡散のみを行い、収束のタイミングも足並みを揃える。これらを繰り返す中で、あらたな問いや仮説が生まれ、違った角度からの発見を得ることができる。初めから正しいと思うアイデアのみを共有するのではなく、さまざまな意見を発展途中で編集していく。
1.DESIGN RESEARCH & INSPIRATION(インスピレーション)
2.SYNTHESIS & ATRATEGY(収束)
3.BRAINSTORMING & CONCEPT DEVELOPMENT(発想)
4.PROTPTYPING & STORYTELLING(実現化)

次に、IDEO流デザイン思考の1.にあたる、デザインリサーチの効果的な手法について、具体的なプロジェクトの事例を交えながら、ご紹介いただきました。

■IDEOのリサーチ手法
1.OBSERVATION(観察)
0から1をつくる仕事は、実際の現場を観察し、物事の本質を理解することから始まる。知ったつもりでプロジェクトを進めるのではなく、毎回新鮮な気持ちで現場のリアルな行動を見ることができるかが重要である。
2.EMPATHY(共感)
リサーチの対象となる人の状況を体験し、共感をすることによって生まれる視点から、新しい発見を得る。共感することにより、その課題が自分事となり、解決のためにより動きやすくなるという効果もみられる。
3.LOOK BEYOND(発見)
プロジェクトにおいて、新しい何かを発見したいときには、エクストリームユーザーを調査対象にする。エクストリームとは、「極端な」という意味。例えば、極めて製品の使用頻度の高いユーザーと、極めて使用頻度の低いユーザーのことを指す。エクストリームユーザーは、多くの場合、肯定的であれ否定的であれ明確な意見や要望を持っていることが多く、効果の高い調査結果を得ることができる。
4.PROTYPING(視覚化)
リサーチ段階から、手を動かし、モックアップを立ち上げることが重要である。それが性能的に良いものである必要はなく、それが機能的に必要なものであるか、価値を試すために制作する。これにより、早い段階でアイデアへのフィードバックを図ることができる。
5.STORY TERRING(物語)
ストーリーを持たせることによって、数値やデータで事象を見せるよりも、人の共感を得ることができる。多人数を同時に共感させやすいことや、まだ情報を知らない人に、さらに共有したくなる効果なども考えられる。

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リサーチ手法の説明のあとにCHOICE CANDYというタイトルのエクササイズを行いました。各班のテーブルに配られたさまざまな種類のキャンディーの入ったカゴの中から、1人が好きなものを1つ選び、その様子を他のメンバーが観察して、気づいたことをふせんに書き出していくというプログラムです。
ゼミ生たちは何枚ものふせんを使い、「ライチの味が好みなのでは」「一番近い位置のものを取った」などの嗜好や仕草に関するようなものから、「周囲の期待に答えた」「ドヤ顔した」など、観察者との関係性が見えるようなものなど、多様な発見を書き出しました。

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このほかにももう1つ、観察の手法を学ぶエクササイズを行いました。町の何気ない風景が撮影された短い動画を見て、その中で自身がどんな気付きをしたかを発表しあいます。同じ動画を見ても、人それぞれに着目する点が違い、観察の奥深さを感じました。
観察で得たものを保有し、さまざまな仮説をつくることによって、新しい発見を得ることができます。このプロセスでは、どれだけ多くの解釈ができるのかが重要になります。
以下は、石川様にご紹介頂いた観察の手法と、着目すべき点をまとめたものになります。
これらを捉えておくことにより、その後につながるひとつの視点として、新しい何かを生み出すきっかけになるのだそうです。

■BEHAVIORS
1.Avtive(活動、やっていること、動き)
2.Environment(環境、状態、状況)
3.Intaraction(店員と人、ものと人、場と人)
4.Object(あるもの、無いもの、必要なもの)
5.User(態度、会話、動作、表情)

最後に、まとめとして、ゼミ生たちが持ち帰るべき5つのポイントをお伝えいただきました。
■今後のゼミを進めるにあたって
1.HUMILITY=ASK WHY?(オープンマインドになっているか?)
観察を行う際に、その状況をまるで初めて体験するかのような状態に自身を置くことにより、無意識であったものが意識化され、違った側面から気づきを得ることができるようになる。自分自身も含め、俯瞰的に観察をすることが重要。
2.TAKEOWNERSHIP(自分事になっているか?)
数字にとらわれず、対象に対して自分自身の主観を持つことによって、良いタイミングで良い決断をすることができる。
3.GET INSPIRATIONS(ワクワクしていますか?)
常に新しいものにアンテナを張り、インスピレーション源となるものを蓄えておく。
4.THINK BEYOND(結果を想像しているか?)
自分が何かをつくる時に、それがただ機能するかではなく、それが人や場にもたらす影響まで想像する。
5.COLLABORATE(繋がりを持てているか?)
アイデアをアイデアで終わらせないために、自分のできないことのできる、信頼できる仲間を持つ。

今回の特別講義では、リサーチ時の、本質を捉える問いの設定の仕方や、医療産業都市をリサーチする際の具体的な調査対象の選定など、今後ゼミを進めるにあたって大変参考になるアドバイスを頂くことができました。

+クリエイティブゼミ vol.16 まちづくり編 「神戸まちラボ CASE01 医療産業都市」
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+クリエイティブゼミ vol.16 まちづくり編 特別講義「IDEO流アプローチに学ぶ」
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