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2015/9/9

イベントレポート

‬+クリエイティブゼミ vol.17 ものづくり編「ものづくりのデザインを見つめなおす。」第2回

2015年9月9日(水)

+クリエイティブゼミ vol.17 ものづくり編「ものづくりのデザインを見つめなおす。」第2回目は、富山県高岡市の鋳物メーカー「高田製作所」の高田晃一さんをお迎えして、講師のセメントプロデュースデザイン金谷勉さんとともに、トークセッションを開催しました。

高田製作所は、鋳造の技術で有名な富山県高岡市の中でも、指折りの鋳物メーカーです。
もともとは仏具専門のメーカーでしたが、その技術を生かし、デザイナーと協働しながら、さまざまな商品を生み出しています。多くの伝統工芸メーカーが若手の職人不足で頭を抱えるなか、社員の平均年齢は36歳と、若手が主力となり運営をしているのも特徴のひとつです。社員の中にはフリーランスで活動をする熟年の職人が混ざり、若手の育成にも力を入れています。

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高田製作所では、伝統の技術の踏襲に留まらず、3Dプリンターやレーザー刻印をなどの新たな技術を積極的に導入されています。現在、製作の内容はOEMが7割を占め、残りの3割が自社のオリジナル製品だそうです。OEMの事業は、自社の技術が生かされ、企画の中で社員が育つものでなければならないという考えから、新しいアプローチができるものや、技術の修練にもなるよう、生産性のあるものを中心に依頼を受けるとのことでした。また、そこで得た利益で自社製品の開発も進めていくことができるので、OEM事業はとても重要だとお話をいただきました。

自社製品を開発する時に大切にしていることは、誰に向けてつくるのか、消費者の顔を意識することなのだといいます。高度経済成長期は、わざわざ商品のバックグラウンドを説明しなくても、ものの力だけで消費され、ものづくりの技術やこだわりを消費者に向けて発信する必要は無かったのだそうです。
今は、デザインも手法としてはやりつくされてしまったように感じるとのお話もあり、今後は、誰に対しての提案なのか、ものの向こう側を見てもらえるようにしていかなければならないとのことでした。
そのために、高田さんは、子供を対象にした工場体験の活動や、富山の農業生産者と連携したワークショッププログラムなど、消費者との交流を図る活動にも積極的に取り組まれています。

また、ご自身が、2004年に出展されたイタリアの世界的な家具の見本市、「ミラノサローネ」の体験談についてもお話をいただきました。ミラノサローネに限らず、海外の展覧会では、出展にいたるまでの実績がとても重要視されるといいます。国内での実績は積んでおられた高田さんでしたが、初めての出店時には、会場に入れなかったり、条件の悪いブースであったりと、非常に苦戦したとのことでした。この出展時には、自社の若手の職人を連れて行き、さまざまな第一線で活躍する企業やアーティストの作品を見ながら、自分たちの技術の可能性を再確認した上で、いま、ものづくりの業界に求められているデザインを学んだそうです。

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高田製作所とセメントプロデュースデザインは、これまで協働してさまざまな製品を作り出しています。
金谷さんからは、これからのメーカーにとって重要なのは、「ブランディング」ではなく「ポジショニング」であるとお話をいただきました。今あるマーケットを把握した上で、自分がどこに旗を立て、資金や職人の不足をどうクリアしていくかが、これから伝統工芸のメーカーが生き残るために向き合わなければならない課題であるとのことでした。

また、メーカーがデザイナーと協働する時、費用感やデザインのプロセスの話はもちろん大切ですが、
長くパートナーとして協働するためには、一緒に呑みにいって楽しい人、気持ちよく付き合える人でないといけないとのお話をいただき、ものづくりの業界における「人」の魅力の重要さを教えて頂くとともに、お二人の人柄と、和やかな関係性にも納得させられました。実際に協働しているメーカーとデザイナーによる両方向からのトークで、「ものの向こう側」を垣間見ることのできるレクチャーとなったのではないでしょうか。

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