お知らせ・レポート

様々な分野で活躍されているデザイナーの方々にお越しいただき、仕事の紹介やその進め方、デザインの考え方や今後の活動について、お話をしていただく、デザイン・トークイベント「Designers」。

講師であるDESIGN MUSEUM LABの久慈達也さんに、お話していただいた内容をレポートにまとめていただきました。
今回のイベントに参加できなかった方も、是非こちらをご覧いただき、ミラノサローネのことや世界のデザインスクールのことに興味を持っていただくきっかけになればと思います。



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ミラノサローネ2017レポート 久慈達也さん(DESIGN MUSEUM LAB/デザインリサーチャー)
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5月26日、「ミラノサローネ2017-世界のデザインスクール最新動向-」と題して、ミラノサローネ国際家具見本市およびミラノ・デザイン・ウィークの報告会を開催した。登壇者は、神戸芸術工科大学Design Soilのディレクターとしてミラノ・デザイン・ウィーク出展を指揮した田頭章徳、デザインスクールの展示に焦点を当てて取材してきた筆者の2名である。今春ミラノでどのような特徴がみられたのか、報告内容を振り返ってみよう。

毎年4月に開催され、世界中からデザイン関係者が集まるミラノサローネ国際家具見本市。東京ビッグサイトの約4倍の広さを誇るミラノ国際展示場(Rho Fiera Milano)を舞台に、多くの家具メーカーの新作発表が行われる。本年は4月4日〜9日の会期で行われ、来場者は約34万人。この世界最大規模の家具見本市にあわせて、ミラノ市内でも様々な展示やイベントが催された。

■街全体のデザインフェア
「街全体がデザインに染まる」と形容されるが、市中心部のショールームやギャラリーはもちろん、南部のトルトーナ地区、東部のランブラーテ地区など市周縁部でも工場空間を利用してイベントが開催され、その総数を把握すること自体が難しいほどだ。世界中のデザインスクールや卒業したての若手デザイナーの出展が多いことも特徴で、企業とは異なる視点で時事問題や潜在的な社会課題などデザインの範囲を再定義するような展示もみられる。



サローネサテリテ(ミラノサローネ国際家具見本市内)

ヴェンチューラ・ランブラーテ

■7度目の出展-Design Soil
神戸芸術工科大学のデザイン・ソイル(Design Soil)も、この世界最大のデザインの祭典に2011年から出展を続けている。デザイン・ソイルは実験的なテーマで作品制作に取り組むことを目的に発足した有志のデザイン・プロジェクトで、これまでに発表された作品は国内外の企業から商品化されたほか、海外の展覧会に招待出展されるなど着実な成果を残している。今年は「GOOD LACK」をテーマに、「欠落」というモノにとってネガティブな要素を、逆転の発想で新しい機能として読み替えた作品を発表した。



デザイン・ソイル展示風景

デザイン・ソイル移動の様子

日本から海外の展示会に出展するためには様々な苦労があるが、とりわけ輸送は大きな障害となる。デザイン・ソイルも制作期間と輸送費の問題から、全ての作品と展示什器を機内受託手荷物として移動する。さらに今年は公共交通が利用できず、宿泊先から徒歩でランブラーテ会場まで1時間かけて作品を運ぶことになった。作品制作に加え、輸送、英語での作品解説と参加学生にとっては高いハードルを一つ一つクリアしながらのプロジェクトであるが、世界中のデザイン関係者に自分の作品を直接プレゼンテーションができるのは大きな魅力だ。若手デザイナーの登竜門である「サローネサテリテ」20周年にあたる本年、これまでの軌跡を振り返る展覧会「SaloneSatellite.20Years of New Creativity」が開催されたが、デザイン・ソイルの作品十数点も選出された。



デザイン・ソイル設営の様子

サローネサテリテ20周年記念展

■柔軟な発想と確かな造形感覚-Salone Satellite
サローネサテリテにはデザインスクールの出展も多数含まれる。その中ではドイツのヴァイセンゼー美術大学(Weißensee Art Academy Berlin)が頭一つ抜けていた。同校の「リアクティブライト・プロジェクト」には、炎に接するように息を吹きかけることで照度を変えられる照明作品など、センサーの使い方とプロダクトとしての造形力が高次元で融合した作品が揃っていた。サテリテには国内からも京都工芸繊維大学と名古屋工業大学が出展。京都工芸繊維大学岡田ゼミは「鏡」をテーマに作品を出展。アルミシートを折り曲げることで生まれる表情を素直に活かしたものや手製のパンを3Dモデリングで型取りしてフレームに仕立てた作品など、ユニークなアプローチが光った。



ヴァイセンゼー美術大学

京都工業繊維大学岡田ゼミ

■不安定な社会における「デザイン」—Ventura Lambrate
サローネと並んでデザインスクールの出展が多いヴェンチューラ・ランブラーテだが、ジュネーブ造形芸術大学(HEAD Geneve)と、これまで中心的な立場にあったデザイン・アカデミー・アイントホーヘン(DAE)が別のエリアに会場を移すことになった。
ランブラーテ地区では、セントラル・セント・マーチンズ(CSM)のマテリアル・フューチャーズ(Material Futures)コースを筆頭に、コンセプト重視のプレゼンテーションを行う学校が例年以上に目立った。マテリアル・フューチャーズが遺伝子操作や食の倫理観など際どいアプローチで現代社会に潜む課題を突きつけたのに対し、チェコのプラハ工芸美術大学(UMPRUM)はファストファッションを風刺するパフォーマンスで話題になった。両校の展示はミラノ・デザイン・ウィークの各主催団体が表彰する「ミラノ・デザイン・アワード」にノミネートされ、コンセプチュアルなアプローチが評価につながっている現状がうかがえた。



CSM マテリアル・フューチャーズ

プラハ工芸美術大学

ユトレヒト芸術学校(HKU)は、個人のプライバシー保護をテーマに、自作できるアンチ・ドローン銃や街頭カメラによる顔認識を阻害するヘッドギアなどを展示した。この他、「境界」を主題にしたブルグ美術大学(Burg Giebichenstein University of Art and Design Halle)など、ヨーロッパを取り巻く様々な不安要素が各校の展示をシリアスな方向へと導いていることがうかがえた。企業が生み出す「トレンド」とは異なる、こうした社会課題に対する「リアクション」は「デザイン」という言葉の多面性を教えてくれる。一方で、こうしたスペキュラティブ(考察的)なデザイン・アプローチには造形的な弱さも付きまとう。ここ数年盛り上がりをみせた素材重視の潮流もリサーチに終止する傾向にあったが、アウトプットの精度を軽視した「提案のための提案」が増えるようなら気がかりである。



ユトレヒト芸術大学

ルンド大学「SPEKTERUM」

■アイデアに適切な形を与えること
コンセプトとフォルムのバランスが非常によく保たれていたのが、スウェーデンのルンド大学(Lund University)であった。客員教授のステファン・ディーツとIDEOのレイフ・ハフの指導による照明作品21点を展示したが、いずれもシンプルな機構や造形が機能的に働くようにアイデアを練った秀作が揃っていた。他大学がコンセプチュアルな方向性に流れる中、同校の展示からデザインの原点は「アイデアに適切な形を与えること」にあると改めて教えられた。
学校を超えたキュレーションに新たない可能性を感じさせたのが、スイスの家電ベンチャー企業PUNKTのアーバン・モビリティ・プロジェクト「PUMP」。デザイン・アカデミー・アイントホーヘン(DAE)、ローザンヌ州立美術学校(ECAL)、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の三校に電動アシスト自転車をそれぞれ提案してもらうという試みだが、アイコニックなフレームデザインで知られるオランダの自転車ブランド、ヴァンムーフのような造形を与えたDAE、坂の多い街を移動するためどんな自転車でも電動アシスト化できるキットを提案したECAL、シェアオフィス等の都市型の労働環境にフィットする機構を盛り込んだRCAと、コンセプトにもフォルムにも各都市の地勢がしっかりと反映される結果となっていた。



PUNKTによるプロジェクト「PUMP」

ECALが提案した電動アシスト化キット

デザイン・ウィーク全体に目を向ければ、初開催のヴェンチューラ・チェントラーレ(Ventura Centrale)はミラノ中央駅の高架下空間を会場に、マーティン・バースはじめ力の入ったインスタレーションで集客を伸ばした。アクセスの良い中心部のイベントだけに、来年以降の盛り上がりも期待される。
今年はあちこちの会場で「入場制限」がかかる場面が多く、長蛇の列が印象に残った年であった。なかでもnendoの個展は2時間待ちも当たり前という盛況ぶりだったし、COSやHERMESのようにここ数年デザイン・ウィークを牽引してきたファッションブランドによる展示も入場までに相当の時間を要したようである。これらに共通しているのは「インスタレーション化」された展示である。モノ単体でみせるのではなく、空間全体を使ったプレゼンテーションを用いて世界観とともにモノを示す時代なのだ。もっとも「行列」の原因はアトラクション的魅力にばかり求められるわけではなく、うがった見方をすれば、来場者が集中せざるをえないほどに見所が限られていたということかもしれない。実際、本会場での新作発表は量においてやや低調であったし、デザインスクールの展示もどことなく精彩を欠いていた。




ヴェンチューラ・チェントラーレ

nendo個展「invisible out outlines」

生き物のように、訪れるたび少しずつ表情を変えるミラノ・デザイン・ウィーク。今年デザインスクールの展示に表出したそこはかとない不安感はデザインの未来に少なからぬ影を落としているようにみえた。ヨーロッパの若手デザイナーや学生たちが不安定な時代の中でどのようなデザインを紡いでいこうとしているのか、これからも注視していきたい。(文責:久慈達也)

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Designers 14 デザインレポート01:ミラノサローネ2017 -世界のデザインスクール最新動向- 開催概要はこちら

2017年6月10日(土)

今年で4回目を数える、「KIITOマルシェ2017」を開催しました。KIITOマルシェは、ポートアイランドにある、病気とたたかう子どもと家族のための施設「チャイルド・ケモ・ハウス」を応援することを目的としています。連携イベントとして同日に「チャイルド・ケモ・ハウス チャリティーウォーク2017」も行われました。


会場の1000㎡を超える大空間には、ワークショップや飲食、物販など44ブース並び、大変にぎやかなマルシェとなりました。
会場デザインは、「ちびっこうべ2016」で建築家チームとしてご協力いただいた、中村×建築設計事務所さん、チラシやサインなどのグラフィックデザインには、同じくデザイナーチームのDESIGN HEROさんに手掛けていただきました。
入口には紙管と軽く透けた布(オーガンジー)を使ったタイトルゲートが作られ、各ブースの上には、同じく軽く透けた布(オーガンジー)の緑、赤、白が暖簾のように天井から垂れ下がり、各ブースの位置を伝えています。入口すぐには巨大な円形のレジャーシート敷かれた広場エリアがあり、こどもなどが靴を脱いで自由に遊べる空間です。小さな紙管の積み木がたくさん転がっており、重ねたり、転がしたりしながら遊ぶ様子が見られました。


ワークショップエリアには、好きな革を選んで作るブレスレットや部屋に飾れるプリザーブドフラワーづくり、1年後に手紙が届く未来郵便局などたくさんのブースがならび、終始にぎわっていました。水玉の衣装に赤い鼻、口からピーピー音がでるクラウンも現れました。

フードエリアには、珈琲などのドリンクのほか、ポテトフライ、カレー、水餃子、トッポギ、かき氷、ハートの形をしたパン…など、1日では食べきれない、魅力的なメニューがたくさん並んでいました。会場にある、大きな丸いベンチや土管型のベンチなどがたくさんあり、くつろいでいる様子も見られました。


あっという間に終了時間となり、今年のKIITOマルシェは終了しました。毎年続けることで、「チャイルド・ケモ・ハウス」を知っていただく機会をつくり、さらに支援の輪が広がることを願っています。
本イベントの売上の一部は、「チャイルド・ケモ・ハウス」へ寄付し、患児や施設のために使っていただきます。
ご来場いただきました皆様、そして、本イベントの趣旨をご理解いただき、ご協力いただきました出店者の皆様、本当にありがとうございました。


「KIITOマルシェ2017」開催概要はこちら

5月6日(土)5月7日(日)

2年に1度行われるちびっこうべのワークショップ。今回は子どもたちが集めてきたKIITOの館内のさまざまな音を集めて1つの音と音マップを作り出す「ちびっこうべサウンドスケープワークショップ」を開催いたしました。まずは、サウンドスケープの紹介から入ります。講師の橋本次郎さんがあらかじめ神戸の街で録ってきた波の音や汽笛の音を利用したベースの音楽をみんなで聞きながら、身のまわりにある様々な「音」について学んでいきます。最後に、そのベースに音にみんなが録音してきた音を重ねて一つの音を完成させます。その後、レコーダーの使い方をみんなで教わりKIITOの中の色々な音探しに出かけます。この日、KIITOでは078kobeのイベントが行われており、KIITOの館内は様々な音にあふれていました。



 

KIITOの建物の中で耳を澄ませ、どんな音が聞こえてきたかを考えながらレコーダーに録音していきます。「あっちに音が鳴りそうな場所がある!」「床がちがうと足音も変わってくる!」と今まで気づいていなかった、色々な音の発見がありました。レコーダーを初めて使う子どもも多く「良い音捕まえた!」と取り組んでいる姿が見られ、KIITO館内の1階から4階までの様々なスペースでの”音採集“に積極的に取り組んでいました。どこで、どんな音が、どんな風に聞こえてきたか忘れないようには手持ちの音マップにメモをしていきます。


 

音が録れた子から、イヤホンで録ってきた音をサポーターと確認して、録音してきた音の中から使いたい一音を選びます。録音してきた音と実際に聞こえてくる音がちがうことを自分たちで実感していきます。音選びが終わったら、橋本さんに音を渡しにいき、子どもたちと、どの所にどういう風に音を入れていくか決めて、ベースの音に子どもたちの録音してきた音を足していきます。音を編集している間に、音探し中にかいたマップを大きいマップに書き写していき、一つの大きな音マップを完成させていきます。


 

その後、編集し終わった音をみんなで聞いていきます。神戸で録られたベースの音にみんなで録ってきたKIITOの館内で録られた音が足されて一つの音になりました。自分たちで録ってきた音がどこで使われているか、どんな風に聞こえてくるかを作った音マップを見ながら感じ取っていきます。子どもたちの作った音マップには「トントンだれかが歩いているみたい」「消防車がいるみたい!」といったように、子どもが思うままにマップにコメントが書かれています。


 

ワークショップを通して、身近なところにも意識をしていないと聞こえない様々な音があるということを、ということを参加した子ども達に気づいてもらえる機会となりました。ワークショップに参加した子供たちには参加者賞として「音バッチ」をプレゼントしました。

今回作った音と音マップは6月10日のKIITOマルシェで成果展示いたしますのでぜひお越しください!

写真:槌谷綾二

2017年4月26日(水)

神戸市の総合福祉ゾーンしあわせの村では、障がいのある人たちの創作活動を支援し、その表現の素晴らしさを広く知っていただくための展覧会「こころのアート展」が毎年開催されています。今回、同展の巡回展をKIITOにて開催。会場を移したことで、KIITOの空間でしかできない新たな会場構成や展示什器を提案し展示を行いました。

この展示のオープニングイベントとして、出展作家である新井咲さんとそのご家族によるアンサンブルの演奏会、そして障がいのある人との協働の場を多様なかたちでつくりだしているSLOW LABELディレクター・栗栖良依さんを招いてのトークを開催しました。

【第1部】新井咲+アンサンブルピアチューレによる演奏会

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本展の出展作家として、『旅シリーズ』と題した10点の油絵の作品と、その作品それぞれにひもづいた詩の作品を出展されている新井さん。絵や詩の制作活動と同様に、長年続けているというピアノの演奏を、音楽のお仕事をされているというご家族のみなさんと一緒に、披露してくださいました。

ドラムの演奏を担当されている新井さんのお父様からは、新井さんの持つイメージが絵や音楽に落とし込まれていく過程や、すべての創作活動の起点になっているという、新井さんの好きな映画の風景やストーリーについてのお話をいただき、会場にいる参加者のみなさんが、新井さんの世界観とより深く向き合うことができました。

演奏の最後には、新井さんご自身が作詞されたという、『出会い』という曲を披露していただきました。これまでに出会ったたくさんの人たちへの感謝の気持ちを込めた歌詞が、新井さんの優しい歌声とご家族の演奏にのり、会場中が穏やかであたたかい空気に包まれ、惜しまれながら演奏会は終了となりました。

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【第2部】スローレーベルが創造する未来
アーティストと障がい者が協働する機会をつくり、社会に新しい価値を生み出すさまざまなプロジェクトを手掛ける、「SLOW LABEL」ディレクターの栗栖良依さんにお越しいただき、障がい者のもつ創造性と、社会にもたらすことのできるさまざまな可能性についてお話をいただきました。

○「SLOW LABEL」の立ち上げ
観光と交流の拠点であり、アートセンターとしての側面も持つ「象の鼻テラス」を拠点にした、横浜市の障がい者福祉施設とアーティストを結び付けるプロジェクトに携わったことが「SLOW LABEL」立ち上げのきっかけだそうです。そこで、栗栖さんはたくさんの障がい者福祉施設のものづくりに出会います。当時、そこで作られた作品たちは、サイズや色が統一された正確なものでは無いことや、障がいがあるため短期間で量産ができないことなどを理由に、福祉事業者には「商品にできるものではない」と評価されていました。

ですが、そこに栗栖さんが派遣したアーティストが入ることで、制作されたものの不揃いさを魅力として引き出したり、障がいがあっても無理なくできるものづくりが提案され、これまでとはまったく違う新しい価値をもった作品が生まれたといいます。

こうして、これまで商品未満だったものをかたちにするブランドとして「SLOW LABEL」が立ち上がりました。立ち上げにあたって着目したのは「スロー」であること。障がい者福祉施設でのものづくりの特徴は、とにかくゆっくり。大量生産、大量消費のなかで成り立っている現在の社会において、「大量生産では実現できない自由なものづくり」が大きな武器になったのではないかとお話をいただきました。

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その後、「SLOW LABEL」の好評を得て、栗栖さんはさまざまなプロジェクトを立ち上げます。障がいのあるなしに関係なく、誰もが気軽に集まり、簡単に楽しくものづくりが体験できる工場「SLOW LABEL THE FACTORY」では、ものづくりの拠点としての機能のほか、障がい者と市民の交流の場としても大きな意味を持っているといいます。
そのほか、障がい者が生きる上での選択肢を増やす学びの場を提供する「SLOW ACADEMY」や、全国の障がい者福祉施設のものづくりの力を生かしたショップ「SLOW LABEL BLUE BIRD COLLECTION」の立ち上げ、福祉作業所のスローな時間を生かし、とにかく手間暇をかけたジェラートを販売する「SLOW GELATO」など、障がいのある方が自分たちのペースを大切にしながらも、社会で活躍できるさまざまな場をつくっています。

○ヨコハマパラトリエンナーレ
「SLOW LABEL」のさまざまな活動を通し、障がいとは何かを新ためて考えたといいます。障がい者の多くは、どこか欠落した部分はあるかもしれないけど、それぞれに突出した能力や感覚を持っている。栗栖さんは、そういった人々の魅力を発信し、人や社会を巻き込む発展型進行型フェスティバルとして、2014年に「ヨコハマパラトリエンナーレ」を立ち上げます。
このトリエンナーレでは、ただ障がいのある方のアート作品を集めるのではなく、プロのアーティストとのコラボによって新しい芸術表現を見出したり、社会に何か還元したりすることに挑戦しています。
また、このイベントは、2020年までの3回限定。それは、いつまでも「パラ」でいてはいけないという想いからだそうです。2020年以降からは、「ヨコハマトリエンナーレ」に障がいを持つ方が普通に出展できるような社会になることを目指しているのだそうです。

このパラトリエンナーレで、栗栖さんたちはパフォーミングアーツにも取り組みはじめますが、その運営を通し、さまざまな課題と出会いました。
・情報のハードル
 メールでの連絡が取りにくい。FAXやプリントの配布の方が圧倒的に有効である。
・物理的ハードル
 障がいの程度によっては、介助がなくてはひとりで移動することができない。
・精神的なハードル
 自分にはできない/うちの子にはできないという思い込みをしている。
常に人に迷惑かけるかもしれないという不安を抱えている。
この課題を解決するため環境を整えないことには、表現者の人口が増えず、高い質の作品はつくれないと考え、アクセシビリティの整備に取り掛かったそうです。

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〇「SLOW MOVMENT」
アクセシビリティを整えるため、栗栖さんはそれを支える人材の育成をはじめます。
【アクセスコーディネーター】
舞台に上がるまでのサポートを行う人。障がいのある方が集中して練習ができる環境を整えたり、連絡手段を障がいによってカスタマイズ(手話・展示)することができる。
【アカンパニスト】舞台の上でサポートを行いながら一緒に体を動かして表現をする人。

そして、障がいを持つパフォーマーと、それを支える人材が協働し、さまざまな公演を成功させていきます。そして、2016年には、障がいのあるダンサーの発掘や育成の拠点施設として、新豊洲に「ブリリアランニングスタジアム」を立ち上げます。
ここでは新たにエアリアルという空中パフォーマンスのための設備が取り入れられ、パフォーマンスとしてはもちろん、心と体を鍛えるトレーニングとしてとても有効に機能しているのだそうです。
第1回目のパラトリエンナーレから参加している障がいのあるパフォーマーたちは、現在このエアリアルをはじめ、積極的に新しい技術を取り入れ、表現を続けています。

SLOW MOVEMENT -The Eternal Symphony- 2nd mov.(速報版)
SLOW MOVEMENT - The Eternal Symphony - 1st mov. PLAYERS YOKOHAMAver.
SLOW MOVEMENT -The Eternal Symphony 1st mov.- AOYAMA, 2015

人のできること、できないことは、障がいのあるなしばかりで判断するべきではないと、栗栖さんはいいます。誰かができないことを、自分がどのように補っていくかを考える行為は、社会生活の中でお互いに役立てていくことができます。これからも、障がいのある人とない人が一緒に作品をつくり、より安全に、より質の高いことにチャレンジしていきたいと語っていただきました。
そしていずれ、個の相互補完によって「障がい者」というコトバが無くなる社会にしたいといいます。人材、技術を互いに共有し、多様な人々を受け入れ、補い合える社会にするために、SLOW LABELの活動をこれからも続けていくとお話をいただきました。

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最後に会場から質問を受け、そのまま同会場で懇親会を行いました。会場内では参加者の福祉事業者やデザイナー、アーティストが交流し、栗栖さんのお話をきっかけに、また次につながる新しい出会いが生まれたようでした。

こころのアート展 in しあわせの村 2016 KIITO巡回展の詳細はこちら
OPENING EVENTの詳細はこちら


2017年4月22日(土)

KIITOとプラス・アーツが協働でおこなった「防災サバイバルキャンプ」を考えるゼミの中で生まれた取り組み「レッドベアサバイバルキャンプ」。レッドベアサバイバルキャンプ発足5周年のイベントが開催されました。
「災害時に学べることは、ほぼキャンプで学べる。」をキャッチコピーに掲げるこの取組みにちなんで、当日はアウトドアファッション。会場もタープが張られた、アウトドアな設えになっています。まずは参加者の方の自己紹介から始まります。立ち上げ当初から参加している人から活動に興味を持って初めて参加した人まで、様々な方に来ていただきました。自己紹介の後はリレートークに移ります。講師の川内乾吾さんからは、今までの活動を交えながらレッドベアの歴史や、レッドベアを通じた様々な関わりをお話しいただきました。いわき市立泉北小学校教諭の佐藤登さんからはいわきの防災キャンプの現状をお話いただき、神戸から始まったレッドベアの活動が他の県でも行われていることや、地域の人や子どもたちが防災にどのように関わっているか、などレッドベアの活動の広がりを知るいい機会になりました。また、「いわき防災キャンプに行った際に乗っていた車の車種は何でしょうか?」「ボランティアレスキュー隊員の数は何名でしょうか?」といったようなレッドベアに関わるクイズも出され大きな盛り上がりを見せました。





 

その後、「インフラ班」「サバイバル班」「レスキュー班」「レクリエーション班」「エマージェンシーフード班」の5つのチームに分かれて各々のチームにちなんだ内容のクイズを自分たちで考えて出題する「バッジ争奪!ゲーム大会」が開催されました。チームでレッドベアでの思い出や活動を思い出しながら、クイズを考えていきます。「今一番保存期間が長い保存食は何年持つでしょう?」や「阪神淡路大震災後、東灘区ではガスの復旧にどれくらいの日数がかかったでしょう?」といったような、レッドベアでの活動を通して得た知識や、自身の体験を活かしたクイズが出題されました。


 

そして、「レッドベアでやってほしいことワークショップ」と題し、今後のレッドベア継続の為には何が必要か?何をやっていきたいか?をディスカッションしました。「婚活イベント」や「BBQミーティング」といったクラブメンバーが楽しく参加できるためのアイデアがたくさん出されました。イベント中はファシリテーショングラフィックも同時に行われており、様々なアイデアや発言が一つの紙にまとまっていきました。








 

レッドベアでの5年間の活動の中には、いろいろな人の思いが詰まっていると感じました。レッドベアのこれからの活動について大きく前進するきっかけになるイベントになりました。レッドベアサバイバルキャンプクラブのメンバーは引き続き募集中です。興味を持った方、活動に参加したい!と思った方はこちらまで。

「RED BEARANNIVERSARY CAMP」イベント概要はこちら

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2017年3月23日(木)‐25日(土)

+クリエイティブゼミvol.23「公園と地域をつなぐ仕組みを考える」を開催しました。今回のゼミは3日間の集中ゼミで実施しました。これまでも公園をテーマにゼミを開催し、さまざまなアクションを行ってきました。生まれたアイデアを継続的に展開していくための仕組みづくりの必要性を感じ、公園と地域をつなぐ仕組み、つなぎのデザインを考えていきました。


はじめに参加したゼミ生の自己紹介を行いました。参加動機、公園の思い出、公園についてのリサーチ報告を行いました。「子どもの頃はよく公園で遊んでいたが、今はほとんど行っていない」、「子どもができて公園に行くようになった」、「昔は毎日のように公園で友達とサッカーをしていた」、「公園にある健康器具が最近気になっている」、など様々な思い出や気づきが語られました。
参加者の思い出やリサーチのキーワードから、「公園のあり方を考えるチーム」「公園の周辺から仕組みを考えるチーム」「公園の利用について考えるチーム」「公園の運営、つなぎ手を考えるチーム」に分かれました。


講師の永田から、地域を考えていく際にアドバイスとして地域豊穣化における「風・水・土」、チームでの進め方について話をしました。
「風の人」は外から種を運び、地域に刺激を与える存在。「水の人」は、その種に水をやり続ける、中間支援的な存在。「土の人」は、その土地に根を張り、活動し続ける存在。その中で我々は良い種を作れるように考えていきます。その種は不完全でなければいけません。余地を残すことで、地域の人などの関わりを作れるようにします。またチーム内で進めていく中では、シナジー効果を生むことも大切です。互いの違いを認め、尊重すること、さらに信頼と協力があることでより高い効果が得られます。


グループワーク開始から各チーム議論が盛り上がっていました。持ち寄ったリサーチの情報を共有し、付箋をたくさん使いながら、それぞれの問題意識や気づきを書き出し、チーム内での方向性を考えていきました。各チームリサーチ共有では、近所の公園を見に行って感じたことや、最近人気の公園情報、周りの人の公園の活用術など様々でした。3日目の発表前の時間直前まで、アイデアを考え、白熱したディスカッションが行われていました。発表は、各チーム5分で行いました。


Aチーム
公園のあり方をテーマに進めていきました。今使われている公園は、公園に行く明確な目的を持った人が来るので、利用したい人に限定されているのではないか。そこで私たちは、どうすれば公園に行く意思のない人にも公園に足を運んでもらうことができるかを考えました。
コンセプトは、エリアを楽しむ基地としての公園で、「PARK DAY(公園の日)」を設けることを提案します。
単体として存在している公園を複数つないでいく仕組みを考えました。公園と公園の間にあるエリアの観光スポットや地元の人しか知らない場所、発掘されていない場所に寄り道を楽しみながら別の公園に行きます。周回できるようなイメージです。変わった自転車(複数人で乗るものなど)で公園間を移動できたり、「PARK DSY」限定のスタンプラリーなども考えました。
このモデルは公園だけでなく、周りのエリアの活性化も一緒に行っていきます。

フィードバック
・1つの公園ではなく、複数の公園をエリアで見て考えることはとても重要だと思いました。
・街区公園も大規模な公園もネットワーキングが大切だと思います。
・個々の活動を意外と知らないことが多く、公園で行われる活動の情報共有ができれば、連携などいろいろ可能性があるのではないか。


Bチーム
メンバーはみんな20代という若者チームです。若者が公園で思い思いに過ごすにはどうしたらいいのかを考えていきました。普段私たちは、公園でジュースを飲んだり、友達と話しをしたり、メールの返信などをしています。公園をあまり利用しない若者が公園を使うには何が必要か。人と会う、話す、座る、楽しいことができる仕組みが必要であると考えました。
家ではできないことができて、SNSに夢中な年代が話題にしたいことがあって、あまり人目を気にすることもなく、ある程度ざわざわした雑音がある空間であってほしいと意見ができました。
アイデア①:黒ひげ椅子
公園内にある複数の椅子のうち、適当な場所に3人が座ると、中央にある灯りがつくという、他人と偶然を共有する仕組みです。
アイデア②:夢を語る掲示板
いろいろなメッセージや夢を自由に書くことができる掲示板です。ある一定期間で消されるます。
アイデア③:ゴミ回収で公園が良くなる
空き缶などのごみ回収をすることで、それを資金に公園の設備が良くなっていく仕組みです。

フードバック
・私も黒ひげ椅子に座ってみたいと思いました。
・SNS時代に掲示板というアイデアが出るのが面白いです。
・公園の椅子はどこも一緒なので、高級感のある椅子や壁と一体の椅子などいろいろ意見があります。
・掲示板だけでなく落書きのできる壁なども面白いと思います。
・どこかで公園を好きにプロデュースしていいプロジェクトがあってもいいと思います。


Cチーム
公園の課題から話し合い、遊具の使い方や怪我や事故のトラブルなどの意見がありました。また、生きた公園、死んだ公園があるとチーム内で意見が出ました。そこには公園の周辺の人たちや自治会のモチベーションなどが影響しているのではないかと考えました。
公園の役割には、コミュニティ、防災、健康、遊び、学習などがあります。公園の使い方を知っているようで、」あまり知らいのではないか。特に子どもは学校なので、校庭以外の遊具などの使い方を知る機会はないので、公園ドクターと呼ばれる専門家が、各学校や地域を回り、遊具の使い方や怪我や事故が起こらないようにする指導できると良いと思いました。

フィードバック
・現状、何か公園でする際は、自治会長の承認を得ているので、自治会長の意識改革ができると面白いと思います。
・研修会を開いてどれだけの参加者がいるか不明だが、移行期でもあると思うので、このような仕組みが機能するといいと思います。
・マンションでは自治会の役割がまわってくるが、自治会長があまり頑張りすぎないことを住民は願っている雰囲気があります。自治会長が頑張るというよりも、サポートする中間的な仕組みがあるといいと思います。


Dチーム
公園の運営を切り口に「公園を取り戻せ!」をキーワードに考えました。公園の利用は、「働いていて、なかなか公園を利用しない人」、「良く公園を使っている子どもやお母さん、高齢者」、「公園を使いたいけど使い方がわからない人」、の3つに分かれました。現状、良く公園を利用している人たちが使い続けていくこと、公園の使い方が分からない人たちが使っていく仕組みの2つを考えていきました。
「おじさん2.0」
公園が公園であり続けるためには、公園を管理するおじさん、掃除をしている人の可能性に着目し、多様性を生みたいと考えました。公園の管理するおじさんをもっと素敵に、憧れの存在にするためのスキルアップ講座やディズニーランドのキャストの技術を学ぶ、おしゃれな作業着や掃除道具などのアイテムを工夫などアイデアがでました。
「Park meet ○○」
公園を使いたいけど使えない、どうしていいのか分からない人に対して、アクティビティのマッチングを行い、たくさんのアクティビティメニュー(0円コンテンツなども)を紹介する仕組みです。地域外の人に役割をつくるようなマッチングサイトをつくり、新しく公園の可能性に気付いてもらうことが目的です。

フィードバック
・公園を管理する人へのトレーニングは面白いです。
・神戸市で公園を管理する人は、緑化ボランティア(地域のボランティア)、ボランティア(誰か知らない)、業者さん(神戸市から委託を受けた)がいます。
・一番きれいな公園と感じるのは、地域の方が管理しているところが多いです。
・人や物をシェアする仕組みは面白い、このようなことができると街区公園が変わる可能性があるのではないでしょうか。


総評|永田
強い種をつくること、それをシェア知る仕組みの重要性を感じました。また運営する人の意識を変えることで、新しい担い手につながる可能性があると思います。
今回のアイデアは、引き続き神戸市産とも相談しながら、もっと深めいていく機会なども設けたいと思います。やらなければいけないという使命感も感じています。

3日間集中ゼミという新しい試みでしたが、でどんどん議論が進んでいる様子でした。これからも様々な手法を取り入れ、これからの公園の未来を考えていければと思います。今後も公園ゼミにご注目ください。

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+クリエイティブゼミvol.23「公園と地域をつなぐ仕組みを考える。」開催概要はこちら

2017年3月24日(金)

スタッフが到着するとすでにメンバーの皆さんはスタンバイOKのようです。
今日は本番ですので、焼きあがったものを施設にプレゼントすることになっています。
ということで、これまで焼き上がって終了だった工程に、パンをプレゼント用に袋詰めして段取りが追加というミッションが追加されます。
包装については2日目までで予行演習済みなので、あとはちゃんとパンを焼きあげるだけ!
気合いを入れて、目標時間に向けて作業開始!さぁ、頑張りましょう!


さて、張り切って最終計量です。今まで数々失敗してきた難関の「牛乳と玉子の計量」です。若干怪しい一幕はあったものの、みんなでチェックしあおうという気持ちで何とかミスをせずにクリア。後は全部材料を入れて捏ねるだけです。
本番の今日は、これまでの倍量の生地を捏ね上げることになっていました。少し量が増えて勝手が違うので、皆さん少し不安げに「これでいいのかな?」と声が上っていました。シェフが一人ずつチェックして回られ、疑問点をすぐに解決してくださいました。皆さんはアドバイスを聞くとまっすぐに取り入れてくださるので、米山シェフも「皆さんまっすぐな方ばかりですね。すごく素直に私の話や意見を聞いて下さるので助かりますし、こちらも勉強になりますよね」と仰っておられました。
チームワークも素晴らしく、作業の合間に片付けも率先してお手伝いくださり、予定以上に非常にスムーズに作業が進んでいきました。生地を丸め終わったら、それぞれ他のチームの見学をして「やっぱりXXXXさんの丸めはキレイや、さすがやな~」と感想や気になった点を話しておられ、本当に皆さん勉強熱心でした。待ち時間に「クリームパンってどうやって作るの?」とか、すでに次回作への意欲あふれるご質問があり、これから皆さんがどんなパンを焼かれるのかとても楽しみです。
順調に焼成まで進んで、オーブンから出てくる焼き立てパンたちに、あちこちで「やったー」と拍手と歓声が上がっていきました。
実際、予想より早く焼きあがったので、試食しながら皆さんそれぞれの参加する前と今の感想や、今後の抱負などを伺いました。初めてのパン作り、戸惑われたことも多かったと思いますが、皆さんとても前向きに取り組んでくださり、最後には「あんなパン焼けるかな?」とか「孫にキャラパンを焼いてあげよう!」とか「家では料理とかしないから、うちにパン持って帰ったら「こんなことできるの?!」って家族にビックリされちゃったよ。」とか、嬉しいお話を沢山頂きました。
そこで、参加者のお一人の奥さまで、なんと米山シェフよりパン作り歴が長い方もおられるというお話がありました。メンバーの方がその奥さまにキャラクターパンの作り方を聞いてみたというお話があって、シェフがボソッと「僕が作り方教えてほしい(笑)」と話される一幕もありました。


軽く現場を片付けてから、パンを袋詰して、みんな揃ってパンをグリーンホーム平成さんまでお届けに上がりました。
まず、センター長さんから施設の概要や利用者の方の様子などのご説明を頂きました。利用者のみなさんが、数日前からパンが届くのを楽しみにしておられることなどを伺って、まだほんのり温かい焼きたてパンを前に、メンバーの皆さんも「焼いてきてよかった。喜んでもらえるといいな」とワクワクの表情でした。
ささやかに贈呈式の後、みんなでニコニコ記念撮影をお願いしました。満面の笑みでパチリと集合写真を撮影の後、作業中の利用者の方々のお邪魔にならないよう静かに退出して、カレッジに戻って最後の締めくくりとなる片付をしました。


最終日、焼き上がった後の振り返りの時間に、カレッジ側から「皆さんの表情や焼きあがったパンを見て、やってよかった、成功だったと思います。この経験を是非ご自身の身の回りや、コミュニティーで役立てて頂きたいと願っています。」と嬉しいコメントを頂戴できました。
オーブンのドアを開け、焼きあがったパンを出してきた時の歓声と嬉しそうな表情、伝わってくる達成感は、本人だけでなくて周りも嬉しくしてくれるものです。ご自宅でメンバーの皆さんがそれぞれ思い思いにパンを焼いてくだされば、きっと周りの皆さんにその嬉しそうな雰囲気が伝わって、御本人の技術が上がるだけでなく、「おじいちゃん、すごい」とか、「XXさん、パン焼けるなんてすごいね。かっこいい。」とか、「XXさんみたいに自分もチャレンジしたい」と、大きく小さく「やればできる!」の輪が広がるかな…そんなことを願い想像しつつ、第3期のプログラムは終了しました。


次回またご一緒出来る機会がもてますように! チャレンジを続けてくださいますように!

最後になりますが、会場を提供頂きましたシルバーカレッジのみなさま、お声がけくださいました事務局・カレッジマネージャーの糸原さん、事務局の大西さん、講師として熱心にご指導くださいました米山シェフ、ご参加下さった3期生のみなさま、本当に3日間ありがとうございました。

取材・編集:阪口理恵

2017年3月23日(木)

スタッフ側が前段の用事で、本日少し遅れての到着となりました。そもそもの予定ではすでに開始から30分ほど経過しているので、作業が大分進んでいると思いきや、なんだか計量して捏ね始めぐらいと遅れ気味のようにみえました。
伺ってみると、数名の方が牛乳と卵の分量を間違えてしまったらしく、急遽計量を最初からやり直しとなっていました。

シェフからは「昔、自分が「常に自分を疑え」と教えられたので、チェックは念入りにするし、スタッフにも一つ一つ鵜呑みにせずにまず確認するように指導しています。」とのお話があり、「そうだったと思う」で作業を進めると全体に影響がでるので気を付けないといけないなと実感した「失敗談」となりました。


それでも皆さんは「失敗はダメだけども、取り返せる失敗なら、今後気をつけることで最終的な成功につながるはずだ」とあくまで前向きでした。
そう、メンバーの皆さんは常にポジティブで、チーム2人でお互い作業しながらも相手を「さすが!」など、とにかく褒め合っておられました。モチベーションの高い、雰囲気の良いチームワークには大切な要素だなぁと、人生の先輩から学ぶ瞬間となりました。


さて、最初のミスはそれなりに大きかったものの致命的ではないので、その後は大事なポイントとなる部分の見極めなどをシェフが順番に回って細かく指導を入れてくださり、非常にスムーズに作業が進んでいきました。皆さんそれぞれのご自宅で復習して頂いたようで、中には2回も練習でパンを焼いてご家族に振る舞ったという方もおられ、「孫に喜んでもらえた」と嬉しそうに報告してくださいました。皆さん本当に熱心で真面目に取り組んでくださって、スタッフもサポートにとても気合が入りました。

3月の中旬から下旬という、何かと行事も多く多忙な時期にも関わらずご参加くださっているメンバーの方々ですから、意識も意欲も高いに決まっていますよね。

色々とお話も伺いつつ作業は二次発酵まで順調に進み、焼きあがってからのお楽しみ、試食タイムです。
1回目よりも2回目、確実にキレイになっていました。


朝、メンバーの皆さんが少し多めに水分を入れてみた生地は、作業の合間を縫ってシェフがササッとリカバリ。
魔法のように、サササーっと生地をまとめ、ホワワっとチーズが振りかけられ、パパっと砂糖が振りかけられて、あらっ不思議。まるで予めプログラムにあったかのような、生地のバリエーションパンがいつの間にか焼きあがっていました。
メンバーの皆さんの「チャレンジ」によって、思わぬ形でシェフによるアレンジパンを食べることができました。ですが、3日目の本番は失敗禁物です!

計量時に一番失敗が多いという点を踏まえ、慌てがちになる3日目の作業で失敗しないように、2日目の最後で3日目分の準備出来る材料は計量しておくことにしました。全員で居残りして材料を準備していくのですが、いきなり「この粉の袋に塩入れた?」とか「砂糖入れたかどうか忘れてしまった」とか、意外と怪しい展開に…。やはり準備は大切ですよね。


11人分のアンパン用に66個アンコを丸める作業は中々大変だと思っていましたが、途中で手分けするとあっという間に終わる。チームワークは偉大ですね。
さて、計量終了、御片付も終わり、2日目も解散となりました。大きなミスはあったものの、初日より確実に美味しいパンが出来ているとシェフもよいコメントをくださいました。明日の本番は皆さん頑張ってくださいね!

3日目につづく

取材・編集:阪口理恵

2017年3月17日(金)

「シニア世代の男性がパン職人に学び、本気でパンを作ったら?」そんな思いつきから生まれた企画「男・本気のパン教室」。
今回で3回目をむかえることとなったこの企画は、北区のしあわせの村内にあるシルバーカレッジを会場に、カレッジ在学中の9名(総合芸術コース(食文化専攻):5名、健康福祉コース:4名)の方々にご参加頂き、パンじぃ(パン作りをするシニア男性)を体験してみようという総勢10名で2017年3月17日、23日、24日の3日間で実施しました。

スケジュール
1日目:3/17 9:30より14:00頃まで
メンバー顔合わせ。
シェフのデモンストレーションを挟みつつ一通り作業を実施して全体の流れを掴む→手順と問題点確認&試食
2日目:3/23 9:30より13:00頃まで
各自の復習や振り返りを踏まえて、本番を想定して手順を再確認、各自焼き上げ→本番へ向け段取り確認&試食
3日目:3/24 9:00より14:00頃まで
本番。2日目までの倍の量を各自焼き上げ、試食&振り返りの時間を挟んで、パンを袋詰め→施設へお届け


初回から本番まで1週間、回数も3回と短期集中型のプログラム。参加メンバーの皆さんが料理に不慣れな方ではないことを踏まえた少し実験的な試みとなりました。
シルバーカレッジのコンセプトは、「高齢者の豊かな経験を活かして自らの可能性を拓き、その成果を社会に還元することをめざして学びあう、生涯学習の場」とのことで、まさにパンじぃの当初からのコンセプトとぴったりということで双方向に響き合うものがあり、今回のシルバーカレッジでの実施となりました。

そんなパンじぃ3期生の講師を、神戸のご出身で、今は大阪で大人気のブランジェリー、PAINDUCE(パンデュース)を率いる米山雅彦シェフにお願いしました。シェフにはこれまでもKIITOと数々のプログラムでご一緒頂いています。
数え切れない程のイベントやレッスンをこなしてこられた米山シェフにとっても、今回のように参加者が男性のみ、しかもご自身のお父様ほどの年代の方が対象のレッスンは初めてかも…、とのことで、参加する側も運営側もみんなそれぞれにドキドキしつつ初日を迎えることとなりました。

まずはスタッフ現場入り、カレッジ側の担当の方々とシェフと一緒に、3期メンバーを迎える前の簡単に全体スケジュールや手順などの打合せを行いました。
今回のパンじぃメンバーのためにシェフが考えてくださったのは「パン・オ・レ(「牛乳のパン」という意味)」で、その生地をベースに、プレーンな丸パンと、アンパンの2種類を作ります。
初心者でも扱いやすいようにと、少し水分量を控えた配合の生地になるようレシピも考えてくださっていて、シェフの気遣いと「きっちりと焼いてもらうぞ」という気合いが感じられました。

材料と道具や段取りを確認していると、ポツリポツリと3期生メンバーの方が入ってこられました。
てきぱきとエプロンと三角巾を着け、荷物をまとめてから姿勢良く着席される待ち姿に「ああここは学校、そうここは調理室」とスタッフも実感し、こちらも頑張らねばと気合が入りました。


さて、プログラムいよいよ開始です。まずスタッフ側から今回の趣旨と3日間の大まかなスケジュールを説明したあと、米山シェフから簡単に自己紹介頂いて、その後作業の説明とデモンストレーションへ進みました。
米山シェフが、強力粉、薄力粉、中力粉といった粉の種類や特性、使い方といった材料の話、パンが膨らむ仕組み、計量の仕方など、何故そうするのかという理論を分かりやすく解説してくださるので、お話に引き込まれメンバーの皆さんの目が好奇心でキラキラと光ってくるのが分かりました。途中で分からないところは的確に質問されている姿も印象的でした。

さて、米山シェフのデモと解説も終わり、いよいよ各自で作業に入りました。
まずは基本となる材料の計量から。粉類の計量は順調でしたが、問題は次の段階にありました。レシピの中に「卵と牛乳を合わせてxxグラム」とあり、まず秤の上に置いたボールに卵を割り入れ、そのままで次に牛乳を入れて、その合計で規定量にするという作業でした。シェフから何度も「順番に注意して」と指導があった部分で、みんな説明を聞きつつ大きく頷いていたはずなのですが、作業を始めると卵より先に牛乳をボールに入れてしまう人、卵割って入れてから秤をリセットしてしまう人と、間違える人が続出し、シェフもスタッフも慌ててフォローに回ることになりました。なんとか修正をして、材料が全部ボールに入り、それぞれ黙々と混ぜはじめました。

その間に皆さんにお話しを伺って回りました。両コースの参加者の中でパンは作ったことがないという方にご参加頂いたようですが、中には「うどんは打ったことがある」という方がおられました。ほぼ初心者とはいいつつ、皆さん普段から調理実習慣れしておられるので、最初は粉と牛乳が混ざったドロドロを見て「こんなのでちゃんとパンになるのか?」という顔付きで作業されていても、段々と手応えを感じてくると、「うん、いける」とキリッとした表情に変わっていくのがとても印象的でした。
ボールの中の生地が軽くまとまってきたら、台に出してリズミカルに捏ね、表面が滑らかになってきたら台に叩き伸ばしてコシを付ける作業となります。皆さん「こんな感じ?」と合間にシェフに確認しつつ、よいしょっとアチコチから楽しそうな掛け声が聞こえてきて、順調に生地が捏ねあがっていきました。

捏ねあがった生地が一次発酵タイムに入っている間に、シェフによる次の工程の分割&成形のデモンストレーションのため前方の台に一旦集合しました。生地の表裏の注意ポイントを説明しつつ、手際よく生地を分割していかれるシェフの手元を見て、メンバーから思わず「上手やな~」の声があがりました。シェフもそれを聞いて「パン屋になろうかな?」と笑顔で返されて、リラックスした良い雰囲気でデモが進んでいきました。分割が終わって、次に生地を軽く丸めます。シェフが左手のひらに置いた寄せ集めの生地に右手を被せてクルクルクル、パっと手を除けたら、そこにはツルンとまん丸な生地が乗っていました。それを見たメンバー全員思わず「お~」と、まるでマジックショーのような驚きぶり。もう一回もう一回とシェフに繰り返して頂きつつ、皆さん手元を食い入るように見つめて、何とかコツをつかもうと必死でした。米山シェフとしても、この生地の丸めは基本中の基本だけどとても大事な作業だからと念入りに指導いただきました。

そうしていると、一次発酵が終わるタイミング。合間にシェフから生地の計量の仕方などのチェックが入りながら分割が終わり、皆さん初めての成形に四苦八苦されていました。中々思うようにキレイに丸まらず、実習室を巡回するシェフを呼び止めてはみんな何度も質問し、夢中になっておられました。集中力と熱気が調理室に満ちていました。


皆さんが何とか丸めた生地をベンチタイムで休ませている間に、シェフから次の最終成形のデモを見せて頂きました。丸パンは仕上げ用にさらにキレイに丸め、アンパンにアンを包む作業となります。皆さん先程一回自分たちで丸めを経験しているので、なるほどと大きく頷いている様子でした。解散後、実際各自で作業されているのを拝見すると、2回目の丸めは、初回より確実にピッとキレイになっていました。アンを包む時も、最初ちょっと手間取るものの「あんころ餅と同じやな~」とすぐにキレイに包めるようになっていきました。

二次発酵をしている間に、最後に溶き卵を表面に塗る作業のデモを見せて頂き、溶き卵を塗る訳、塗るのと塗らないのと仕上がり具合の違いなどの説明では、メンバーの皆さんから「パン屋さんの店先でパンを見る時の見方が変わるなぁ」との声が上がっていました。丸パンは卵を塗ってから上を十字にカット、アンパンは溶き卵を塗ってから、黒ゴマを上にパラリと乗せ、あとは焼き上げれば出来上がりです。デモの後の待ち時間の間は、皆さん黙々とレシピに注意点をメモ、手順の説明などをすごく丁寧に書き込んでおられました。

さて、いよいよ二次発酵終了。溶き卵を塗ればいよいよ焼成です。皆さんのパンは続々と仕上げられ、次々とオーブンへ入っていきました。焼きあがるまでの約7分間、オーブン前にそれぞれ集まって中の様子を覗き込んでいる姿を拝見していて、スタッフ側も思わずニコニコしてしまいました。
ピカピカつややかなパンがオーブンからお目見えしました。初回からでも美味しそうにツヤっとしたパンが焼き上がり、皆さんとっても満足そうな表情をされていました。さて、お待ちかねの試食タイム、焼きたてだし、自分で作ったパンだし、きっと美味しさも倍増だったことと思います。


計量や説明に比較的時間を取ったため、初日の終了が大分遅くなってしまいました。
次回はもう少し段取りよく進めるはずなので、問題点を見直しつつ本番へ向けて調子を上げて、全体にスピードアップしていかなければなりません。皆さん、一生懸命書いておられたメモで復習と振り返りしてくださいますように。

2日目につづく

取材・編集:阪口理恵

2016年2月8日(土)‐3月5日(日)

韓国大邱広域市と神戸市の親善交流事業として「the nanugi 分かち合いのデザイン展」を2/18-3/5まで、KIITO2FのギャラリーCで開催しました。


この「the nanugi」は、韓国語で「分かち合い」の意味をもちます。このプロジェクトは付加価値を創出できるブランディング、産学連携によるデザイン開発、技術教育を通した地域雇用の創出、そして資源循環を取り入れたゼロ・エミッション実現への貢献など、多くの側面で注目を集めています。
本展では、優れたデザインによる「the nanugi」商品の魅力だけでなく、生産のプロセスも紹介し、資源と能力を分かち合うことで持続可能な好循環を生み出す、社会におけるデザインの役割をパネルでも紹介しました。

「the nanugi」は地域の物的・人的資源を活用し、地域課題を解決する循環型のリサイクル・ビジネス・ネットワークである、アップサイクル・バレー構築を目指しています。
商品開発は、地域の繊維企業の生産と加工過程で余った素材を活用し、産学連携やデザイナーの協力でデザイン開発を行い、技術訓練をしたシニア層が生産を担当します。また、利益は雇用創出に還元するだけでなくチャリティ団体への寄付なども行っています。

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展示した商品は、ショルダーバッグやトートバッグ、ポーチ、財布など日常的に使用するものばかりです。トートバッグの素材はもともとブラインドに使用されていました。衣服に使われていた素材がペンケースやブランケットなどにデザインされ、生まれ変わっています。
「the nanugi」のシンボルである「チグハグファッションスリッパ」については、加工前の生地や加工されていく過程の素材も展示しました。

展示会場には、インスタレーションとして、実際に商品に使われている素材を活用した大きな行燈を制作、用途の異なる様々な素材の集合体として表現しました。

展示されていた商品の一部を、当館1Fメインエントランスに移設し展示していますので、ご関心をお持ちの方は是非ご覧ください。


「the nanugi 分かち合いデザイン展」開催概要はこちら

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