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2014/12/7

イベントレポート

+クリエイティブゼミ vol.12 まちづくり編 「これからの公園のあり方について考える。」 第2回 レポート

2014年12月2日(火)

「これからの公園のあり方について考える。 ~高齢化するニュータウンにおける公園を事例にして~」(公園ゼミ)の第2回目を開催しました。今回は、ゲスト講師・長濱伸貴さん(ランドスケープデザイナー・神戸芸術工科大学准教授)のレクチャーです。『「公園」という場所』をタイトルに、多数の資料画像を交えながらお話しいただきました。

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歴史(都市、ニュータウン、公園)
公園はわりと最近の発明品で、都市はその母体。紀元前にできた都市は、動物から身を守るために安全地帯を作ったこと(自然から人間が分離したこと)がはじまり。
技術の進歩によって、都市がどんどん発展・拡大していく(家族単位の安全地帯=家ができる/上に積み上げて高層化していく/教会、図書館などシェアするもの(パブリック)をつくっていく)。やがて、エネルギーや人口過密など都市問題が発生する。これを解決するのが都市の歴史になっており、公園が必要となる理由になった。
なお、中世では、広場はあることが資料などでわかる。

エベネーザー・ハワード(Ebenezer Howard、1850年生、イギリスの社会改良家)は、これまでの都市の作り方に危機感を持って、都市の便利さと田舎町のここちよさを足した「Town & Country」=ニュータウンを開発した人物。最も知られた例はレッチワース(Letchworth)。緑、公園、便利さを備えた街。
ときどき都心に遊びに行き、ニュータウン同士も結ばれているというモデル。例:西神ニュータウン、ワシントンDC, 田園調布。

公園はもともと王侯貴族の庭園を市民のために解放するところから始まる(例:ロンドンのハイドパーク)。レクリエーションなどに使っていた。作られた公園は、公害が深刻だった時期に、週末に来て、良い空気を吸って、リフレッシュするための場所として作られたのがはじまり。「都市の肺」と呼ばれる。

例:セントラルパーク(Central Park、ニューヨーク)
革新的な公園。フレデリック・ロー・オルムステッド(Frederick Law Olmsted、1822年生、アメリカの造園家、都市に公園を作る必要性を説き、国立公園の仕組みを作った)がデザイン。ハワードもオルムステッドも社会運動家でもあり、暮らし方の提案も含めたデザインをした。
最大の特徴は、その大きさ。不動産的にとても価値の高いところに敢えて巨大な公園を作ったからこそ都市が健全に発展し続けた。
もともとは岩ばかりの土地。岩も残しつつ木々を後から植えて、自然を作っていった。街は変化するが、木々はある時点で成長を安定させ、ずっとあり続け、見守っている←公園が要る大きな理由。緑の変化で季節感を作り、生物リズムを感じられるのが、健康につながる。

公園の現在
都市公園法に定められた「都市公園」という枠組みによる分類の中の最小単位は「街区公園(児童公園)」。近隣住区(=ほぼ小学校区と同一)という区分では、1000m四方をひとつの距離圏として考え、距離でデザインしていく。その中に4つ、街区公園を配置することになっている(=250m歩けば公園に辿りつける)。

例:ブライアントパーク(Bryant Park、ニューヨーク)
かつて麻薬取引の現場として有名だった公園を、デザインはいじらずに、使い方を変えて成功した例。
動かせる椅子を配置して、使う人が好きな場所に座ることができるようにした。「座らされている」のではなく、「自分が座っている」という感覚。オープンスペースで、多様性を許容し、集団でも個人でも楽しむことができる。
日本は座る場所がとても少ない国。管理の問題を気にしてしまい、公園面積に対して座る場所がすごく少ない。

例:なんばパークス(大阪)
屋上庭園を越えた屋上公園。劇場、カフェ、緑道、畑などがあり、森の中でいろいろなことが起こる。運用面で成功している例。きちんと手入れされ、良好な場所に保たれている。この場所が良くなると、人が多く訪れて、テナントの利益につながる。
公設公営は、税金が無くなったら手入れが行き届かなくなるという問題がある。公設民営、民設民営が未来の公園経営のヒント。

他の例:グリーンエイカーパーク(Greenacre Park、ニューヨーク)、エムシャーパーク(Emscher Park、ドイツ)、ハイライン(High Line、ニューヨーク)

1960年代から比較すると現在は、人口1人あたりの公園面積は5倍になっている。
リノベーションの方向性を考えるとき、少子高齢化に対応し、もう少し大人が使う公園にしていく必要があるのではないか。特に街区公園では。
「outdoor living(外の居間)」という考え方がある。公園のリノベーションのあり方のイメージに近い。日曜の朝、近所の老夫婦が、新聞とコーヒーとパンを持って近所の公園に朝ごはんを食べよう、と思えるような空間になるといい。自分が一人で行って、近所の人とちょっと会話するような。特別なしつらえも大きな空間もいらない。

公園は、街区公園であれば街の中の250mごとにあって、利用価値の高い(=「使える」)場所であり、まちの課題を解決できる可能性がある場所。「既存の公園を上手く活用する」「既存の公園を少しリノベする」「公園によって街を快適にする」、この3つの視点を参考にしながら、今回のゼミで公園をどう変えて行ったらいいかを考えてみてほしい。

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質疑応答
Q:子ども向けに作られてきた街区公園を、一番手のかからない方法でマイナーチェンジする方法はあるか(デザイン的な面で)、また、リノベーションの好例はあるか。
A:ローコストにやるなら、緑陰を作ったり、オープンスペース向けの既存の居場所ツール(テーブルセットなど)を持ち込むこと。カジュアルでいいから、庭先のような居場所を作るのが現実的で、効果も大きい。
今は、可動遊具を撤去し、砂場も衛生問題を考慮してやめる方向になっている。新しい公園を作るときも、あまり遊具は作らなくていい、樹木も最低限でいい、等、滞留空間を作ることを嫌いがちな、ややプアーな方向に向いている現状があるが、行政が条例の中でそのような方向性を許していく必要がある。今は、行政が一律管理しようとしている状態だが、行政だけの責任にせず、使い手側が話し合って方向性を決め、自分たちの場所として責任を引き取るぐらいの覚悟がないと、いい公園は生まれないかもしれない。ブライアントパークなどの事例を見ると、行政はサポートはしているが、運営は会社組織やNPOが支えている。街の意志があれば、行政も動いてくれると思う。住民同士の議論からはじまると思う。
日本には広場がない。ヨーロッパは広場があり、そこが今でも高齢者の居場所になっていて、機能している。その傍らに子ども向けのプレイグラウンドがある。街区公園は子どもやママのたまり場のようになっていて、なかなか入りにくい状況がある。おばあさんがマンションの植え込みのコンクリートブロックに座っている場面を見かけるたびに、なぜこんなところに座らなければいけないのか、この国は貧しいな、と思う。高齢者がただで座れる場所が、歴史的に言っても不足している。公園をそのような場所にしていくのがよいと思う。全く子どものためのエリアをなくすという意味ではなく、今の公園はすべてが子供向けというその均質性が問題で、年齢構成やライフスタイルが多様化した現代では、もう少し住み分け・柔軟性が必要。よって、今回のゼミでも一つだけ考えるのではなく、近くの街区公園、近隣公園の状況を考慮し、いくつかの設定をすることが重要。

Q:あまり利用されていない公園を見ると実は立地がよくなかったりする。都市公園法の中に立地条件についてのガイドラインのようなものはあるか?
A:比較的正方形にしなさい・4辺道路に面していなければいけない、という部分があり、いちばん厄介だと思っている。それ以外は認めないというのがすごく問題で、もう少し対象地の地形などに対応して、自由度をあげてもいいと思う。たとえば田舎町では、細長い公園を作った方が、避難経路になったり、飛び地同士のパスになったり、おばあさんが歩ける道になったりするのに、なかなか認められない。作るという観点からみると、そういった柔軟性があればいいと思う。

Q:ブライアントパークに行ったことがある。とてもすてきだったが、それぞれが思い思いに公園を使うような、自由な過ごし方は、日本人は性格的にやっていけるのだろうかと思った。
A:コペンハーゲンはかつて車社会で、気候風土の理由もあるが、屋外空間で座ってお茶したり、ということをしてこなかった。それが市の施策で、街から車を排除して歩きやすく、オープンカフェを作って、パブリックスペースを座りやすい場所にしたりして、ずっと歩いていても楽しい街に変わった。まちづくりのしかけで変えられるということが示された。
たしかに日本は、高温多湿という気候風土や、キレイ好きなところがあり、屋外はあまり使われていない。また、遠慮する国民性があるが、若い人たちはオープンスペースの使い方も上手になってきたように感じるので、少し遠慮を解いて、カジュアルに公園を楽しめるようなしかけが作れれば、十分変えられると思う。

Q:みなとのもり公園の緑化ボランティアをしている。ボランティア団体や利用者の住み分けの好例はあるか。また、公園経営の上手な方法があれば。
A:みなとのもり公園は、実はみんなが外でやりたかったことができていて、成功している珍しい例。住み分けの好例はなかなか聞かないが、誰かが解決しようとするのではなく、当事者同士が議論を尽くして解決させるのがよいと思う。
公園経営については、公設民営でやや商業的にやるか、スポンサー制度を検討することがひとつの流れだと思う。受益者の問題などもあるが、街区公園でいうと、地域が、基金を作るなどしてお金も含めて管理を引き取る方がよいのではないかと思う。


質問も多く出て、課題解決のヒントとなりそうな内容が多く、充実した時間となりました。残りの時間で、各班ごとにこの1週間での各自のリサーチ結果などを共有しました。

次回は、グループミーティングが中心の回です。今回のレクチャーや各自のリサーチ結果をもとに、発表に向けての素案を作っていきます。

+クリエイティブゼミ vol.12 まちづくり編 「これからの公園のあり方について考える。 ~高齢化するニュータウンにおける公園を事例にして~」
http://kiito.jp/schedule/seminar/article/10142/