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未来のかけらラボvol.11 トークセッション「問題と思われていることから新たなプロダクトを生み出していく。—エコロジー、エシック、日本の知恵」 レポート

2017年6月23日(金)

未来のかけらラボvol.11 トークセッション「問題と思われていることから新たなプロダクトを生み出していく。—エコロジー、エシック、日本の知恵」を開催しました。

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ゲストはファッションデザイナー/うるとらはまいデザイン事務所の浜井弘治さんです。タイトル通り、地域の「お荷物」になっているようなものを新しい製品や事業に変えていくような試みを精力的に展開されている方です。その興味深い活動について、具体的な事例を実際に作られた製品やスライドを交えてお話しいただきました。

八王子の繊維産地の幡屋さんにいて職人をやったり、三宅デザイン事務所に勤めたり、現場からハイファッションの世界までさまざまな経験のある浜井さん。現場では制作過程や職人たちの持っている技術を、デザイン事務所では、机上でなく現場で考える、というもの作りへの姿勢を学び取り、現在の活動へと活かしておられるとのことでした。ご紹介いただいた事例も、その視点やそこからのプロセスが興味深いものが多数でした。ご紹介いただいた事例から一部を紹介します。


残糸でTシャツを作る
-生地を作る時は少し多めに糸を作り、余った糸は少しの間保管するが、あとでお金を払って捨てる。これが問題になっていた。一方、ある軍手工場で作っていた手袋は、手袋が1点ずつ違っていた。色の取り合わせがカラフルで美しいのもあれば、気持ち悪いのもあった。これはファッションのすべてを体現しているようなものだと衝撃を受けた。
-そこで、軍手工場とTシャツを作ったが、ただ作っても全く売れなかったので工夫をした。残糸はあらゆる色があり、また、それなりの量があるから、ほとんどのことはできる。でも、それを2回やろうとすると職人が大変なことになるので、色の系統だけ振り分けて、これはないな、という色だけを落として作った。そうしたら売れ始めた。簡単だけど、その仕組みが重要。「こうでなければ」をデザイナーが求めすぎると、現場が大変なことになるから、許容範囲を決めて、あとはすべてOK、とする。
-大量生産は、全部同じものを作ることを強いられる。いわゆるB品と言われるものも、2回目3回目の生産でもB品があれば、それはもうB品ではない。そういう発想で、最初始めた。
-残糸を使うと、放っておいても大量生産の1点ものができる。選ぶ楽しみができる。1点ずつ違うと、取引上は不都合なことがある。ジャッジしているのは流通、売り場、もしくは問屋。ひょっとしてもの作りで足かせになっているのは、エンドユーザーではないのでは、業界内の製品規格をうまくとっぱらったら、いたってシンプルだけど変わったもの、が出てくるんじゃないかと途中で気が付いた。

-ハイブランドから生まれるものは、ものすごく造形力があって、ひとつの未来を提示していると思うけれども、Tシャツ一枚とか、いたって身近なものでも、なにかもっと未来を作り出すことができるんじゃないか、と。

-売り方も「工場見学」というインスタレーションを考え、実験的な試みをした。繊維産地にある機械を会場に持ち込んだ。糸から最終の製品になるまでの作る過程の映像を見せたり、時には機械を止めて工場の休憩時間としたり。飛ぶように売れ、受注もとった。そのとき共感してもらったのは、1点1点違うことの良さ。


和紙で服を作る
-ポリエステルは、肌着からアウターまですごく汎用性があり、昔から魅力的に思っていたもの。あるとき、和紙で作ってある江戸時代の雨合羽みたいなものに出会った。梅雨がある日本の雨合羽なんて相当すばらしいのでは、ポリエステルの開発は大きな会社でないとできないだろうけれど、和紙なら可能性があるのではと思った。
また、糸を撚る撚糸屋さんから、どんどん周りが廃業していて、世の中の人が誰もこの職業を知らないまま無くなっていくのが悲惨だ、そもそも糸を作っているが、最後何になっているかさえ知らない、という話を聞いた。撚糸屋の存在は、ファッション業界も、どうかすると繊維業界の人も、ほとんどの人が知らない。撚糸はすごい技術で、糸を思いきり撚るとシャリ感が出てドライな質感になるし、戻すとやわらかい質感になる。糸を撚ったときにはステテコ、戻したときにはタオルができる。その技術をつかさどっている。
それならうちが最後まで売るから一緒にやりましょう、と協働がはじまり、和紙の機能についてかなり話し合い、テストもした。和紙の重量は綿の3分の一、吸水性が10倍。日本の建具に和紙が使われているのは、季節によって水分を逃がしたり吸収したりするから。呼吸する繊維。洋服もここを目指すべきじゃないかと。
和紙を太古のものとかイメージとして求めたのではなくて、どうにかして未来の繊維にできないかと考えた。和紙の最大の欠点は、縦に伸びない、伸度がゼロに近いこと。弱いからではなくて、伸びないから切れる。和紙そのものは強いけど、伸びない限りは、編めも織れもしない。そこの工夫をした。

-和紙糸を編んでほしいと工場に持ち込んだら、いままでさんざんやってきたけれど編めたことがないと断られた。それでも頼んだら、この糸なら編めた、さらに、ほぼ同時期に大きな会社が同じ依頼をしてきたけど、そこの糸は編めなくて、あわよくば編めても、穴が開いてとてもじゃないけど繊維にはならなかった、とすごくやる気になってくれた。

-販売先に素材やデザイン提案をして、セレクトショップのなかのブランドでまず売ったり、また、機会があったので、原材料~和紙~糸~素材~最終製品になっていく過程を見せる展覧会をした。

-ファッションは、ショーでも雑誌でも、作る結果ばかりがあって、作る過程が存在していない。メンズ誌はどう作ったかのウンチクが書いていることがあるが、女性誌は特に。だから、作る過程を見せるようなファッションってありえないかなと考えた。

-作る過程に合わせて、ものづくりに伴うエピソードも合わせて紹介した。作る過程に対して持たれがちな暗いイメージをなるべく明るく、イメージだけでもかっこいいほうにと、マンガにしたり、工場のものをインスタレーションのように見せてみたりした。

-工場サイドから見せるようなファッションショーってないかな、と。あれはかたちを変えたファッションショーでもある。ファッションの中での新たなプレゼンテーションでもある。


ドクターデニム
-友人の医師からの依頼。まず自分の白衣を作ってほしい、それが良かったら一緒に売ろう、と。白衣は世の中にたくさんあって安いし、白衣の素材は、大手の合繊メーカーとライセンス契約の関係で、小さい企業はほぼ入手ができないから、最初は断ろうと思った。
ただ、友人の「これまでの白衣は、医師のためでなく、安価で丈夫で洗濯しやすいという病院の都合ではなかったか。何年も着られるけれど、まるで洗濯のために作ったような服だ。着ていても全然かっこよくもない」の言葉を聞いて、考えを変え、快諾した。
現場の声を聞き込むと、その中でおもしろいアイデアがたくさんあり、取り入れた。やたらポケットがあって、すべてに意味がある。デニムでやりたい、というのが彼からの提案でなにより不思議だったが、医師は24時間勤務があるので、快適であって肌になじむのがいいという理由だった。
-病院でも、医療保険制度への懸念から、将来予想される病院への格付けに向けて、院の独自性を打ち出すために、単に治療する場所でなく、デザインを重要事項とし、快適さを目指すところが出てきている。少ないけれどそういった病院からの注文が入って、希望を感じている。昨年、すごい数の大手が参入してきたけれども、みんな似たような白衣しかない状況。

裁落ジーンズ
-ジーンズの製造過程で出る残り生地(裁落)で作ったジーンズ。残り生地の組み合わせになるので、自然に大量生産の1点ものができる。デニムはロットの違いで味が違う生地がたくさんあるので、裁落は魅力的な素材で、けっこうおもしろい。

-このデニムはインスタレーションにして現代美術のギャラリーで展示した。欲しいという人もけっこう現れた。このころ(3年前くらい)はファストファッションがピークで、本当に市場やアパレルも、安いだけでいいのか、と言われ始め、急に匠だとか地方だとか言われ始めた。ひょっとしたらエンドユーザーも、こういった実験的なやり方を面白いと思ってくれる、同じ意識を持っているんじゃないかと考えていたところ、本数限定だけれどけっこう売れた。


竹素材の製品
-山口県は竹林面積が全国で3番目か4番目をいったりきたりしていて、竹林公害がある。竹林は放っておくと山を死滅させてしまう。いま山を管理する林業が衰退し、里山という概念が崩壊すると言われている。それを数年前に知り、県の農林課に状況を聞きに行くと、いろんな面白いことが分かった。ファッション製品にできないか相談されたが一足飛びにはかなり難しいので、ボタンを作ってみたら、思いもよらない結果が出てきた。原材料を分けてもらっている家具の会社は、竹を炭素化させることによって、強度がプラスチックの倍にする技術がある。そもそも山口県の竹は、除雪車の重要なパーツに萩の竹が使われていたり、日本一しなりが強くて丈夫だというデータもある。いまはボタンやバックルを作って、色を付けられないかテストしたり、新しい試みをしている。


後半の芹沢とのトークセッションでは、浜井さんのもの作りやアイデアの源泉や、現在の繊維産業についての思いなどがお聞きできました。

-興味があったらやっぱり現場に行ってみることにしている。行くと全然違う。その人が何やってるかわからない状態で出会って話をすると、実はこんなにすごいものを作っていた、ということがよくある。三宅デザイン事務所在籍時、三宅一生氏が、机の上でものを考えるな、みたいなことをよく言っていて、その影響も大きい。現場に行って、作る過程を見て、そこから考える。

-何かの原材料と出会って興味を持った時に、原材料から最終製品まですべてを見るようにする。特に現場に何かヒントがあると思う。たいていにおいて優秀な工場は、継続してやっているので、知恵みたいなものがある。たとえばデニムの工場は、今でこそデニムを作っているけども、その前は手織りの絣の工場で、絣のノウハウと、デニムを作るノウハウは似てる、と言う。そこに気づくと、次何を作ればいいのかが分かるような気がする。日本の知恵みたいなもの。
繊維産地はたくさんのノウハウを持っている。ところが、海外生産では、突然何もないところに作った工場では、最新式の機械と人が日本から行って安価な良いものができていくが、過去の文化がないので、本来の開発ができていくのかという点が心配。これは勝手な理想だけれど、アジアの中でもその地域ごとにおもしろい繊維技術はあるから、それを使って生産するなら意味もあるし、そういうものをうまく未来につなげた発信の仕方があれば、きっと未来に向かったものが生まれていくと思う。


未来のかけらラボvol.11 トークセッション「問題と思われていることから新たなプロダクトを生み出していく。—エコロジー、エシック、日本の知恵」
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2017.7.15

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