お知らせ・レポート

アート

2017年9月30日(土)~10月22日(日)

石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展)を開催しました。

radio

ストックホルムとパリを拠点にする作家が、2017年5-6月と9-10月に神戸を拠点にリサーチや行いました。その「成果」ではありませんが(※アーティスト・トークのレポートを参照)、期間中に行ったリサーチや、作家なりのKIITOの場所性・歴史の解釈などが織り込まれた「報告」としての展示です。

会場は、カフェの北側、中庭の北側、中庭南、と、固有の名前がなく、ふだん展示会場としては使われていない通路のような空間です。避難経路として空けていますが、利用者の動線には入らないので、ほぼ人が立ち入らない空間です。KIITOは、もともと生糸検査所として建てられた建物をリノベーションしているので、用途変更や改装の過程で、このような空間がいくつか生まれています。
それらの未活用空間が、展示ケースが置かれ、作品が配置されたことにより、見ごたえのある美術展の会場に変貌していました。展示什器も、生糸検査所時代の机やケースが用いられ、隣接するカフェとの親和性が高い展示になっていました。

左:《同じ青い空の下で Under the same blue sky (version 2016)》 2009- 、プロジェクト/ インスタレーション (写真、レーザープリントシール)、 《ルーツと異文化体験に関する思考のスケッチ》2017、オブジェクト/ インターベンション(世界各地の置物)、右:《同じ青い空の下で》(一部)

左:《星たちと月たちと太陽たちと(穏やかな世界) Stars, Moons and Suns (pacific world) 》2011/2016、インスタレーション(紙、オイルパステル)、右:《ポスト・カード プロジェクト Post-Card project》2007-、プロジェクト/ インスタレーション(ポストカード)

展示は、旧作から本展のために選ばれた数点と、「コレクティブ・アクト」の「おすそわけ」の資料(※同レポート参照)、本展で実現されなかったプランのスケッチ、作品のようなノート、随筆など、多岐にわたる内容で構成されていました。中庭南の窓に直接描かれたマインドマップのようなドローイングは、神戸でのリサーチが反映されている作品です。本展の展示設営期間中に描かれました。

右:《知恵とレシピのおすそわけ 『コレクティヴ・アクツ』『種の循環』『共生の儀式』『ゼロから』より》 2008-2014、プロジェクト(一部)

《ちいさな世界を辿ってみると》 2017、ドローイング/ インターベンション(マーカー)

本展は視覚的な作品展示以外にもさまざまな試みがなされていました。
会期中の週末に、KIITO CAFEとコラボレーションし、作家が友人から集めた世界各地の「おふくろの味」といえる煮込み料理を特別メニューとして提供しました。メニューはティガデゲナ、ムサカ、フェジョアーダ、バルシチ/ボルシチ。メニューを注文すると、そのメニューの解説や、レシピをくれた友人のこと、作家の随筆が書かれたカードがついてきます。


また、会場には、作家に代わって作品にまつわる物語を来場者に伝える「ストーリーテラー」が常駐し、来場者の都合に合わせた長さで作品の説明を行いました。ストーリーテラーの目印は、アフリカの布で作られたエプロンです。ストーリーテラーの橋渡しにより、「理解が深まった」と多くの来場者から好評を得ることができました。実験的な試みの多い本展でしたが、来場者一人一人に作品の物語や試みがもたらす気づきの種を届けることができたのではないかと思います。


写真:大島拓也(最後の2点を除く)

石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展) 開催概要

2017年10月21日(土)
「カレーライスを一から作る」先行上映+トークイベントを開催しました。

radio

元町映画館との連携企画として、「つながる食のデザイン展」の開催期間中に、同じ「食」を扱うドキュメンタリー映画「カレーライスを一から作る」を映画館での上映に先駆けてKIITOにて上映、さらに関野吉晴さんと前田亜紀監督、同時期に展覧会を開催する石塚まこさんの三者でトークを行いました。

映画は、武蔵野美術大学で行われた関野さんのゼミを追いかけたもの。コメも野菜も香辛料も、タネを入手するところから初めて一から育て、肉も鳥を飼育して屠るところまでを行い、文字通りカレーライスを「一から」作っています。回を重ねるごとにゼミの参加者が減ったり、鳥がうまく育たなかったり、育てるうちに屠りたくないと言う学生があらわれたり、とさまざまな壁にぶつかるようすが映像に収められており、いのちとは、食べることとは、を考えさせられる映画です。

KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家として展覧会を開催中だった石塚さんも、奇しくも当初は「カレー」が神戸での制作・リサーチのキーワードとして挙げられており、また、作品や、制作過程でつづられるノートの中にも、ものごとの起源や来歴へのまなざしを感じられることから、トークに登壇いただくことになりました。

radio

トークは、前田監督に進行いただき、映画のテーマや撮影前後のエピソード、教育の現状など、さまざまな話題に及びました。

映画ではいのちの話が大きなテーマとして受け取れますが、本来、関野さんのゼミは、いのちが主題だったわけではなく、一からものを作るといろいろな気づきがある、ということがテーマなのだそうです。開催年によって作るものも違うし、参加する学生によって展開も変わってくる。映画になった2年目のゼミで、たまたま屠りたくない、という人が出てきたので、「いのちになっちゃった」のだそうです。
前田監督は、すべてを撮り終えたときに、すごく心に残っていたのが、関野さんの「植物にだって命はある」という、命に対する定義を考えさせられる言葉で、それを一番大事にするように作ることを考えたとのこと。

関野さんに言わせれば、植物も、口の中の微生物も命。ゼミの中で彼らが嬉々としてやっていた、稲刈りやウコン・しょうがの収穫も、それらを殺すことなのに、動物を屠るときだけ、悲壮な顔をする。ほんとうにいのちを奪いたくないと思うなら、抗生物質も飲めない。たくさんの死の上になりたっている社会に生きているのに、そこまで思いが至らない。生態系全体を考えるようにしたい、と。認識が新たになるお話でした。

ゼミの本来のテーマ「ものを一から作る」に関して、関野さんは、みんな一からものを作るということをやっていない、と指摘します。ゼミが開講されている美術大学でも、彫刻科は木の伐採をしたことはないし、テキスタイルやファッションの科でも桑や蚕は育てたことがない。なんでもいいからひとつ、調べるだけでも、それを作ることで何が起こっているか、誰が利益を得ているか、社会が見えてくる。「一から」の過程で学ぶことは本当にたくさんあり、それを経験することで自分の引き出しが増えるのです。関野さんは、この映画は小中学生に観てほしい、このゼミ自体、ほんとうは小中学生がやるものだとよく話すそうです。
しかしながら、現在の日本の教育現場では、センシティブな親も多く、なかなか難しいようです。
学生も、どんどんセンシティブになっているようです。10年前なら「生を全うさせたい」という学生は出てこないだろう、と。
それには、前田監督が、しみじみ思う、と言う、私たちのいま生きている「きれいな、クリーンな」社会-スーパーではお肉もパックに入って、その来歴も、元の状態もわからない、その状態から始まっていると思っている人もいるような、「包み隠されている」状況、も影響しているように思えます。


来場者から、ゼミの学生たちの食生活に変化はあったのか、という質問がありました。食べるものの原材料をよく見るようになったのだそうです。よく知らない材料があまりにも入っているので、とジュースを飲まなくなった学生や、売っている鶏が何を食べているか分からないから、鶏が食べられなくなった学生がいるそうです。
また、関野ゼミ生は、最初はもちろん美術を志して来ているけれど、卒業すると、だいたい第一次産業-日本を底から支える仕事をしていることが多い、というお話が印象的でした。

映画上映は全国で続き、また小学生向けに書籍化もされています。ぜひ合わせてご覧ください。


『カレーライスを一から作る』先行上映+トークイベント(元町映画館 連携企画) 開催概要
『カレーライスを一から作る』 公式サイト
「つながる食のデザイン展」 開催概要
石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展) 開催概要

2017年9月29日(金)

KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家の石塚まこさんの展覧会「ちいさな世界を辿ってみると」のオープンに先駆けて、アーティスト・トークおよびオープニング・パーティを開催しました。

芹沢高志(デザイン・クリエイティブセンター神戸 センター長)が聞き手を務めたアーティスト・トークでは、石塚さんがどのように作品を構想しているのか、今回の展示についてなどをお話しいただきました。
以下、トーク内容を大まかにまとめました。
※まとめるために、話された言葉そのままを使っていない部分もあります。予めご了承ください。

radio

作品の3つの方向性
作品は大まかにいうと3つの方向に分類できる。
1.視覚美術。ドローイング、写真、ビデオや、目に見えるものを空間の中に配置するインスタレーションなど。
2.社会プロジェクト。2003年から住んだスウェーデンの社会に対する印象が、制作の発端のひとつといえる。スウェーデンは、社会福祉の充実などで知られるように、政府がしっかりシステムを作っているので、人と人がつながっていなくても生きられる社会。いいかえればシステムが支配的な社会で、人と人との距離がすごくあり、寂しく感じられた。それで、社会に対しての疑問を投げかけつつ、人と人をつなぐようなプロジェクトにつながっていった。
「コレクティブアクト」は、あるテーマのもとに、特定の人を集めて、討論してもらうというシリーズ。討論の場には食事が介在し、食をソーシャルメディアとして用いている。自由参加ではない。たとえば、2010年にスウェーデンを代表してブラジルに派遣されることになったとき、何を代表するかが分からなかったので、「サウナについて語って」「水のあると都市してのストックホルムを語って」といった、スウェーデンについてメディアのインタビューを受けたことがあるスウェーデン人を8人集めて、自分がスウェーデンについて語る時に、主題を選べるのであれば、どのように対外的にスウェーデンを見せたいか。どのようなステレオタイプに困惑するか。自分の中での思いを投げかけて、討論してもらった。
3.随筆。始まりは、2015年のアーティストブック『Collecting Distances』の出版。1996年からつけているスケッチブックのようなものや、制作の過程で使った画像など、作品の背景だけを集め、作品にまつわる小話のようなものを書いて収録した。テキストは英語という自分にとって自信のない言語で書いたが、多くの反響があった。2016年のアーツ前橋での展示を機会に日本語にしたが、そのときは辞書を何度も引かないといけないような状態で、自分の母国語であり、自信があると思っていた日本語からいかに離れているのかが分かった。また、辞書を引くと、言葉の定義について発見があったり、ひとつの言葉でも三つくらい意味が出てきて、そこから想像が始まり、頭の中での旅が始まったりして、おもしろい作業だった。いまは、言語を別の言語に変換するプロセスのあいだに抜けていく/消えていく/出てくるものに興味を持っている。これは、自分の中では始まったばかりの制作方法。

KIITOでの活動
KIITOでは、リサーチや、人と交わったりすることに時間を費やしていった。また、もともとの地元が神戸だったので、自分が今までたどってきた道を振り返るような時間もあった。日本にいたときの自分と海外との距離について考える時間にもなった。

KIITO招へいの話があった当時は、その国の食文化にはないのに「国民食」と呼ばれているカレーに興味を持っていた。スウェーデンではケバブやピザが日常食べるものにはなっているが、国民食ではない。
カレーの材料の原産地は南米やアジアだったり、その伝播は大航海時代の人の移動によるものだったりする。カレー一皿を作るのにどれだけの国が関わっているのかと考えると、カレー一皿がものすごく遠くまでつながっているんだな、と、カレーを根っこに調べはじめて、寄り道や脱線をしながら、自由にリサーチを続け、いろいろなところに思いを馳せた。たとえば北野では、さまざまな宗教施設を見たり、友達の家から竹中大工道具館に行く途中に神戸市文書館を見つけたり。でも、寄り道と思ったところでも、意外とカレーから派生した考えとつながっていくこともあった。それが窓のドローイングにあらわれているかもしれない。

KIITOでは通常、滞在制作の「成果」発表が求められているが、今回はプロセスを見せるような展示でもあり、成果という言葉がそぐわず「報告」展とした。
美術展というと、作家本人が行かなくても展示ができるような、場所性がそぎ落とされた白い空間が用意されているイメージもあるが、KIITOは歴史や人の居た跡がすごく感じられる空間なので、人に会って話をするときのように、そこの歴史や空間とどう対話するか、を意識して展示を制作していった。

今回は初めて、展示の中で、社会プロジェクトを来場者と共有する方法を考えた。プロジェクトに参加できなかった、と惜しい感じになるよりは、違う角度からそのプロジェクトを見られるように、コンセプトや行ったことの報告もしつつ、そのプロジェクトの中で見つけたものや、教えてもらった知恵を「おすそわけ」として展示した。


オープニング・パーティ
トークの後はオープニング・パーティを行いました。
KIITO CAFEの大きなテーブル(生糸検査所時代に使用されていた家具)を全員で囲み、ティガデゲナをいただきました。ティガデゲナは、牛肉をピーナッツバターで煮込んだもので、西アフリカ発祥の料理。本展の構成要素の一つとして、会期中の週末にKIITO CAFEにて提供された、4種の世界各地の煮込み料理のうちのひとつです。作家の軌跡と物語に寄り添うこれらのメニューは、作家が友人たちから集めたレシピをもとに作られました。
テーブルを囲んだ後は、おのおの展示を見たり、会話を楽しんだり、なごやかな時間を過ごしました。

radio


石塚まこ アーティスト・トーク&オープニング・パーティ 開催概要
石塚まこ「ちいさな世界を辿ってみると」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2017 報告展) 開催概要

kobest

2017年1月に開催した神戸スタディーズ#5「神戸港からの眺め」の成果物として、各回講師による、レクチャー内容を改めてまとめた原稿を収録した冊子を制作しました。
モデレーターの芹沢によるテキストや、資料図版、開催時の記録写真も収録しました。


PDFデータをこちらよりご覧いただけます。
冊子現物をご希望される方は、1階事務所までお気軽にお問い合わせください。


神戸スタディーズ#5「神戸港からの眺め」
開催概要はこちら

nagashima

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015-2016(招聘作家:長島有里枝)の成果物として、「縫うこと、着ること、語ること。」日記を発行いたしました。
本冊子で初公開となる滞在制作中の日記をはじめとして、成果発表展で発表した作品や展示風景写真も含んだ、96ページの冊子です。
(デザイン:有山達也+岩渕恵子、表紙および展示風景写真撮影:加納俊輔)

冊子現物をご希望される方は、KIITO1階事務所までお気軽にお問い合わせください。
本冊子はPDF公開はいたしませんが、遠方の方向けに、試験的に郵送対応を行います。ご希望の方は下記フォームよりお申し込みください。なお、数に限りがありますので、受付を終了することがあります。

2017.9 送料無料にて対応しておりましたが、着払いに変更いたします。下記よりお申込みください。
冊子送付申込フォーム↓
https://goo.gl/forms/nvvOIbF9JqcWKFgu1


KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015-2016 長島有里枝 成果発表展「縫うこと、着ること、語ること。」
開催概要レポート

higashikata

「KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016」(招聘作家:東方悠平)のドキュメントブックを発行いたしました。
ちびっこうべ2016」と並走してワークショップを行い、まちの中に出現させた「てんぐバックスカフェ」のドキュメントです。兵庫県立大学大学院准教授の竹田直樹氏による寄稿も掲載しています。
PDFデータをこちらよりご覧いただけます。 冊子現物をご希望される方は、1階事務所までお気軽にお問い合わせください。

2017年3月19日(日)~25日(土)

「セルフ・ビルド・ワークショップ 生意気とつくるKIITOの庭 ~なかにわなかま vol.4~」を開催しました。

新館と旧館の間、カフェとKIITOホールに挟まれた空間にある小さな中庭を、アーティストユニット・生意気とともに作っていく本ワークショップ、今回で4回目の開催となりました。

今回は、「いつ来てもOK」という条件で、約1週間の生意気ファミリー制作期間中を通して参加者を募りました。これまでも、生意気ファミリー自体は1週間程度の日数をかけて中庭づくりをしてきたのですが、参加者と一緒に制作するのは最後のほうの1,2日間のみでした。参加のしやすさなどを考慮してのことです。ただ、これまで開催してきたようすを見ると、彼らが制作する1週間の日々の中で自然に触れる、その生活・思考・制作スタイルに、面白みや学ぶべきものがたくさん詰まっているという側面もあるので、その日々をみなさんも一緒に体験してほしい、と考え、募集の形式を変更してみました。


今回は「アースオーブン」がトラックに載ってやってきました。小さいカマクラのような形で、土や砂など、どこにでもあるものだけで作られたオーブンです。オーブンの壁の厚みは25センチほど、火を起こしているときに外側を触ってもそれほど熱くありません。漆喰壁を作るような方法で作られているそうです。作るものに合わせて熱を出すのではなく、熱を無駄にせず、最初に薪を燃やして獲た熱を利用して、窯の中の温度変化に従って、その温度に合ったものを調理します。野菜たっぷりのピザを焼いて、ピザの残り生地で明日の朝食のパンを焼いて、、、と、食べ物でも無駄がありません。

期間中は、古びてきた竹のタワーを解体して、新しい竹と組み合わせてテラスを制作したり、ブドウのつるの枯れた部分を取り除き、3年の月日で栄養不足になった土と、新しい土を混ぜたり、花が咲く植物や、実のなる植物をたくさん、植えたり、種を蒔いたりしました。古びた竹はアースオーブンの燃料にします。



「あるもんで」を合言葉に、センターの中にある「いらないもの」を探すツアーも行いました。年間を通してさまざまなイベントを行うので、その時に使った木材などが各種見つかり、探検のような楽しいツアーでした。
途中、雨が降ってアースオーブンに少しヒビが入りましたが、泥を塗って埋めて、簡単に補修ができました。


1週間の共同制作を経て、中庭には多角形の竹テラスが誕生しました。テーブルを囲んで座れる竹ベンチができたので、ここで休憩したり、ランチタイムが楽しめそうです。蔓状の植物用にネットが張られたので、夏には植物のカーテンになるでしょう。庇があるところにベンチも設置しました。


最終日は例年のごとく、人を迎えて、きれいになった庭を一緒に楽しむパーティを開催しました。手持ちのものにシルクスクリーンをするワークショップも同時開催。また、画材を持参して、テラスの中で写生をしている中高生くらいの参加者も。思い思いに中庭を楽しみます。ゲストにIMORI, Oni, Ma Cerise, Dochi Michiなど、生意気ファミリーと縁の深いミュージシャンたちを招いて、ライブを行いました。Everybody "E" bandという、みんながミュージシャンになるバンドによる演奏も!中庭の空間に響き渡る音楽はとても心地よいものでした。




期間中、講師と生徒として、教える・教わる、という関係でなく、一緒に生活するように、ものづくりに取り組んだり、思い思いの時間を過ごしたり、食事をしたりすることで、彼らの姿勢に触れることができました。
駐車場にトラックを停め、竹テントを据えて煮炊きをしたり、野菜を買うのに淡路島の八百屋さんに来てもらったり、アーティスト・ユニットなのに植物の植え替え??など、ちょっと聞くと驚くような要素の多い彼らですが、「普通」の生活と思っていたことを成り立たせるために、さまざまな無駄や抑圧があるようだ、彼らの、誰かや何かに負荷をかけず、自分たちで作って物事を楽しむ暮らし方って面白いかも、と、少しでも感じてもらえていればと思います。


「セルフ・ビルド・ワークショップ 生意気とつくるKIITOの庭~なかにわなかまvol.4~」
開催概要はこちら

2016年10月14日(金)

ちびっこうべの子どものまちの中に作られた「てんぐバックスカフェ」を会場に、キュレーター/鳥取県立博物館主任学芸員の赤井あずみさんをお招きして、KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家の東方悠平さんのトークイベントを開催しました。



当日は、赤井さんの「ホスピテイル」のコンセプトとこれまでの活動紹介・これからの展望や、東方さんの、今回KIITOで行った子どもたちとのプロジェクトにつながる過去作品の紹介など、充実したお話しをお伺いできました。レポートでは、それらの活動紹介を踏まえた後半の対談部分の一部を紹介します。



役割からはみ出させる
東方:ホスピテイルは、アートに関係のない人たちが関わってくる状況がおもしろいと思います。また、本を読みに行ったり、庭いじりに行ったり、鑑賞する以外のレイヤーがたくさん開かれていますよね。こういう場所で、介入、出会い、関わりがあると、思ってもみないようなことが生まれるんじゃないかと思いました。

赤井:赤井:美術館のような場所では役割が分かれていて、なかなか線が超えられない。まちの中のプロジェクトは、フラットに人と出会えることがいいと思っています。
いくつかのレイヤーをつくることは、意識してやっているところです。それらが互いに浸透しあう場所になると面白いですよね。現代美術というとシャッターを閉じられてしまうのは、地方に限ったことではなくて、例えば東京で展覧会のオープニングパーティに行っても、けっきょく来る人がいつも一緒だったりする。誰に向けてやってるんだろう?と思ってしまう。それに比べたら、可能性があるのではないかと思います。

東方:美術館は、鑑賞者もお客さんとして行くから、鑑賞が能動的になりにくいという側面があると思います。役割が分割されていると、なかなかそこからはみ出てこない。自分のことや、その役割だけで忙しくていっぱいになってしまいますよね。

うっかり感
赤井:「うっかり感」って大事ですよね。仕組みづくりとはまた違いますが、うっかり出会って、はまっちゃうようなことが起こりやすい状況がプロジェクトの醍醐味ですし、それが可能となるコミュニティのサイズってあると思うんです。
ちびっこうべやユメミセは、仕組みがしっかりデザインされているようですが、てんぐバックスカフェは逆に、東方さんが一応仕組みを考えてはいるけど、どんどん変わっていくのが、すごくおもしろいなと思いました。その方が自然だし、実際の社会と近くて、自分で考えて変えていけるんだ、って気づいたりできますよね。

東方:子どもがダンスの練習に飽きてきた時に、ワークショップ会場に出しっぱなしだった道具を使って、「てんぐ銃」というのを勝手に作りだして。天狗の長い鼻が銃身に見立てられていて、先から玉が出るんです。本番ではそれを使ってイベントを勝手にやりだして、はじめに予定していたダンスショー以外のものが自然発生的に発展していきました。

赤井:子どもに対して、こういうことがやりたい、という思いは何かあるんですか?

東方:ナンセンスなルールを課して、一定の制限下から出てくる思いもよらない発想をさせたいという気持ちはあります。自由に何でもいいよって言われると、むしろどこかで見たり聞いたりしたものに寄ってしまうんですよね。あまりにナンセンス過ぎると無理やりやらせる体育会系の部活経験による気づきみたいなものに寄っていってしまうんですが。だから子どもが自発的に、なんだかわからないけど夢中になってしまう、やり込んでしまう、考えてしまう、みたいな状況を作り出したいと思っています。

赤井:子どもがどこまでわかっているかわからないですけど、ここまで13人が付き合ってくれているのがすごいですよね。
東方:自発的にと言うよりは、僕につきあってくれている感はたしかにありますね。
赤井:途中で来なくなってもおかしくないじゃないですか。笑
答えのない体験をするっていうのがいいと思います。


※この内容は、成果冊子にも収録しております。現物をご希望の方は、1階事務所までお越しください。PDFはこちら


てんぐバックスカフェから考える 「まち」に介入するアートの可能性(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016)
開催概要はこちら

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016招聘作家・東方悠平さんによる「てんぐバックスカフェをつくろう!!」の、追加ワークショップから、まちオープン日までをレポートします。


2016年10月1日(土)、2日(日)

8月に造形ワークショップ、9月にダンスワークショップを行ってきた本プログラム。9月のワークショップ終了時点で、もう少し練習や作業が必要かと判断し、10月1日、2日に追加ワークショップを行いました。2日とも、ダンス練習と造形物制作を半々で行いました。
通常のてんぐダンスは1回につき3~4人が踊るものになりますが、10月8日のオープニングイベントと、15日だけ、「てんぐダンスショーDX」と題し、まちの中央に設置された大きなステージで子ども13人全員が一緒に踊る、まさにデラックスなダンスショーが予定されているので、大きなステージとカフェ内のステージ、両方でリハーサルを行いました。


この日、ほぼ設営が終わった状況のユメミセや、てんぐバックスカフェをはじめて見る子どもたち。興味津々にいろいろなところを見て回っていました。
追加の造形物制作では、大きな紙を広げて、てんぐの絵を描きました。カフェの壁やテーブルに設置するものです。大きな紙に自由に絵を描くという体験が、なかなか普段はできないことのようで、はじめは恐る恐るでも、とても楽しそうに描いていました。

10月8日(土)
ちびっこうべオープニングイベントの日です。ここで、全員で「てんぐダンスショーDX」を披露しました。
ステージの両脇には、サーキュレーターで膨らんだバルーンてんぐをすでに設置済み。観客の期待をあおります。
登場にも演出がありました。自分で作ったてんぐのお面とエプロンをつけ、お神輿を担いでステージ上にあがります。数人はホイッスルを吹きながら。
お神輿はスチールのフレームに、バルーンてんぐが載っています。

撮影:辻本しんこ 撮影:辻本しんこ

撮影:辻本しんこ

お神輿をステージ中央の後ろに置き、代表者として参加者の一人、たっくんが堂々とご挨拶。その後、音楽がスタート。2分半ほどのダンスが披露されました。
音楽は東方さんがネット上で探したフリー素材のもので、音楽に合わせて東方さんが振付を考えました。振付するのは初めてのことだそう。カフェミュージックのような軽妙な音楽に、カフェでドリンクを注文し、サーブするときをイメージした動きや、真似したくなる顔フリフリ、リズミカルな手拍子、足拍子などが組み合わされ、なかなか中毒性のある独特なダンスです。そこに、明滅する照明がドラマチックさを付加させていました。
最後にももう一人、ゆさちゃんがかわいい挨拶をしてくれて、無事、オープニングイベントを盛り上げるというお役目を終えました。


10月9日(日)、10日(月祝)、15日(土)、16日(日)
まちがオープンする4日間です。練習してきたダンスのほかに、カフェでのドリンク提供や両替、入国ゲートの仕事に取り組みました。また、この4日間は、ダンス以外の部分を、当日参加の子どもたちと半々で一緒に仕事をしました。

●オリジナルメンバーの仕事
・ダンサー:ステージでダンスを踊る
・カフェ:てんぐドリンク(4種)を販売
・両替:「キート」(子どものまちの通貨)と「てんぐ」(てんぐバックスカフェ内だけで使える通貨)の紙幣を両替する
・出入国:てんぐバックスカフェに入国する人にパスポート(似顔絵を描ける枠付き)を発行、出入国スタンプを押す



撮影:森本奈津美
撮影:衣笠名津美 撮影:衣笠名津美
撮影:辻本しんこ 撮影:辻本しんこ

●当日参加する子どもたちの仕事
・カフェ、両替、出入国:オリジナルメンバーと同じ
・バックミュージシャン:てんぐダンスの音楽にのせて楽器を演奏して盛り上げる
・PA:てんぐダンスの音楽を再生し、ダンス中の照明を操作する
・コースターづくり:カフェのお客さんにコースターづくり体験を提供する
・幕間のパフォーマー:ダンスの合間に自分の得意芸を見せる

撮影:中村寛史 撮影:辻本しんこ


カフェで販売したドリンクは4種類。
・てんぐのなみだ(緑茶) 10~15てんぐ
・てんぐのちしお(ローズヒップティー) 10~15てんぐ
・てんぐのはつこい(レモネード) 10~15てんぐ
・てんぐのゆ(白湯) 1てんぐ

撮影:衣笠名津美 撮影:辻本しんこ


カフェの空間は、ワークショップで子どもたちが作った造形物を活用しながら、東方さん自身が作ったものも加えて、東方さんが構成しました。巨大なバルーンてんぐ、農業用の大きな黒ビニールで覆って作られた壁、クラフト紙に大書したTENGUBUCKS CAFEの字やロゴと、子どもたちの個性あるてんぐの絵が組み合わさっています。
まちオープン日までに、パイプや発泡スチロールの筒、プラダンの折れ目、ロートなどを、流水が絶妙なバランスで通過して、循環していく装置がカフェの中央に作り上げられていました。
照明を減らして全体的に薄暗い空間になっていて、ダンス公演時の照明が映えます。そこに、クッションとローテーブルが点在しています。

撮影:衣笠名津美 撮影:辻本しんこ
撮影:辻本しんこ 撮影:辻本しんこ


4日間のあいだは、大人の想定通りでなく、子どもの動きやアイデアによって変えた・変わったこと、独自に生まれたことが多くありました。

出入国:入国時に「入国税」を徴収する予定でしたが、特に最初の方はみんなお金を持っていないためにカフェに入ってくれず、税を撤廃し、無料に。
ダンス:時間を決めて、定期的に公演を行う予定でしたが、お客さんの入り状況を見てフレキシブルにはじめることにしました。結果、大人が来場する「ちびっこ観光ツアー」が来るタイミングに合わせることが多くなりました。
両替:レートを頻繁に変動させる予定でしたが、両替のシステムが理解されにくく、1キート=10てんぐのまましばらく続きました。
カフェ:ホットのみ提供の予定でしたが、コールドの要望が多く、いつのまにかコールドメニューが生まれていました。
バックミュージシャン:段ボールドラムやプラカップマラカスはダンスを大きく盛り上げてくれました。後半はオリジナルマラカスを作ることから始めて、充実感倍増。
幕間のパフォーマー:十八番を持っている出たがりな子どもの出現を期待していましたが、初日に、男女でノリノリのコントを披露してくれた奇跡のコンビ以外は、シャイな子どもたちが多く、この仕事は廃業に。

撮影:衣笠名津美
撮影:中村寛史 撮影:中村寛史

てんぐ銃:てんぐの鼻(=銃)から出る玉をキャッチしたら、素敵な特典がもらえる!というイベントを子どもが独自で考案。銃と玉を段ボールで自作して幕間に開催し、奪い合いになりそうなほど大人気でした。特典は、てんぐドリンク一杯無料や半額割引など。
おばけ屋敷:カフェと外のエリアを分かつ可動壁に、機材を収納する扉付きのスペースがあることを発見した子どもが、ここでお化け屋敷を開催することを考案。配線を自分たちで勝手にやり、宣伝活動も熱心に展開し、多数の集客に成功。おばけ屋敷目当てに入国する子どもも多かったです。壁の隙間にカフェをしのぐ行列ができていました。稼ぎも多かった様子。
クジ引き:おばけ屋敷が大枚を稼いでいることに触発された子どもがクジ引きを考案。箱とクジを自作し、大当たり~ハズレまでを設定。これもそれなりのお客さんを得られたようです。

4日間とも、一日の後半に向かうにつれて、お客さんが増えて大忙しの状態でした。
事前ワークショップでは、恥ずかしがったり、集中力が途切れて、なかなかダンスを最後まで踊ることのなかった子どもたちですが、本番となると、お客さんに来てほしい、という思いや、オリジナルメンバーとしてのプライドが働くのか、大きな声でお客さんを呼び込み、ダンスをこなし、独自のイベントまで起こす、というアクティブさを見せてくれました。


15日に行われた2度目の「てんぐダンスショーDX」は、子どものまちオープン真っ最中のため、ステージの周りを本当にたくさんの観客が取り囲んだ状態に。華々しい舞台でした。

撮影:辻本しんこ

撮影:森本奈津美 撮影:森本奈津美


ちびっこうべのまちに今までになかった、まったく異質な要素としての存在感を強烈に放ったてんぐバックスカフェ。東方さんは、ちびっこうべが、すでにシステムができあがっていてきっちり作られているように感じたそうです。そこで、それと対比させられるようなものを作って、まちの中に介入し、影響を及ぼしていくようなものを作っては、という着想から今回のプロジェクトが練り上げられていきました。
今回、ちびっこうべをさらに複雑にさせるこの異質な環境を訝り、浸り、遊ぶ、百人百様の子どもたちが見られました。また、笑い、不条理・ナンセンス、といった東方さんが作品制作において注目しているテーマを、まったく自然に取り込んで、独自に展開させてくれていたようにも感じられました。
今回の体験が、子どもたちの中でじわじわと育まれ、新しい気づきや創造に向かう、何かの大きい力となるかもしれません。それが見られるかもしれない未来に期待させられてしまうプログラムでした。

プログラムはすべて終了しましたが、記録冊子を制作予定です。引き続き楽しみにしておいていただけたら幸いです。


撮影:衣笠名津美、辻本しんこ、中村寛史、森本奈津美

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016 東方悠平 てんぐバックスカフェをつくろう!! 開催概要
「ちびっこうべ2016」 特設サイト
★特設サイト内に、東方さんによる、滞在中やワークショップ時のこぼれ話を掲載しています #てんぐバックスカフェ

2016年9月18日(日)、22日(木祝)

SONY DSC

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016招聘作家・東方悠平さんによる「てんぐバックスカフェをつくろう!!」ワークショップの、ダンスワークショップの回を開催しました。

前回の造形ワークショップでは、カフェの内装に使う造形物や、ダンスの衣装となるお面やエプロンを作りました。
今回はオープニングイベントやカフェの中で披露する「てんぐダンス」を練習します。ダンスは東方さんによる振付です。

9月18日
まずはラジオ体操、人間知恵の輪ゲームを行いました。
前回のワークショップから約1か月がたち、髪型が変わったり、ちょっと成長して見える子どもたち。「ちょっと知ってる人に久しぶりに会う」このシチュエーションに子どもたちが少し緊張して人見知りしてるようすを東方さんは感知し、(子どもたちの緊張が)うつって緊張してきた、と笑っていました。みんな、体操やゲームで体と緊張がほぐれたでしょうか。

そのあと、ダンスの中で、それぞれがオリジナルのキメポーズをとるパート用に、一人ずつポーズを考えて決めました。
また、3人組で行う振りのため、3~4人組に分かれました。分かれると、「チーム名を決めたい」と子どもから提案があり、チーム名を決定。「チワワ」「カラーズ」「HMYR」「きのこブラザーズ」という個性が際立つネーミングになりました。

SONY DSC

この日は基本的に、パートごとに練習。お客さんと店員のやりとりをイメージした振りの部分は「コーヒー」「できました」「はいどうぞ」などと言葉を交えてストーリーで覚えられるように工夫しました。




9月22日
最初に参考資料として、東方さんが集めている、日本の各地で行われる天狗が登場する祭礼や踊りを少し見てみました。「てんぐダンス」に似た踊りの動きがある地方も!

SONY DSC

東方さんが通しで踊った様子を記録したお手本動画を見せつつ、通しで練習。
何回か踊った後に、すでに1階ホールに完成している、オープニングイベント用のステージに立ってテストで踊ってみました。
全員が並ぶとステージがいっぱいになってしまったので、フォーメーションを再検討する必要がありそうです。

SONY DSC

練習しながら、造形ワークショップで作った旗がお気に入りで、旗を振る役を望む子どもがいたので旗振りのパートを作ったり、造形物の素材として置いていた棒を華麗に操るので、聞くとバトンを習っているというのでバトン役を作ったり、ワークショップ中に、子どもに合わせたダンスのアレンジも行われました。

何度も踊って、チェックして、を繰り返し、3時間のワークショップの中で、集中力も途切れそうになるのを、ハンカチ落としや休憩で補いながら、2日間を乗り越えました。
振りはどうにかみんな覚えたようですが、全員で合わせたり、立ち位置を守ったりするのにもう少し練習が必要そうです。


まだ追加ワークショップがありますが、本番も近づいてきています。
観客のみなさんにすてきな「てんぐダンス」を披露することはできるでしょうか?



撮影:坂下丈太郎(9月22日分およびinstagramを除く)

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016 東方悠平 てんぐバックスカフェをつくろう!! 開催概要
「ちびっこうべ2016」 特設サイト
★てんぐバックスカフェのほか、「ちびっこうべ2016」ワークショップのようすをinstagramで公開中! @chibikkobe

ページの先頭へ戻る