ACTION PLAN1
「職」のあとに、 つながりをつくるのは 「食」でした
男性は、人とのつながりが、仕事を介した人とのものに偏りがち。地域の人同士や同じ趣味を持つ人同士での接点をつくる機会の少ないことが、男性高齢者の課題であったと思います。
そこで生まれたのが、「男・本気のパン教室」。「高齢者世代の男性がパン職人に学び、本気でパンをつくったら?」というアイデアを発端として、パンづくりを学ぶことを通して高齢者男性同士のつながりをつくり、パンづくりの技術で地域の人や家族を喜ばせる活動をしよう、というものです。これまで3期にわたる教室を開講してきました。
教室としては、全6回程度。チラシやウェブサイトをつうじて受講生を募集し、抽選で6名が「パンじぃ」として活動を開始します。
初回では趣旨や成果発表までのプロセス説明、自己紹介などを行いました。
2回目以降はパン職人の方を講師に指導をしてもらいながら、厨房で実際にパンづくりを行います。
講師のいない「自主練」の回もあり、パンじぃ同士で力を合わせ、教わったことを咀嚼しながら技術を上達させていきました。
最終回では、成果発表としてイベントを。パンじぃたちがつくったパンをカフェイベントで提供し、様々な人に食べてもらいました。
講座が終わっても、パンじぃとしての活動は終わらない。反省会をしたり、新メニューへの挑戦をしたりして、それぞれの新たなパンづくりの楽しみを見つけています。
point1
仕事の引退後、高齢者男性にはハードルが高かった地域活動への参加。しかし逆に、参加者全員が同じスタートラインから協力し合えるチャンスでもありました。
「パンの街」と言われる神戸で、自分たちが普段馴染みあるパンをつくる。しかも講師は有名店の現役パン職人と心強い。
家ではまったく料理等の経験がなかった受講生たちも積極的に取り組み、結束力も強いチームとしてスタートすることができました。
point2
この企画の大きなポイントは、ただパンづくりを習うだけにとどまらず、身につけたスキルで地域とのつながりをつくろうとしたことにもあります。
パンじぃたちのつくったパンは、最終回にカフェイベント(地域の施設など)で提供・販売。「美味しく食べてもらいたい」という気持ちで、みんながアイデアを出し合い、一つひとつのパンへ強いこだわりをもって活動していました。
1期パンづくり指導
・西川功晃さん
サ・マーシュ/オーナーシェフ
参加者はみんな生き生きしていて、エネルギーにも驚きました。掛け声をかけながら動いてくれたので、やりやすかったです。こどもと同じようにピュアな所がとても素敵ですね。
「パンじぃ」がどんどん地域に広がっていくことを願っています。
2期パンづくり指導
・壷井豪さん
ケルン/オーナーシェフ
世代を問わないコミュニティ形成に興味を持っていたので、最初からとても面白い企画だと思っていました。人生の先輩からいろいろお話を聞くことができ自分の社会に向ける視野が広がりました。このような活動は長く続けてほしいですね。
パンじぃ(1期メンバー)
佐々木昌作さん
社会との交わりが大切だと娘から勧められ、応募しました( 笑)。この年齢で新たに学べることが何よりも嬉しかったです。パンじぃになったことは、人生の中でも一大イベントだと思います。今では毎日のように家でパンを焼いています。
パンじぃ(2期メンバー)
米田文隆さん
募集チラシを見て娘が「私が男だったら参加したい!」と言うのを聞いて、応募しました。家族がみんなパン好きだったのも理由のひとつですね。はじめは計量がとにかく大変で時間もかかりました。失敗もたくさんしましたが、いまはつくれるレシピも増え、楽しさを感じています。
地域で提供するパンもいつも同じでは、お客様も飽きてしまう。定期的に新メニューを学ぶなど、パンじぃがスキルアップする場も継続的に必要です。
それには講師であるパン職人からの、継続的な支援も重要になるでしょう。
パンじぃたちの活動は地域からの注目を集め、取材を受けることも多くありました。モチベーションアップにつながる一方で、受講生の負担が大きくなってしまうことも。
無理なく、しかし目標を持って続けていけるペースを守らなければと感じました。
受講生は60-80代と年齢の幅が広く、体力にも差がありました。受講生同士で役割の負担が偏ることを気にしてしまう場面が見られたように思います。
各自ができることを理解し、互いにサポートしながらのチームビルディングが求められます。
パン屋さんではなかなか取り組みにくい低糖質パンなど、パンじぃだからできるメニューを学ぶ。街中のパン屋さんと異なるチャンネルでのパンづくりの可能性を探っていきたいと考えています。