実施団体について

Dream Vok

元々は工業技術研究所だった企業から、設計コンサルティング組織コンサルトとして独立したDream Vok。技術研究開発、旅行、ヘルスケア、金融保険、公共サービスなど、多岐にわたる分野でのコンサルティング事業を行っています。近年では、コンサルティングとともに、製品やサービスのデザインも行う中、在宅ケアを専門とする企業・中化銀髪と共同で、聊癒(りょうゆ)シリーズのプロジェクトを始動しました。

実施までの流れ

治療は、家庭で。
おしゃべりしながら。

医学上、不可逆的なプロセスをたどる認知症。世界では、多くの医療専門機関が非薬物療法を中心に治療プログラム開発を進めている一方、アジア諸国では、認知症ケアの80-90%が家庭で行われています。つまりケアをメインで担っているのが、専門的な訓練を受けていない、家族など。専門家が治療計画を立てたとしても、準備が難しかったり、適切に実行できなかったりして、家庭での適切なケアは行うことが困難でした。プロフェッショナルでない介護者にとってやりやすく、認知症高齢者にとっても心地よい、よりよい認知症の非薬物療法とはどんなものだろうか。介護者と認知症の高齢者とのコミュニケーションを生み出し、その中で治療することが目指されました。

そこで開発されたのが、聊癒(りょうゆ)シリーズのプログラムです。生活の中の行為で、おしゃべりをしながら、介護者と認知症高齢者のコミュニケーションを図るというもの。たとえば「聊癒(りょうゆ)スナックショップ」というプログラムでは、食事やお菓子づくりを行う一連の行為の中に、認知・実行・時間指向など、認知症非薬物療法における重要な要素を込みこんだ組み込んだものを開発しました。9ヵ月間の研究や40回以上の実証テストを経て、2018年末からサービスを開始がリリース。現在は商品ラインナップがさらに更に拡充され、高齢者ごとの好みやニーズに応じたての選択肢が増えています。

実施のポイント

point1

日常動作に、
治療プロセスを。

聊癒(りょうゆ)シリーズの最大のポイントは、食事をつくって食べるといった日常生活動作の中に、認知や時間指向など認知症の非薬物療法のプロセスが組み込まれていることでした。介護者も認知症高齢者も、お互いに自然と行うことができ、対話をしながら治療を行うことが可能となっています。

point2

誰でもできるには、
コツがいる。

これまでの介護・ケア向けのプロダクトやサービスは、家庭での準備が難しいものや、方法が難解なものもありました。プロフェッショナルでない介護者にとっては、行うことすら難しいものがあったのです。聊癒(りょうゆ)シリーズでは、各ステップがわかりやすく、準備するものも簡単で明確。実行する際のコツが示されており、アイコンやガイドなどの説明により視覚的に理解しやすい説明を採用し、介護者の負担が大幅に軽減されたものとなっています。

参加者の声

康さん

中度認知症家族を介護中

ケーキのために、試行錯誤!

聊癒(りょうゆ)シリーズのうち、お菓子をつくるプログラムを実施してみました。目・手・頭を使って、集中した思考が必要です。認知症の家族も、よりおいしいケーキをつくるために夢中になっており、イキイキした姿を見せてくれました。

李さん

中化銀髪のホームサービススタッフ

負担軽減が、最大のメリット。

完結で理解しやすく、行いやすいプログラムです。私たちサービススタッフがプログラムを行う際に担う、材料準備や活動計画検討など、の、介護者の多くの負担を大きく軽減してくれるものだと思います。

荘さん

中化銀髪のケース・マネージャー

ジャム、ナッツ、クリームの、創意工夫があふれる。

ケーキをつくるプログラムは、飾り付けのパートで、創意工夫の想いが発揮されます。ナッツやクリーム、ジャムで飾られたケーキは、みなさんの「もっとこうしたい!」「これはどう?」と様々にやってみたい気持ちを高めてくれるのです。

孫さん

中度認知症家族を介護中

つくる、からおくる、へ。

プログラムでの食事は、楽しくつくれただけでなく、口当たりがよく、認知症高齢者である家族もすぐに食べ終えました。喜んで食べたあとは、自分のつくったものを、「孫に贈りたい」とも。自分のためにつくって終わるのでなく、分け合う、与える、という経験もさせてくれるものなのですね。

次への課題

高齢者と子どもの、
コミュニケーションツールへ。

始めは、認知症高齢者とその介護者向けのサービスだった聊癒(りょうゆ)シリーズ。運用を重ねるうちに、世代間のコミュニケーションを生み、関係によい効果をもたらすこともわかってきました。食事をつくるなどのプログラムを通じて、介護者とだけでなく、認知症高齢者とそのお孫さんたちが一緒に利用できるようなものも検討していくことは、このサービスが今後展開していきたいひとつのシーンです。

新メニューが、
会話のきっかけをつくる。

初期のプログラムでは、お菓子づくりのプログラムのみ、しかもつくれるのはケーキだけと、選択肢が少ないことは課題でした。各高齢者の異なる好みに応えられるよう、季節や地域なども考慮しながら、食材やメニューのバリエーションを多様に。新しいメニューをきっかけに、また別のコミュニケーションが生まれることも狙いとしています。

テクノロジーで、
多角的な体験を。

デジタルテクノロジーを最大に活かしていくことも重要です。インタラクティブで活かせる最新技術は、ゲーム性の高い体験を行う中で複数の感覚を刺激する効果が期待できます。聊癒(りょうゆ)シリーズも今後、体験と技術のコンビネーションを検討し、プログラムの中でより多角的な体験をもたらしたいと考えています。