台湾最大の野生テーマパークである六福村主題楽園をはじめとし、多くのテーマパークを有する六福旅遊グループ。グループの持つ施設と、補助療法や介護の専門家の知識をかけ合わせる試みを行いました。高齢者を対象とする製品・サービスに知見のある、Dream Vok、5% Design Actionとの共同プロジェクトです。
これまで、認知症にまつわる健康と介護の問題は、認知症高齢者の診断と治療にばかり焦点が当てられがちとなっていました。その中で見えなくなってしまっていたのが、家族など介護者の心と身体の負担です。自宅やリハビリテーションセンターなどで、つねに付き添いが必要となる認知症高齢者にずっと寄り添うことにより、いつの間にか疲弊しきってしまっていることが、新たな問題として浮上していました。
Free Dayのホッと一息ツアーは、認知症高齢者とその家族が、一緒に楽しめる旅行プランを提供するものです。旅行は、高齢者にとっては人生最後の大切なレジャーであり、家族にとってはみんなで楽しむ重要な機会。六福旅遊グループの持つ「六福村主題楽園(レオフービレッジ・テーマパーク)」と「関西六福荘生態渡仮旅館(レオフーリゾート・グアンシー)」といったレジャー施設を中心に、プランの展開があります。プランニングには専門家も加わり、旅行そのものが治療やリハビリにつながるようにも。プランは日帰りのものも1泊できるものもあり、バリアフリー車両での送迎、専属介護スタッフのケアなど、その家族ごと必要なサービスが受けられるようになっています。
point1
このツアーでは、介護の必要な認知症高齢者が旅行できるということだけでなく、その家族まで含め、一家みんなを対象にしたことが重要な点でした。介護ゆえに、揃って出かけることが難しくなっていた家族も、家族旅行をすることはできることを証明しようとしていました。
point2
このツアーでは、補助療法専門家や介護士、理学療法士など、専門領域をまたいだスペシャリストがプランニングに参加しています。アミューズメントパークの持つ楽しさはそのままに、普段介護を行っている家族がホッと一息つける旅行にもなることが意識されました。
point3
サービスは、旅行の前後に及びます。専門の治療チームが、家族の旅行内容に基づき、認知症高齢者への評価・計画作成をサポートするため、家族も安心して旅行に行くことができるはず。さらに、旅行での写真や使用したツールなどは、そのまま治療ツールとして、家族の思い出を語りあえるものともなるのです。
袁さん
障碍を持つ家族を介護中
観光業者が認知症や障碍のある高齢者向けの専門サービスを展開しているとは、最初は信じられなかったです。しかしサービス内容にはすべてが含まれており、旅行に出かける前の私たち家族をとても安心させてくれました。
頼さん
軽度認知症とパーキンソン病を持つ家族を介護中
父の介護をしています。父は、昔は祖母の介護に集中しており、家族間での会話もほとんどない状態でした。そんな父が今度は自分が介護をされる側に。しかし専門家の指導を非常に熱心に受けるようになってから、それまで見せなかったような笑顔をしばしば見せてくれるようになりました。
李さん
軽度認知症と障碍を持つ家族を介護中
パーク内の楽しい雰囲気と、動物がイキイキ動く様と。興味深いことの連続で、その日は一日中、家族が一緒にいてずっと楽しく、少しも疲れを感じませんでした。認知症と障碍を抱えている家族も、普段と違って自分から多くの活動に参加していて、とても嬉しく思いました。
ツアーのパッケージである介護やサポートサービスは、今後、政府の長期介護に関するリソースとの連携を図っていく必要があります。一般家庭の、誰でもが、申請手続きをすることで政府補助を受けることができるように。そうすることで、より多くの認知症高齢者とその家族とが、一緒に楽しむ機会を生み出すことができるのです。
現在のツアーには、贅沢すぎたり、必ずしも必要でない旅程が最初から組み込まれていたりする、と感じている人もいることがわかりました。Free Dayツアーは、認知症高齢者とその家族が楽しみ、ホッと一息ついてもらうためのツアー。そのための価値を、より感じていただけるよう、ツアープロセスの準備や、終了後の思い出共有まで、サービスをさらに拡充していけるよう尽力していきます。
このツアーは、ただ旅行に行くこと以上に、その行動自体がリハビリテーションと介護の要素を含むものです。家族と一緒に、小さな負担で、リハビリと介護ができる。このメリットに満足していただけるよう、多様なスポットやテーマを展開したツアーを考案する必要を感じています。