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2018/11/16

REPORT

キイトナイトvol.23「アートとお金 in KIITO〜アート分野のクラウドファンディングを考える」

2018年9月21日(金)

キイトナイトvol.23「アートとお金 in KIITO〜アート分野のクラウドファンディングを考える」を開催しました。

近年耳にすることの多くなった「クラウドファンディング」は、ユーザーからプレーヤーへ、その勇気ある一歩を踏み出そうとする人に有効そうに思えますが、実際どのようなものなのか?日本初のクラウドファンディングサービスとして知られるReadyforの小谷菜美さん、廣安ゆきみさんのお二人をお招きして、基本から活用事例までをいろいろお聞きしました。

クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングはクラウド=不特定多数の群衆+ファンディング=資金調達が合わさった造語。プラットフォームは世界中に500以上あり、日本だけでも数百と言われている。日々新しいのが起きては消えている状況。大手と言われている数社はそれぞれ特色や強みが異なる。Readyforは2011年に立ち上がった日本初のクラウドファンディングサービスで、担当者がしっかり付いてクラウドファンディングをサービスとして担保しているのが特徴。2018年7月にはアート専門の部門が立ち上がり、アート分野へのサポートにも注力している。

プロジェクトをやりたい実行者が支援者から資金を集める。その中間に立つのがReadyfor。 Readyforのプラットフォームを通して支援者からの資金を実行者に届ける。実行者からは手数料を徴収。実行者は支援者にリターンを送るという仕組み。プロジェクトが目標金額に達成してはじめて手数料が発生する。Readyforは手数料のみの収入で運営する。

Readyforのサービス
プラットフォームによってもさまざまだが、Readyforはプロジェクトに対してキュレーターが必ず1名以上付く。
一番初めの、なぜそのプロジェクトをやりたいか、なぜお金が必要なのかから、公開前の企画立案、リターン設計などを、実行者とキュレーターが相談しながら進めていく。
もちろん公開がゴールではなく、公開してからが資金集めのスタートなので、公開後もサポートは続くし、無事終了した後は、リターンの発送や支援者とのコミュニケーションなどもサポートする。

実際、クラウドファンディングを何回もする人はまれで、1回きりの挑戦という人が多い。Readyforはさまざまな経験の蓄積があるのので、全体的な傾向などからアドバイスをしている。

クラウドファンディングは大きく分けて寄付型、購入型、ふるさと納税型がある(Readyforでの呼び方)。実質は90%くらいが、対価性のあるものをリターンにする購入型。
また、上記3種にかけ合わせるかたちでall or nothing型と all in型があり、all or nothingは目標金額に1円でも達しないと全額返金となる。Readyforにも1銭も入らない。実質はall or nothing型が90%くらい。
目標金額を定めて、スムーズにいけば1か月くらいで公開に至る。2,3か月前に相談し始めると焦らずに着地できる。また、公開後は10日~最大90日で期限を定めて、その期間内で支援者を募る。期間設定はケースバイケース。支援は最初と最後に集中する。長ければよいとは限らない。

プロジェクトの考え方
「どんなプロジェクトが成功するのか?」とよく聞かれるが、そもそも、そのプロジェクトにとっての成功とは何なのか?を明確にする必要がある。このあたりがキュレーターが付く意味に関わってくる。クラウドファンディングは平たく言えば「お金集め」だが、集めたら終わりではない。資金集めのプロセスにおいて、ファンや仲間づくりに寄与するし、情報発信につながるし、新商品のテストマーケティング的な活用方法もできる。お金+別の目的や目標を持っている人が多い。それを明文化しておかないと迷走しやすい。
実際、目標金額を達成したがなんとなく満足せずに終わる、という実行者が一定数いる。達成するにしても、1人が多額の資金を提供して達成すればよいのか、たくさんの人が関わり、知ってもらわないと意味がないと考えるのか。実行者の抱えるさまざまな思いをキュレーターと棚卸して整理していく。
自分の成功状態をイメージした上で、自分が今持っている手段やプロジェクトの内容はどれだけ魅力的なのか、どういう情報発信の手段や策があるのか。それら理想と現実をすり合わせて、そこからどのような人がプロジェクトの支援者になりうるのかをしっかりイメージする。それから、その支援者像に合う見せ方を考えていく。
「誰が」看板になり、「何を」するのか?の見せ方は重要。主体になっている実行者が前面に出るべきか、サポート役だが顔が広い人が出るべきか、無名でも熱心な人のほうが説得力があるかもしれない。さまざまな選択肢がある。目的によって変える必要がある。また、「何を」は、プロジェクトの軸のほかに、どの部分を前面に出して訴求するか。かなり練られる部分。

アート分野の事例
継続的な活動費の収集よりは特定のイベントやプロジェクトの資金集めをするほうが相性が良い。また、アートだけを推すより、「×福祉」「×地域」など、何かしらかけ合わせられるものが見つけられるプロジェクトが強い印象。シンプルにアート作品を作ります、だと、何も知らない人にとっては、何者?本当に価値がある?と戸惑いがち。それよりは、アートとしてもちろん価値があるが、プラスこのような価値があると示せると、プラスの部分に関心がある支援者に届きやすいし、今まで出会ったことがなかった、ふだんの支援層とは少し違ったところにアピールできる。×地域なら、地元の人が、「アートは分からないが地域のために頑張っている人がいると嬉しい」と支援することが起こりうるし、×子どもなら、子どもの支援に興味がある人が、目を向けてくれたりする。
×○○は、実行者が自覚していないパターンもあり、キュレーターが提案することもある。なお、実行者が納得しないと活動に支障が出るので、意見がぶつかっても押し切ることはない。

アート分野のプロジェクトでは、どうしたら苦痛でなく宣伝が続けられるかも課題になりがち。アーティスト志向が強い人ほどお金の話はしたがらない。クラウドファンディングは平たく言えば「お金ください」と言っているようなものなので、それを表立って言うことに抵抗を示す人も多い。それで実行委員会が出るか、プロジェクトの趣旨を考えるとやはりアーティストが発信すべきと判断するかはケースバイケース。

・落合陽一 × 日本フィルハーモニー交響楽団「耳で聴かない音楽会」
https://readyfor.jp/projects/15399
イベント系のプロジェクトはリターン品=公演チケットという発想になりがちだが、このプロジェクトでは、チケットのほかに、映像やレポートを送る、というリターンを作った。クラウドファンディングは、当日参加できない人も支援/課金ができるところがおもしろい。
新しい試みに自分が関われるのが嬉しい、という反応が多かった。支援者の動機は多種多様だが、大きくは2つで、ストーリーに対する共感と、リターンの魅力。プロジェクトに合った欲求を刺激するためのリターン設計、ページ設計が重要。

・群馬県桐生市の私立美術館・大川美術館による「洋画家・松本俊介のアトリエ再見プロジェクト」
https://readyfor.jp/projects/okawamuseum
大川美術館の周年記念展のためのプロジェクトは「アート×地域」。もともとその意識はあまりなかったが、プロジェクトを走らせてみたら地元の方の支持が厚くて途中で切り替えた例。「地元でそのような活動が行われていることが大事」と考えている人が多かった。地元の方々の潜在意識に訴えかけるきっかけになったといえる例。

後半は、事前に参加者から集めたクラウドファンディングのアイデアについてお二人がコメントしたり、前半のレクチャーから詳しく聞きたい部分についてお話いただく時間を設けました。

地元で、実家の古民家を改装して何かやりたい、というアイデアについては、古民家リノベーションのプロジェクトはものすごく多くて、多いゆえに厳しく見られている傾向はあるだろうとのこと。できたものがちゃんと運営を継続していけるような設計がされているか、支援の広がり方の順番は、必ず、足元の支援の積み重ね→それを知って共感した遠くの人の支援、になるので、地元も支援してくれるようなプロジェクトになっているかどうかなど、がポイントで、ありふれたキーワードのものは、誰が、何を、どちらに重点を置くかが重要。

プロジェクトの達成率は、2017年で75%。業界の達成率は20‐30%で、一度もクリックされていないページもあると言われるなか、Readyforでは0%は1%以下くらい。これは、Readyforが、クラウドファンディングをやらなきゃよかった、と実行者が思ってしまうのが一番良くないと考えていて、キュレーターがしっかり伴走して達成まで引っ張り上げているから。

実行者側のレクチャーは比較的多く各地で行われていますが、クラウドファンディングのプラットフォームおよびサービスの提供者側の話を聞ける機会はそう多くありません。提供者側、しかも実行者としっかり寄り添ってプロジェクトを設計・実行していくReadyforのお二人から、現場の事例を交えたお話をお聞きできた貴重な機会となりました。いつか実行者に、と考えている方にも非常に実践的な内容となったと思います。

キイトナイトvol.23「アートとお金 in KIITO〜アート分野のクラウドファンディングを考える」
http://kiito.jp/schedule/lecture/articles/29587/