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2018/12/10

イベントレポート

7月28日(土)開催「Gabarito KOBE」 レポート

「台風12号が日本列島に接近、東から西へ進む異例のコース」
というニュースが飛び交った2018年7月下旬。「Gabarito KOBE」の開催日7月28日はその真っ直中にあることが予想され、開催自体が危ぶまれましたが、参加者の皆さんの心がけか、はたまた台風の気まぐれか…台風のスピードが落ち、なんと当日は「晴れ」。雲が多く少し風も強めではありましたが、神戸のまちを歩くにはちょうどよいお天気となってくれました。

水枕ガバリと寒い海がある

小説『神戸』を記した俳人・西東三鬼のこの句にちなんで名付けられた「Gabarito KOBE」は、まちを観察し、「俳句」という十七音の言葉で風景を切り取ろうという吟行句会イベント。この日集まったのは、東は東京、西は福岡からやってきた12人の個性あふれる参加者の皆さん。新宿歌舞伎町俳句一家「屍派」を率いる俳人・北大路翼さんに、山羊研究家の塚原正也さんというこちらも個性あふれるゲスト、そして今回のコーディネーター・酒井匠さんとともに、神戸のディープな街・新開地周辺へと繰り出しました。

 

まずは「吟行」。まちの景色を見て回り、俳句の題材を探します。店頭から商品が溢れんばかりの店がひしめく商店街を、思い思いに、ぶら、ぶらり。俳句経験者の方は歳時記を取り出し、季語を確認しながらメモをとります。メモのとり方も、紙やスマートフォンのメモ機能などさまざま。今と昔が入り交じるようで、なんだか不思議な感覚です。
良い句ができたら、オリエンテーションでもらった短冊に清書していきます。ちなみに、ひとまず一人2句という決まりを設けてみたものの、皆さん追加の短冊をどんどん持っていかれました。

 

地下鉄「湊川公園」駅前のトンネルからスタートし、東山商店街周辺を巡ったあとは、ミナエン商店街のある福原エリアへ。神戸在住ゲストとしてお招きした塚原さんも参加者と一緒に街を歩き、ただ歩いているだけでは分からない豆知識をいくつも披露してくださいました。

スナックから聞こえてくるカラオケの熱唱ボイス
ひっそりとした構えの喫茶店の、驚くほどピカピカに磨かれた窓ガラス
雰囲気のある映画館に、駐車場の日陰でお腹を冷やす野良猫…

どこをとっても題材になりそうな新開地の街で、皆さんはどんな俳句を詠んだのでしょうか。

 

吟行を終え自分の句を提出したら、場所は変わってデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)へ。ここからは「句会」の時間です。
ずらっと並んだ計61句から気に入った自分以外の句を3句選び(選句)、選句理由を順番に発表していってそれぞれの句をじっくりと楽しみます。
なお、この時点では誰がどの句を詠んだのかまだわかっていません。

経験者が多かったこの日は、句会も本来の句会に近い雰囲気に。少しだけピリッとした空気の中、句が読み上げられ、ほかの参加者からのコメントや北大路さんの講評が添えられていきます。
たった十七音、されど十七音。ひとつひとつの言葉がもつイメージ、季語の使い方、そして言葉の位置が変わるだけでもその句の印象がガラリと変わります。
「2018年7月28日の新開地の風景」をその場で見ることができるのは一度だけ。参加者の皆さんが同じ時間帯に同じものを見ても、注目する対象、何を感じたか次第で全く違う句が出来上がる。それが、吟行句会…俳句の面白いポイントです。

 

そして最後には「北大路賞」「塚原賞」「KIITO賞」の3つを選定。最多得点句に贈られるKIITO賞は、やはりさすがと言うべきか、見事ゲストの北大路さんが受賞!
それぞれの受賞者には、ゲストご本人とKIITOがセレクトした賞品が贈呈されました。

今回詠まれた句はこちらからご覧いただけます。
※作者の意向により、一部の句は非公開とさせていただいております。

俳句は、「風景を切り取る」という面で、ある意味写真と似ているのかもしれません。
言葉で切り取った風景は、皆さんの心にどう映ったのでしょうか。

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