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2019/2/27

イベントレポート

2/19開催 +クリエイティブ公開リサーチゼミ Vol.2 「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」 第1回 レポート

去る2月19日(火)に、「+クリエイティブ公開リサーチゼミ Vol.2 「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」」の第1回目が開催されました。今回のゲストは秋田大介さん(神戸市住宅都市局)をゲストに招いて、「人口減少ってチャンスじゃない?」というテーマでお話しいただきました。

昨年12月に、神戸市とデザイン・クリエイティブセンターとの共催で、「公開シンポジウム「人口減少時代の豊かなくらしを神戸でデザインする」」を開催し、実際に人口減少が進んだ都市や地域で起こっている現象や発生する問題、人口減少を見据えた都市計画が紹介され、さらに、人口減少という状況の中で、どういった試みや活動がこれから求められるのか、その手がかりを探りました。

大きな枠で、多面的に「人口減少」というキーワードを捉えようとしたのが、昨年末の公開シンポジウムでした。しかし、生活レベルや地域のレベルに落とし込むには、まだまだ規模が大きすぎて、範囲も広すぎるという状況です。そこで、課題に対する提案を組み立てていく「+クリエイティブゼミ」の前段階(リサーチ)として、今回は「+クリエイティブ公開リサーチゼミ」を5回にわたって開講します。

第1回目のゲストの秋田さんは、神戸市の職員として数々の都市計画に関わり、街の移り変わりや都市計画に求められる条件の変化を、間近に経験してこられました。その観点を通じて、今回は、「人口減少」という大きなテーマを、「神戸」「自治体」「地域」へと落とし込むことを試みます。ちなみに、今回のキーワードは「バケツ」とのことです。

まずは、「人口」を様々な規模から見てみることにします。20世紀は人類史の中でも未曾有の人口増加を経験した時期でした。21世紀に入っても、世界規模で見ると、まだまだ人口は増加する傾向にあり、2050年には総人口が98億人に達すると予測されているようです。

その増加の内訳を地域ごとに見てみると、大きな人口を抱えるアジアも、経済発展にともなって増加は鈍化しつつあり、アフリカも増加が徐々に鈍化すると予想されています。100年ほどのちには、どうやら頭打ちを迎えることになりそうです。

今度は日本国内の動向に注目します。2004年をピークに既に日本国内の人口は減少傾向に転じており、さらに、急速な人口減少を迎えると予想されてします。また、合計特殊出生率の動向から、1970年台には、近い将来の人口減少は予想しうることでもありました。神戸市に目を移せば、2012年から人口は減少傾向に転じています。

むろん、人口減少は、どこでも同じタイミングで、同じ速さで進むわけではありません。兵庫県内の自治体を見てみると、阪神間、瀬戸内側の都市部の減少は小さいですし、山間部や日本海側では、減少幅が大きくなります。後者の地域では、すでに30年前から減少が始まっている自治体もあります。後者の自治体に着目して、人口減少で何が起こっているのか、見てみることにします。

   

この自治体では、1970年から2015年で人口が8000人減少。一方で世帯数はほぼ横ばい状態にありました。このように、目に見える形で減少が顕在化しなかったことが、対策が遅れる要因ともなりました。高齢化率も高く、無人集落が現れる状況では、もはや活性化策を試みることも困難です。顕在化したときには一気に手遅れの状態になっていることが多く、早い段階での対策が求められます。

問題の先送りではなく、都心部への一極集中でもなく、「人口減少時代の豊かな暮らし」はいかにして可能になるのか、ここで登場するのが、前述した「バケツ」です。新たな経済的、社会的な仕組みを、「バケツ」に見立てて構想してみる、というのが、ここからの試みになります。経済学でフロー(流れるお金)とストック(溜まっているお金)を説明するときに「バケツ」に出入りする水、溜まる水というように喩えることもあるので、それを連想された方も多いかもしれません。「人口減少時代の豊かな暮らし」においても、入る量を増やし出る量を減らすことが鍵になります。むろん、水を貯めていれば大丈夫というわけではありません。水が動くことで、様々な活動や仕事、消費が発生します。「バケツ」の中でいかに活発に水が動くか、この点も重要になります。

ここで取り上げられたのが、徳島県神山町の「フードハブプロジェクト」や北区の「弓削牧場」でした。地産地食を軸にして、地域の中で人や物、お金が活発に動く仕組みを作ったり、牛の糞尿や食品カスをエネルギー化して、循環型社会を地域レベルで構築したりする試みです。従来の「拡大再生産」に依った経済や社会の仕組みとは対局にあるモデルとも言えるでしょう。

あるいは、個人(世帯)で「持ち家」を「所有」ことが、日本の社会の一般的なライフコースのゴールであったことが、使われない(あるいは持ち主が不明であったり、持ち主っから放置されたりしている)「財産」としての「空き家」が発生する要因となったとも言えます。「私的な所有」とは異なる考え方で、住宅を見ていく必要がありそうです。また、「消費」を地域の経済的な循環に組み込もうとするならば、価格や量を重要視した「消費」のあり方も変化を迫られることになります。

   

今回、「バケツ」をモデルにして考えることで、どれくらいの範囲で、経済や社会の仕組みを考えていくか、また、その中身を豊かなものにして、うまく循環、維持していく仕組みはどのようなものか、さらに、どのような考え方の転換が必要なのか、わかりやすく見えてきたように思います。

次回は、3月5日(火)、大阪大学の山崎吾郎さん(文化人類学)をゲストに招いて「「課題」にどう近づくか? リサーチをとおした参加と距離化」というテーマでお話しいただきます。

+クリエイティブ公開リサーチゼミ Vol.2 「人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする」の概要はこちら