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2019/6/24

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.30 リサーチャー育成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」第3回レポート

6/4火、+クリエイティブゼミ「リサーチ・リテラシーを学ぶ リサーチャー養成講座」の第3回を開催しました。前回に引き続き6チームに分かれてのグループワークを中心に、「未来の図書館」についてリサーチを深めていきます。

  

リサーチの方向性を決める
はじめに、講師の山崎さんからリサーチの方向性の絞り方について、レクチャーがありました。
 方向性を絞るために重要なのは、「コンセプト(=概念)」あるいは「テーマ」を作ることだそうです。その際、⑴誰かに「何についてリサーチしているのか」と聞かれた時に一言で言えること、⑵自分がリサーチを深めていくときに情報やリサーチ内容の取捨選択ができるようにしておくこと、の2点を押さえておくと、出来上がったアイデアの主旨を明確に伝えられるそうです。
 また、実現性のあるアイデアを作り上げていく際には、いろんな機能を盛り込みすぎず、一つ一つの機能に合わせたものを出すことを提案されました。例えば、「誰がどこで、どんなことをしている」のか具体的な場面を思い浮かべ、その人にどのような感情の変化があるのか、といったシナリオまで具体化して絞っていきます。
 最後に、「デザイン思考」の考え方から、物事の3側面、①有用なものであるか、②実現可能なものか、③持続可能性があるか(誰が運用していくのか)、という観点から、その3つの要素を持ち合わせたところに新しい価値が生まれることを紹介いただきました。

チームに分かれて、各自で行った2週間のリサーチを共有したのち、似ているキーワードについて話を深めたり、連想で出てきたアイデアについて議論を行いました。また講師の山崎さんや、永田さんから質問やフィードバックを受けながら議論を進めているチームもあったようです。次週に向けて各チームから進捗状況を発表してもらいました。

  

  

  

①コミュニティ・人の交流チーム
 コンシェルジュ・司書の活用と、空間の使い方を変えることによって交流を作り出すこと、さらに「入り口」に着目して、図書館という建物の入り口や、新しい知識・本への「入り口」についてリサーチとアイデアを出し合いました。
②しかけ・サービス1班
 高齢者・子供・単身赴任などターゲットを絞り、その人たちが空いている時間を図書館のサービスでどうデザインできるかをコンセプトにしました。
③しかけ・サービス2班
 自分の興味以外の本に出会うきっかけづくりや、普段本を読まない人が本を手に取るようになる図書館を考えています。既存のハコとしての図書館だけでなく、お医者さんの待合室や飲食店の本棚など有効活用するというアイデアが出ました。
④新しい空間、今までにない図書館像
 時間をキーワードに、「30分で読める本の本棚」など、普段あまり本を読まない人へのアプローチを考えたようです。また、海外事例なども集めリサーチの幅を広げていました。
⑤今ある空間の編集+αの機能
 既存の図書館の機能や空間の特徴について調べたことをもとにブレストを行い、あったらいいな、という想像を膨らませて機能を考えました。コンセプトは「みんなでつくる図書館」で、図書館へ行く目的についてさらにリサーチを行う予定です。
⑥体験(自分の体験)
キーワードはお一人様。図書館で司書さんが悩み事に対してアドバイスをくれるというアイデアが出ました。コミュニティナースのように、地域の人と本をつなげる『コミュニティ司書さん』であったり、処方箋としての本があってもいいと、幾分コンセプトの幅をもたせています。

発表後に講師の山崎さんから、リサーチの方向性、アイデアを収束させるタイミングに正解はないものの、その次の作業に移るには、リサーチは、いつでもやり直すことができるものですが、決めないと先には進めないからです。また、新しいアイデアを作るときには、その分野でよく知られているもの(他の図書館、本…)と、コンテクストの違うもの(スーパー、映画館…)の要素を組み合わせることで新しい視点が
 生まれることがあるとコメントいただきました。こういったやり方を「強制連想」とも言うそうです。

次に、今回のゼミのTA(瀧本さん)から「知らない世界・分野に出会う図書館」をテーマに発表がありました。情報を探す方法として本・雑誌ではなくパソコンやスマホの利用率が高まっていること、人の好みに応じた「オススメ」が提示される一方で、自分のこれまでの興味とは違うものに出会いにくいという問題意識から、既存の図書館や書店、世の中にある情報や本との出会い方の形について受講生に紹介しました。

最後に永田より、有効なアイデアである「アクションプラン」(=種)をつくることについてレクチャーがありました。具体的に誰がターゲット(=土の人)となるのか、誰がその図書館を運営・サポートする(=パートナー、水の人)のかを具体的に設定することで、現状把握・ニーズ把握・社会背景がより明確となり、新しく、かつ実現可能なプラン(=強度のある種)につながります。特に「水の人」についてのリサーチは、そのプランを考えた人(=風の人)自身が運営に関わらずとも、プランが持続的に運営されていくために必須です。土・水・種それぞれの観点から再度リサーチを行い、一番「強度のある」いい種を発明することを目指します。
 さらに、今回のテーマである図書館は公共施設(器・場所・箱)であるため、ターゲットを設定しなければ、「誰のため」「何のため」が不確かなアイデア集となりやすいことが指摘されました。地に足のついた企画として成立させるためにも、誰がそのアイデアを実行するのかを明確にする必要があります。この点を踏まえて、次回のゼミでは各チームで発表内容の精度を高めることを確認して、第3回のゼミが終わりました。

+クリエイティブゼミvol.30 リサーチャー育成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」 例題1:「図書館の未来を考える」 概要