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2019/7/19

REPORT

おてらおやつクラブ -地域との営みをリデザインする- レポート

7/3(水)

2018年に神戸ファッション美術館で開催された「GOOD DESIGN AWARD 神戸展」の後継企画として、2018年グッドデザイン大賞を受賞したおてらおやつクラブのデザインを紐解くトークセッションを開催しました。講師に特定非営利法人おてらおやつクラブの松島靖朗さんと福井良應さんをお招きして、おてらおやつクラブの活動と成果を伺うだけでなく、グッドデザイン賞の審査員を務めた服部滋樹さんと公益財団法人デザイン振興会の秋元淳さんから、なぜグッドデザイン大賞にえらばれたのか、そのデザイン性の魅力を、実際におてらおやつクラブの活動を実際に活用している須磨寺副住職の小池陽人さんと認定非営利活動法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべの茂木美知子さんから現場での声を交えながらお話を伺いました。また、トークの進行には神戸市のクリエイティブディレクターを務める天宅正さんが担当し、総勢7名でのトークセッションとなりました。

また、当日株式会社フェリシモのおてらぶによる出店もあわせて行われ「螺髪ニット」などの商品の販売も行われました。

おてらおやつくらぶとは
まずは福井さん、松島さんから「おてらおやつクラブ」の活動とその仕組みについてお話をいただきました。おてらおやつクラブはお寺にお供えされる食べ物や飲み物を神様からのおさがりとして生活に困窮する子どもたちにおすそ分けをする活動です。

奈良の安養寺で住職を行う福井さんはお寺おやつクラブの活動を始めたきっかけをこう話します。
「お寺はみなさんから沢山の食べ物をいただきます。ある日、大阪で母子の餓死事件をニュースで目撃して、身近な地域で食物を食べれなくて死んでしまう人がいるという現状前にこういった人たちを救うこともお寺がするべき活動ではないか思いはじめました。」

もう一人、おてらおやつクラブよりお越しいただいた松島さんはおてらおやつクラブの「マーケティング」を担当しています。
おてらおやつクラブでのマーケティングについてこう松島さんは話します。
「はじめは博報堂(広告代理店)で10年くらい働いていて、どうすれば人はモノを買うのかという人の欲望についてずっと考えてきました。ある時、おてらおやつクラブの取材をしたときにその仕組みの美しさに惹かれて、福井さんと一緒に活動をするようになりました。」「活動を広く知ってもらう、関わってもらう人を増やすことを目的に活動しています。グッドデザイン賞に申し込んだ理由もその一つです。」

グッドデザイン賞受賞後はローカル新聞へ掲載など、地域の寺院に広まっていったともお話をされました。

デザインの観点から見るおてらおやつクラブ
次に秋元さんと服部さんからグッドデザイン賞についてお話をいただきます。
「グッドデザイン賞は1957年からスタートしています。暮らしや社会をよりよくしていく優れたデザインに与えられる賞のことで、意匠や機能のデザインに加えてシステムや仕組みのデザインがノミネートされるなどデザインの幅が広がっていっている様子がみられます。」

毎年4,000近く応募がある、グッドデザイン賞を審査する基準として「デザイン」このようにを定義しているそうです。

グッドデザイン賞の考えるデザイン=人が、ある理想や目的を果たすために意図して築いたものごとのすべて

そして、グッドデザイン賞のプレゼンテーションにて福井さんがお話された「子どもからの手紙」が大賞のきっかけになったと続けてお話をされました。「おてらおやつクラブの活動を5年続けていく中で一人の子どもからこんな手紙が届きます。「お坊さん、もう和菓子はいいからポテトチップスを送ってください。」この手紙を見たときにクスっと笑いがでてしまいました。でも、よく考えると子どもの子どもらしい要素を見せてくれたと思うと、この活動の良さはそこにあるのではないかと思ったのです。」

日本の7人に1人が貧困と言われています。それはあからさまに食事や衣類を買えないといものではなく、部活動や塾、修学旅行や娯楽など「ほかの子どもが当たり前にできていることができない。」といった。とても目に見えにくいものです。

「普段、社会の問題を感じることはありませんが、このエピソードを聞いたときにぐっと社会の課題に近づいた。」と服部さんは話をされました。

「おてらおやつクラブ」の魅力は「美しさ」だと服部さんはお話を続けます。
「美しさをもう一度考えたときに、何を美しいと思うか。80数名の審査員が美しさとは何かを考えたときに、おてらおやつクラブの仕組みの美しさが秀逸だった。人口減少や相対性貧困など、社会で起きているけど実感のないものを、ふと実感させられる。また、そういった問題を実感させないことが問題ではないかと考えさせられる。それこそ美しさであり、デザインなのではないか。」

形骸化するお寺
お寺は全国で約77,000カ寺あるといわれています。コンビニの数よりもお寺の数が多いです。その中でおてらおやつクラブに参加している寺院は1,222カ寺と約1.6%しかありません。

次に現場でおてらおやつクラブを実際に活用している小池さんからお話を伺います。
神戸市須磨区にある須磨寺で副住職を務める小池さん。大学ではまちづくり・地域コミュニティを学んでいたそうです。
小池さんは「地方ではコミュニティが存続できない、都会ではマンション暮らしなど、人がたくさんいるのに孤独を感じる。といったようにどんどんつながりが希薄になってきている。」という問題を感じていました。そんな中お寺がひと昔のコミュニティの場であったことを知り、実家須磨寺にはいる事を決めたそうです。

実際にお寺で働く中で、形骸化しているお寺の存在に疑問を持つようになります。
「檀家がいないなどの原因で77,000カ寺の4割は無くなるといわれています。人口が流動的になったいま、お寺との縁・つながりをつくらなければいけないと思います。いま社会で困っている人たちにアクセスをしていかねばならない時におてらおやつクラブに出会いました。コストはかからないのに、こんなに社会に還元できるものがあるのかと感動したのを覚えています。」おてらおやつクラブの活動はさまざま繋がりをうんでくれます。人間は孤独であればあるほど自分には価値が無いと思ってしまうものです。おやつを通して見守ってくれている人がいる(つながりがある)ということを感じさせてくれる本当にいい仕組みですね。」

そして、最後の登壇者WAACAの茂木さんにマイクが回りました。WACCAは主にシングルマザーや子ども達の支援をしているNPO法人です。そういった子どもやお母さんが集まれる場として活動をしています。おてらおやつクラブとのつながりはまさに「おやつ」です。と話を始めます。
「人が集まる場にある、おやつは人との会話をされに増幅をさせます。おやつがでることを自慢する子どもも中にはいました。」
「おやつをきっかけに地域や子どもたちとつながるきっかけになった。また、お供え物で届くおやつは質も高くてみんな喜んでたべるんです。」という茂木さんのお話に「おてらおやつクラブをきっかけとしたローカルなつながりが色々なところでできている」と福井さんもお話を返しました。

おてらおやつクラブはお供え物なので、いいものがくる。それを子ども達で食べることで、普段できない食体験や文化体験ができる。貧困は文化的な体験ができる経験が限られてくる。それを体験される場にもなる。と新しい発見もこの場でうまれました。

グッドデザイン賞をとったその後
グッドデザイン賞を受賞してから、おてらおやつクラブの事務局に「私も支援してほしい」という個人の声があがるようになったそうです。そういったときは「直接支援」として支援の物資を送るそうです。こうして活動が知られていくことで、社会に対して声を上げることができなかった人たちが声を上げることができるようになったと松島さんは最後にお話をされました。

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社会におけるデザインの役割は広くなっていきます。形のないプラットフォームがグッドデザイン賞という日本で一番名前のあるデザイン賞を受賞したことで、社会課題に我々がどう考えて何を選んでいくかが今まで以上に大切になっていくように感じます。おてらおやつクラブの活動のような「仕組みの美しさ」が地域にとってのいい循環を生み出すきっかけになるのではないかと感じさせられるトークイベントとなりました。

イベントの詳細についてはこちら:http://kiito.jp/schedule/lecture/articles/35613/