2020/3/12
イベントレポート
グッドデザイン連続講座 4.「シェアが生み出す都市の空間」
日時 12/5(木)19:00-20:30
講師:猪熊純(審査委員/成瀬・猪熊建築設計事務所主宰)
この日は、グッドデザイン賞審査委員で、成瀬・猪熊建築設計事務所主宰の猪熊純さんに、「シェア」という観点から自身の建築についてお話いただきました。
日本の建築界で「シェア」という概念にいち早く注目し、シェアハウスからパブリックスペースまで、多くの「シェア空間」の創出に関わってきた成瀬・猪熊建築設計事務所。これまでに手掛けられた自作のほか、近年のグッドデザイン賞の受賞作を振り返り、「シェア」が生み出すこれからの都市空間の可能性について聞けるとあって、多くの方で会場が埋まりました。
はじめに、都市の姿がどう変遷してきたのかについてお話しいただきました。高度経済成長期など都市が成長しているころは、用途地域や性役割のような役割が比較的はっきりしている「役割分担の時代」でしたが、そこから今はその境が曖昧になる「シェアの時代」へ入ってきているそうです。そして、誰にでも開かれている「パブリック」、共通するもの同士の「コモン」、私的な「プライベート」の空間もシェアすることを、ご自身の手掛けられた事例とともに語っていただきました。
最初の事例は、プライベートとコモンをシェアするシェアハウス「LT城西」。床の高さに違いをもたせることで、少しプライベートな空間を共用部に生み出すことに成功しています。これまでの個室とメンバーが集うリビングの2択しかなかったシェアハウスに、新しいかたちをもたらしました。さらに、地域や仲間を呼んだパーティーを開催するなど、パブリックのような空間にもなっており、まさにシェアの時代を象徴する作品です。
次に「KOIL 柏の葉 オープンイノベーションラボ」。オープンイノベーションを生み出していくためには、あらゆる分野の横断的な交流が生まれる必要があります。そこで、中央にパブリックスペースを大胆にも配置することで、多様なコミュニケーションの創出に成功しています。そのほか、天井の高さ、仕上げ、照明などにも工夫がほどこしています。
猪熊さんのお話や、実際の建築の事例を聞いて、住居やオフィスに広がる「シェアを前提とした空間」が、これまでの「役割分担の時代」のような近所づきあいや区割りと異なる、柔軟性に富んだ「公共」を生む可能性があるのだと分かりました。