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2013/3/1

イベントレポート

東日本大震災復興支援「つくることが生きること」神戸展 レポート

東日本大震災復興支援「つくることが生きること」神戸展 レポート

東日本大震災復興活動を行う個人・団体と支援者・支援団体を結ぶプラットフォーム「わわプロジェクト」との共同主催により、「つくることが生きること」神戸展を開催しました。(写真:森本奈津美)

KIITOホールに近づくと眼前に飛び込んで来るのが、椿昇《mushroom》。全長30mのロシアの大陸間弾道ミサイルを原寸大でかたどったバルーン作品です。また、さらに奥に進むと、巨大なスクリーンに出くわします。スクリーンには、両側から巨大プロジェクターで二人の写真家の作品が映しだされています。陸前高田市気仙町の出身であり、東日本大震災前後の被災地の様子を撮影し、痛切な作品としてまとめあげた畠山直哉《気仙川》《陸前高田》、そして、阪神・淡路大震災の直後に、神戸の街を生々しいまでに写しとった宮本隆司《KOBE 1995 After the Earthquake》です。

ギャラリーAを埋め尽くさんばかりの大量のカラーコーンは、「阪神・淡路大震災+クリエイティブ タイムライン マッピング プロジェクト」の展示です。本プロジェクトは、1995年1月17日からこれまでにおこなわれたクリエイティブな分野における支援活動を調査してタイムライン=時間軸におとしこんだ年表を制作、さらに各活動の概要やインタビュー、気づきのレポートなどさまざまなコンテンツを盛りこんだ取り組みです。
今回は、約20mの年表を展示するとともに、マッピングされている活動一つ一つをカラーコーンで表し、年表そのものを空間に落としこみ、体感していただこうと試みました。

さらに奥に進むと現れるのが「失われた街 模型復元プロジェクト(監修:槻橋修)」の真っ白な模型群です。失われた街や村を1/500の縮尺の模型で復元し、地域の方々に、聞き取りを行い、その内容を模型にタグ付けのような形で逐一反映していきます。この作業を通じ、地域に育まれてきた街並みや環境、人々の暮らしの中で紡がれてきた記憶を保存・継承していくことを目指しています。会期中もワークショップを行い、リアルタイムで模型が息を吹き返していくさまが見られました。
また、ギャラリーの突き当りに展示されているのは、リアス・アーク美術館(山内宏泰)「三陸大海嘯図版展示」です。明治29年(1896)、三陸地方を大津波が襲いました。当時の風俗画報は、その様子を生々しく伝え、ある意味では写真よりもその恐ろしさを伝えている、そのように思わせられる展示です。

展示の入り口部分に佇むのは、わわプロジェクトによる「被災地の復興リーダーが語る映像展示」です。東日本大震災以降、地元で復興を推し進めていくリーダーの方々が、42インチの大型モニターからまっすぐ正面を向き、鑑賞者に思いを語りかけます。

会期中はさまざまなイベントも開催されました。
会期初日には、美術家・遠藤一郎さんが、全国を回る「未来へ号」に乗ってKIITOに訪れ、ライブペインティングを行いました。(※上記二点のみ、KIITO撮影)

また、1/27(日)にはやっぺし祭りを開催しました。やっぺし祭りとは、被災地に遊び場がないという問題意識から、2011年5月より、岩手県大船渡市の仮設商店街を中心に継続的に開催しているアートイベントです。「やっぺし」とは方言で「やろう!」という意味。「子供に元気を与える」をコンセプトに、ワークショップを中心にイベントを行いました。
阪神・淡路大震災と、東日本大震災。それぞれに対する取り組みが、ほんの一部ではありますが一堂に集結した本展。阪神・淡路大震災から18年経過した今でも、震災復興は終わらない中で、わたしたちはクリエイティブというアプローチをもって、いったい何ができるのでしょうか。本展がそのことを一人ひとりが考えるきっかけの一つになれたことを願っています。