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2015/11/12

イベントレポート

KOBE パントーク2015 レポート

2015年10月29日(木)

11月1日から神戸市中央区で開催する、「KOBEパンのまち散歩」のキックオフイベントとして、「KOBEパントーク2015」を開催。フードライターの三好彩子さんに司会進行を務めていただきました。KOBEパンのまち散歩実行委員長の土井茂桂子さんより、「KOBEパンのまち散歩」楽しみ方や神戸とパンの関係についてお話いただきました。その後、イスズベーカリー井筒英治さん、ホテル―オークラ神戸齋藤秀喜さん、サ・マーシュ西川功晃さん、ケルン壷井豪さんの4名による「クロワッサントーク」。シェフどうしの掛け合いもあり、楽しいトークでした。後半はクロワッサンの試食、販売を行いました。各店舗のクロワッサンの試食、食べ比べも楽しみました。


KOBEパンのまち散歩とは
|KOBEパンのまち散歩 実行委員長 土井茂桂子さん
神戸でパンを楽しむ1か月、「KOBEパンのまち散歩」が始まります。今回で3回目を迎えます。今日はそのキックオフイベントとして「KOBEパントーク2015」を開催しています。非常に多くの方にご応募いただき、抽選となりました。神戸は開港以来舶来文化のまちとして栄えました。神戸は全国の中でもパンのイメージがあるまちです。暮らしの中のパン、パンのある暮らし、パンを中心にいろいろな展開ができるのではないかと思います。今回はクロワッサンをテーマにしており、配布マップにはクロワッサンが表紙になっています。1回目はフランスパン、2回目は食パンでした。マップには協力いただいている中央区のパン屋さんの位置や情報、特典などが記載されています。また期間中いくつかの店舗では「神戸PNAPO」という食べ歩きしやすい小さいサイズのパンをオリジナルの紙袋で販売しています。お気に入りのパン屋さんや初めて行くパン屋さんなど神戸の街を散歩しながら楽しんでいただきたいと思います。クイズラリーも実施しますので、ぜひご参加ください。
 


「クロワッサントーク」

イスズベーカリーの井筒秀治さん、ホテルオークラ神戸の斉藤秀喜さん、サ・マーシュの西川功晃さん、ケルの壷井豪さんの4名にご登壇いただきました。まずはクロワッサンについてイスズベーカリー井筒さんよりお話しいただきました。

クロワッサンとは|イスズベーカリー井筒さん
クロワッサンは強力粉に砂糖・塩を入れて作ります。油脂を入れるところもあります。一般的な食パンよりも水を減らし、固くこね、温度も少し低いです。生地の発酵後に冷蔵庫で1日寝かせます。翌日に冷えた生地に、バターやマーガリンを粉に対して一般的には約50%入れます。そして3つ折りを3回行い、生地を休ませながら薄くのばし、三角形にカットします。通常のパンよりも低い温度で発酵させます。その理由はバターの融点が低いからで、温度が高いとバターが溶けて流れてしまいます。発酵後に窯で15分ほど焼き、お店に並びます。フランスパンなどよりも時間と手間がかかります。
クロワッサンの形
お店でも見かける三日月型のクロワッサンの形には2ついわれがあります。一つはトルコの国旗から来ているものと、もう一つはつるはしを模ったと言われています。三日月型のクロワッサンは生地の織り込みのときにマーガリンを使っています。一方、ひし形のクロワッサンはバターを使っています。フランスでは2種類が売られています。私は44年前からクロワッサンをお店で作っていたが、40年前にフランスに行って、現地のクロワッサンを学んでからは、三日月型は作らなくなりました。
クロワッサンの食べ方
フランスでは、朝食に茶碗のような容器に、あったかい牛乳とコーヒーを一緒に入れて、クロワッサンやブリオッシュなど、すべてそれに付けて食べます。日本では見たことのない食べ方をしていました。日本にはない習慣ですが、試食の際には、エキストラコーヒーさんよりカフェオレのご提供がありますので、ぜひ試してみてください。日本ではまだまだそのまま食べるか、サンドイッチで食べるかがほとんどかと思います。

続いて、各シェフのお話しです。

「クロワッサンのこだわり」

フランスのバターは発酵バターが多い、当時日本ではあまり聞いたことがありませんでした。通常のバターと発酵バターは全然違います。おいしいクロワッサンの共通点は織り込み回数が少し少ないのではと思っています。今までの3つ折り3回の27層で作っていましたが、4つ折り2回の16層にしたら、配合は同じでも、香りがとてもよかったのです。ほかにはあまりこだわりはありません。(イスズベーカリー井筒さん)

3つ折り3回の27層が一般的ですが、あえてホテルオークラ神戸では3つ折り4回行っています。当時からのレシピであり、代々引き継いでいるものです。層が多いのでクロワッサンらしくなく、パイというよりパンのようになっています。層を詰めているので、クロワッサンを食べる時にあまりパラパラしません。ホテルで食事をする際に衣服を汚さないなどの配慮もあります。しっかりと目を詰めてパンのようにしているので、比べるとよく分かると思います。ぜひ試食の際に確認してみてください。(ホテルオークラ神戸齋藤さん)

サ・マーシュではなんと、クロワッサンは3つ折りを8回しています…冗談です。(笑)層が少ない方が、素材がボケないと思います。お店では本当は3つ折りを2回しています。3つ折りを少なくするのに行き着いたきっかけは、私の尊敬するコム・シノワの荘司シェフがこうしてほしいというものがありました。何度も試行錯誤して作りました。作っては荘司シェフに食べてもらい「違う!」と言われ続けました。ある日「これだ!」と電話がありました。そのクロワッサンは、折り数を間違えて生まれました。折りの回数を忘れてしまうことがたまにあります。間違えで生まれたクロワッサンは、サクサク感とふわっとした触感を持ったもので、荘司シェフの名前である「索(さく)」という商品名になりました。サ・マーシュで売っているクロワッサンは80%米粉を入れていることで、よりバターの香りが強調され、パリパリ感ともちもち感の極端な味わいを楽しめます。(サ・マーシュ西川さん)

お店のクロワッサンは3つ折りを3回の27層をベースにし、菓子パンに近く豪華な配合になっています。今日準備しているクロワッサンは、今回特別に作ってきたのでお店のものとは異なります。クロワッサンを作った経験のある方はいらっしゃいますか?失敗をしてしまったりと結構難しいと思います。専門的になりますが、うまく作る方法としては、バターの特性、可塑性温度帯(指で押して戻ってこない、その形をとどめること)を知ることだと思います。バターは13度から15度になります。ぜひ参考にしてください。(ケルン壷井さん)

 

 

おいしい食べ方
はちみつを紅茶に溶かしてクロワッサンを浸して食べる、バターの風味とちみつと紅茶のフレーバーが、口の中で楽しめる感じです。ぜひ試してみてください。(ケルン壷井さん)

食べ方というよりアレンジですが、クロワッサンを電子レンジで軽く温めて一枚ずつ層をはがします。はがしたものをトースターなどでこげないように低い温度でゆっくり乾燥焼きします。そしてアイスクリームを間に挟んでミルフィーユ状にします。脂っぽくなくて、サクサクでとてもおいしいです。簡単に家庭でもできるので、デザートなどにぜひお試しください。(サ・マーシュ西川さん)

ホテルということなので、朝食にクロワッサンを食べていただくことが多いです。朝食メインに、いろいろ食べれるように小さくサイズにしています。他のいろいろな料理と一緒に食べてもらいたい。また3つ折り4回の味を楽しんでほしいと思います。ホテルならではの味、朝食として楽しんでください。(ホテルオークラ神戸斉藤さん)

クロワッサンサンドがおすすめです。クロワッサンは西洋風でないといけないのかと思われがちですが、ポテトサラダ、ハム、卵マヨネーズ和え、キムチなどもサンドしても合うと思います。カリカリのベーコンなどもおいしい、特にこだわらなくてもなんでも合う、バリエーションがいろいろあるところが良いと思います。(イスズベーカリー井筒さん)

質疑応答
質問:イスズベーカリーさんのチーズクロワッサンがすごく好きで、どのように焼いているのですか?

お店の中でもクロワッサンとしては少し値段が高いのですが、チーズクロワッサンはよく売れています。あるメーカーのチーズスプレッドを絞って生地に巻いて、ピザに使うチーズをのせて焼いています。家庭では手に入りにくいと思いますが、普通のプロセスチーズで、クリームチーズで、どんなチーズでもクロワッサンは合うと思います。カマンベールチーズもいいと思いますので、ぜひ試してみてください。(イスズベーカリー井筒さん)

質問:自分でパンを作るときに北海道産の小麦を使っているのですが、外国産の小麦と国内産の小麦の違いはありますか?

外国産の小麦は、土壌が乾いており、気候が涼しいので、硬質小麦ができやすい環境です。国内産の小麦は、土壌の水気が多く軟質小麦ができる環境です。日本ではお米作るよりも小麦作るほうが難しいです。タンパクの質の違いで、発酵した時の膜の張り方や、口どけの良さに差が出ます。軟質小麦は膜が薄くなりにくいが、口どけは良いです。硬質小麦は膜が薄く風船みたいになり、ボリュームが取れやすい、口どけはもう少しという感じです。(ケルン壷井さん)
 

 

まるで漫才のようなシェフたちのクロワッサントーク、4店舗のクロワッサンを試食食べ比べと大変盛り上がりました。クロワッサンひとつでもそれぞれのお店では作り方やこだわりが異なります。「3つ折り3回の27層」が参加者の頭から離れないキーワードになったのではないでしょうか。これからパンを楽しむ1か月「KOBEパンのまち散歩」が始まります。ぜひマップを手に神戸の街を散歩してください。

KOBEパントーク2015
http://kiito.jp/schedule/event/article/14043/

神戸 PANPO
http://kiito.jp/schedule/event/article/14045/