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神戸スタディーズ#5 「神戸港からの眺め」 レポート

「神戸スタディーズ」の第5回目を開催しました。
今回は、2017年に神戸港開港150周年を迎えることにちなみ、「港」を、さらに、センターが活用する旧神戸生糸検査所の建物が、近代日本の生糸輸出業において重要な役割を果たしていたことから、「生糸」「絹」をキーワードとして、異なる知見を持つ3人の講師をお招きし、多角的な視点からお話を伺うことにしました。


2017年1月12日(木)
第1回「油彩画が物語る神戸港の歴史」


第1回は、元・神戸市立博物館の中村善則さんをお招きしました。在職中に神戸市立博物館に寄贈された1枚の油彩画と、制作にかかわった生糸輸出商や生糸貿易について調査をされたお話を伺いました。

中村さんは、もともと考古学が専門で、神戸市立博物館の準備室時代から、同館が所蔵する国宝の銅鐸の担当として入られたそうですが、この《神戸港眺望》が忠実かつ正確に往時の神戸港の様子を描き留めていたことに興味を持たれ、寄贈元のことや、神戸の生糸輸出の歴史などを調査することに。

絵画に描かれた神戸~台湾・基隆を結ぶ貨客船について、絵画の寄贈元である神戸生糸取引所に寄贈したと伝えられる会社・旭シルクの創業者で、神戸の生糸輸出業の立役者である小田萬蔵氏について、絵画の描かれた風景の範囲から、どの建物の何階から描かれたものかも見当をつけ、そのビルの5階には、旭シルクの事務所があった場所であったこと、66万人の入場者があったと記録されている、水上警察署や湊川公園を会場とした「日本絹業博覧会」について、調査した流れも含めて、スライドを交えて生き生きと語ってくださり、港易で活気づく神戸の姿が浮かび上がってきました。

ひとつのモノを起点に、さまざまな証拠や資料を集めて、モノの来歴やその時代の背景を読み解き明らかにしていく、まさに学芸員ならではの調査手法によるお話は、たいへん興味深いものでした。



2017年1月21日(土)
第2回「神戸 絹の道」



第2回は、神戸ファッション美術館の「神戸 絹の道」展の見学と合わせて、同展の共同企画者である眞田岳彦さんのお話を伺いました。
今回の神戸スタディーズは、「生糸」「絹」というテーマにお互い共鳴した神戸ファッション美術館と眞田さんとの企画連携を行いました。第2回目の開催日は「神戸 絹の道」展開催初日。神戸ファッション美術館でも同展のオープニングイベントとして位置付けていただき、共催で開催しました。

当日の開催内容は、多岐にわたる充実したものとなりました。眞田さんのこれまでの活動紹介からはじまり、「神戸 絹の道」展開催にあたって行った調査を、展示を巡りながら、同展の担当で、眞田さんとともに調査に携わった神戸ファッション美術館学芸員の次六尚子さんとともに解説していただきました。展示では、取材時の人々との交流や、見えてきた衣服文化、養蚕から摘み糸、織物、輸出まで、絹がたどる道が、とても丁寧に紹介されていますが、解説付きで分かりやすく見ることができました。
また、展示に資料提供された、養父の地域おこし協力隊の中島明日香さんからは養蚕の過程の解説や、第1回目の講師・中村善則さんからも資料収集にまつわるエピソードもお聞きできました。
後半の、モデレーターを務めたセンター長・芹沢高志との対話では、地域とアートの関係など、眞田さんの制作活動にもつながる大きなテーマでの話がなされました。


また、中盤では、KAVC x CAP x KIITO x F美の連携企画「Marching KOBE」のプレイベントでもある本企画を盛り上げようと、KAVC、KIITOのスタッフが出張し、参加者に養父の桑茶と桑ジャムのふるまいを行いました。おいしいドリンクとともに4館のイベント情報をお届けし、地域の施設をより楽しんでいただけるような機会を提供しました。



2017年1月26日(木)
第3回「神戸横浜 絹『もの』がたり」



第3回は、視点を広げて、横浜との比較、また、生糸だけでなく絹製品についてのお話を、横浜市が所蔵する輸出用スカーフ約12万点の調査研究に携わる山﨑稔惠さんからうかがいました。

元をたどると明治以前に輸出が始まっていたという日本のスカーフ「手巾(てはば、しゅきん)」。日本初の洋装絹織物ブランドを手掛けた横浜の貿易商・椎野正兵衛による、質の高い美しいハンカチーフから、絹手巾輸出好況となるにつれて市場は安く大量に製造する方向に走り、需要が衰退していくまでの流れを豊富な資料を交えて俯瞰していきました。また、当日は、S.SHOBEY SILK STOREの復刻版のスカーフと、粗製濫造時代の外国人受けの良さを狙ってデザインされたスカーフを持参いただき、その大きな違いに直接触れることができました。
多くの人が知るところですが、横浜が関東大震災により打撃を受けた直後に、絹物の輸出業も拠点を神戸に移し、神戸市立生糸検査所(KIITOの旧館にあたる建物)も大忙しであったようです。新聞資料などから見て取れる、神戸と横浜のせめぎあいの様子も紹介いただきました。


「港」「生糸」「絹」、いずれも大きなテーマで、簡単にとらえきれるものではないことを実感しつつ、各回それぞれの視点から、その深さの一端を知ることができました。引き続きさまざまな切り口から、それぞれのテーマについて掘り下げていきたいと思います。なお、本企画の内容をまとめた冊子を制作予定です。春には完成予定ですので、ぜひご覧ください。



神戸スタディーズ#5「神戸港からの眺め」
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2017.2.15

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