お知らせ・レポート

アーティスト・イン・レジデンス

2016年10月14日(金)

ちびっこうべの子どものまちの中に作られた「てんぐバックスカフェ」を会場に、キュレーター/鳥取県立博物館主任学芸員の赤井あずみさんをお招きして、KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家の東方悠平さんのトークイベントを開催しました。



当日は、赤井さんの「ホスピテイル」のコンセプトとこれまでの活動紹介・これからの展望や、東方さんの、今回KIITOで行った子どもたちとのプロジェクトにつながる過去作品の紹介など、充実したお話しをお伺いできました。レポートでは、それらの活動紹介を踏まえた後半の対談部分の一部を紹介します。



役割からはみ出させる
東方:ホスピテイルは、アートに関係のない人たちが関わってくる状況がおもしろいと思います。また、本を読みに行ったり、庭いじりに行ったり、鑑賞する以外のレイヤーがたくさん開かれていますよね。こういう場所で、介入、出会い、関わりがあると、思ってもみないようなことが生まれるんじゃないかと思いました。

赤井:赤井:美術館のような場所では役割が分かれていて、なかなか線が超えられない。まちの中のプロジェクトは、フラットに人と出会えることがいいと思っています。
いくつかのレイヤーをつくることは、意識してやっているところです。それらが互いに浸透しあう場所になると面白いですよね。現代美術というとシャッターを閉じられてしまうのは、地方に限ったことではなくて、例えば東京で展覧会のオープニングパーティに行っても、けっきょく来る人がいつも一緒だったりする。誰に向けてやってるんだろう?と思ってしまう。それに比べたら、可能性があるのではないかと思います。

東方:美術館は、鑑賞者もお客さんとして行くから、鑑賞が能動的になりにくいという側面があると思います。役割が分割されていると、なかなかそこからはみ出てこない。自分のことや、その役割だけで忙しくていっぱいになってしまいますよね。

うっかり感
赤井:「うっかり感」って大事ですよね。仕組みづくりとはまた違いますが、うっかり出会って、はまっちゃうようなことが起こりやすい状況がプロジェクトの醍醐味ですし、それが可能となるコミュニティのサイズってあると思うんです。
ちびっこうべやユメミセは、仕組みがしっかりデザインされているようですが、てんぐバックスカフェは逆に、東方さんが一応仕組みを考えてはいるけど、どんどん変わっていくのが、すごくおもしろいなと思いました。その方が自然だし、実際の社会と近くて、自分で考えて変えていけるんだ、って気づいたりできますよね。

東方:子どもがダンスの練習に飽きてきた時に、ワークショップ会場に出しっぱなしだった道具を使って、「てんぐ銃」というのを勝手に作りだして。天狗の長い鼻が銃身に見立てられていて、先から玉が出るんです。本番ではそれを使ってイベントを勝手にやりだして、はじめに予定していたダンスショー以外のものが自然発生的に発展していきました。

赤井:子どもに対して、こういうことがやりたい、という思いは何かあるんですか?

東方:ナンセンスなルールを課して、一定の制限下から出てくる思いもよらない発想をさせたいという気持ちはあります。自由に何でもいいよって言われると、むしろどこかで見たり聞いたりしたものに寄ってしまうんですよね。あまりにナンセンス過ぎると無理やりやらせる体育会系の部活経験による気づきみたいなものに寄っていってしまうんですが。だから子どもが自発的に、なんだかわからないけど夢中になってしまう、やり込んでしまう、考えてしまう、みたいな状況を作り出したいと思っています。

赤井:子どもがどこまでわかっているかわからないですけど、ここまで13人が付き合ってくれているのがすごいですよね。
東方:自発的にと言うよりは、僕につきあってくれている感はたしかにありますね。
赤井:途中で来なくなってもおかしくないじゃないですか。笑
答えのない体験をするっていうのがいいと思います。


※この内容は、今春完成予定の本プログラムの成果冊子にも収録いたします。


てんぐバックスカフェから考える 「まち」に介入するアートの可能性(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016)
開催概要はこちら

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016招聘作家・東方悠平さんによる「てんぐバックスカフェをつくろう!!」の、追加ワークショップから、まちオープン日までをレポートします。


2016年10月1日(土)、2日(日)

8月に造形ワークショップ、9月にダンスワークショップを行ってきた本プログラム。9月のワークショップ終了時点で、もう少し練習や作業が必要かと判断し、10月1日、2日に追加ワークショップを行いました。2日とも、ダンス練習と造形物制作を半々で行いました。
通常のてんぐダンスは1回につき3~4人が踊るものになりますが、10月8日のオープニングイベントと、15日だけ、「てんぐダンスショーDX」と題し、まちの中央に設置された大きなステージで子ども13人全員が一緒に踊る、まさにデラックスなダンスショーが予定されているので、大きなステージとカフェ内のステージ、両方でリハーサルを行いました。


この日、ほぼ設営が終わった状況のユメミセや、てんぐバックスカフェをはじめて見る子どもたち。興味津々にいろいろなところを見て回っていました。
追加の造形物制作では、大きな紙を広げて、てんぐの絵を描きました。カフェの壁やテーブルに設置するものです。大きな紙に自由に絵を描くという体験が、なかなか普段はできないことのようで、はじめは恐る恐るでも、とても楽しそうに描いていました。

10月8日(土)
ちびっこうべオープニングイベントの日です。ここで、全員で「てんぐダンスショーDX」を披露しました。
ステージの両脇には、サーキュレーターで膨らんだバルーンてんぐをすでに設置済み。観客の期待をあおります。
登場にも演出がありました。自分で作ったてんぐのお面とエプロンをつけ、お神輿を担いでステージ上にあがります。数人はホイッスルを吹きながら。
お神輿はスチールのフレームに、バルーンてんぐが載っています。

撮影:辻本しんこ 撮影:辻本しんこ

撮影:辻本しんこ

お神輿をステージ中央の後ろに置き、代表者として参加者の一人、たっくんが堂々とご挨拶。その後、音楽がスタート。2分半ほどのダンスが披露されました。
音楽は東方さんがネット上で探したフリー素材のもので、音楽に合わせて東方さんが振付を考えました。振付するのは初めてのことだそう。カフェミュージックのような軽妙な音楽に、カフェでドリンクを注文し、サーブするときをイメージした動きや、真似したくなる顔フリフリ、リズミカルな手拍子、足拍子などが組み合わされ、なかなか中毒性のある独特なダンスです。そこに、明滅する照明がドラマチックさを付加させていました。
最後にももう一人、ゆさちゃんがかわいい挨拶をしてくれて、無事、オープニングイベントを盛り上げるというお役目を終えました。


10月9日(日)、10日(月祝)、15日(土)、16日(日)
まちがオープンする4日間です。練習してきたダンスのほかに、カフェでのドリンク提供や両替、入国ゲートの仕事に取り組みました。また、この4日間は、ダンス以外の部分を、当日参加の子どもたちと半々で一緒に仕事をしました。

●オリジナルメンバーの仕事
・ダンサー:ステージでダンスを踊る
・カフェ:てんぐドリンク(4種)を販売
・両替:「キート」(子どものまちの通貨)と「てんぐ」(てんぐバックスカフェ内だけで使える通貨)の紙幣を両替する
・出入国:てんぐバックスカフェに入国する人にパスポート(似顔絵を描ける枠付き)を発行、出入国スタンプを押す



撮影:森本奈津美
撮影:衣笠名津美 撮影:衣笠名津美
撮影:辻本しんこ 撮影:辻本しんこ

●当日参加する子どもたちの仕事
・カフェ、両替、出入国:オリジナルメンバーと同じ
・バックミュージシャン:てんぐダンスの音楽にのせて楽器を演奏して盛り上げる
・PA:てんぐダンスの音楽を再生し、ダンス中の照明を操作する
・コースターづくり:カフェのお客さんにコースターづくり体験を提供する
・幕間のパフォーマー:ダンスの合間に自分の得意芸を見せる

撮影:中村寛史 撮影:辻本しんこ


カフェで販売したドリンクは4種類。
・てんぐのなみだ(緑茶) 10~15てんぐ
・てんぐのちしお(ローズヒップティー) 10~15てんぐ
・てんぐのはつこい(レモネード) 10~15てんぐ
・てんぐのゆ(白湯) 1てんぐ

撮影:衣笠名津美 撮影:辻本しんこ


カフェの空間は、ワークショップで子どもたちが作った造形物を活用しながら、東方さん自身が作ったものも加えて、東方さんが構成しました。巨大なバルーンてんぐ、農業用の大きな黒ビニールで覆って作られた壁、クラフト紙に大書したTENGUBUCKS CAFEの字やロゴと、子どもたちの個性あるてんぐの絵が組み合わさっています。
まちオープン日までに、パイプや発泡スチロールの筒、プラダンの折れ目、ロートなどを、流水が絶妙なバランスで通過して、循環していく装置がカフェの中央に作り上げられていました。
照明を減らして全体的に薄暗い空間になっていて、ダンス公演時の照明が映えます。そこに、クッションとローテーブルが点在しています。

撮影:衣笠名津美 撮影:辻本しんこ
撮影:辻本しんこ 撮影:辻本しんこ


4日間のあいだは、大人の想定通りでなく、子どもの動きやアイデアによって変えた・変わったこと、独自に生まれたことが多くありました。

出入国:入国時に「入国税」を徴収する予定でしたが、特に最初の方はみんなお金を持っていないためにカフェに入ってくれず、税を撤廃し、無料に。
ダンス:時間を決めて、定期的に公演を行う予定でしたが、お客さんの入り状況を見てフレキシブルにはじめることにしました。結果、大人が来場する「ちびっこ観光ツアー」が来るタイミングに合わせることが多くなりました。
両替:レートを頻繁に変動させる予定でしたが、両替のシステムが理解されにくく、1キート=10てんぐのまましばらく続きました。
カフェ:ホットのみ提供の予定でしたが、コールドの要望が多く、いつのまにかコールドメニューが生まれていました。
バックミュージシャン:段ボールドラムやプラカップマラカスはダンスを大きく盛り上げてくれました。後半はオリジナルマラカスを作ることから始めて、充実感倍増。
幕間のパフォーマー:十八番を持っている出たがりな子どもの出現を期待していましたが、初日に、男女でノリノリのコントを披露してくれた奇跡のコンビ以外は、シャイな子どもたちが多く、この仕事は廃業に。

撮影:衣笠名津美
撮影:中村寛史 撮影:中村寛史

てんぐ銃:てんぐの鼻(=銃)から出る玉をキャッチしたら、素敵な特典がもらえる!というイベントを子どもが独自で考案。銃と玉を段ボールで自作して幕間に開催し、奪い合いになりそうなほど大人気でした。特典は、てんぐドリンク一杯無料や半額割引など。
おばけ屋敷:カフェと外のエリアを分かつ可動壁に、機材を収納する扉付きのスペースがあることを発見した子どもが、ここでお化け屋敷を開催することを考案。配線を自分たちで勝手にやり、宣伝活動も熱心に展開し、多数の集客に成功。おばけ屋敷目当てに入国する子どもも多かったです。壁の隙間にカフェをしのぐ行列ができていました。稼ぎも多かった様子。
クジ引き:おばけ屋敷が大枚を稼いでいることに触発された子どもがクジ引きを考案。箱とクジを自作し、大当たり~ハズレまでを設定。これもそれなりのお客さんを得られたようです。

4日間とも、一日の後半に向かうにつれて、お客さんが増えて大忙しの状態でした。
事前ワークショップでは、恥ずかしがったり、集中力が途切れて、なかなかダンスを最後まで踊ることのなかった子どもたちですが、本番となると、お客さんに来てほしい、という思いや、オリジナルメンバーとしてのプライドが働くのか、大きな声でお客さんを呼び込み、ダンスをこなし、独自のイベントまで起こす、というアクティブさを見せてくれました。


15日に行われた2度目の「てんぐダンスショーDX」は、子どものまちオープン真っ最中のため、ステージの周りを本当にたくさんの観客が取り囲んだ状態に。華々しい舞台でした。

撮影:辻本しんこ

撮影:森本奈津美 撮影:森本奈津美


ちびっこうべのまちに今までになかった、まったく異質な要素としての存在感を強烈に放ったてんぐバックスカフェ。東方さんは、ちびっこうべが、すでにシステムができあがっていてきっちり作られているように感じたそうです。そこで、それと対比させられるようなものを作って、まちの中に介入し、影響を及ぼしていくようなものを作っては、という着想から今回のプロジェクトが練り上げられていきました。
今回、ちびっこうべをさらに複雑にさせるこの異質な環境を訝り、浸り、遊ぶ、百人百様の子どもたちが見られました。また、笑い、不条理・ナンセンス、といった東方さんが作品制作において注目しているテーマを、まったく自然に取り込んで、独自に展開させてくれていたようにも感じられました。
今回の体験が、子どもたちの中でじわじわと育まれ、新しい気づきや創造に向かう、何かの大きい力となるかもしれません。それが見られるかもしれない未来に期待させられてしまうプログラムでした。

プログラムはすべて終了しましたが、記録冊子を制作予定です。引き続き楽しみにしておいていただけたら幸いです。


撮影:衣笠名津美、辻本しんこ、中村寛史、森本奈津美

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016 東方悠平 てんぐバックスカフェをつくろう!! 開催概要
「ちびっこうべ2016」 特設サイト
★特設サイト内に、東方さんによる、滞在中やワークショップ時のこぼれ話を掲載しています #てんぐバックスカフェ

2016年9月18日(日)、22日(木祝)

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KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016招聘作家・東方悠平さんによる「てんぐバックスカフェをつくろう!!」ワークショップの、ダンスワークショップの回を開催しました。

前回の造形ワークショップでは、カフェの内装に使う造形物や、ダンスの衣装となるお面やエプロンを作りました。
今回はオープニングイベントやカフェの中で披露する「てんぐダンス」を練習します。ダンスは東方さんによる振付です。

9月18日
まずはラジオ体操、人間知恵の輪ゲームを行いました。
前回のワークショップから約1か月がたち、髪型が変わったり、ちょっと成長して見える子どもたち。「ちょっと知ってる人に久しぶりに会う」このシチュエーションに子どもたちが少し緊張して人見知りしてるようすを東方さんは感知し、(子どもたちの緊張が)うつって緊張してきた、と笑っていました。みんな、体操やゲームで体と緊張がほぐれたでしょうか。

そのあと、ダンスの中で、それぞれがオリジナルのキメポーズをとるパート用に、一人ずつポーズを考えて決めました。
また、3人組で行う振りのため、3~4人組に分かれました。分かれると、「チーム名を決めたい」と子どもから提案があり、チーム名を決定。「チワワ」「カラーズ」「HMYR」「きのこブラザーズ」という個性が際立つネーミングになりました。

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この日は基本的に、パートごとに練習。お客さんと店員のやりとりをイメージした振りの部分は「コーヒー」「できました」「はいどうぞ」などと言葉を交えてストーリーで覚えられるように工夫しました。




9月22日
最初に参考資料として、東方さんが集めている、日本の各地で行われる天狗が登場する祭礼や踊りを少し見てみました。「てんぐダンス」に似た踊りの動きがある地方も!

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東方さんが通しで踊った様子を記録したお手本動画を見せつつ、通しで練習。
何回か踊った後に、すでに1階ホールに完成している、オープニングイベント用のステージに立ってテストで踊ってみました。
全員が並ぶとステージがいっぱいになってしまったので、フォーメーションを再検討する必要がありそうです。

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練習しながら、造形ワークショップで作った旗がお気に入りで、旗を振る役を望む子どもがいたので旗振りのパートを作ったり、造形物の素材として置いていた棒を華麗に操るので、聞くとバトンを習っているというのでバトン役を作ったり、ワークショップ中に、子どもに合わせたダンスのアレンジも行われました。

何度も踊って、チェックして、を繰り返し、3時間のワークショップの中で、集中力も途切れそうになるのを、ハンカチ落としや休憩で補いながら、2日間を乗り越えました。
振りはどうにかみんな覚えたようですが、全員で合わせたり、立ち位置を守ったりするのにもう少し練習が必要そうです。


まだ追加ワークショップがありますが、本番も近づいてきています。
観客のみなさんにすてきな「てんぐダンス」を披露することはできるでしょうか?



撮影:坂下丈太郎(9月22日分およびinstagramを除く)

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016 東方悠平 てんぐバックスカフェをつくろう!! 開催概要
「ちびっこうべ2016」 特設サイト
★てんぐバックスカフェのほか、「ちびっこうべ2016」ワークショップのようすをinstagramで公開中! @chibikkobe

2016年8月9日(火)~12日(金)

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KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016の招聘作家として、美術家の東方悠平さんをお迎えしました。10月に行われる子ども向けのクリエイティブ・ワークショップ「ちびっこうべ2016」の「ユメミセワークショップ」と足並みを揃えるようなかたちで、「てんぐバックスカフェ」を子どもたちと作り、実際に運営する、というプロジェクトを展開します。

てんぐバックスカフェ」は、東方さんが2013年に制作した作品のひとつ。その当時まだスターバックスカフェの出店がなかった鳥取県に、一足早く上陸させた、期間限定のカフェでした。(2013年、鳥取県倉吉市灘手地区で行われているアーティスト・イン・レジデンスに招聘された際に制作)

今回、子どもだけで運営し、子どもしか入れない「ちびっこうべ」のまちの中にオープンさせる「てんぐバックスカフェ」は、さまざまな新しい要素が盛り込まれています。
8月に造形ワークショップ、9月にダンスワークショップを行い、10月に控えるオープニングパフォーマンスと、まちオープン期間のカフェ運営に向かって準備を進めます。


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8月9日:オリエンテーション
合計13人の子どもたちと東方さんが初めて顔を合わせました。まずは東方さんから、自己紹介と作品紹介、てんぐバックスカフェとは何か?、これから何をするのか?、が語られました。子どもたちも簡単に自己紹介をしました。
一方的に話を聞いているだけでも退屈してしまうので、さっそくカフェに必要なものを作りはじめました。ダンスの衣装にもなる、エプロンです。てんぐの顔が描かれていて、鼻の部分は手が通せるように筒状に長くなっています。この鼻はダンスの振付けにもかかわってくるとのこと。
素材はビニールです。さまざまな色をしたビニールを切ったり貼ったりして作ります。すぐに作り始める子も、いくつかデッサンをしてから制作にかかる子もいて、目をキラキラさせたり、ヒゲに切り込みを入れてもじゃもじゃにしたり、作るプロセスもできあがった形も異なった、それぞれのてんぐエプロンができあがりました。
子どもたちには、ビニールでこんなことができるんだ、人によって全然違う顔ができるんだ、と、さまざまな驚きや発見があったようです。



8月10日~12日:造形ワークショップ
カフェに必要なさまざまな造形物を作りました。
必ず作るのは、てんぐのお面。ダンス用と装飾用で、一人につき、笑った表情と怒った表情の2種類を作ります。ボウルに新聞紙をぐちゃぐちゃにしながらあてて、緑色のテープでぐるぐる巻きにすると、お面のベースができあがります。そのあと、眉毛、目、鼻、ひげ、口、帽子、髪の毛をつけます。最後に後ろにゴムひもを通して被れるようにしたら完成です。


1個目で作り方をつかんで、2個目で工夫をする子が多かったです。青くしたり、髪を三つ編みにしたり、鼻を先太りにしたり。子どもの発想力に驚きます。
進み具合によって、うちわ/でかてんぐ/旗/コースター/てんぐメダル なども作りました。



数日にわたって、さまざまな緑色のてんぐを作ってきた子どもたち。作り方も会得したようです。「てんぐ」の定義やイメージが明確にない状態で作っていますが、なんだかすっかり受け入れられたようす。てんぐの不思議なところです。

2日目には、お互いの交流を深めるため、東方さんの地元・北海道でだけ普及しているという「大根抜きゲーム」を行いました。
みんなで腕を組んで、壁に背をつけて座ります。鬼?的な1人が、任意の人の足を、大根のように引っ張って抜きます。壁側の人たちは、抜かれないように腕を強く組んで抵抗します。抜かれた人は抜く側に回ってどんどん抜いていきます。



「ぜったいに盛り上がる!」という東方さんの言葉通り、悲鳴・歓声があがる大盛り上がりに。学校も年も違う子どもたちが顔を合わせて遠慮がちだった雰囲気が一転、ぐっと距離が縮まったようです。


4日間それぞれ、サポーターのみなさんに子どもたちの制作のお手伝いをしてもらいました。今回ちょっと特別だったのは、チュニジア人のSelim Ben Abaさんが通しでその中に参加してくれたこと。日本に2か月ほど滞在する期間中に、ボランティア活動がしたい、とのことでKIITOに問い合わせをしてくれたので、本ワークショップで受け入れました。

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「てんぐ」を知ってる?と聞くと、『名探偵コナン』で見たことがあったそう。日本語が話せないのでコミュニケーションの方法に戸惑う時間もありましたが、そこは造形ワークショップならではで、手を動かしたり、かたちをつくったりしながら、子どもと上手にコミュニケーションを取ってサポートをしてくれました。最後のほうにはお面作りの教え方を完全にマスター。目やひげのかたちは、作るごとに新しいアイデアを提案してくれて、さすがチュニジアの美術大学に通っているだけのことはあります。角をつけよう、と彼が提案すると、子どもが「それじゃあ鬼になっちゃうよ」と指摘する場面があり、てんぐの定義の境界線が見えたような、おもしろい瞬間もありました。

造形ワークショップは今回で終了し、次回9月は、カフェの中で披露するダンスを練習します。いったいどんなダンスなのでしょうか!?


撮影:坂下丈太郎(Instagramを除く)

KIITOアーティスト・イン・レジデンス2016 東方悠平 てんぐバックスカフェをつくろう!! 開催概要
「ちびっこうべ2016」 特設サイト
★てんぐバックスカフェのほか、「ちびっこうべ2016」ワークショップのようすをinstagramで公開中! @chibikkobe

2016年6月17日(金)~7月24日(日)

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撮影:加納俊輔


KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015-2016の招聘作家として、写真家の長島有里枝さんをお迎えし、本プログラムの成果発表展として、「縫うこと、着ること、語ること。」を6月17日から7月24日まで開催しました。

2015年10月末から短期滞在を重ねて、本展での発表のために、取材や制作を行いました。展覧会では、古着を素材にしたタープ(キャンプ用の日よけ)と、滞在制作時に撮影した写真が大小さまざまに約40点ほど展示されました。
本作品は、2016年3月に、東京のMAHO KUBOTA GALLERYで発表された、母親との共作で作られたテントの作品の姉妹版となるものです。
タープの制作は、神戸に住む、彼女のパートナーの母親との共同制作によって作られました。タープの素材となる古着は、神戸在住または在勤の女性に、「捨てたいのに捨てられない服」はありませんか、と尋ねて集めました。服をもらう際、その服のエピソードを取材し、その服を身にまとった写真を作家が撮影した上で、その写真や、作家自身の古着と物々交換することで集めました。
滞在制作半ばの2016年3月26日には、キュレーター、批評家の竹内万里子さんを聞き手に迎えてアーティスト・トークを開催し、長島さんのこれまでの作品や、今回の制作についての思いをお話しいただきました。
アーティスト・トークの様子は、一部を再編集して、KIITOの季刊誌「KIITO NEWSLETTER」vol.13に掲載しました。

会期中は、神戸市内に限らず、遠方からも多くの来場者に恵まれました。アンケートに共感の思いをつづってくださる方も。
近年、執筆活動でも高い評価を受ける長島さん。本展でもテキストの展示を検討していましたが、最終的には展覧会とは異なるかたちで触れてもらうことを選択しました。これから制作する成果冊子で、今回の滞在制作の違った側面を見てもらうことができそうです。
というわけで、展覧会は終了しましたが、まだ楽しみは続きます。年内完成を目標にしています。完成時には報告しますので、ご期待ください。


関連企画
長島有里枝アーティスト・トーク「女性の話/about women」3/26開催、ゲスト:竹内万里子(キュレーター、批評家、京都造形芸術大学准教授) 開催概要レポート

参考資料
KIITO NEWSLETTER vol.13(3/26開催のアーティスト・トークの一部を再編集して収録)

主なメディア掲載記事
「神戸にて」p.56-63, 4/21,「歩いてめぐる神戸本」、京阪神エルマガジン社(※本人によるエッセイと写真)

「写真家・長島有里枝個展 女性の物語、縫い合わせ」7/13, 毎日新聞大阪夕刊、清水有香
http://mainichi.jp/articles/20160713/ddf/012/040/007000c

「写真家・長島有里枝さん 思い出の服テーマに個展」7/15, 神戸新聞、堀井正純
http://www.kobe-np.co.jp/news/bunka/201607/0009286461.shtml
(全文を読むには会員登録が必要です)

フォトレポート、7/19, KANSAI ART BEAT、Reiji Isoi
http://www.kansaiartbeat.com/kablog/entries.ja/2016/07/kiito_nagashimayurie.html

「写真家・長島有里枝 “女性”という役割について考え、表現することで社会とゆるやかにつながっていく」7/24, 雛形, 孫奈美(インタビュー)
https://www.hinagata-mag.com/report/12561

「ARTIST INTERVIEW 長島有里枝」p.137-151、9/17、「美術手帖」2016年10月号(美術出版社)、聞き手:中村史子
http://www.bijutsu.press/books/2016/09/-201610.html


長島有里枝「縫うこと、着ること、語ること。」(KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015-2016成果発表展)
開催概要はこちら

2016年3月11日(金)~4月24日(日)



KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015 クロエ・マイネックの成果発表として、「Kobe Music Memory Box」の展示を行いました。


デザイナー・インベンターのクロエ・マイネックは、2015年10月に開催した、高齢社会におけるクリエイティブな生き方を提案した企画展「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」に合わせて、約1か月間神戸に滞在して、神戸の人たちの思い出を集めた「Kobe Music Memory Box」制作のためのリサーチを行いました。本展は、滞在終了後に英国ブリストルで制作を続け、完成させた作品を公開・展示したものです。KIITOのこれまでのプロジェクト・アーカイブとなっている1階+クリエイティブ・スタジオの一角にコーナーを作って展示をしました。



合わせてリーフレットも制作。Kobe Music Memory Boxの概要説明、今回収められた思い出と音楽の一部が掲載されています。(→PDF版はこちら)

会期中には、取材にご協力くださったご家族や施設の方にもご来場いただきました。取材の成果が実際に目の前でかたちになっているようすを喜んでくださいました。ミニチュアになっても、ひと目見てこれが思い出の品だと分かったわ、と言ってくださる方もいらっしゃいました。


会場にノートを設置して、来場者の方から感想やフィードバックをいただきました。音楽再生のシステムについて詳細なアドバイスを書き込んでくださった方も。
いただいたご意見はクロエに伝え、これも今後のMusic Memory Boxのさらなる改良に活かされます。

KIITOでのレジデンス終了後も、クロエは世界各地でトークを行ったり、Music Memory Boxを出展したりと研鑽を積んでいるようです。引き続きその動向や進化に注目したいと思います。


撮影:芦田博人(人物の入った2点)/飯川雄大(Kobe Music Memory Box作品カット2点)


KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015 クロエ・マイネック 開催概要
LIFE IS CREATIVE展 クロエ・マイネック アーティストトーク 開催概要レポート
「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」 開催概要


2016年3月26日(土)

KIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家の長島有里枝さんによるアーティスト・トーク「女性の話/about women」を開催しました。

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長島さんは、2015年10月から、神戸に短期滞在を繰り返して、神戸の女性に取材して作品制作を行ってきました。制作は成果発表展を開催する6月の直前まで続きますが、折り返しの時期となる3月の末に、長島さんはこれまでどのような作品を制作してきたのか、神戸でどのような作品に取り組んでいるのかを、一度、作家本人から直接話してもらう機会を、ということでアーティスト・トークを企画しました。

聞き手には、旧知の仲であるという、批評家・キュレーター・京都造形芸術大学准教授の竹内万里子さんをお迎えしました。同世代で、出産を経験し、子育てをしながら仕事もしているという共通点のあるお二人。ざっくばらんな対話のようなかたちで濃密なお話を聞くことができました。


90年代に発表したデビュー作の、家族のヌードのポートレイトを制作した時の意識と、作品がどのように受け止められたか、それを発表した90年代という時代について/その後アメリカに留学して経験したこと、感じたこと/家族との記憶や関係/出産、子育てを経験して気付く事実/作品集『SWISS』について/ここ10年くらい、「女性」にまつわる仕事や作品制作をしていること、その理由/東京で発表されている、母と共作したテントの作品と、神戸でのタープの制作との関係など、初期作品から最新の制作までをご自身のことばで話してくださいました。

今回のトークの内容は、一部を再編集して、4月末発行予定の季刊誌「KIITO NEWSLETTER」vol.13に収録しますので、詳しくは発行を楽しみにお待ちください。そして、そちらを読みつつ、6月の成果発表展をご期待いただきたいと思います。

撮影:飯川雄大



長島有里枝アーティスト・トーク「女性の話/about women」
開催概要はこちら

KIITOアーティスト・イン・レジデンスを起点に生まれた、濱口竜介監督作品『ハッピーアワー』が、第37回ナント三大陸映画祭にて準グランプリにあたる銀の気球賞、および観客賞をダブル受賞しました!
ロカルノ国際映画祭での受賞に続く快挙、心よりお祝い申し上げます。

受賞時の写真はこちらのサイトにて紹介されています↓
濱口竜介監督作品『ハッピーアワー』第37回ナント三大陸映画祭 銀の気球賞+観客賞受賞!!(LOAD SHOW, 2015/12/1)
http://culture.loadshow.jp/topics/happy-hour-festival-des-3-continents/

『ハッピーアワー』関連の情報は下記URLにて引き続きアップデートしていきますので、ぜひご覧ください。
http://kiito.jp/schedule/news/article/13557/

2015年10月22日(木)

LIFE IS CREATIVE展に合わせてKIITOアーティスト・イン・レジデンス作家として招聘したデザイナー・インベンター、クロエ・マイネックさんのアーティストトークを開催しました。

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クロエ・マイネックさんは、「Music Memory Box」(以下MMB)という認知症の方とその家族向けのプロダクトを開発しており、英国でも高い評価を受けているデザイナー・インベンターです。今回は、LIFE IS CREATIVE展の会期中約1ヶ月、神戸に滞在し、神戸版MMB制作のためのリサーチを行いました。神戸の人たちとコミュニケーションを取りながら、双方の経験と今後の発展に活かそうという試みです。

アーティスト・トークでは、前半は、どうしてMMBを作るに至ったか、どのようにブラッシュアップしてきたか、神戸での滞在制作の内容、所感などスライドショーを使いながら話しました。


クロエさんは、英国南西の都市・ブリストルのメディアアーツセンター・WATERSHED内にあるPervasive Media Studioを拠点に活動しています。Pervasive Media Studioはアーティスト、研究者、振付家、リサーチャーなどさまざまな専門を持ったクリエイターが協力し合って新しいものを作っているスタジオです。

認知症の方向けのプロダクト開発に取り組むきっかけとして大きいのは、2012年ごろに、高齢化がこれからの英国の社会課題の中で最も大きなものとなるだろうという報道を目にしたことと、自身の祖母が認知症になったこと。祖母はピアノが得意で、親族を思い出せないくらいになっても、音楽は50曲ほども覚えていたり、口ずさんだりしていたことから、音楽の力を認識するようになったそう。

MMBは、基本的には特定の個人のために作られます。靴箱程度の大きさの箱に、フタの内側に、本人の思い出の写真がいくつか挟むところがあります。
箱の中には、小さなオブジェがいくつか入っておりICチップがついています。箱の真ん中のセンサーにかざすと、オブジェと関連がある音楽が流れだします。好きな音楽がかかると、不安な気持ちがなごんだり、写真と合わせてみると、音楽と関連のある写真を指差したり、音楽が人の感情や記憶にダイレクトに働きかけていることが実感されます。オブジェは鳥、猫、オペラハウス、刺繍糸などさまざま。どんなオブジェや音楽をおさめるかは、本人や家族への丁寧なインタビューを通して、本人が憶えておきたい思い出や、家族に関する記憶と結びつくようなものを選びます。オブジェは思い出の品そのものではなく、レプリカやミニチュアをクロエさんが作っておさめます。オブジェを手に取った感覚も思い出の引き金になるので、素材の違いも重要です。
2012年以降、個人向けや施設向け、レジデンスプログラムの中でなど、さまざまなシチュエーションで制作されてきました。

今回の滞在では、デイセンター、グループホーム、特別養護老人介護施設、個人宅、など、さまざまな介護状況にある方の話を聞き、リサーチを行い、MMBが日本でも役に立つのかどうかの検証を試みました。
リサーチでは、懐かしい音楽を聴いてもらったり、好きな音楽やそれにまつわる思い出を聞いたりしました。また、展覧会の会場内でも、思い出の音楽とエピソードのリサーチシートを設置し、来場者に書いてもらえるようにしました。
印象的だったのは、大工仕事が得意だった90代の男性が、自身が認知症になる前に、テレビで見て知った、ぼけ防止のためのボードゲームのようなものを、ネジと木の板で「ボケボーシ」と名前をつけて自作し、周囲の仲間にもプレゼントしていた、というエピソード。実物を出して、その思い出を話してくれるご家族も楽しそうに話してくださり、家族がとても協力的で助けあっていることが感じられたとのこと。

須磨在宅福祉センター(須磨区) グループホーム「希望の家」(兵庫区)

また、北名古屋の「昭和日常博物館」では、昭和30年代のまち並みを再現し、所蔵品を利用した回想法のワークショップを積極的に行っているということで、視察に行きました。対象は認知症の方に限らないようですが、竹トンボやお手玉で、60~80代の方がすごくいきいきと楽しそうにされていたとのこと。

MMBはまだプロトタイプの段階ですが、帰国後、製品化へ向けて具体的に工場とのやりとりなどを進める予定とのことです。

後半は、実際にMMBをデモンストレーションしてみせた後、来場者との質疑応答を行いました。といっても、質問者のなかには、親が認知症である、介護の現場で働いている、という方もおられ、MMBの利用の可能性について具体的な質問、感想や提案が出て、つっこんだ意見交換のような状況になりました。

介護職の方からは、ケアホームなどに入所されるとどうしても分断されてしまうので、本人のためもあるが介護者のためにも、MMBのようなものがあれば、個別的なケアがしやすく、ツールとして有効だと思う、とのコメントが。クロエさんは、ケアホームでの取材の際、個人の部屋にあまり荷物が持ち込まれていなくて、ものが少ないことに気がつき、思い出の品があるなら1つ2つでも持ち込んでおけば、記憶をよみがえらせる引き金になって有効だと思う、と言っていました。

日本では終活が盛んになってきているから、認知症になる前の備えとして、自分のために作っておく、というのも考えられるのでは、というコメントも。クロエさんは、それは、その人自身が好きなものを入れることができるから、理想的な使い方かもしれない、たとえば70歳の誕生日プレゼントとしてプロモーションするとか。できるだけいろいろな人に使ってもらって、使い道を見つけてほしい。「Music Memory Box」を「Dementia(認知症) Box」としなかったのも、使い方を限定したくなかったのが理由だ、とのこと。

終了後は来場者からアンケートをもらいましたが、丁寧に感想を書いてくださる方が多数でした。クロエさんはアンケート集計に対して丁寧にメモを取っていました。これからの製品開発に活かしてくれることと思います。

滞在期間が約1ヶ月と短かったので、今回は滞在期間内での完成を目標とせず、リサーチに重点を置いて活動しました。帰国後に、滞在制作でのリサーチをもとに、神戸版のMMB制作を進めてもらいます。
2016年2月頃に、完成した神戸版MMBをKIITOの中で展示する機会を設けたいと考えています。またみなさんにも進捗をご報告いたしますので、楽しみにしていてください。


開催概要
KIITOアーティスト・イン・レジデンス2015 クロエ・メイネック
LIFE IS CREATIVE展 クロエ・メイネック アーティストトーク
「LIFE IS CREATIVE展 高齢社会における、人生のつくり方。」

2015年3月14(土)-15(日)



劇団「ままごと」主宰の柴 幸男さん、建築ユニット「NO ARCHITECTS」さんを講師に迎え、各線三宮駅からKIITOに向かう道のりである「フラワーロード」をまち歩きし、地図と小説を作るワークショップを行いました。

 

1日目:3月14日(土)13:00-18:00


まずはウォーミングアップの遊び。ワークショップの拠点となる部屋「303」の室内のみで、「気になるもの/こと」を見つける遊びです。いくつかのポイントが見つかったら、一つを選び、それを自分自身に関連付けて自己紹介をしました。自分にはこんな性格や性質があり、見つけたポイントと似通っているところがある…、あるいは、自分は仕事をする時にこんなことに気をつけているから、このポイントが気になってしまった…など、様々な自己紹介が飛び出します。不思議と、年齢や所属などの情報を紹介し合うよりも、強く印象に残ります。

 


さきほど室内のみで練習した「気になるもの/こと」を、今度はまちをフィールドに行っていきます。3つのチームに分かれ、NO ARCHITECTS さん特製の白地図を手にさっそく出発!KIITOを出てフラワーロードを歩きながら、その都度地図に書き込んでいきます。

 


途中、神戸市役所の展望ロビーに上り、柴さんと合流。歩いてきた道のりを上から眺めつつ、見つけたポイントを報告します。通常地図に書き込まれるのは、建物や道路など「動かない」ものですが、今回はそれらに限らず、その時その場で遭遇したものであれば、後々消えてしまうものでもOK!

 


2時間のまち歩き時間はあっという間に過ぎ、KIITOに戻ってきました。ここからは、またまたNO ARCHITECTSさん特製の、とても大きな白地図が登場。その長さ、なんと7.2メートル!この長い地図上に、見つけたポイントをすべて載せていきます。
オリジナルの地図が完成!同じ場所を歩いていても、気になるポイントは一人ひとり違うのですね。これまで意識していなかった場所に、こんなにもまちの見どころがあったなんて…。

 

2日目:3月15日(日)13:00-18:00


この日もウォーミングアップから始めます。今度は「303」の室内だけでなく、部屋を出た廊下や共用スペースの部分も対象として「気になるもの/こと」を見つけ、昨日とは違うやり方で紹介してみます。
自身を、ポイントを紹介する「案内人」と設定し、ポイントを「人物」に見立てます。その時考えるべき要素は、ポイント(人物)の「名前」、案内人とそのポイント(人物)の「関係性」、性別や性格、どんな歴史を持っているかといった「キャラクター性」。これらの要素をどのように設定するかによって、紹介の仕方はまったく異なるものになります。
ここで取り組んだのは、対象を「観察」し、「設定」を考え、読み手にどのような順番で何を伝えるかという「構成」を考える、ということ。これは、柴さんが演劇の戯曲を考える時の手順と同じだといいます。

 


さてここで、昨日みんなで作った地図に戻ります。地図上に載せたポイントのうち一つを選び、それを主人公に設定して、いよいよ小説を書き始めます。参加者みなさんが主人公に設定したのは、ごみ箱、池に落ちていたたばこ、写真店のアルバイトスタッフ、ノラネコ、彫刻、貼り紙…などなど。丸い形をしたオリジナルの原稿用紙を使い、これまでのワークショップで学んだことを総動員して、それぞれのペースで書き進めていきます。
200字程度書き進めていくごとに、柴さんに読んでもらってアドバイスを受けます。主人公が誰なのか、場所はどこで、時間帯はいつぐらいなのか(朝、昼、夜?)など、小説の基本設定を読み手に分かりやすく伝えるのは、予想以上に難しいことが分かります。これらをしっかり書くためには、まち歩きの時に行った観察が生きてきますね。

 


今回は小説を完結させることよりも、何を主人公に設定したのか、そこにどんなキャラクターを加えたのかといった、物語をつくる視点を持つこと、またそれらを共有することが第一の目的です。ある程度書きすすめた時点で、地図上で主人公がマッピングされている位置に原稿を配置して、参加者同士で小説を読み合いました。
本ワークショップを通じて、まちをこれまでとは違った視点で観察すること、観察を生かして物語を生み出すプロセスを具体的に体験いただけました。
本ワークショップは、柴さんとNO ARCHITECTS さんの制作プロセスの一部でもあります。今回のワークショップ成果を生かして、柴さんによる新作戯曲とNO ARCHITECTS さんによるオリジナルの地図が生み出され、リーフレットの形で配布予定です。リーフレットを片手に歩けば、各線三宮駅からKIITOへの道のりが、これまでとまったく違ったものになるかもしれません。
完成次第ウェブサイトでもお知らせいたしますので、楽しみにお待ちくださいね。

KIITOアーティスト・イン・レジデンス 柴 幸男+ NO ARCHITECTS
ワークショップ「まち歩きでつくる小説と地図」
開催概要はこちら

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