2015/5/11
イベントレポート
2015年5月9日(土)
各界で活躍するトップランナーをお招きする「+クリエイティブレクチャー」、2015年度の第一弾として、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムの館長、マーク・ツェーントナーさんをお迎えしてレクチャーを開催しました。
ヴィトラ・デザイン・ミュージアム
スイス、フランス、ドイツ国境の交点に近いヴァイル・アム・ライン(ドイツ)にある、スイスの家具会社・ヴィトラ社の工場敷地内に設立されたデザイン・ミュージアムです。1989年に開館し、家具、照明器具、プロダクトなど優れたデザイナーの作品を収蔵し、企画展を開催しています。工場敷地内には、フランク・ゲーリーをはじめ安藤忠雄、SANAA、ザハ・ハディド、ヘルツォーク&ド・ムーロンなどによる建築作品が顔を揃えており、デザインや建築を学ぶ人々が世界中から集まる「聖地」としても有名です。
http://www.design-museum.de
デザイン・ミュージアムの歴史
デザイン(design)という言葉が一般的になる以前、応用美術(applied art)や工芸(craft)と呼ばれていた20世紀初頭までの第1期、デザインの黎明期ともいえる1968年を中心とした第2期、ロンドン・デザイン・ミュージアムとヴィトラ・デザイン・ミュージアムが設立された1989年以降の第3期に分けてデザイン・ミュージアムの歴史を概説いただきました。
ヴィトラ・デザイン・ミュージアムの使命と活動
デザイン・ミュージアムとして多層的な活動が行われるようになる第3期の代表、ヴィトラ・デザイン・ミュージアムについて詳しくお話いただきました。
個人コレクションからはじまるデザイン・ミュージアムの設立経緯(歴史)とコレクション(椅子、照明、プロダクト)の紹介、アーカイブとリサーチ、主な今までの企画展をスライドで紹介。今後の活動のキーワード(グローバリゼーション、デジタル技術革新、継続性、先端技術による表現)についても解説いただきました。
また、今後に開催される企画展(Thinking Things展、Alexander Girard展)や、2015年末に開館予定のヴィトラ社オフィスに近接した新館(家具を中心としたコレクションの展示会場となる予定)の計画も紹介いただきました。
ここで印象に残ったのは、「オープン・デザイン(Open Design)」という考え方でした。多様な意見を採り入れること、国際的な協働を促進することで、企画の質を高めるだけでなく、可能性をも拡げ、また、交流を生み出す作用があります。
このオープン・デザインという考え方は、KIITOの事業目的やプロジェクトを進める手法にも通じるところがありました。
デザイン・ミュージアムのこれから
最後に、「デザイン・ミュージアムのこれから」を総括して解説いただきました。
未来のデザイン・ミュージアムは…
…グローバルに考え、活動すること
…参加できること、参加することで考えを深められること
…建築、デザイン、ファッション、写真など学際的に研究し、考えること
…書籍、トークやワークショップなど、展示だけでなく何かを生み出すこと、オープンにして考えを共有すること
…身体的でありつつ、デジタル(webなど)で共有すること
…内と外の境界に疑問を投げかけること、スタッフと来館者の交流を生み出すこと
…トレンドを見据えつつ、現実に沿った企画を行うこと
…社会変革と発展のために、デザインを促進すること
…起業家精神を持ち、ファンドレイジングを行うこと、資金調達で企画の自由度を高めること
…デザイン・センターや商業主義とは一線を引き、コレクションを持つこと
…新しい傾向に積極的に取り組むこと
デザイン・ミュージアムの軌跡(これまで)と、今後の展望(これから)のお話しを通して、デザインやアート、文化活動分野に関わる人々と施設(デザイン・センターやデザイン・ミュージアム)双方が、どのように発展できるかを考えるきっかけとなったのではないでしょうか。
なお、本レクチャーは、5月10日(日)からそごう神戸店で開催中のヴィトラ・デザイン・ミュージアムの巡回展「Antibocies1989-2009:抗体」展を記念して開催いたしました。
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