2/22 Sat - 2/24 Mon
SEMINAR
温泉地として知られる大分県別府市では、噴出する天然の蒸気を利用して調理をする「地獄蒸し」が盛んです。この蒸すという調理法に科学のメスを入れ、新たな地平を切り拓いたのが、別府出身の蒸気の専門家・平山一政氏考案の「低温スチーミング」という調理法です。食材の酵素が活性化し旨みが増すだけでなく、保存性が高まることが確認され、新聞・テレビでも話題になりました。今回はその「蒸しの聖地」である別府市鉄輪(かんなわ)を拠点にギャラリーやイベントを運営しながら、「低温スチーミング」「50℃洗い」調理法を実践している安波治子さんをお招きします。
安波さんは、明治32年に建てられた実家の老舗旅館「冨士屋旅館」を壊すことなく、今後100年耐久性を持つ建物へと再生工事を施し、次世代へ文化を残すことを決断された方です。また別府固有の美しい景観である、別府石を用いた石垣や石畳の保存にも力をいれ、石積みのワークショップを開催するなどの取り組みもされています。そのような活動についてもお聞きしながら、「低温スチーミング」「50℃」というキーワードがもたらす農業や流通分野における可能性についても考えます。また家庭でも簡単に実践できる低温スチーミング法を習います。
産業革命時に蒸気コンピュータが発明されていたら、どんな世界が生まれていただろうという想定のもとに書かれた『ディファレンス・エンジン』というSF小説があります。古くさいと思われる伝統的な技術のなかに、実は未来のかけらが数多く散らばっているかもしれません。
「未来のかけらラボ」とは
現代社会はさまざまな意味で混迷を深めています。未来が見えにくくなっており、そのために、希望を感じにくくなっているとも言えるでしょう。このラボはセンター長・芹沢高志をモデレーターに、身近に散らばる多様な未来のかけら、つまり可能性の芽を拾い集め、草の根的に自分たちの未来を思い描こうとしていく試みです。
(鉄輪写真:草本利枝)
2/22(土) 14:00-15:30 レクチャー
2/22(土) 15:40-16:30 デモンストレーション、質疑応答
「低温スチーミング」「50℃洗い」について、理論と効果のレクチャー、および家庭でできる調理法の実演・試食を行います。
2/23(日) 14:00-15:30 トークセッション
モデレーターである芹沢高志とのトークセッションを行います。なぜ「低温スチーミング」という調理技術に注目するのか、その背景について言及しながら、鉄輪で昔から行われてきた「地獄蒸し」というやり方に対し、現代科学の光を当てることで新しい展開が生まれ、それがもうひとつの未来を生む可能性、いわば「温故知新」の姿勢と実践について話し合います。
冨士屋Gallery一也百/蒸しくらぶ
http://www.fujiya-momo.jp/
九州大学農学部卒。食品メーカーの商品開発部に勤務後、実家の明治からの旅館の建物を保存・再生し、「冨士屋Gallery一也百」として文化的イベントのスペースとする。2007年より鉄輪温泉の蒸気研究を始め…(続きを表示)
P3 art and environment
https://p3.org/
1951年東京生まれ。神戸大学理学部数学科、横浜国立大学工学部建築学科を卒業後、(株)リジオナル・プランニング・チームで生態学的土地利用計画の研究に従事。その後、東京・四谷の禅寺、東長寺の新伽藍建設計…(続きを表示)