2019/11/25
イベントレポート
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DesignersとはKIITOで2013年より継続して開催しているデザイントークイベントです。デザインに関わりながら幅広い活動を展開する方々をゲストにお招きしながら、その仕事の紹介や進め方、デザインに対する考えについてゲストと馴染みの深いインタビュアーさんとの対話を通して紐解いていきます。
今回、Designers19/20では京都を中心に課題の発見からコンセプトの開発までを行うコンサルティングファームNue inc.の松倉早星さんをインタビュアーにお迎えし、人の営みとそこから生まれる文化の可能性について探っていきます。
Designers20ではUMA / design farmの原田祐馬さん、Metronome Inc. / toeの山㟢廣和さんのお2人をゲストとしてお招きします。今回の3人の共通点は京都にあるアートホテル「HOTEL ANTEROOM KYOTO」の立ち上げのメンバーであること。アンテルームの話を踏まえながら、デザインワークと文化の関係性について紐解いていきます。
「HOTEL ANTEROOM KYOTO」
アートホテルの走りと言われるアンテルーム。
最初の相談はTwitterのDMでアンテルームの担当の方からの連絡だったと松倉さんは話始めます。
店舗の内装とグラフィック。だれと仕事をしたいかという話題になりこのお2人を選んだそうです。
それぞれの自己紹介からトークがスタートします。まずは、原田さん。大阪でグラフィックを軸に施設のコンセプトやシステム構築まで、文化や福祉をデザインで繋げることをモットーにデザインワークをしています。元々建築を学んでいた原田さん。その後現代美術の学校に通い、美術の先生とともに全国を回っていたそうです。そこで図録を自分でつくったところからグラフィックデザインの道がはじまったと話します。
次に山㟢さん。普段トークイベントに登壇する事など少なく、WEBサイトも10年近く更新をしていないとのこと。中々お話を聞けない人でもあります。ホテルや飲食店などの店舗内装設計とtoeとしてバンド活動を2足の草鞋を履いて仕事をしています。アパレルのショップで働いていた山㟢さん。特にデザインに関わる勉強をしていなかった中で、同年代の大工チームの仕事ぶりを見て、アカデミックにデザインを学んでいない人でもかっこいいデザインを出来ることに衝撃を受けてこの道に足を進めたそうです。
デザインワークと文化
お互いの仕事のルーツを紐解いていく中で、「お金にならない仕事でもしていくべき、お金なくてもおもしろい仕事。そういう仕事をいくつこなすかでその後のスキルに差が出てくる」と山㟢さんは話します。文化・アートの仕事をどうお金に変えていくか。遊びと文化の成り立ちは近く、アンテルームも設立から時間が経ってお利巧な展示や催しが増えていき、遊びの要素が減り面白さが減っていたのではないかと松倉さんは考察をし、現在開催中のホモルーデンスの展示を実施しようとしたと話します。たとえお金が少なくても、独自に面白さをみつけることができるような仕事をしていくことが必要と話を続けます。
センスが良いモノとは何かという松倉さんからの問いに、山㟢さんはこう話をします。
「ぼくは内装屋さんなので、中のコンテンツがどれだけ魅力的に見えるかを作ることが重要だと思っています。例えば、もう現代で畳の部屋を無理につくる必要がないとか、当時はかっこいいと言われてたかもしれないような色使いとか。そういったものを現代風にアップデートして、違和感をなくしていくことが大事だと思うんですよね。」
原田さん・松倉さんも続けてこう話します。
「デザインは退屈になってきている。使い方を想起させるようなものこそ今は面白いんじゃないないかと思うんです。」「綺麗で分かりやすいものより、作った人の話を聞きたくなるようなモノの方が買いたくなる。」「デザインや文化を僕たちが定義できない、文化「と」何かを繋ぐ。その「と」の部分がデザインの仕事である。」
音楽と内装設計の2つの分野を行き来しながら仕事をこなす山㟢さんの仕事への考え方についてこう話します。
「内装設計はクライアントワークで、依頼に対して良いモノをどう提案するかの世界、そこに自分のエゴはあんまりない。バンドの方は勝手にやっている。」「仕事である以上クライアントワークになる、クライアントが依頼して終わりではなく最後まで、責任を持って取り組んでくれるような相手と仕事をしていきたい。」
仕事をする相手と空気を共有していくことが大切だと松倉さんも話します。
「分かりやすいモノに興味がなくなってきている。抽象性の高いモノに魅力を感じる。説明は最小限がいい。」と話す原田さんに対し松倉さんは「広告の仕事を長くしてきたからか、無意識の人をどう動かすかを考えることが多かったです。一緒に仕事をする人やそこにいる人たちの空気や距離・緊張感も意識することが必要だと感じた。しかも国籍や年齢でも大きく変わってくる。」と返しました。
一番やりたい仕事はなんですかという松倉さんの質問に対して、原田さんは「スポーツですかね。人間の身体性やパフォーマンスがビジネスになっているところに面白さを感じている。」と答えます。松倉さんは「ラブホテル。あそこまでコンセプトを求められる部屋ってないなと思っていて。でもラブホテルを作るって今厳しいですよね。夜の街に対して規制がすごくかかっているので。」と返します。
もう一回アンテルームをつくるならどう作りますか。という話題になり「宿でできることってだいぶ少なくなってきている。もしかしたら別のモノを作るかもしれない。」と原田さんは答えます。文化を創っていくためには、世代ごとの認識。コミュニケーションの重要性があるとこう話を続けます「温泉の入れ墨NGだって、もっと上の世代が慣れていないからだと思うんです。」
仕事を引き受けている時の条件はなんですか?と松倉さんの問いに2人はこう答えます。
山㟢さん「特にないですね。数ある設計屋さんから選んでくれたというだけで、やる価値があると思うんです。」
原田さん「間になるべく人が入っていない仕事。その人がやりたいと思う仕事であればしたいです。」
松倉さん「音楽って勝手に広まっていくけど、デザインが目立つときって何か悪いことがあった時しかない。誰もが知っているものでも誰が作ったか分からない。そうなったときにデザインが勝つ時ってそういう時だと思うんです。」
仕事の中で文化が出てくることはあるけど、文化をつくろうとして挑んだことはない。文化は自然派生的に生まれてくるものなのかと思うんです。デザインは「と」の役割、いろんな考え方や文化をつなげていく仕事だと思うんです。と今回2回のトークを締めました。
質疑応答
質問①:コンセプトを作るときなど共通の認識をつくるプロセスをどうクリアしていますか?
松倉さん「外向けのコンセプトと、作る人たち内側のコンセプトと2つ作るんです。その土地にいる人と話をするなかで抽象度の高い言葉で表現します。」
原田さん「共通認識という言葉自体が専門的で、わからないものとわからないものが喋っている。信頼して、この分野は任せてしまうよと言い合えるような仲をつくっていければと思ってます。そのために難しい言葉はなるべくそぎ落とすようにしてます。」
質問②:仕事や活動の中で遊び心をもつ中で心掛けていることはなんですか?
松倉さん「すごく飽き性なんです。いままでやってきた事とは違うことをすることを心がけています。」
原田さん「いろんな趣味とかあるじゃないですか。そういうのをシェアしたらいい。最近の子はみんな言わないんですよね。そういうことをドンドン言っていくことが大切。もう一個、デザインのトレーニングをすることが重要。それをしないとただ遊んでいるだけのやつになってしまうからバランスをとることが重要」
山㟢さん「仕事ってネガティブなイメージがあるけど、ポジティブに楽しむポイントを見つけて出来るといいですよね。」
質問③:時間が経つことで文化になっていくと思うんですけど、時間が経つ前に途絶えてしまわないようにするためにはどうしたら良いですか?
松倉さん「アンテルームの時は、広告費とかそういうのを全部トークイベントとかことづくりにあてたんです。そういう風に新しいことを動かし続けていくことが最適なんじゃないでしょうか。」
原田さん「アンテルームはアートホテルのモデルになったんです。そういって真似されることが評価であり、流行から文化になっていくっていくことなんじゃないかと思うんです。」
イベントページはこちら:http://kiito.jp/schedule/lecture/articles/37091//