2021/11/23
イベントレポート
第6回目のゼミは、講師の山崎さんから中間発表に向けてミニレクチャ―をいただきます。講評後は各チームに分かれてグループワークを進めていきました。
山崎:発表が近づいてきました。今日は、自分たちが今どんなプロセスで進んでいるのか、これからどんな風に進めていけばいいか、中間発表をどういう場にするかという確認ができればと思います。リサーチプロジェクトでしたがコロナということもあり、外へ十分な調査をしに行けませんでした。今日は一般的な意味での「良い調査」の基準について皆さんに少しお話します。
調査には、調査自体がちゃんとしたものかどうかをはかる評価基準があります。
調査している時に「これ、うまく進んでいるのかな?」「どこか、抜けがあるんじゃないかな?」と、自分でチェックするといいと思います。
ポイントは2つあります。一つ目は、内部の基準「信憑性」と「真正性」
・本を読んだのであれば、キチンと分析しそれをもとに使っているか。
・フィールドワークをしたら、その時にとったノートがちゃんと生かされているか。
これが調査の内的な基準です。
もう一つの外的な基準は、人が見て「いい」と思える調査です。その人がやった調査を、他の人が見て「得ることがある」「新しい情報が入った」など、外側から見た人の良い評価が基準になります。今回4つのチームで進めているので、他のチームの人たちが色々調べて考えたことを聞いて、それがもしヒントになるということがあればその人達がやった調査はすごく意味があったということになります。
さらにいうと「データは少ないより多いほうがよく」「論点がはっきりと出てくる調査が良い」などありますが、今回はそこまでこだわる必要はありません。逆に言うと、上手くいってない調査は調べたにもかかわらず、調べる前と意見があまり変わっていなかったり、もともと自分の頭にあったことをただ吐き出しただけという結果になります。もし自分達がそうなっていたとしたら、調査としてはあまりよくなかったということになります。
いろんな人が調べてきたものをグループ内で議論したと思いますが、「良いとこ取りしているんじゃないか」「都合の悪いモノを無視しているんじゃないか」など、一つの論点にこだわり過ぎていないか自分自身で振り返るポイントにしてください。キーワードの変調の論点だけにこだわって、せっかく色々集めてきた物に目配りができていないことがあります。もう一度そのポイントに戻って色々調べてきたものを振り返ることも、全体のリサーチプロセスの中で大事なことです。
調べていくうちに面白いことが出てきて徐々にフォーカスが固まってくると、その周辺を調べ始めフォーカスが絞られて見えている範囲が狭くなってきます。これは必要なことだし当然のコトでもありますが、意識しておかないとせっかく初期の段階で色々見ていた大事なものが、見落とされているかもしれないと思うことも必要です。
この図案も何度も出していますが、今回は中間発表という形で発表していただきたいと思っています。(?)になっているコンセプトの部分、調べてきたいろんなことやアイデアを出してディスカッションする中で、カテゴリーを作ったり「こんなテーマでやったらどうか」といろいろアイデアが出てきていると思います。その中から今回のイベントを考えるにあたって、なるべく短い文章(言葉)でハッキリ伝わるものを打ち出してください。これが、リサーチの場合はリサーチクエスチョンになるし、何かの提案の場合には提案のコンセプトになります。
必ずしも今の段階で、細かい部分を詰めていく必要はありません。コンセプトをつくることの意味は、この先色んな意見を出したり具体的な形を与えていくにあたって、「これはやっぱり違うな」と選別できるようなモノを作っておかないといけません。「こういうことやりたい」「ああいうことやりたい」と、てんこ盛りにしてしまうと何のイベントだか分からなくなります。せっかく色々調べて議論してきたことが形にならなくなるので、ここで中締め的に「自分たちは、この方向でやるんです!」という方向性をグループ内で共有しておく必要があります。
中間発表の際は、どうやってそこに至ったのかをお話して欲しいと思っています。
画像は悪い例として学生に見せているおなじみのアーミーナイフです。ひとつひとつの機能はあると便利で目的を持って使えるものです。「これも大事だし、あれも大事」と全部付け合わせてものを作ると、画像のように誰もこんな物を持ち運びたくないと思うものになってしまいます。使い道も分りませんし、どんな時にこのナイフを取り出して使うのかという場面も想定できません。
話としては面白いが具体化がしにくく、それぞれのキーワードがいくら素晴らしかったとしてもそれを一つの形にするようなコンセプトがない提案は、見ていて受け取りづらくなってしまいます。それぞれがどんなに便利なものでも、「これとこれが一緒になっていると日常生活の中では使いづらいね」ということになります。それをなるべく避けるために中心となるような「このナイフはこういう時に使うんです。」と言える十分な要素が含まれているかをセットにして形にしていかなければなりません。
次にコンセプトを作った後の話になりますが、できるだけ具体的に思い描くとコンセプトも色のついた物になっていきます。グループの中で議論した方向性が「いつ」行われるものなのか「どこで」行われるかなど、具体的なシーンをあてはめます。例えば、対象が小学校4年生だった場合このイベントはどうなるのか。お年寄りだった場合はどうなるのか。自分たちが考えようとしているイベントがどういう状態で行いうるのかを、いろんな組み合わせでイメージすることができます。イメージに合わない物は消去していき、コンセプトにより近いイメージを伴ったモノにしていく作業も発表後のアイデア出しの場面でやってみるといいと思います。
発表は大きく2種類あります。人前で発表をする時は、「分かったことを最大限よく見せる」または、「自分はこれだけできました」ということを伝える場として受け取られることが多いです。それも1つの発表の在り方ではありますが、今回は10/16(土)の合同発表会を目前にした中間発表です。この時にやらないといけないことは、完成させたものを見せて「これだけすごいです!」ということを言うのではなく、発表の目的がちょっと違うことを意識しておく必要があります。あくまでゴール合同発表会です。その時に一番パフォーマンスの高いところにもっていくために途中経過でやることは、できるだけ多くのリアクションと多くのフィードバックを中間発表を聞いた人からもらうことです。
つけ入るスキのない発表をしてしまうと、聞いている側が「素晴らしいですね」、「よく頑張りましたね」というコメントしか出せなくなってしまいます。それは、中間発表のやり方としてはもったいないです。生煮えのアイデアだとしても出してみて、その場で参加者からアイデアが追加して出てくることもあります。そういうフィードバックを発表したことによって得られることを目指してほしいと思っています。
2つ目の目的は、「こんなことが明らかになった」と発表するより、「ここまで、できたがこの先がよく分からなくて、みんなで議論したい」や「正しいか間違っているか分からないけれど、こういうのが面白いかもしれないと思った」のような余白を残した形で発表するといいと思います。コンセプトも1個に絞らないといけないこともありません。いくつか方向性が違うモノが出てきてもいいと思います。
皆さんに伝えたい事は、完成品の品評会をする場ではなく、あくまでこの場に集まっている人たちが色々突っ込みあいながら、ブラッシュアップをしていけるための発表の場という位置づけであることを確認しておきたいと思います。
あとは一般的な話になりますが時間と誰が聞いているか、どこまで説明しておかないといけないかが基本的にセットになってきます。30分あれば説明できることはありますが、今回の発表時間は5分しかありません。前提知識ばかりしゃべってしまうと肝心のアイデアに行くまでに発表が終わってしまいます。そういうことがあるので、時間を考えながら伝えたい内容を真っ先に伝えて全容を発表できるようにしてほしいです。
永田:中間発表では、「こういうところで悩んでいる」とか「こういうところで意見が分かれている」など、今まで考えてきたプロセスや「今はまだ固まっていないけど、こういうところに行きつこうとしている」などフワっとした話でもいいのでリアルな状況を伝えてほしいと思います。「こんな議論がおもしろいんじゃないか」などツボみたいなのを広げてもらうほうが状況も見えやすいですし、アドバイスもしやすいです。まとめ上げるのではなく、色々意見をもらう方に価値があるよ!と皆さんにお伝えしたいと思います。中間発表の目的は「最終形をみせるのではない」という意識を持ってもらいたいと思います。
グループワークの進捗共有
<Aチーム>
私たちのチームも前回に続いて、自分たちが知っている事例や興味のある事例を挙げました。この中でこれを追及していきたいとなったテーマは「何気ないおしゃべり」です。
私たちは「何気ないおしゃべり」を推奨したいと思います。人と人が話すことは日常的にもありますが、コロナ禍ということもあり「おしゃべり」を避けてしまっているのではないかという話になりました。知っている人だけじゃなくて、知らない人ともいっぱい「おしゃべり」をして、「おしゃべり」することによって、自分が今まで他人事だったのを自分事として捉えるようになったり、また違う視点から物事を見れるようになることで、新たなコミュニケーションも生まれるのではないかと思います。さらにSDGs17の目標を理解する事にもつながるのでは!?という話にもなりました。詳しくは、来週の中間発表でしっかりお話しようと思います。来週をお楽しみに~。
<Bチーム>
先週「こども先生」というキーワードが見つかり、それを広げてみたり山崎先生からアドバイスをいただいたりしました。中間発表で詳しくお話しようと思いますが、「子供同士が対話できる場」をもうけられたらいいねという話をしています。
その対話を通じていくつかのアウトプットを考えています。そこから大人もこどもも学べる機会になっていければよいなと思っています。詳しくは中間発表でお話したいと思います。
<Cチーム>
私たちは前回話し合ってきたことをキーワードに沿ってまとめました。
分断?
フラワーロードは街路ごとに性格付けがあり、それぞれ文化の違いもあります。ビジネス街、商業地域といったイメージが強く、ここに来る人は出勤地(目的地)まで行き、また家に帰っていく動線になっています。
異文化
KIITOも含めてこの地域周辺の企業もそれぞれの社会活動を行っていますが、個別のミッションで活動自体が外から見えません。しかしフラワーロードではSDGsに限らず企業による色々な活動があり、「やってみたい」「学びたい」という種がすでにたくさん蒔かれている状態です。
フラワーロード愛
「私たちの街の道は?」と聞くと、元町通りや鯉川筋・トアロードという方が多く、公園もメリケンパークや須磨公園、離宮公園という方が多かったです。フラワーロードは、街区のイメージ以外の印象がないということでもありました。
市民とは?
会社に勤めている方は1日の大半をフラワーロードで過ごしているので市民と呼んでいいのではないかと考えます。市とか会社という単位で見るのではなく「人」という最小単位でみると、神戸有数のたくさんの人が過ごしている場所と考えられます。
学びとは?
学びとは「経験や知識を転換できること」。学校で習う本を読んだり調べたりするだけではない、実際に現場に行って人に会い見聞きした経験が知識になることも学びです。
まとめ
問題は分断しているものを上手くなくして市民という単位まで落とした時に、会社とか社会的な肩書を抜いて、集まったり、話をしたり、新しいテーマで取り組めるような場や仕組みが上手く作れたらいいなと思いました。
<Dチーム>
「1人ひとりが違うこと」を認識することにポイントを置き、「ワガママSDGs」というキーワードが出てきました。
自分のワガママな部分を内発的に出してもらうことで、それぞれが抱える悩みを知ることができるのではないかと考えます。個人の悩みゴトは、あまり共感してもらえないものと思いがちですが、実は多くの人が同じように思っていたりします。共通する悩みを分かち合える「部活」みたいなのが立ち上がっていくと面白いのでは?と思いました。
「1人」という単位に焦点をあてて、それをバックアップできる組織(面白く興味を惹くキーワードを作れる人、イベント企画ができる人)があると「部活」も盛り上がるのではないかと思います。
そんな1人1人抱えているワガママ(悩み、困りごと)をどうやって持続的に集約できる仕組みがあるのか、Dチームはこれから考えていきたいと思います。
<講師コメント>
永田:どのチームもそれぞれのアプローチで、キーワードやパワーワードが見つかっているチーム、それを今から探ろうとしているチームがあります。大きくとらえると皆さんは仕組みをデザインしようとする流れになっています。注目しているポイントや視点にバリエーションがあるのでそのまま進めてくれていいと思います。ちょっとだけ気になったのが、SDGsは多様性を表していますが、多様性ということだけを取り出してしまうと、何をやってもオッケーということに陥りがちなキーワードであることも事実です。
山崎:皆さん準備万端のような感じを受けました。そんなにコメントすることはありませんが、BチームとCチームを見ていてすごく対象的なアプローチの仕方がみられました。
イメージをはっきりと持ちアイデアが近いところまで出ているBチームと、ボトムアップでコンセプトをがっちりと作ろうとしているCチームです。今はっきりとした良いテーマがなかったとしてもコンセプトの部分は「やっぱり大事にしたいのはここなんです!」と出てきている方が伸びシロがあります。逆に「こういうことやりたい!」とはっきりしているチームは、それがどれぐらいの広がりを持っていてどういう問題と結びついていけるのか、先を見ながら考えると今やっていることのリアリティーや説得力が増してくると思います。
次回、9月7日(火)は中間発表会となります。
各チームがそれぞれの調査をもとに議論を重ね、見えてきたコンセプトを発表します。