NEWS NEWS

2023/3/31

イベントレポート

【第4回】地域活動に役立てるためのクリエイティブ講座 「KIITO:300ファームスクール/映像編」

はじめに

KIITO:300ファームスクールは、地域活動や学生活動といった取り組みを進めるなか、広報や記録、イベントの企画などで悩みを抱える方々に向けた地域活動に役立てるための5テーマのクリエイティブ講座です。

第4回となる今回は映像編として講師に神戸芸術工科大学の曽和具之さんをお迎えし、「認知の仕方」や「表現としてのパフォーマンス」の視点より、スマホを用いた動画の撮影方法について学びました。ワークショップがメインの賑やかな講座となりました。

    

みんなで似顔絵を描こう!観察と直感の脳ほぐし

会場を横切るように斜めにセッティングされた長机の上には模造紙が敷き詰められ、カラーペンが準備され、これから何が始まるのかと講座開始前より会場がざわついていました。
講座が始まり、まずは映像を撮るときに大切な三つの要素を教えていただきます。一つ目に「絵(視覚的な要素)」、二つ目に「音」、三つ目に「テロップ」が鍵となるそうです。

早速ワークに入ります。机を挟んで2列に向かいあうように並び、似顔絵を描く側、似顔絵を描かれる側と列ごとに分かれます。ここで面白いのが向かい側にいる人の似顔絵を一人で最初から最後まで描くわけではないことです。15秒間じっと見つめ、次の15秒間で描きます。そして15秒経ったら前へとずれていきます。つまり、一人の似顔絵を大勢で完成させます。ここでもポイントとなるのは「観察」です。このワークを通して、「自分を構成しているものはたくさんの人の認知行為である」ということを体感してほしいと曽和さんはおっしゃいます。15秒という短い時間に「はやい!」という悲鳴が度々あがりつつ、ペンを重ね描かれていく似顔絵のなんともいえない表情に会場が笑顔で包まれていきます。

    

「似顔絵っていちばん難しい。なぜ難しいかというと一人で描こうとするからです。誰かが描くと誰かの意思の痕跡を次に繋げようとするので、自分の意思をそんなに入れ込まなくてもよくなるが、最終的には似る。似るということは、観察するときに必ずしも一人でなくてもいいということ。時には色んな人が互いに作る、それが共創のもともとの原点、集団認識であり、これをもとに自分を映像でどう表現するかを後半でやっていきたい」とお話してくださいました。

フロップ作成ワーク

続いて、テロップの代わりとなるフロップ(自己紹介ボードのようなもの)づくりを即席で行います。名前、ニックネーム、チャームポイント、マイブームの4つの情報をカラーペンで模造紙に書きハサミで切り取っていきます。切り取ったあとは腕やおでこ、背中など、自分の体に自由に貼り付けます。みなさん自分をあらわすキーワードを身に纏い、撮影の準備はばっちりです。

  

2人ペアで「Hi! Movie」制作

2人組になり自己紹介動画を撮影していきます。15秒間の動画の中で名前、ニックネーム、チャームポイント、マイブームを紹介し、最後はテロップに頼らない参加者の方々自身のパフォーマンスとしてオリジナルの決めポーズを取ります。

撮影前に撮り方のアドバイスをいただきます。通常、スマートフォンで映像を撮るときは画面を横にして撮影する横取りを用いることが多いですが、今回は縦向きで撮影する縦撮りを用います。縦撮りで撮影することのメリットは全身が入ることです。縦撮りで撮影すると、身長差などによっては上からあおるように撮ってしまいがちですが、スマートフォンを地面に対して垂直に持ち、全身が映る高さまでさがって撮影するよう心がけます。そして録画ボタンを押してから前後に5秒間、間をおいて撮影します。
撮影は場所選びからはじまります。背景が面白いところ、照明がいい感じのところ、自己紹介動画を撮影するのにぴったりな場所を探して会場をうろうろ。場所が決まれば撮影の開始です。

  

鑑賞会と振り返り

撮影を終え、参加者のみなさんの自己紹介動画をスクリーンに映して全員で鑑賞します。
カメラを前に撮影されることは恥ずかしさをともないますが、みなさん堂々としたパフォーマンスで決めポーズもばっちりです。
自分を表現する工夫が溢れ、それぞれの個性が光ります。

いいカメラで撮らないとだめですか?撮り方はどうですか?とよく聞かれるそうですが、基本的に映像はまず「絵」、そして次に「音」、最後に今一番大きくヒットするものは被写体あるいはカメラマンの「パフォーマンス」にあると曽和さんはおっしゃいます。そのパフォーマンスは激しければいいわけでもなく、ずっと直立不動でもいけません。優劣ではなく、結局大切なのはどういう人に届けたいか、ということだそうです。自分のパフォーマンスをコントロールすること。自分がああしたい、こうしたいではなく、だれに見てほしいか、どういう人をひきつけたいのかが大事になります。自己表現ではなく、静かに撮るにはどうすればいいか、静かな自分を撮られるにはどうすればいいか、ということを常に考えてほしいと言葉を続けられました。

  

また、他の人の動画を見て「こんな風に自分もできたらいいな」と思ったり、「この人のこういうところを取って次に自分がやるとしたらどうするか」という振り返りを行ったりするといいとのアドバイスもいただきました。

曽和さんがワークショップをするときに一番大切にしていることは、客観的な理解である「メタ認知」だそうです。自分が何をしたかという単一的な視点から、他の人は何をしていたのだろうという対全体な一歩上の視点から物事をみる力です。
その場で撮影し編集した「撮って出し」という収録方法で神戸芸術工科大学の学生スタッフの方々が撮影したビデオを観ながら今日の講座を振り返ります。「自分が何をしたか、他の方が何をしていたか」に注目します。

おわりに

映像を作るとき、一つはパフォーマンス、もう一つはメタの視点に基づいて映像を撮っていくことが大切とのことでした。

また、本講座でも実施されたグラフィックレコーディング(イラストや図を用いて会議や講演などの内容を記録する手法)についてもお話していただきました。グラフィックレコーディングは場を広げる方法としてあらゆる場で取り入れられているそうですが、大きな紙に描くことによって時系列で何が起こったのかがわかりやすくなります。どうしても文字による記録だけだと発言の記録になってしまいがちですが、イラストを使うことで記録として価値のある「場の記憶」、「体験」が残せる点でいい振り返りになるそうです。

最後となる第5回は3月21日(日)にデザイン・クリエイティブセンター神戸のセンター長永田宏和によるイベント企画編を実施いたします。

地域活動に役立てるためのクリエイティブ講座「KIITO:300ファームスクール:初級編」
イベントページは こちら
第1回デザイン編レポートはこちら
第2回編集編レポートはこちら
第3回写真編レポートはこちら