2025/2/23
イベントレポート
2024年12月14日(土)~2025年2月16日(日)
「子どもが楽しく学べる新しい防災工作を考えよう!」
子どもの創造性を育むプラットフォーム「KIITO:300キャンプ」では、阪神・淡路大震災から30年を迎える契機に、子どものための防災工作を考える大人向けの連続ワークショップ「子どもが楽しく学べる新しい防災工作を考えよう!」を開催しました。ワークショップでは、講師に楽しく防災を伝えるプログラムやツールの開発などを行うNPO法人プラス・アーツを迎え、被災地の状況やその環境で必要とされる情報・知識をもとにつくられた既存の防災工作を学んだうえで、子どもたちが楽しめる新しい防災工作のアイデアを考えました。
準備から成果発表まで、5回にわたるワークショップの様子をお伝えします。
①12月14日(土) 被災地の状況や、防災工作について知ろう
ワークショップの初回は知識のインプットからスタートします。被災地での困りごとを解決する「防災工作」を考えるためには、まずは被災地の状況や避難所の様子を知り、そこで生まれる困りごとを知ることが必要不可欠です。KIITOセンター長であり、プラス・アーツの理事長でもある永田宏和から、被災地の状況や防災工作について学んだのちに、実際に手を動かし、代表的な防災工作を作ってみます。作るものは「紙食器」「段ボールスツール」「ごみ袋ポンチョ」。
プラス・アーツの光田さんが、導入として被災地での困りごとをフリップ形式で提示し、その後に工作の作り方を教えてくれます。初めに作るものは新聞紙でできる「紙食器」。言わずもがな、被災地で食事をする際にお皿替わりとして使用できるものです。ポリ袋をかぶせればスープなどの液体を入れることもできます。次につくるものは「ゴミ袋ポンチョ」。どこにでもあるゴミ袋で簡単に作れるポンチョです。雨風・防寒対策に役立つほか、普段の生活の中ではなかなか想像できませんが、被災地ではガレキの処理などで大量の粉じんが舞うので、ポンチョがあるととても助かるそうです。
作ったポンチョを着て集合写真も撮ってみました。ポンチョには油性マジックで絵を描いて装飾することもできます。
最後につくるものは「段ボールスツール」。避難所にたくさんある段ボールを使用し、「避難所の床が硬くて冷たい」「腰が悪くて床に座れない」という困りごとを解決する防災工作です。作ったものに座ってみて、座り心地も試してみます。
参加者全員で3つの防災工作を試作し、初日は終了しました。
また、参加者には次回に向けて
・素材の探求(身近にある、災害時に見つけやすいものを探す)
・災害時の困りごとの探求(災害時に具体的に困ることをピックアップしてもらう)
・以上の2つを主体的に楽しむ!
というリサーチの宿題を出しました。
②1月13日(月・祝) わくわくさんの「親子防災工作教室」に参加しよう
ワークショップの2回目は、工作の伝道師ワクワクさんこと久保田雅人さんを講師に招いて開催したKIITOの子ども向けワークショップ「親子防災工作教室」を見学し、工作のつくり方や子どもたちへの伝え方を学びます。(「親子防災教室」の当日のレポートはこちらをご覧ください)
ワクワクさんのワークショップは2部制で、いずれも同じ内容のワークショップを15組の親子に向けて実施します。1度目のワークショップを見学後、感想や発見したことなど、参加者同士で意見交換を行いました。
「いまは前を向いて話を聞くところ、いまは作業するところ、という指示がはっきりしている」
「伝えるべきことをしっかり絞って話しているので、ポイントが伝わりやすい」
「ずーっと話していて、話していない時間がない」
など、色々な視点の感想が出てきたので、それをふまえて2回目のワークショップを見学しました。
また、宿題の進捗もそれぞれ発表してもらい、素材については
・段ボール荷物運搬の際の緩衝材(避難所にたくさん救援物資が届くので使える?)
・空き缶
・紙パック
困りごとについては
・避難所で子どもがつまらない、寂しい、不安(心のケアがない)
・寒い
・あたたかい食べ物が欲しい
などの案が挙げられました。困りごとについて総括すると「避難所の中でもほっとする時間が欲しい」という視点が多かったので、次回以降いよいよ防災工作を考えていくにあたり、もっと深掘りしたり解像度を高めることができそうです。
③2月1日(土),④2月8日(土) 新しい防災工作を考えよう
3回目、4回目のワークショップで、いよいよ子どもたちに体験してもらう防災工作の具体案を考えていきます。
「避難所の中でもほっとする時間が欲しい」という課題から「被災地でも子どもが心を落ち着かせられる、タオルでできたぬいぐるみ」という案が出てきたので、その案をベースにワークショップを考えていくことになりました。また、参加者同士で手を動かしたりしているうちに、「段ボールスツール」について、座り心地や耐久力、座れる以外の機能を追加するなど、もう少し改善することができるのではないか?という話題も出てきたので、タオルぬいぐるみチームと段ボールスツールチームに分かれて作業を進めます。
タオルぬいぐるみチームは色々なサイズのタオルで作ってみたり、顔を作ってみたりと、様々な方法でタオルぬいぐるみを改良したり、かわいくしたりする方法を考えます。作る途中でひもを付けたら首から下げることができる!丸シールで顔を作れる!など、みんなで話しながらいろんなアイデアが生まれます。
段ボールスツールチームは、スツールの構造を何回も試行錯誤しながら検討した結果、従来の段ボールスツールよりも座面が広く、丈夫なものの作り方を考えることができました。
それぞれ作り方をまとめ、成果発表に備えます。
⑤2月16日(日) 子どもたちに考えた防災工作を体験してもらおう
最終日はいよいよ成果発表。考えた防災工作のアイデアを、実際に子どもたちに体験してもらいます。ワークショップ会場や材料をセッティングし、子どもたちを待ちます。
ワークショップの最初に、まずは導入として作成したフリップを使用して災害時の「困りごと」を想像してもらいます。それぞれの防災工作が解決する困りごととして、「段ボールスツール」は避難所の床が硬くて冷たい、腰が痛くて床に座るのが難しいということ、「タオルぬいぐるみ」は避難所に心を癒すものがないことを、それぞれ写真や絵で伝えました。子どもたちには少し難しい内容かもしれないですが、防災工作は「困りごと」を解決するためにつくるということが前提なので、しっかり説明していきます。
困りごとの説明が終わったらいよいよ工作。つくり方を子どもたちに教えて、どんどん作っていきます。子どもだけでは難しい部分は大人や家族の手を借ります。
段ボールスツールは完成したら段ボールにお絵描きを、タオルぬいぐるみは完成したら丸シールで顔をつくることができます。子どもたちは大喜び。たくさんの子どもたちに参加してもらい、大盛況でワークショップは終了しました。
終了後、参加者の中で振り返りを行い、今回のような楽しい工作ワークショップに参加することが、震災について話したり、学んだりすることのきっかけになれば良い、などと話をしました。
今回のワークショップで展示していたブースはKIITO:300内に展示しておりますので、土日祝日のKIITO:300キャンプ開室日などにぜひご覧ください。