2026/4/6
イベントレポート
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)では、2026年3月4日(水)に俯瞰から学ぶ「クリエイティブ思考」講座を開催しました。本講座は、社会課題を俯瞰的に捉え、多様な関係性の中からアイデアを生み出す「クリエイティブ思考」を実践的に学ぶことを目的として実施しました。
講座前半では、講師である永田宏和センター長が、俯瞰的に課題を捉える視点や、地域に良い活動を生み出す考え方について、KIITOの事例を交えながらレクチャーを行いました。後半のワークショップでは、具体的な社会課題を題材に各班で議論を行い、アイデアを発表しました。

レクチャー
はじめに、神戸市港湾局ウォーターフロント再開発推進課の北川氏より、ワークショップの題材となる新港地区の広場について説明がありました。紹介された広場は将来のまちづくり事業のために活用される予定があり、本講座ではこの広場を課題解決の対象としてではなく、「限られた条件の中で創造的なアイデアを育む題材」として扱いました。

レクチャーでは永田センター長が、地域に豊かな活動を生み出すために必要な「俯瞰」の視点について説明しました。地域活動そのものを目的とするのではなく、その活動の前後のプロセスまで俯瞰して捉えること、またターゲットだけでなく周辺の関係者にも目を向けることが、地域豊穣化のために大切な心構えであると示しました。
また、地域の関係者を「風の人」「水の人」「土の人」という3つの役割で捉える視点も提示しました。活動の種を運ぶ人、育てる人、地域に根ざす人という関係性を整理することで、ステークホルダーが果たす役割の違いを明確に示します。さらに、地域活動を完成形として実行するのではなく、関係者と関わりながら育てていく「不完全プランニング」についても取り上げました。

ワークショップ
後半のワークショップでは、レクチャーで紹介したクリエイティブ思考を体験するためのワークを広場を題材として実施しました。参加者はグループに分かれ、空地について、まず個人でアイデアを付箋に書き出し、その後グループで意見交換を行いながらアイデアを発展させていきました。
参加者は「風の人」という立場から、「水の人」「土の人」といった関係者を設定し、誰が関わり、どのような関係性が生まれるのかを想像しながら発想を広げていく様子が見られました。それぞれの立場や経験を共有しながら、俯瞰を意識しながら対象とした広場の可能性について考える時間となりました。

発表+講評
参加者はそれぞれの経験や専門性を活かしながら、永田センター長が紹介したフレームワークをもとに検討したアイデアを発表しました。
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5班|KIITOON(色彩サバイバルゲーム)
色を使ったサバイバルゲーム「KIITOON」を提案。空間をビニール等で覆うなど周辺への配慮を行いながら、世代を超えて楽しめるイベントとして実施する。イベント後には色彩が残る空間として、公園的な活用へつなげるアイデアも示された。
6班|実物大の自由研究
全国のこどもの自由研究を、実際に制作・展示し社会実装まで行うプラットフォームを提案。学校や企業、科学館などと連携し、環境や食、デザインなど多様なテーマを扱う。年間を通じたプログラムとして展開し、継続的なコミュニティ形成を目指す。
3班|ぼーっとする広場
周辺にレジャー施設等が多い立地を踏まえ、あえて何もしない「ぼーっとする広場」を提案。スマートフォンを預けて入場し、瞑想やストレッチなど思い思いに過ごすことで、心身を休める場とする。都市の中に余白をつくるという新たな公共空間のあり方が示された。
4班|都市農園(うみばたけ)
空地を活用した都市農園を提案。種植えや収穫体験を通じてこどもや地域住民が関わり、収穫物は周辺施設で活用することで地産地消につなげる。食を通じた交流とコミュニティ形成の場として構想された。
1班|ベイサイドアップサイクル部
空き家の廃材や海洋ごみなどを活用し、制作・展示・遊びを行う「アップサイクル部」を提案。集めた素材でアート作品や居場所をつくり、訪れた人が自由に関わることができる空間とする。創作と交流が循環する場としての活用が示された。
2班|New Sea Port Library
海辺で読書を楽しめる屋外図書館「New Sea Port Library」を提案。まずはピクニック形式の読書会から始め、ワークショップを通じて本棚や家具を制作し、空間を育てていく。利用者が参加しながらつくる、新しい公共的な読書空間を目指す。


発表後の講評では、北川氏より、短時間ながら多様な視点による活発な議論が行われたことへの評価が述べられました。また、敷地条件によって活用が難しかった背景にも触れながら、「風の人」「土の人」「水の人」という視点で関係性を捉え直すことが、良い活動を生み出すきっかけになるとしました。
講座の最後に永田センター長は、「今回紹介したクリエイティブ思考は特別なものではなく、日常のさまざまな場面で活用できる考え方である」と述べました。人が関わりたくなる仕掛けや、関係性を生み出す企画のあり方は、仕事や地域活動にも応用できるものです。今回のワークショップはそのプロセスを体感する時間となりました。
おわりに
講座の参加者からは、「普段関わりを持たないような方と意見交換でき、有意義な時間となりました」「ゴールではなくそこまでのプロセスが大事だということを学びました」といった声が寄せられました。本講座は、参加者それぞれが発想を広げ、クリエイティブ思考を実践的に体得する機会となりました。