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2014/8/11

イベントレポート

ちびっこうべレクチャー ドイツ「ミニ・ミュンヘン」に学ぶ子どものまち レポート

本年度開催の「ちびっこうべ」に向けてのレクチャーとして、1979年から30年以上続くドイツで行われている子どものまち「ミニ・ミュンヘン」に関して、日本にその様子や魅力を伝えているミニ・ミュンヘン研究会の卯月盛夫さんをお招きし、長年続いている子どものまちづくりのノウハウや、そこでの子どもたちの様子をご紹介いただきました。

始めに、「ミニ・ミュンヘン」ができたきっかけについてお話しいただきました。

「ミニ・ミュンヘン」の成り立ち
「ミニ・ミュンヘン」は、ミュンヘン市が教育アクションというNPOに事業委託をして始まった活動で、このNPOは美術教員等によって構成されており、子どもの自由な発想や体験が重視されています。そこで最初に行われたことが、ダンボールや廃材を使った「ごっこ遊び」を原型とする仮想都市の創造であり、これが「ミニ・ミュンヘン」の始まりです。
子どもたちはこの小さな都市で時間を忘れて「遊び」「働き」「学ぶ」。楽しいから毎日来る。そこには遊ぶことと働くことの違いは全くなく子どもたちの「ミニ・ミュンヘン」での取り組みの姿勢は素晴らしいものです。

卯月さんは2004年にドイツのミュンヘンに向かい、主催者に取材をしながら「ミニ・ミュンヘン」のドキュメンタリー映像を製作されました。この映像は、日本に「ミニ・ミュンヘン」の様子をよいリアルに伝えるために製作されたもので、ミニ・ミュンヘンのオープンの日、仕事の仕組み、市長選挙や裁判などの様子が収録されています。今回は、卯月さんに映像の内容を丁寧に解説していただきながら、参加者と一緒にこの映像を視聴しました。

視聴後には、映像で紹介しきれなかったミニ・ミュンヘンの魅力をスライドにてご紹介いただきました。その中の一つに、メインの会場として利用されているオリンピック公園の自転車競技場の外には小屋を建設できるスペースがあり、「ミニ・ミュンヘン」での通貨“mimu(ミミュ)”で土地を購入することで小屋を建設できるというお話がありました。その土地は一人で購入するには高価で、共同購入をする子どもたちが多いこと、また小屋を建てるにも大工の講習を受けなければならないこと、設計図を描いて、役所の許可を取らなくては建てることが出来ないことなど、子どもが主である仮想都市でありながらも、確立された一つ一つのシステムに、「ミニ・ミュンヘン」の成熟度の高さを感じました。

最後に、会場からの質疑応答を行い、
「日本では、お店づくりであれば子どもたちだけでも進んでやると思いますが、市長に立候補して演説をするなどの政治的な活動はなかなか進んでやらない感じがします。大人が指示を出さないで、子どもたちだけでやっていく土壌作りは一体どのようにやっているのでしょうか」
という質問に対して卯月さんは、
「主催のグリュナイスル氏に同じ質問をしたことがあります。彼は『結局は小さなことの積み重ねである』と言いました。ミニ・ミュンヘンは『ファンタジーを持つこと』そして『ファンタジーを社会の中で実現させること』を子どもたちに期待しています。つまりは『自分たちの暮らす街のルールは自分たちで決められる』ということを伝えているのです。どんな場合でも判断を彼らに委ねる。その積み重ねが“自立心”“自主性”を芽生えさせ、子どもたちだけで判断をする力を育んでいるのです。」
と、ミニ・ミュンヘンの核心に迫ったお話をしていただき、レクチャーは終了となりました。

+クリエイティブレクチャー「ちびっこうべレクチャー ドイツ「ミニ・ミュンヘン」に学ぶ子どものまち」
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