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2014/9/20

イベントレポート

神戸「食」プロジェクト 神戸珈琲学基礎編その1「スペシャルティコーヒーについて学ぶ」 レポート

2014年9月6日(土)

珈琲にかかわる様々な方を講師として招き、珈琲を基礎から学び、愉しむための知識を身につける「神戸珈琲学」。第1回目はマツモトコーヒーさんにご協力いただき、カッピング(珈琲におけるテイスティング)を通してスペシャルティコーヒーについて学ぶ講座を、ワークショップ形式で開催しました。

「スペシャルティコーヒー」という言葉は、近年街中で見かけることも多くなり、雑誌などにも取り上げられるようになりました。しかし、「スペシャルティコーヒー」の定義とは何でしょうか?
第1回目の本講座では、計4回のカッピングの体験を通して紐解いて行きます。

カッピングはワインを選ぶ上でテイスティングをするように、珈琲の甘味、苦味、酸味、飲み終えたあとの香りや風味を確かめるものです。買い付けの業者が豆を買い付ける際に行う方法で、珈琲の持ち味を最も引き出せる方法として採用されています。今回のワークショップでも、このカッピングを採用して珈琲を飲み比べます。

カッピング1回目は「産地別の豆」を飲み比べます。使う豆は
・ブラジル ・グァテマラ ・インドネシア ・エチオピア
の4種類です。
まずはそれぞれの産地の持つ個性を体験しました。想像以上に産地ごとで味が違うことに多くの方が驚かれていました。この産地ごとの個性を引き立たせるために焙煎は浅煎りにしてあります。

2回目は、なぜ浅煎りだと個性を引き立たせることができるのか、ということを焙煎度合いの異なる3種類の豆のカッピングを通して体感します。
同じ豆を用いて焙煎時間を30秒ずつ変えて「焙煎の度合い」を調節したもの、
・浅煎り ・中煎り ・深煎り
の3種類を用意しました。
カッピングの前には「たった30秒の差」と感じられた方も多い様子でしたが、実際にカッピングを行うとその差は歴然だったようです。浅煎り、中煎り、深煎りの順番で味わい、再度浅煎りも戻るとその差は顕著に感じられます。
焙煎の度合いによって変化するのは苦味だけではなく、酸味、焙煎の風味、豆独特の風味と香り、味の重さ、それぞれが変化します。それらが浅煎りから深煎りの間でどのように変化するのかをグラフを用いて解説していただきました。1回目のカッピングで体感してもらった産地ごとに異なる味、つまり豆の個性である部分は、焙煎が深くなるにつれ弱まってゆき、苦味が増えてくることを体感できました。

3回目のカッピングでは一般流通品とスペシャルティコーヒーを比べます。
産地はグァテマラに限定して行いました。豆は
・グァテマラ SHB
・グァテマラ ウエウエテナンゴ リモナール農園
・グァテマラ アンティグア タシータ農園 ウォッシュド
・グァテマラ アンティグア タシータ農園 ナチュラル
の4種類を用います。
1つ目のSHBはグァテマラの同じ標高にある農園で栽培されたものを指し、農家は限定されず、いわゆる「農協」に集められ、出来の良いものと出来の悪いものが混ざる可能性がある豆で、一般流通品です。
リモナール農園、タシータ農園はそれぞれひとつの農園で生産された豆です。タシータ農園ではさらにウォッシュドとナチュラルという異なった精製方法、2種類を比べます。珈琲豆は、コーヒーノキという植物に実るチェリーのような果実の「種」です。その種を取り出すために水で洗い落とすのがウォッシュド、身がついたまま干すことで果実の部分を発酵させてから剥がすのがナチュラルです。
ナチュラルは過程で果実の味が豆に移ります。これが、珈琲が持つ個性をより増幅させるそうです。しかしウォッシュドの精製には、実を剥がすタイミングを見極める技術が必要で、広く一般に流通するのはまだまだ難しいようです。
その味は他の珈琲とは明らかに異なり、さわやかなチェリーの香りがすっと鼻を抜けます。カッピングをした参加者の皆さんも感動されていた様子でした。

最後のカッピングでは、これまでで体験をしたスペシャルティコーヒーのうち、収穫から時間を置いたもの、焙煎を故意に失敗したもの、抽出を故意に失敗したものをそれぞれ飲み比べました。
・コロンビア アンデスコンドル 2014年産
・コロンビア アンデスコンドル 2012年産
・グァテマラ リモナール農園
・グァテマラ リモナール農園 焙煎失敗
・グァテマラ タシータ農園 ナチュラル
・グァテマラ タシータ農園 ナチュラル 抽出失敗
以上の6種類をカッピングします。
いままで飲んだものと改めて味の違いを比べると、その差を明白に感じることが出来ました。なかには「2012年産の豆は家で飲む珈琲とよく似ている・・・」と話された方もいました。
ナチュラルの抽出失敗は目を見開くほど適切な抽出したのものとは異なる味で、全員が驚いていました。抽出失敗として今回は豆の挽目を適切なものと、それよりも細かく挽いたものを用意しました。すると適切な抽出を行なったものと比べると、先程は爽やかに感じられていた香りが多くなり、珈琲の持つ個性の主張が強まった印象になりました。珈琲は適切な挽目で抽出しなければそのポテンシャルを引き出せない、という例を、顕著に体験することが出来ました。
最後に、講座内で飲んだ豆を特別にブレンドしたものをおみやげとしてお渡しして終了しました。

スペシャルティコーヒーは「From Seed to Cup」と呼ばれる考え方が根底にあり、栽培されるところから焙煎、抽出され、カップに注がれるまでのすべての工程において品質管理されているものを指します。つまり「豆の状態ではまだスペシャルティコーヒーとは判断できず、カップに注がれて初めてスペシャルティコーヒーとして呼ぶことができる」ということを、カッピングを通して直に体験していただきました。

次回もカッピングを通して珈琲の味や香りを体感しながら、ミルの扱い方、抽出について、豆の保存についてなどを学びます。

神戸「食」プロジェクト 神戸珈琲学基礎編その1「スペシャルティコーヒーについて学ぶ」
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