2013/2/15
イベントレポート
KIITOアーティスト・イン・レジデンス2012 水川千春
滞在制作期間 2012年12月8日(土)~2013年1月31日(木)
アーティスト・トーク 2012年12月16日(日)
公開制作 2012年12月11日(火)~12月14日(金)、 2013年1月16日(水)~1月20日(日)
成果発表展「地をあぶる」 2013年1月26日(土)~2013年2月8日(金)
アーティストがKIITOを拠点として、神戸のまちや周囲の人々と交流を重ねながら滞在制作を行うプログラム「KIITOアーティスト・イン・レジデンス」。
今回は、日本各地に滞在しながら、生活の中から出てくる廃材や生もの、残り湯や川の水、海の水などを使って作品を制作してきた水川千春さんをお招きしました。
■アトリエづくり
まずは、水川さんのKIITO内での拠点となるアトリエを、2F プロジェクトスペース2Bに作り始めました。
制作スペースだけでなく、みなさんに覗いていただけるよう、これまでの主な作品を展示しました。
■作品制作の様子(1)
あぶり出し作品を制作するため、神戸の海の水を汲みにいきました。バケツの持ち手に紐を結びつけ、成功!
ずっと先までまっすぐ続く水面を見て、「上に乗って歩いていけそう」と水川さん。
この時の体験にインスピレーションを受けて、制作を開始。
■アーティスト・トーク 2012年12月16日(日)
作家の制作のプロセスや考え方をご紹介するため、アーティスト・トークを開催。アトリエがトーク会場に様変わりしました。
2006年より現在まで、国内外様々な場所で滞在制作を続けてきた水川さん。今回は、黄金町と石巻での滞在を中心にお話いただきました。
黄金町ではドヤの一室に滞在し、「ドヤガール」としてまちの魅力を案内するツアーを開催。廃材や、道端のワンカップのガラス片を収集し作品を制作しました。
また震災後にヘドロ掻き出しのボランティアで入った石巻では、アートセンターの設立に伴い、作品を制作することに。
このときにはじめて海の水を作品に取り入れたこともあり、水川さんにとって特に重要な滞在でした。
「今この目の前にあることがほんとうに信じられること」と語る水川さんの作品制作について、理解が深まる機会となりました。
■公開制作 2012年12月11日(火)~12月14日(金)、 2013年1月16日(水)~1月20日(日)
公開制作期間中、約160名ものお客様にお越しいただき、直接水川さんとお話いただく機会となりました。
その都度、制作のデモンストレーションをしてくださる水川さん。
「あぶりだし作品を実際どのように制作されているのか?」「細かな表現や陰影は、どのように操っているのか?」「使う水によって、仕上がりは違うのか?」
などなど、様々な質問にお答えしました。
■作品制作の様子(2)
今回の滞在で制作するのは、水川さんにとっても新たな挑戦となる新作です。それは、神戸の海の水を使って「地」をあぶるというものです。
一枚一枚、刷毛で海の水を紙に塗り、カセットコンロの火であぶっていきます。たいへん地道で、集中力のいる作業です。
■成果発表展「地をあぶる」 2013年1月26日(土)~2013年2月8日(金)
約2ヶ月間の滞在制作が、ついに作品《地》として結実しました。地面であると同時に、「海水が、水であったときの記憶も現れている」と水川さん。
あぶられた時に紙が波打つため、それを並べると海面の波のようにも見えます。
もう一つの会場は、これまで水川さんが移動してきたそれぞれの場所の記録をことばと写真でつづり、あわせて作品を展示するという壮大なドキュメントとなりました。
海は「すべての水が行き着くところ、そして生まれる場所」。
つまり、これまで水川さんが使ってきた様々な水が、すべて粒子となって《地》に含まれているのです。
今回のKIITOアーティスト・イン・レジデンスプログラムは、
作家が制作の着想を得るところから、制作、成果発表までの一連のプロセスに、ご来場のみなさまにもその都度触れて頂ける機会となりました。
たくさんのご来場をいただきまして、誠にありがとうございました。