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2016/7/21

イベントレポート

+クリエイティブゼミ vol.19 まちづくり編「神戸まちラボ CASE02 つなぐデザイン ~市街地西部地区(兵庫区南部・長田区南部)の豊醸化をめざして~」第10回

2016年7月19日(火)

いよいよ最終発表の日を迎えました。約3カ月にも及ぶ期間にわたってリサーチやディスカッションをかさねた成果を発表するとあって、班での最終確認も入念に行われます。プレゼン開始の直前まで、班のメンバーで話し合う声が聞こえていました。

今回は、講師のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)の副センター長の永田のほか、ゲスト講師の美術家の藤浩志さま、対象地区をよく知るスタヂオ・カタリストの松原さま、兵庫県立大学の和田 真理子さま、神戸市企画調整局のみなさまにもお越しいただき、講評をいただきました。


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はじめはE班から。発表者は、普段はかけていない有名な実業家風の丸眼鏡をかけて登場し、緊張ではりつめた空気の流れる会場を和ませて、プレゼンがスタートしました。

はっぴーの家で実現したいこと s_DSC01465



≪E班提案/て・しごとば≫
子育てをするママを対象に、ハンドメイドクラフトができるまちの共有作業スペースづくりを提案。子供を連れていけるアトリエや交流スペースなどを、商店街や再開発ビルを拠点として整備する。まずは、駒ケ林駅の東、真陽小学校の横に12月完成予定の、介護施設「はっぴーの家 ろっけん」に場を作り、ハンドメイドを通じて、ママ世代と子ども、高齢者の交流からはじめることを検討中。また、自分で作ったものは地域のイベントなどで販売し、手仕事を通じて新しい女性の働き方や、保育や託児ではない子ども達の学びの場、多世代交流の中から高齢者も活気づくような仕組みを考えている。

▼講師講評
【永田】
アクションプランを現実に落とせているのはすごい。この企画に、人を惹きつけるためのデザイン性をどのようにもたらすのか、今後の展開に期待。
【藤さま】
これはコミュニケーションプログラム。ものをつくることにばかり興味が偏ってしまいそうだが、実は大切なのはそこで過ごしている時間。この場所に携わることの期待感をふくらませるような新しいアイデアを、継続して提案できるようなしかけがあると、もっと面白くなるのではないか。
【松原さま】
まちの高齢化の問題はどこにでもある。自分も長田で喫茶店をしているが、そういった小さな経済を生み出すことの大切さを感じている。ここで作ったものは、お金に換えていけるシステムをしっかり整えるべきだと思う。
【和田さま】
長田は若い世代の新しい移住者も多いまち。そういった人たちが関われる場づくりというのは、まちが抱える課題を、こちらが想定していたよりも多く解決することがある。実際にコトを起こしてからの広がりに期待する。
【神戸市企画調整局】
つくり手の自信をしっかり育てていける環境になるといい。またつくり手だけではなく、流通を考える人、材料を仕入れる人、広報をする人など、関わりしろがたくさんあるのも魅力的だと感じた。

次はD班。たまたま班のメンバーの多くがDIYが趣味だったということで、早い段階から提案がかたまっていた班です。


まちの変化 s_DSC01516



≪D班/兵庫運河周辺を中心としたクラフト文化の醸成≫
兵庫運河周辺の、さまざまな既存の資源(特殊な工具や機械、屋内の大空間、味のある建物)を生かし、兵庫区でまち工場を「借りたい人」と「貸したい人」をつなぐための、3つのアクションプランを提案。
1.清掃・補修のお手伝い
「貸してもよい人」を広げる活動、廃業を検討するときに声をかけてもらえる信頼関係の構築。
2.ポテンシャルマップ作り
「つなぐ人」の補完の役割として、兵庫らしさと活用の余地がある場所の全体像を目にみえるかたちにする。
3.つなぎイベント
「貸してもよい人」「借りたい人」がつながるきっかけの場づくり。
兵庫区にまち工場を借り、DIYやクラフトをする人が増えることで、職住近接でまちに住む人も増えるのではないかと考えている。

▼講師講評
【永田】
まちとの関わり方がしっかり計画されていて良い。特に入念なリサーチをしていた班だったが、その成果がしっかりと表れているように思う。よそ者がまちに関わるときにはその取っ掛かりが重要なので、最初のアクションをどうするか、慎重に検討して欲しい。
【藤】
コンセプトブックが仕上がりそうなボリューム感。しくみをつくるのか?場をつくるのか?どこから始めるのかが重要。
【松原】
「つなぐ人」の発見と、その関係性の発見。この視点を持つのはとても大切なので、アクションを起こす時には注意深く扱ってほしい。

C班はまちを俯瞰的に捉え、どんな切り口で提案を出すか、まちの「種」探しに時間をかけ、多国籍文化に行きつきました。

多言語 s_DSC01490



≪C班/日本とベトナムをつなぐ、コミュニケーションの場づくり≫
長田区に多いベトナム人労働者に着目し、まちの中での多文化共生を目指して、文化の違いを理解しあえるよう、言葉や習慣、マナーなどの違いを伝え合う交流の場を設ける。そのために、まちの地図を掲載した日本語の看板にはベトナム語表記を記載したり、ベトナム語表記しかないお店の看板やメニューには日本語表記の記載を促すなどの、まちの中にある言葉のコミュニケーション不足の解決からはじめることを提案。

▼講師講評
【永田】
ベトナム人が住みよい町になった時、どういう魅力が発信できるのか?既存の魅力のリサーチがもう少し欲しかった。
【藤】
ベトナムの魅力を理解すること、ベトナム人のコミュニケーションを取ることの楽しさ、それを地域の人と共有する方法はもっと幅広く、さまざまな手法があるように思う。
【松原】
「わからなさ」「とっつにきくさ」は面白さにつながりやすいので、それを地域の人に知ってもらうしかけづくりが大切。
【神戸市企画調整局】
この地区に住むベトナム人だけのコミュニティが既にできているのであれば、そこへの日本人の関わりしろはどこかにあるはず。引き続きリサーチを。

B班は、班のメンバーに対象地区で働く職人がいたこともあり、まちのものづくりの魅力に着目しました。

アプローチ s_DSC01511



≪B班/クリエイティブをつなげて育む街づくり≫
兵庫・長田のものづくりの資産を生かして、技術のある職人や、豊かな発想を持つクリエイターをつなぐため、地元のメディア制作クリエイターが、職人の仕事を取材・編集・発信し、クリエイターや職人、市民がつながる情報発信メディアをつくり、ものづくりの新たな価値や仕事を生み出すという提案。情報メディアを継続的に成長させることで、ものづくり業界における「長田ブランド」を育て、クリエイターや職人にとって魅力的で住みやすい街をつくることを目指す。

▼講師講評
【永田】
対象地区の中にいるクリエイターと職人だけで強度をもったものができるか?ものが生まれにくくなっている時代なので、そのしくみをしっかり詰めていく必要がある。
【藤】
もっと具体的なコンテンツが見えると良い。この結果新たな商品を売っていくというよりも、プロセスを大切にして、ワークショップなど地域の人を巻き込む方法で発信した方がよい。
【和田】意味のあることだと思うが、この人たちにとっては「仕事」なので、利害の一致はやはり必要になってくる。そこがもっとイメージできるようになると良い。

最後はA班。プレゼンを始める前に聴講のみなさんを突然立ち上がらせたり、全編手書きのスライドを披露したりと、個性が光っていました。

長田自漫収集集団 s_DSC01508



≪A班/日常の風景写真をテーマにした魅力の再発見「長田自漫収集集団」、「百人百景」≫
長田のまちのレトロな魅力があふれる日常風景写真をツールに、まちの人々が交流し、地域外の人にも長田の街の魅力を届ける仕組みづくりを提案。さまざまな人の独自の視点で撮られた写真で長田に人を誘い込み、まちを舞台にした写真展や、参加者と地元の人をつなぐ、写真投稿型のフリーぺ-パー・WEBサイトなどを制作し、地域内外にまちのファンを増やすことを目指す。

▼講師講評
【永田】
プレゼンのゆるさ、世界観が面白かった。長田のまちの意外なフォトジェニックさに気付いた視点はすごく良い。この班のメンバーが楽しみながら進めていくことが重要に思う。
【藤】
アナログな視点は面白いが、その裏側では、やはりネットをどう使っていくのか、地域の人たちとの接点のつくりかたというのは課題になる。そのしくみづくりをもっと深く行うべき。
【松原】
写真を通して人を「つなぐ」ことまで意識を向け考えていけるといい。
【和田】
スライドが全部手書きだったり、突然聴講のみなさんに「立ちあがってください」と言ってみたり、「なんで?」と思わせるプレゼンがとても魅力的だった。それ自体がこのプロジェクトをよく表しているように感じるので、その姿勢を大切にしてもらいたい。

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最終発表を終え、最後に懇親会を開催。
他の班のメンバーと交流しアドバイスをしあったり、協力できる点について話し合ったりと、プレゼンの熱が収まらない様子。毎週、同じ日に顔を合わせていたゼミのメンバーとの別れを惜しむように、時間いっぱいまで話題がつきず、盛り上がっていました。

これから、各班の提案をもとにアクションを起こしていきます。
引き続き神戸まちラボ02にご注目ください。

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