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2018/12/20

イベントレポート

Designers 16 独創的なアイデアを生むために 何を実行したのか?レポート

デザインの現場の第一線で活躍されている方々からトークセッションという形でお話を伺うDesigners。
2018年はTRITON GRAPHICSの松岡賢太郎氏をインタビュアーに迎え、建築・プロジェクト創出・写真といった様々な分野で活躍されるゲストの方をお招きしてお話を伺います。

今回のテーマは「抜け出す勇気」
ライバルが多い業界の中で、生き残るためには「自分の価値を信じ、他人とは違うことを考える事・実践していくこと」と松岡さんはお話をされます。もちろん他人と違うことを実践していくには、経験や知識以上に「勇気」が必要です。今回のトークイベントでは、周りから一歩抜け出すための方法とそのための勇気をゲストの方の活動と考えから探ります。

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11/24(土)に開催した「Designers 16 独創的なアイデアを生むために 何を実行したのか?」ではゲストに建築家・谷尻誠さんをお招きしお話を伺いました。谷尻さんがつくる独創的でオリジナリティに溢れたアイデアはどのようにして生まれてきたのでしょうか。その経緯やマインドについてお話を伺っていきます。

“斜面建築家“というトリセツ

これまでに100棟を超える建物を設計されてきた谷尻さんの作品の中で松岡さんが気になる建物をピックアップし話を進めていきます。「毘沙門の家」「山手の家」「桧原の家」 谷尻さん手掛けたこの3つの建築の共通点は傾斜の上に建てられているということ。

こういった課題のある場所での家づくりについて、谷尻さんは「斜面って人間に例えると“出来損ない“じゃないですか。そんな出来損ないが魅力に変わると夢があるじゃないですか。みんなが知らない価値を提示できればいいと思っています。」「敷地を平らにすることなんて、昔の人はできなかった。竪穴式住居もそうじゃないですか。敷地が平らなことより床が平らな事が大事。そういった昔の知恵を使ったり、方法は様々だけど、施主さんの想いを形にしてしています。そうやって作っていたら“斜面建築家”って雑誌で書かれて「斜面じゃないけどお願いしてもいいですか?」なんてお話が来たことあるくらいです(笑)」とお話を始めました。

「施主さんからの想いも大切ですが、これがいいと思ったら「自分で自腹を払ってでもその施工を掛け合います。クレームにならないようにケアすればするほど普通なものになっていく。いいものを作ろうとした時に誰かが責任をもたないと“新しい良いモノ”はできない。いいものづくりとリスクを天秤にかけたとき、いいものをつくることを選ぶそれは、これまでの経験と自分の感覚が生むもの。最近は想像したものと出来上がったものが一致するようになってきた。」とお話を続けます。

今回のトークセッションではもう1人。今回の「抜け出す勇気」のキャッチコピーと文章を担当されたかたちラボの田中裕一さんがインタビュアーとして参加されています。田中さんより「“抜け出す勇気“の必要性に気づくその経緯について教えてください」と質問が入り、谷尻さんはこう話します。
「建築家って社会と全然つながっていない。メタファーとか言われても普通の人は全然分からないし、そんな分かんないこと言っている人に建物を建ててもらうより。建築をもっと分かりやすく。身近に感じてもらうような建築家になりたい。と感じるようになった。」「建築が好きな人が増えれば建物を建てようという人が増える。そうすれば仕事が増える。」とビジネスも踏まえたビジョンを答えました。

田中さんより続けて「有名になっていくまで、どうやって仕事を取ってきたのか。」という質問が入り、「学生時代や独立した頃はよくクラブに行ってた。そこのフライヤーやグッズをつくっていた。建物を建てる時しか用事がない奴よりかはあいつに相談してみようかなと思われる人になる方がいいんじゃないかと思うんです。そうした方が広がっていく。でも色々手を出しているなとチャラく見られる。でもそれって理解されていないってことで、まだ理解される価値があると思うと、他人と違う考えで行動できると思うとワクワクするじゃないですか」と谷尻さんは答えます。

たくさん作ると上手くなる。そのなかで建築家になっていく。

斜面建築家という二つ名を付けられる谷尻さん。しかし、その後さまざまな建築を作っていく中で谷尻さんは
「斜面以外にも、色々なお仕事の話をいただくなかで、いろんな条件でもものが作れるって柔軟じゃないかと思ってきたんです。これしか作れないってよりもあれもできます。これもできます。って、アイコンがないことがアイコンになってきた気がします。(クラブに行っていた影響で)友達はたくさん居て、仕事ができた。たくさんつくってきたから上手くなっていただけなんです。つくっていないと建築家にはなれないつくっていくしか建築家にはなれない。」と答えてくれました。

「自分で決めたことを疑って、また自分で決めて。たぶん飽きっぽいんですよね。自分に自信がないんです。時代によって価値観が変わっていくし。伝統って受け継がれていっているけどアップデートで、自分自身もそんな感じ。価値観をアップデートしていっているだけなんです。」

松岡さんより「谷尻さんの独創的なアイデアの生まれ方」について話がうつっていきました。谷尻さんが設計を行った「cafe / day」を例に挙げながら話を進めていきます。アスファルトが室内にまで入り込み、白線や車のシートを使ったソファーなど、一見、自動車教習所のような店舗の設計はどのようにして生まれたのでしょうか。谷尻さんはこうお話をされます。

「カフェって基本的に窓を大きくしてオープンカフェにするじゃないですか。でもそれじゃありきたりなアイデアしか生まれない。室内で体験したことがない“外”で“内”な体験をする。そのためにアスファルトを流し込んで。そうしたら自動車の教主所に見えてくるそうやって自分の頭の中にある考えを当てはめていく。人を引き付けるために既知の色や形をつかっていくんです。」

利己的な人はモテない

トークセッションも中盤に入ったころ、ふと「僕、腹黒いですからね。」と谷尻さんがお話をされた後、こう続きます。「自分は腹黒いと自ら言う、そうすると「意外といい人だね」と言われんです。自分の欲望を前面に出す人間の方がいいじゃないですか。そもそも建築やデザインをするっていうことは「企む」ということだと思うんです。自分だけの利益を求める利己的な人ってモテないじゃないですか。企んで、その欲望をだしていく。そうして良いものを作ろうとしていく。その瞬間に白になりますからね。」

谷尻さんが共同代表を務める「サポーズデザインオフィス」。今年で18年となる自社についてこうお話を続けます。「スタッフには無理はさせたくないんです。社食堂も根っこでは、スタッフがコンビニ弁当を食べて欲しくない。という思いからなんです。そういった内に向けたものだったんです。ブランディングって外に向けてのイメージがあるけど、インナーブランディングをきちんとしていけば外にも発信していくものなんです。魅力的な会社であること。そうすれば人も集まってくるんです。」谷尻さんのお話の中で“建築家“にとどまらない経営者としてのマインドが感じ取られました。

アイデアは星座

トークのタイトルにもなっている「独創的なアイデアを生むために 何を実行したのか?」という問いに谷尻さんはこう答えます。
「アイデアは星座なんです。星、1個1個に全部意味があったら繋がらない。意味がないものがたくさんあったから、星座という形ができあがった。アイデアっていうのは集合体なんです。意味ないものがふと集まって形になる突き抜ける瞬間があるんです。世の中が良いと思っている価値基準より自分の価値基準を信じてやっていけばいい。常にやったことがないことにトライすることが大事なんじゃないかなと思います。」

「自身があるように見えるのは実行しているからだと思います。アイデアが生まれているというよりアイデアに意味を与えてる。形になったときに意味になる。アイデアは世界中みんなもっている。形にしているから自身があるように見えるんです。失敗していってください。その分挑戦してみてください。」

変化する価値観を疑いながら常に挑戦していく谷尻さんから、ひとつ勇気をもらったようなそんなトークイベントとなりました。

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Designers 16 独創的なアイデアを生むために 何を実行したのか?