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2019/5/30

イベントレポート

+クリエイティブゼミvol.30 リサーチャー育成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」第1回レポート

2018年度に実施された「+クリエイティブ公開リサーチゼミ 『人口減少時代の豊かな暮らしを神戸でデザインする』」の流れを受け、課題そのものを深掘りする能力を養うことを目指す「+クリエイティブゼミ」「リサーチャー養成講座」5/14から始まりました。フィールドワークを特色とする文化人類学の専門家・大阪大学の山崎吾郎さんを講師に招き、「図書館」をテーマにリサーチを行いながら、リサーチリテラシーを高めていきます。

  

第1回目のゼミは、まずKIITO副センター長の永田宏和から、KIITOが地域をより豊かなものにするプログラムづくりで用いる「風・土・水・種」の視点をレクチャーしました。どの視点にもリサーチは必要となりますが、特に新しいプログラムである「種」のリサーチについては、既成概念にとらわれないためにも、お題について(今回であれば図書館)の先進事例、類似事例の調査だけではなく、カテゴリーの違うものを探るとよいそうです。

また、リサーチの大前提として、普段から問題意識を高め、「きちんと課題を立てられるか」、ということを問いかけられました。限られた時間とリソースのなかで、本質を見極めた上で、効率よくアイデアを出し、時に他者のアイデアを取り入れ他者と分担しながら、有効なリサーチをデザインしていくことが大切だと教えてもらいました。

次に、山崎さんから、学術研究におけるリサーチを参考に、リサーチとは何か、どのように行うのか、気をつけることについてなど、これからのゼミに必要となる知識についてレクチャーをしました。永田と共通して、常にリサーチの目的を意識することが強調されました。

  

⑴ 「事実」を強める
「事実」をきちんと事実として示すためには、その人の思い込みのレベルから、説得力を高めていく必要があります。その際、他の人の主張や他の文献、過去の事実など、様々な情報や根拠を動員して事実を強めていきます。このようにして設計されるリサーチは別のリサーチにつながっている、という特徴を持ちます。
⑵ 何を、どうやってリサーチするのか
この世界にある様々な情報のうち、「みえるもの(量的データ)」だけでなく、その場の雰囲気や人の感情、その人・その時にしか聞けない言葉など「みえないもの(質的データ)」にも着目することが大切です。文化人類学者が行うフィールドワーク(実地調査)の研究では、何を調べるかわかっていない「探索」の段階、カテゴリー分けの段階、テーマが絞られる段階を経て、リサーチがスタートします。リサーチがスタートすると、フィールドだけでなく、文献・データ等の調査も組み合わせ、さらにテーマを絞り精度を高めていきます。また、調査や現場で得られたデータを整理し、後からでも使える状態にあるものが、価値あるデータとなることや、全て現場から始めようとせず、過去の蓄積から重要なデータを見つけることなどを学びました。

⑶ 未来を考える
現在に視点をとり、未来に向かって思考を展開する「フォアキャスティング」と、未来に視点をとって、そこから現在に向かって思考を展開する「バックキャスティング」についてレクチャーがありました。わたしたちが社会課題を考える際に、未来について漠然と不安になってはリサーチにはなりません。未来のどの時点(30年後?50年後?)に視点を置くかで課題は変わることや、想定される未来と現在の間までの過程を丁寧に見ることで、そもそもの課題設定が間違っていると気づくこともあるそうです。今回のゼミをはじめ、実務家には、「どこの未来にいきたいのか」を考え、そこから逆算して次の一歩を描くバックキャスティングが活かせるのでは、と提案がありました。

  

最後に、山崎さんから「未来の図書館を考える」と題し、これからのゼミに向けて最近の図書館の動向についてのレクチャーがありました。私たちがイメージする、静かに本を読み、勉強し、あるいは本を借りに行く場所といった図書館から、様々な機能をもつ場所へと変化していることや、東日本大震災後に改めて見直された図書館の「記録」「情報提供」の機能、図書館で働く司書の状況など、視野を広げることができたのではないでしょうか。

リサーチの行き先は無数にあり、正解はない。こんな図書館があるといいのではないかを考えてもらいたいと期待をいただき、第1回のゼミは終了しました。

+クリエイティブゼミvol.30 リサーチャー育成編「リサーチ・リテラシーを学ぶ」 例題1:「図書館の未来を考える」 概要