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2019/12/10

イベントレポート

LIFE IS CREATIVE展2019 レポート

10/19土からはじまった「LIFE IS CREATIVE展2019」は10/27日に会期を無事終了しました。ご来場、ご参加いただきました皆さま、関係者の皆さま、本当にありがとうございました。台湾からも多くの方に神戸へ来ていただきました。来場者からも多くの気づきがあった、この学びを生かしていきたいとメッセージもいただきました。

本展覧会は、KIITOで生まれた「男・本気のパン教室」や「大人の洋裁教室」といった高齢者の新たな活躍の場をつくるプロジェクトと、日本と同じく少子高齢化が進み、さまざまな高齢者プロジェクトが展開されている台湾の先進事例をパネルや映像で紹介しました。

  

不老騎士|「夢を持つこと」これが一番の介護予防だよ。
高齢者チームによる台湾一周バイク旅。若いときに実現できなかった夢を持つ多くの高齢者に元気を与えるべく企画されました。このメンバーは「不老騎士(ライダー)」と命名され、2007年に平均年齢81歳、17人のライダーが、バイクでの台湾一周、1,178kmを13日間かけて走破しました。この高齢者の長旅を企画することは簡単ではありません。しかし高齢者の冒険への勇気と夢を追い求める情熱をサポートしたいという思いから、弘道老人福利基金会が、ルート計画、交通面や安全面での専門家の手配、参加高齢者に向けた身体トレーニング、交通安全指導など実施に向けて動きました。現在まで多くのツアーが成功し、ドキュメンタリー映画は海外でも上映されています。参加者は、チャレンジ成功後、自分に自信が持てるようになったと語っています。

  

食憶|美味しいと言ってもらえる。これほどの充実感は他にない。
高齢者シェフが腕を振るう体験型レストラン。高齢者と若者が料理と物語を共有して、つながっていくことを意図し、今まで家族のための料理を頑張ってきた高齢者が、その技術を活かし、お客さまのために料理をつくります。2018年にポップアップストアの形態で登場し、3人の高齢者シェフが8種類の料理をつくり、30-40人の食事会を実施しました。高齢者シェフの応募も20名を超え、最高齢は93歳です。食事会は延べ1,000人に達しました。高齢者の価値創造、シェアエコノミー、体験型レストランのプロジェクトが2019年に台北市で「食憶」としてスタートしました。料理の楽しみをシェアする概念は広がり、現在は真空パック食品開発などを進め、故郷の味、台湾の物語を「食憶」を通じて発信することを目指しています。

  

哈老食堂・哈老農場|食べることに幸せを感じることが出来る、それが何より大切。
高齢者が活躍する食堂と農場。主宰する老五老基金会は食事宅配サービスをしており、栄養バランスに優れた食事を、一人暮らしの高齢者宅へ届けています。哈老農場では、農薬を使わない、自然農法や水耕栽培で野菜を育てています。高齢者ボランティアが活動しやすいように水耕栽培は高架化されており、腰を曲げずに作業ができます。取れた野菜は厨房へ送られ、高齢者向けの宅配サービスの食材として調理されます。哈老食堂はこぼれにくい特別設計されたお弁当箱を使用し、一人暮らしの高齢者へ宅配しながら生活状況を確認しています。高齢者へ栄養価の高い食事を届けることで、高齢者の病気の発生率を減らしています。また配達にも高齢者が活躍することが可能な仕組みになっており、人材再活用活性化へも貢献しています。

  

NEW AGE DESIGNER|私の経験と若い彼らの意欲と技術、間違いないでしょ!
高齢者と若年者との共創による新しい高齢者ファッション。高齢者と若いデザイナーや学生が共同し、理想的な高齢者製品・サービスを創り上げる活動をしています。アパレル業界をリタイアした専門家12名を招き、おしゃれなライフスタイルをしている高齢者150名、若いファッションデザイナーや学生30名が共同し制作をしました。第1回目は「ファッションデザイン」をテーマにスポーツ、観光、ボランティア、家庭、仕事、社交の6分野で衣服をデザインしました。高齢者の衣類品に対するニーズ調査からスタートし、高齢者のおしゃれに対するニーズで眼鏡収納に便利なポケットの有るホームウェアや日焼け止めの襟の有るスポーツウェアなどが生まれました。

  

DIYKIT|自分でつくったケーキを、娘にプレセントしたかったんです。
楽しく使える非薬物療法の認知機能維持キット。認知症は医学上、効果のある薬はありません。精神症状を緩和し、生活の質の改善することは、とても重要なことです。特に非薬物療法が優先され、生活の質を改善し、認知機能を維持しることで、認知症の悪化を遅らせることができます。そこで高齢者商品のデザインの専門企業と在宅ケアする企業が共同で、家庭生活で対話と活動に基づいて、生活行為と非薬物療法のコアとなるアクティビティ要素を組み合わせた製品を開発しました。作り方が分かりやすい絵で表示され、おしゃべりで治療するプロセスを簡単に、そして面白く仕掛けています。商品ラインアップも拡充され、介護者が高齢者のさまざまなニーズに応じて選択できるようになっています。

  

Free Day|出発前の不安は、旅行プランを聞いて吹っ飛びました。
高齢者と家族が介護施設を離れて出かける旅行サービス。認知症患者のいる家庭は、その介護で苦労を強いられています。家族はいつも心理的プレッシャーを受けています。介護者のいる家庭はほとんど外へ出かけ、一緒に家族の良い思い出を残すということが困難になっています。「旅行」は高齢者の人生最後のレジャーだけでなく、家族みんながお互いに楽しむ重要な機会です。各社が共同し、台湾最大の野生動物テーマパークと宿泊施設を拠点に、補助療法や介護の専門家、動物鑑賞やアミューズメント施設を結び付けたリゾートプランとして、認知症患者と家族が一緒に楽しめる旅行プランを展開しています。旅行後も家族と認知症の高齢者が、ツールを使って思い出を語り合えるようになっています。

  

好好園館|全く新しい老後生活の可能性が見えてきた。
高齢者と若者が一緒になって活動する多機能空間。台湾では現在、高齢者の間で老人ホームは、見捨てられた、余生を心配しながら過ごすといった固定概念があります。「未来の想像の中の老後生活」をコンセプトに、同じ理念を持つメンバーが集まり、若者と高齢者が一緒に生活して医療と介護を兼ね備えたサービスハウスを立ち上げました。専門的なケアを受けながら、高齢者が若者と一緒に活動し、世代を超えた交流が生まれる、アクティブエイジングが実現されます。ベーカリー、木工、金工、バーテンダーなどのワークショップを行い、若者の注目を集め、高齢者が新しいチャレンジの環境を整えます。積極的に老後の可能性を拡大し、魅力的な創造あふれる熟年時代を気づいていくことを目指しています。

  

男・本気のパン教室|パンじぃは私の人生の一大イベント。
パンづくりを本気で学んだ高齢者男性チーム。仕事を引退した男性は、仕事でのつながりに偏り、孤立や引きこもりといった問題があります。地域とのつながりをつくるきっかけとして、パンのまち神戸で始まったパンづくり教室です。神戸の有名なパン職人からパンづくりを本気で学び、その技術を生かして、家族や地域のために活躍しています。パンづくりは簡単ではありません。パン職人の指導だけでなく、メンバーでの自主練習や個人特訓を重ね、おいしいパンを焼けるように努力を続けています。イベントなどでは100-200個のパンを販売し、お客さまに喜んでいただいています。新たなメニューを学ぶスキルアップ講座も開催しています。神戸市5チーム、佐賀県、広島県に各1チームと、全国へ広がりを見せています。

  

大人の洋裁教室|今まで想像もしなかった自分に出会う、特別な時間です。
洋裁の技術やセンスを磨き、毎日の暮らしを楽しむ女性向けプログラム。2015年にKIITOで開催した「LIFE IS CREATIVE展」から生まれ、これまでに参加したおおむね50歳以上の女性たちは「洋裁マダム」の愛称で呼ばれています。プログラム内では、着なくなった着物をよそいきのワンピースにリメイクして地域のファッションショーに出演したり、着物を夏用のシャツに仕立て直してポートレート写真を撮影してもらい、終了後も依頼を受けたエプロン制作やイベント出店など、活動の幅を広げながらスキルアップを目指しています。洋裁技術向上だけでなく、講師や参加者との交流も生まれ、洋裁マダムたちそれぞれの活動も展開されています。

  

男・本気の料理教室|カレー|カレーをマスターしたら妻に恩返ししたい。
スパイシーな男の・カレー教室と題し、2019年2月に実施したプロジェクトです。公募で集まった50歳以上の男性6名が、神戸のシェフからカレーづくりを学びました。20種類のスパイスを使う本格的なキーマカレーです。実の状態のスパイスを粉にして、調合し、調理していきます。作業工程が多く、とても大変ですが、香りの高い美味しいキーマカレーをつくれるようになりました。展覧会期間中、1日限定で朝からブース横でカレーを仕込み、試食を来場者に振舞いました。会場内はカレーの匂いでいっぱいになっていました。

  

男・本気の料理教室|コーヒー|夜、何気なく手の匂いをかぐと、コーヒーの匂いがした。
違いがわかる男の・コーヒードリップ教室と題し、2019年2月に実施したプロジェクトです。公募で集まった50歳以上の男性5名が、神戸のコーヒー屋さんからコーヒーの淹れ方だけでなく、カカオ豆の栽培から流通までの知識、焙煎方法を学びました。学んだ知識や技術を生かし、地域のイベント出店やこどもとのワークショップなど活動をしています。展覧会期間中、数日間メンバーが会場内のブースに立ち、来場者に淹れたてのコーヒーの試食を振舞いました一人ひとり丁寧にドリップしました。美味しく入れるコツやコーヒー豆の選び方など、学んだ情報や技術を来場者に伝える様子も見られました。

  

男・本気の料理教室|マドレーヌ|お店で買ったようだと、家族の評価は上々。
50歳から始める・スイーツ男子教室と題し、2019年3月に実施したプロジェクトです。公募で集まった50歳以上の男性5名が、マドレーヌづくりを神戸の洋菓子のシェフから指導を受け、おいしいマドレーヌを焼けるよう特訓を重ねています。地域のイベントの出店、こどもたちと一緒にマドレーヌづくりを行いワークショップなど、活躍の場を広げています。オープニングレセプションでは、メニューの一つとしてマドレーヌを焼きました。また、展覧会期間中、メンバーが会場のブースにて、マドレーヌを焼き、試食を来場者へ配りました。食べた感想を聞いたり、活動を紹介したり、交流をしました。

今後も、同じ社会課題を抱える台湾からの学びを活かし、新たな高齢者の活躍の場をつくっていくことにチャレンジしていき、ワクワク、イキイキする神戸の高齢社会を目指していきたいと思っています。

  

  

  


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Photo:片山俊樹