2020/3/6
イベントレポート
2月21日(金)
KIITO CAFEを舞台に、様々なテーマのもと人々が気軽に集い、話す、交流の場として開催しているキイトナイト。今回は、クロストークイベント「Marching KOBEナビ」を開催しました。
Marching KOBEとは、神戸市内にあるアートやデザインを扱う施設・団体として活動する神戸アートビレッジセンター(KAVC)、C.A.P.(芸術と計画会議)、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)、神戸ファッション美術館(F美)が連携し、各館の活動を盛り上げると共に、施設間のクリエイティブなネットワーク作りを目指して2014年から始まった取り組みです。
今回は「チラシ」をテーマに、各館がそれぞれどうやって企画を立て、チラシを制作し、イベント開催に至っているのかをひもときました。
各館が紹介したのは以下のチラシです
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO):「神戸野菜学 オクラ」
C.A.P.:マンスリーカレンダー
神戸アートビレッジセンター(KAVC):「新開地カブキモノ大興行」
神戸ファッション美術館:特別展「アフタヌーンティーのよそほひ-英國紅茶物語-」
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)
「広報としてだけじゃない、イベントアイテムとしての工夫を」
2017年から始まった、食のワークショップ「神戸野菜学」は、これまでに3月開催
予定の回を含め16回の講座を開催してきました。チラシのビジュアルは、年度ごとに刷新しており、これまでに3回デザインを変更しています。2019度は“学び”の要素を重点的に取り入れたデザインにしています。これまでのチラシから大きく変わった点は2つ。1つは、共催のはっぱや神戸さんの店舗で開催される「はっぱや野菜の絵コンテスト」の応募作品をデザインする際の素材として起用したこと。これらの原画はKIITO CAFE入口にもイベント告知期間に合わせて展示しています。そして、2つめは裏面にテストコーナーを設けたことです。これは、参加者がイベント当日までの間にも学びを得られるようにするため、また、イベントに参加できない人でも楽しんでもらえるようにと考えたもの。開催当日に答え合わせをするため、イベントの事前告知だけでなく当日の資料としても使えるアイテムとして、チラシの新しい役割が見えました。
C.A.P.
「情報の見やすさを考えながら進化してきた歴史あるマンスリーカレンダー」
告知内容の多さと頻度が高いC.A.P.ならではの広報ツールは「マンスリーカレンダー」。これまでに巻三つ折り、Z折り、A3二つ折りというように、送付作業をするスタッフの手間やレイアウトのしやすさを考えさまざまなパターンを試し、今はA4二つ折りになりました。現在の形状の特徴は表紙のバリエーションで遊ぶことができるという点。開催する展覧会にちなんで写真や絵画等さまざまな見せ方ができるため、紹介したい企画のビジュアルやイメージを表紙から伝えることができます。あてはめる形がある程度決まっているものではありますが、スタッフが特集内容を踏まえ方向性を示し、デザイナーがそれに対してどのような提案をするのか、毎月の楽しみでもあるのです。
神戸アートビレッジセンター(KAVC)
「みんなに情報を伝え雰囲気を味わってもらう、まちに馴染むチラシ」
C.A.Pと同じく催事数の多いKAVCも、イベントの多さがひと目でわかるマンスリーニュースを作成していて、演劇・ダンス、美術、映画、地域事業の4つに分かれているKAVCの多くの事業を一覧できるのが特徴です。その事業のうち演劇・ダンスと地域事業のオーバーラップ企画「新開地カブキモノ大興行」では、KAVC周辺の商店街を巻き込んで練り歩くというプログラムの中でチラシがキーアイテムとなりました。広報用に配布するチラシは印刷所で刷られたものですが、まちに出て号外のように撒いたチラシは、KAVCの輪転機で刷られた、まるで新聞のような味のあるチラシを使用。道ゆく人が「何やっとるん?」と興味を持って近づいてきてくれるなど、地域の人々にも一緒になって楽しんでほしいという企画者の想いが形になった瞬間だったと言います。
神戸ファッション美術館
「小さなチケットから大きなバナーまで展開可能なメインビジュアル」
神戸ファッション美術館は、昨年開催した展覧会「アフタヌーンティーのよそほひ-英國紅茶物語-」のチラシを紹介しました。オリジナル企画展ということでビジュアル制作にも一苦労し、ティーカップやドレス等の展示物の写真は、全て新たに撮影。担当にラフを見せれば「愛が足りない!」と細かい部分までこだわりの修正が入るなど、数々の試行錯誤を経て完成したビジュアルだそうです。展覧会のビジュアルはチラシだけではなく、入場チケットのような小さな印刷物から、美術館の外壁を飾る縦5メートルを超えるバナーまで、幅広く展開します。また、会期中に開催される関連イベントのツールとしても使われました。ちなみにチラシには、招待券とともに封筒に入れて送る際、「Z折り」にすることで開いたときに美しく見せる、という工夫も。長期間の展覧会であるがゆえにさまざまな見せ方ができる、美術館ならではの特徴でした。
4館の紹介のあと、話題は各館共通の内容へ。「チラシは何部刷っているのか」「刷ったチラシはどこで配布しているのか」といった、前半よりも実務的な話を展開しました。各館、チラシの印刷部数はイベントごとにも異なり、また、配架先に置いてもらえる数量にもよりますが、神戸ファッション美術館の印刷部数は最大の場合で約80000部。「80000部!?」「桁が違う…」と、基本1000単位で調整している他館からは驚きの声が上がります。定期的に集まってミーティングを行っているものの、4館どうしも企画の細かな部分は共有したことがありません。登壇者たちも、このときばかりは参加者席に座っているような気分で熱心に話に聞き入ってしまいました。
イベントや展覧会の内容やターゲットに合わせて、図書館、公民館などチラシの配架場所も変わります。図書館でチラシを見たというお問い合わせが多数寄せられたり、他県の文化施設でチラシを見てわざわざ来てくれた方がいた、など、SNSでの情報発信が活発な現在でもチラシの存在の重要さがわかるエピソードは各館にあるようです。
会場からは、「普段、スタッフの方々はどのようなものを見たり聞いたりしてインプットしているのか」という質問が。実際にデザイン作業に関わること自体は少ない4館のスタッフですが、普段からさまざまな施設の企画をチェックし時には足を運んだりして、アイデアのヒントになりそうな情報には常にアンテナを張っています。
一方で、「自分も地域イベントのチラシを作成している。親子向けのチラシで気をつけるべき点はあるか?」といった具体的な質問も。子ども向けの企画を定期的に開催するKIITOやC.A.P.からは、わかりやすくフリガナを振る、イラストを使う、実際のターゲット層に見せて、意見を聞いてみる、というようなアドバイスがあり、相手を意識したチラシ作りが大切だということがわかりました。
各館、すばやくそして拡散力のあるSNSを活用しつつも、チラシもまだまだ現役と言わんばかりに広報に役立てています。
「ペーパーレス化」も注目される今の時代ですが、チラシはイベントの顔とも言える大切なアイテム。これからも、広報として、イベントツールとして、プログラムを支えてくれることでしょう。みなさんもぜひ、チラシを見かけたらその「裏」にある物語にも思いを馳せてみてくださいね。
グラフィックレコーディング:安藤友美(デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO))
キイトナイト26 KAVC×C.A.P.×KIITO×F美クロストーク「Marching KOBE ナビ」~チラシ裏話の巻~
イベントページはこちら http://kiito.jp/schedule/event/articles/40085/
◎開催中のMarching KOBE スタンプラリーについてはこちら
http://kiito.jp/schedule/event/articles/41053/
※デザイン・クリエイティブセンター神戸は3/2(月)~3/16(月)の期間臨時休館となっていますのでご注意ください。