2020/12/10
イベントレポート
11月2日(月)
8月に開催した「KIITOサポーター限定スペシャルトークセッション」の第2弾を開催しました。本企画は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でイベントが減り、サポーターのみなさんとKIITOの関わりが少なくなってしまったことを受け、この機会にKIITOへの理解をより深めてもらおうとゆかりのある人物をゲストに招き、オンライントークを開催する、というものです。
今回はKIITOのセンター長である芹沢高志をゲストに迎え、自身の活動を軸に、KIITO立ち上げ当初のエピソードや、アーティストが関わるKIITOのプログラムの話を交えながら、アートとデザインについて考える会となりました。
なお、当日はちょうど開催期間が重なっていた「KIITOアーティストサポートプログラム Xhiasma Project #003『site』」の会場前から配信しました。
写真(左):守屋友樹
もともと数学を学び、だんだんと建築の世界に足を踏み入れていった芹沢は、エコロジーの考え方を土地利用に何か活かせないかと考えていました。建物自体が何の機能を果たしているのかわかりにくいとも感じていたなかで、東長寺の地下空間を寺の機能だけではない多目的利用に対応できるようなスペースとして設計したり、開拓時代の雰囲気が残る帯広の競馬場をアート空間として魅せたりと、さまざまなプロジェクトに関わってきました。既存の美術館やギャラリーではない、オルタナティブ・スペースと称されるような場所を展開していったのです。
デザインとアートはひと括りで考えられることが多く、互いの親和性も高いということはよく言われます。しかし、2つをよく見ると少しずつ「違い」も見受けられる。芹沢は自身が携わるプロジェクトでアーティストと出会っていくうちに、その指向性の差のようなものに気づいていったと言います。
2008年に神戸市がユネスコ創造都市ネットワークのデザイン都市として認定され、「旧生糸検査所という歴史的建造物を遺したい」「デザイン都市の拠点となる施設を建てたい」という意見が挙がっていた当時、その2つを叶えるかたちでデザイン・クリエイティブセンター神戸が誕生しました。
アートは「問題提起」、デザインは「問題解決」とよく表現されますが、この2つは補い合う関係にあると芹沢は話します。「問題」を、今まで気づかなかったものや何となくもやっとしているものと考えたとき、今やその問題があるのかないのかわからないという状況も多くあります。そんな問題を発見し、解決するためには、アートとデザインという両輪の存在が欠かせません。「デザイン」・クリエイティブセンターという名前ではありますが、アートをなおざりにはせず、むしろアートもきちんと据えるべきだと考え、KIITOでは、アーティストを招聘し滞在制作していただく「KIITOアーティストサポートプログラム(旧名称:KIITOアーティスト・イン・レジデンス)」、そして我々の未来を切り拓いてくれる“かけら”を見つけていくトークシリーズ「未来のかけらラボ」といったプログラムを展開してきました。
サポーターからの質問に絡め「場所」について考える場面では、美術や芸術に使われる「術」という字について話す一幕も。
真ん中にある「朮」は動物的なもの、霊力のあるものを。両端の「行」という字は道、すなわち道と道が交差する十字路を表します。道の真ん中で、霊力を持った何かを使って旅の安寧を祈る……そんな文字を使った美術や芸術、いわゆるアートには、魔術的な力がある、むしろそれを求めたいと思っている、と芹沢。ゲニウス・ロキ(Genius Loci)という「土地の雰囲気」「土地柄」を意味する建築や不動産で使われる言葉も、もともとはローマ神話の土地の精霊を指します。冒頭の「建物が果たす機能」にもつながってきますが、土地が持っている魅力を抑え込んでしまっているケースでは、その土地らしさを発見する過程でアートが作用してくるのです。
KIITOのスローガンである「みんながクリエイティブになる」という方向性は、これからも変わらず続いていきます。社会に対して創造力を発揮し、よりよい社会をみんなで考えていく。KIITOはこれからも「デザイン・クリエイティブセンター」として神戸のまちに根付いていきます。今回は、デザインとアート、その両方に触れるKIITOの根幹に迫るトークとなりました。
サポーター限定オンライントークセッションは第3弾の開催も予定しています。
サポーターのみなさん、どうぞお楽しみに!
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