2020/12/22
イベントレポート
12月12日(土)
鉄人28号のモニュメントが象徴的な、新長田・若松公園。鉄人の足元に子どもがよじ登るのどかな休日の風景を横目に集まったのは、18人の大人たち。2018年から開催している、神戸のまちを歩いて俳句を詠む吟行句会イベント「Gabarito KOBE」の第4弾は、駒ヶ林・新長田エリアを舞台にスタートしました。
ゲストは、音楽評論家としても有名な俳人の村井康司さんと、俳句は今回が初めてという編集者の和久田善彦さん。コーディネーターの酒井匠さんによるイベント説明と、和久田さんの新長田おすすめポイントを聞いたら、さっそく吟行開始です。配られたエリアマップにも目を通しながら、みなさん商店街へと消えていきます。
新長田は、どこか懐かしい雰囲気が漂うレトロな下町。JR新長田駅から商店街を抜けて南に進み、駒ヶ林神社周辺の海が見えるあたりまでが今回の吟行エリアです。人通りの多いにぎやかな商店街があったかと思えば、銭湯の暖簾がゆれる静かな住宅街もあり、家と家の隙間から見える路地はまるで別世界への入り口のよう。そんなさまざまな顔を持つまちを、メモをとりながら歩く参加者たち。ときには、鉛筆を置いたその手にあつあつのミンチカツを持つ場面も。「今日、何かやってるんですか?」「俳句をつくっていて……」精肉店のおじさんとの間ではそんな会話も生まれます。季節柄、あちこちに「歳末」の文字が踊り、加えてなんとなくクリスマスムードが漂う中、一体どんな句が生まれたのでしょうか。
ほんのりと磯の香りが漂う駒ヶ林公園が、つくった俳句の提出(投句)場所。30分間設けた投句時間中、ぎりぎりまで練り歩いてくる方もいれば、早めに着いてベンチに座り、どの句を投句しようか吟味している方もいました。公園でキャッチボールをしていた男子学生たちもいなくなったころ、全員の投句が完了。開始時のうららかさとは一変、少し冷えてきた寒空の下を、心なしか足早に句会会場であるKIITOへ向かいます。
Gabarito KOBEの参加者は、まったくの初心者から句歴数十年というベテランまでさまざま。3句ずつ投句し集まった全66句(ゲスト・スタッフ込み)を全員で見ていきます。また、良いと思った句を選び(選句)、得票数が最も多い句にはKIITO賞、ゲストのお二人が選ぶゲスト賞が贈られます。
冬の季語が使える時期にあたるこの日に出揃った俳句には「北風」「冬ぬくし」「極月」など冬にちなんだ単語が並びました。途中で入った飲食店での風景、商店街の八百屋を眺めて一句、どこかから流れてきた曲に耳を傾けた情景など。同じエリアを歩いいていても、同じ景色を見ていたとしても、生まれる俳句に一つとして同じものはありません。写真のように「言葉」で風景を切り取ることで、まちの魅力を改めて目を向けてみるというのが本イベントの趣旨でもあります。参加者のみなさんは、風情あふれる下町エリアにどんな魅力を感じたのでしょうか。
【ゲスト賞・KIITO賞】
〈村井康司 賞〉
たこ焼きにたこ入りと書く冬ぬくし 小西敬子
肉汁と鼻水垂れるアスファルト 安藤友美
金で買うマスクもワイン煮も黒し 山本哲史
鉄人の鼻の尖るや北颪(きたおろし) 阪上真吾
赤信号落ち葉渡って轢かれけり 神谷活也
〈和久田善彦 賞〉
冬日さすカラフルフルな関羽かな 若林友美
〈KIITO賞(最多得票句)〉
たこ焼きにたこ入りと書く冬ぬくし 小西敬子
今回詠まれたすべての句はこちらからご覧いただけます。(クリックで別ウィンドウが開きます)
五・七・五の十七音に込められた2020年12月12日の景色を、みなさんもぜひ感じてみてください。
イベントの詳細はこちら
Gabarito KOBE(2020年12月12日開催)
過去の「Gabarito KOBE」レポートはこちら
2018年7月28日開催 新開地・湊川編レポート
2019年2月23日開催 元町高架下編レポート
2020年1月12日開催 ポートアイランド編レポート