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2021/3/10

REPORT

2月16日(火)開催「+クリエイティブゼミ Vol.35まちづくり編「空き家の新たな活用方法を、地域豊饒化の観点から考えてみる」」第7回目  最終発表 レポート



去る2月16日(火)に、「「+クリエイティブゼミ Vol.35まちづくり編「空き家の新たな活用方法を、地域豊饒化の観点から考えてみる」」」の第7回目(最終回)を実施しました。これまでのグループワークで練られてきた「空き家」の活用についてのアクションプランが、各グループから発表されました。今回のゼミは、途中からオンラインでの開講となりましたが、それぞれのグループが工夫を凝らして議論する場やアクションプランを練り上げる機会を設け、活発に活動する様子が見られるものとなりました。それぞれのグループの提案の内容と、永田副センター長と山下卓洋さん(すまいるネット)からの講評を下記に紹介します。


子ども


子どもグループの提案は、「作る、創るをTUCHOOL」と題した子どもたちのための居場所づくりプロジェクトです。発表に向けた話し合いの中で浮かび上がってきたのは、いまの子どもたちが抱えている「やってみたいことはあるけれど方法がわからない」「なかなか積極的になれない」「周りに合わせないといけないのではないか」といった不安や悩み。これらの解決策のひとつとして、自由に活動でき、つくること(工作やDIYなどの体験)を通して創造性を育めるような居場所をつくることを目的としました。TUCHOOLとは、「つくる(TUKURU)」と「SCHOOL」を合わせた造語です。
TUCHOOLを本格的に運用していくにあたり、3つのステップを考えました。まず第1段階として、空き家の整備を兼ねたプレイベントを実施します。まずはゼミ生が講師となり、庭整備や家の中をリノベーションするDIYワークショップを通してこれから生まれるTUCHOOLの存在を認知してもらうためのワークショップを開催します。これは、ゼミ生が子どもグループとして話し合っていく中で、メンバーがそれぞれ特技や職能を持っていることから生まれたアイデア。空き家のオーナーさんにもご協力いただき、これからの活動イメージをつくっていく実験的な段階です。
次に、地域の中でTUCHOOLを居場所として認識してもらうために本格的に運用していくのが第2段階。平日の放課後をつかった自習室カフェの運営や、第1段階で実施したワークショップをクリエイターと協働してより充実した内容にブラッシュアップしていくなど、継続運用をめざすための土台作りをします。また、地域に根付く居場所になることを見据え、要らなくなった道具の回収・活用場所や地域の清掃活動への参加も積極的に行っていきます。
そして第3段階は、担い手探しです。ゼミ生が永続的に関わっていくのではなく、徐々に地域の担い手にバトンタッチしていくための仕組みを整えます。この点については、第1、第2段階で実践するイベントや告知でTUCHOOLを知った人々とネットワークをつくっておくことが重要になってきます。また、空き家がある垂水区に協力を依頼しボランティア団体とつないでもらったり、助成金やクラウドファンディングを活用して運営資金を確保したりしていくことも検討しています。
以上が、子どもグループによる「作る、創るをTUCHOOL」の概要です。このプロジェクトは、今回対象となっている空き家だけにとどまらず、神戸市、そしてゆくゆくは日本各地で空き家の利活用に悩んでいる地域で応用していけるモデルケースとなることを目指しています。TUCHOOLとなった空き家にはフラッグが立てられていき、そのフラッグを目印に子どもたちが集まってくる──そんな地域に根づく居場所になるような場所となることが理想です。

講評
沢山のアイデアが盛り込まれていましたが、どれもとても共感できるものでした。私も子ども向けの防災教育に携わっているので、共通の問題意識があるようにも感じました。
最終的に地域で水の人を見つけて委ねていく、最後は地域の方々に地域の中で企画・運営をしてもらいたいというところがゴールなのだと思いますが、最初の仕掛けはみなさんがするのでしょうか? その際の運営、マネジメントはどのようなものになるかが、まず気になりました。また、地域の人たちを巻き込むには、広報面なども重要になると思います。いざ活動始まった後、どうやって地域の人を巻き込んでいくのか、それも気になる点でした。発表時間が限られてはいましたが、この2点について、詳しく言及してほしかった、というところです。(永田)

教育という点をキーワードにすると広がりが出てくるのだと感じました。教える側、教えられる側だけでなく、色々なターゲットがあると気づかされる発表でした。沢山のアイデアが盛り込まれていましたが、その中でも、最初に手掛けたいことは何か、というところが気になりました。資金面にも言及されていましたが、段階的にプロジェクトを実施してみると良いのではないかと思います。リノベーション補助金などの制度もありますが、それで全部をすることは難しいように思いますので、まず、どの活動が一番実行したいこと、あるいは、短期・中期・長期というスパンを持って、どこでどんな活動をしていくか、プランを考えても良いのではないでしょうか。
具体的に地域でどういう方が動いていくようになるか、良く練られた理解しやすいアクションプランだと感じました。(山下)



大人

大人グループは、「おじさん」ばかりのグループで、物件見学の際は、「懐かしい」「実家っぽい」「秘密基地のよう」「幼少期を思い出す」などの感想が多く出ました。この初めの印象を大切にして、議論を進めました。現状のコロナ禍の影響もあり、自宅について「在宅ワークの場所がない」「家族間で部屋の取り合いをしている」「趣味部屋が欲しい」など、メンバー内の気づきや不満を共有しました。
物件を一つの家と捉えるのではなく、部屋単位でレンタルなどできないかというアイデアが生まれ、メンバー内の不満を解消する、また趣味や仲間を増やすための活用を考えました。まずは、メンバー内で一番盛り上がった、ゲーム部屋の検証実験を目指す提案を進めました。
「みんなでつくる、みんなでつかう、みんなのへや」をコンセプトに、まずは、「おじさん」たちが楽しめる場所をつくりたいと考えています。複数人で行うゲーム、昔はまったゲーム、ゲームをきっかけに部屋を活用し、仲間を増やし、発信していきます。趣味を中心に広がりをつくっていく提案として、率先して趣味で引っ張っていく人を「趣味+イニシアティブ=シュミシアティブ」と呼び、「シュミシアティブ」から空き部屋活用を広げていきます。
ステップ① 空き家の認知を広げる。空き家の存在知らしめるために、空き家情報を伝えるのではなく、人が集まるきっかけになりやすい「食」をテーマにしたイベント実施する。
ステップ② 趣味部屋の活動を、SNSを通じで発信する。実際の活動を発信することで、空き家のイメージをより身近なものにしていく。

ステップ③ さまざま趣味活動がうまれ、空き家の部屋活用が促進する。
ステップ④ 趣味活動の部屋として、活用が継続していく。または、実際に空き屋の部屋を使うことで、建物への意識や愛着がわき、賃貸契約が進むこともある。

はじめのイベントでは、メンバー内にシニアカレーづくりチームもいるので、カレーの試食会やゲーム体験などを実施します。ゲーム部では活動発信だけでなく、長田区にあるボードゲーム団体などにも協力していただき、趣味の枠を広げていきたいと考えています。部屋のレンタルシステムは、IoTの技術で、コワーキングスペースなどで使われている、スマホでの予約・施錠・支払いなど管理ができる仕組みも取り入れます。
これらのステップを進めていくために、まずは我々大人グループで3カ月間の検証期間を設け、どれくらい人が集まるのか、趣味部屋としての利用者はどれくらい広がりそうかを実験したいと考えています。

講評
面白いアイデアだと感じました。オーナーの方にも好感を持っていただけるアイデアではないでしょうか。一部屋一部屋から捉えるというのは良い着眼点だと思います。最近では、マンション1階の使われていない共用室を仕入れてレンタルするというビジネスもありますが、シェアすることが定着しつつある中で、1つの部屋ごとから考えてみるのは面白いアプローチなのではないでしょうか。また、「ゲーム」という点も面白く感じました。沢山ボードゲームが置いてあると、ルールや使い方がわからなくても、なんとなくワクワクしてくる感じというのは、「大人」には響きやすいのではないでしょうか。
一部屋から始まって、それを見えやすくすることで、面白そうと思う人が集まる、さらに違うことをしたい人も現れる展開は、現実にあり得ることだと感じましたし、やってみる価値はありそう、とも感じました。近隣の方とどう溶け込んでいくかはクリアしなければなりませんが、可能性を感じるものでした。(永田)

自分たちが一部屋から始めてみる、気軽に始めてみるという点で、着手しやすく、資金的な面でのハードルが高くない、シンプルながらも優れたアイデアだと感じました。一方で、どう広がっていくのか、というところは注意する必要があるように思います。実現性が高いだけに、地域レベルで新しい取り組みを始めるにあたって、近隣とも円滑に活動をしていく仕組みも組み込んでいただければ、と思います。(山下)



高齢者

「高齢者」グループが空き家の活用案として提案するのは、空き家を「まちのえき」として、そこから地域豊饒化をはかるというものです。このプロジェクトでは、「Be 空き家」という観点から、空き家を高齢者が活躍する場所、生きがいを育む場所とすることを目指し、同時に、地域の交流、まちのハブとなる場所とすることも目指します。
このプロジェクトは、空き家に役割を与えることからスタートします。具体的には、地域住民が集まっておしゃべりをしたり、掲示板を設置して情報交換したりする場所としての役割、あるいは、高齢者が得意とする技術を披露したり、教えたりすること通じて活力、生きがいを得る場所、教えられることで新しい技術を習得したり、新しい趣味を得て活動のきっかけを作ったりする場所としての役割を与えたいと考えています。また、「まちのえき」に地域の住民が気軽足を運べように、トイレを貸し出したり、授乳室を設けたりするなどの仕掛けも付加します。一方で、「まちのえき」が地域住民にとっての「自分の場所」という意識を持ってもらえるように、「みんなで作り上げる」というプロセスも盛り込みます。関わるきっかけとして、DIYワークショップ、アートワークショップ実施し、自分たちで「まちのえき」を作り上げていきます。
なお、このグループでは物件の特徴に因んで、ここに「パーラーオレンジ」という名前を与えて、よりワクワク感を喚起したいと考えています。
この「パーラーオレンジ」では、空き家そのもののコンテンツ化を図ります。マスキングでステンドグラスを作る装飾ワークショップ、手で塗る漆喰など、誰でも容易にできることから、空き家じたいを楽しむ機会を設けます。また、子どもたちと部屋を協働して作る、KIITOが展開するパンじぃや男本気の料理教室修了生によるオープン喫茶で近所の人どうしがコミュニケーションを持つ、オーナーさんと共同でエコ活動をしてみるなど、コンテンツの内容も充実させ、「まちのえき」を拠点として整備します。
拠点として整備することで、他の空き家へ影響が波及、それぞれの特徴を出した「まちのえき」が発生することも期待しています。その中では、地域の高齢者にまず利用してもらう、顔が見える関係を「まちのえき」から作ることを重視し、いくつかの空き家から「隣保」が再構築され、コミュニケーションのあるエリアへと変化し、「街の益」を産み出すことができればと考えています。

講評
KIITOでも「パンじぃ」などのように、高齢者の生きがいづくりと、それが街のエンジンになる、というプログラムを実施してきました。このチームも、高齢者がテーマということもあって、高齢者が街を元気にしていく、その拠点づくりを目指すものでした。その点で、共感と同時にリアリティのある提案だとかんじました。
ただ、とても良い提案なのですが、仕掛け方によっては、近隣の住民の方にとって異質なもの感じられてしまう可能性もあり得ます。やはり、近隣の方にとって何があればうれしいのかを考えておいてほしいと思います。例えば、パンを焼くならば、軒先で見える形でパン売り場を作ってみたり、その技術の高さ、誰から習ったかをピールしたりするなど、寄ってみようという仕掛けが必要になるのではないでしょうか。住宅街の中の趣味の延長線上のようなカフェも、割と人が入っているように見えるところは、寄ってもらう仕組み、開いていく仕組みがしっかり備わっているように思います。このグループの場合は、周りの人も応援したくなる仕組みも備えることができていれば、十分に実現可能で、上手く機能するのではないでしょうか。(永田)

グループワークの様子を度々拝見していたのですが、メンバーが沢山の事例を紹介しあっていて、今のシニアはこんなに元気に活動しているのかと度々驚かされました。
気軽に取り組めるということを重視されていて、そこに魅力を感じます。一方で、やはり最初にどう仕掛けるかが気になるところで、外部の方を呼ぶのか、地域の方を中心に取り組むのか、どちらに重点を置くのかが、もう少し見ることができれば、と感じました。取り掛かりのイメージ、あるいは近隣とどう関わるのか、街の中へ広がり方のイメージを明確にすると、さらに効果的なアクションになるのではないでしょうか。
提案で言及されていた「隣保の再構築」はとても重要な事ですし、高齢社会が進展する中で、高齢者の方から地域が元気になる、そのイメージが見える提案でした。(山下)



その他

「その他」グループでは、この地域がどんな街なのか、どんな特徴を持っているかをリサーチするところから、「空き家」活用方法の模索をスタートさせました。そこで気づかされたのは「空き家」はあっても、この地域が豊かな街だということです。子育て世代にも人気、住民自治も盛ん、風景も美しい、成熟した住宅地、ここで新たに何かをする必要があるのかと思うほどでした。しかし、新旧の住民の方の間の壁、これからの活動の担い手の不安、といった課題があることも見えてきました。一旦、地域の活動の拠点、若いアーティストに住んでもらうなどの案を活用のアイデアとして出し合いましたが、果たして、地域に根付くか、どう継続できるかという点で、もっと良い案はないか、議論重ねました。その中で、外からアイデアを持ち込んでも、それが育つ土壌があるのか、空き家が注目され、活用される機運があるのか、そうした課題を解決すアイデアはないか、模索しました。
このグループが掲げるのは「無責任参加型」というキーワードです。参加・関与のハードルを下げる、そこから「空き家」自分ごとにするツールとして「写ルンです」に着目して、プロジェクトを組み立てました。藤本智士さんの企画に範を得た、「写ルンです」を地域の人に渡して、好きに写真を撮ってもらい、それを回収して現像するというものです。これを、「空き家」を事務局とした「とるとるたるみ」プロジェクトとして実施します。
ここではカメラを事務局回収して現像するだけでなく、空き家で地域の人の作品による展覧会へと展開させます。来てもらって、この場所への意識を持ってもらう、また、同時にコミュニケーションをはかる場として機能させることも目論んでいます。また、ここから派生する事業として、展示された写真からのカレンダーの制作と販売、地域の情報発信の素材としても提供し、写真、空き家をきっかけに、地域の活動の輪を広げられたらと考えています。
また、写真からの展開として、サウンドスケープ、地域の隠れた資源としてのホームムービーを発掘し、世代間で記憶を鑑賞、共有する機会にもつなげたいと考えています。
「空き家」への意識が醸成される、あるいは地域で何かしようとするきっかけとなる、そうした、土壌づくりを、このグループとしては、まず手掛けたいと考えています。

講評
ありうる企画だと思いましたが、この企画で醸成されるのは、「垂水」への思いなのでないか、あるいは、この提案単体でやってみて「空き家」使おうという気持ちになるのかどうか、その点は疑問に感じました。「写ルンです」の企画は面白いものですが、地域のコミュニティ単位の動き、地域の施設で写真展をやっているような動きと、どのような差異があるのか、「空き家」へ意識が向くか、自分で何かしてみようという誘因になるのか、単発ではやや弱さがあるのではないか、と感じました。複数のプランを組み合わせる、また、その上でどう展開するか、というところまで考慮する必要があったように思います。(永田)

「無責任参加型」というところが、このグループでの、気軽さ、ハードルの低さを打ち出すキーワードになっていて面白さを感じました。一方で、誰が仕掛けるのか、ということが、ここでも気になっています。連携したい地域団体の名前も挙がっていましたが、これらは既につながりがあった上で、最初から一緒に仕掛けていくのか、あるいは別の方法があるのか、その点は事前に十分に検討と準備をしておく必要があるように思います。写真をきっかけとして用いるならば、地域での関連する動きを巻き込んだり、世代間、家族で楽しめる見せ方、打ち出し方を企画してみたりすることも、あわせて組み込むことも考えてみてはどうかと感じました。(山下)



今回ご協力をいただいた、対象となった物件のオーナーの方にも、発表について、感想を話していただきました。

講評
みなさんに「空き家」についてのモデルを一生懸命考えていただいたおかげで、「空き家」もきっと喜んでいると思います。発表も楽しみながら聞きました。
「子ども」グループは、今の子どもたち、若い人たちのことをよく考えて、よく見て育てていこうという考えが伝わる内容でした。たくさん、新しいアイデアが盛り込まれていて、頼もしいものだと感じました。
「大人」グループについては、「おじさん」が遊べる、息抜きする場所というのは、地域ではなかなか見られないものだと思いますが、「おじさん」も、そういう場所を求めているというのがよくわかる発表でした。女性の場合は、色々なグループに参加して、地域に参加しているという人が多いと思いますが、「おじさん」も息抜きする場所をきっかけに、地域に参加することが実現できたら面白いと思います。
「高齢者」グループの発表はだんだんと提案の面白さがわかってくる内容でした。「近隣」を大事にするという点が良いと思いました。「隣保」という言葉を紹介されていて、東北の震災など、災害のことにも言及されていましたが、やはり、災害や何かがあった時は「隣保」が大事になってくると思います。隣のこともわからない、ということが多いと思いますが、「隣保」の考えを大事にしてプロジェクトを実施することで、良い影響を地域にもたらすことができると感じました。
「その他」グループは、最初は観光ボランティア的な視点なのかとも感じましたが、「写ルンです」をフックにして、近隣の方を空き家に向ける、多くの人が関りやすくする、という工夫はもっと面白いものへ練ることができるのではと思いました。
みなさんのアイデアがあちこちの「空き家」で実施されたら、楽しむために人も移動してきたり、回遊したりして、素敵な街になると思います。



今回のゼミは、実際フィールドを想定して、活用するだけでなく、どうやったら地域へ良い影響が波及するか、どうやって他の「空き家」にも適用できるモデルを作るかまで、参加者の方がしっかり意識して、実現性の高い提案を練り上げることができたものだったように思います。「住む」、あるいは「リノベーション」の対象のみならず、地域が活力を得る可能性を、「空き家」から見い出せるきっかけともなったのではないでしょうか。今回提案されたようなアクションを、もしかしたら、各地の「空き家」は待ち望んでいるのかもしれません。

「+クリエイティブゼミ Vol.35まちづくり編「空き家の新たな活用方法を、地域豊饒化の観点から考えてみる」」についてはこちら