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2021/3/19

REPORT

【GOOD DESIGN TALK】1/1000秒にかける思い アシックス次世代スプリントシューズ レポート

1/28(木)

グッドデザイン賞で金賞を受賞した陸上スプリントシューズ「メタスプリントトーキョー」について、その優れたデザインと誕生の裏側について、5名のアシックスのみなさまと、グッドデザイン賞審査委員を務めた渡辺弘明さんにお話いただきました。
これまでの陸上シューズの既成概念を打ち破り、スパイクピンをなくした、全く新しい次世代の陸上シューズ「メタスプリントトーキョー」。その斬新の発想から量産化への道のりを通じて、アシックスチームの1/1000秒にかける思いとそのデザインの秘密に、80名近くの視聴者が熱心に耳を傾けました。

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■既成概念を打ち破る
はじめに、既成概念を打ち破るきっかけについて詳しくお話をお聞きしました。「ピンが刺さる感覚がある」というアスリートの言葉から、「その刺さる時間をなくす」「ピンをなくす」という発想へつながった、とのこと。簡単そうに聞こえますが、日頃から当たり前や常識を疑い、さらに幅広い分野を学び視野を広げているからこそ、そこに気づくことができたのでした。メンバーからは、これに気づいた研究担当の谷口さんに対して「もはや変態」という声も。グッドデザイン審査員を務めた渡辺さんも、その発想力には大いに感心し、「例えばシューズのない時代など、0ベースから考えてみると、意外と発想が生まれることがある」と、既成概念を打ち破るヒントにも触れていただきました。

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■チームでかたちにしていく~交感
アイデアが出たところで、ピンレスのシューズをプロジェクトとしては、どう動かしていったのでしょうか。かつてないシューズに、はじめは本当にできるのかという声もあったそうですが、プロトタイプを繰り返し、それを使用するアスリートの反応に、次第に一致団結していく様子を、語っていただきました。
そして、なんといってもプレートの独特のデザイン。いかにして生まれてきたのでしょうか。ピンがなくなることで高くなった自由度を活かし、ニョキニョキと凹凸が生えてくるようなデザインを目指しました。それを表現するために、カーボンのプレス成型の技術によって、凹凸の先端までカーボン充填が可能になり、まったく新しいシューズの量産化が可能になっていきます。
この過程では、どこにどう突起があるべきか、軽さはどのぐらいか・・・困難も多くありました。これを乗り越えていく助けになったのが、新しい試みである「パラメトリックデザイン」でした。パラメトリックデザインは、パラメーターを入れてデザインしていくシミュレーションのようなもので、これを活用して、同じ画面をチームメンバーで見て、実際に画面上で少しずつ数値や形を動かしながら、デザインをつくっていったそうです。はじめての試みだったので、最初の打ち合わせは何も完成せずに終わる・・・など、手探りの中進んでいったそうですが、研究・デザイン・開発などそれぞれのメンバーが刺激し合いながら話し合えたことが、今回の画期的なシューズへつながっていったと感じました。

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今回のグッドデザイン賞のテーマは「交感」ですが、渡辺さんは、まさにこの「交感」にふさわしいシューズだと言います。シューズとアスリートで生まれた交感、デザイナーやエンジニアで生まれた交感、さらには審査の過程では審査員同士でも交感が生まれたそうです。

■アシックスに浸透する信念
さらにアシックスは、今回のグッドデザイン賞で、このシューズを含め全部で5つのグッドデザイン賞を受賞しています。次々とよいデザインを生み出していく秘密は、企業風土にもありました。創業者・鬼塚喜八郎氏は、創業当時靴づくりの素人でしたが、つくるのが難しいとされていたバスケットシューズをつくるため、毎日体育館に通い、ボール拾いをしながら選手の動作を確認しながら、靴づくりをしていったとのこと。まさにチーム全員が、そうした理念を引継ぎ、目標を共有し、アスリートの言葉をよく聞きながら取り組んできたことがポイントに感じました。
特にアシックスの「機能美」には、渡辺さんも昔から注目しており、中学時代には、今ではおなじみのメキシコライン(現・アシックスストライプ)のスケッチをしていたほど。見た目のかっこよさは基本的に主観であるが、デザインは問題解決であり、そのために不必要なものをそぎ落としていくと、必然的に美しいかたちになる、とお話いただきました。
アシックスでは、常にアップデートを求めており、先に先に進むことを目指しています。今回のプロジェクトは5年がかりと通常より長いですが、スプリンターにとっていいものをつくるという思いをずっと持ち続けて関わってこられたとのこと。「次はもっと驚かせるものを世界に広めたい」と、さらなる高みを目指して止まり続けることのない思いをお聞かせいただきました。

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今回のお話は、視聴者がよいデザインを生み出すヒントとして、あらたな創造へとつなげていける、そんなヒントが多くちりばめられたものでした。

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