NEWS NEWS

2021/4/3

イベントレポート

グッドデザイン神戸2020 GOOD DESIGN TALK「裏切らないデザイン」レポート

2月19日(金)

グッドデザイン神戸2020の企画として、六甲アイランド高校の美術デザインコースの2年生の学生を対象に、(公財)日本デザイン振興会の秋元淳さんより「裏切らないデザイン」をテーマとして、2020年度の「グッドデザイン賞・ベスト100」を受賞した「アタックZERO ワンハンドタイプ」と「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」とを紹介するオンライントークイベントを開催しました。

開催経緯
「グッドデザイン神戸」企画は、「デザイン都市・神戸」の皆さんにもっとデザインを身近に感じていただくための取り組みとして2018年から始まり、毎年最新のグッドデザインを展示やトークイベントを通じてお伝えしてきました。今回はオンライントークという形で、日本デザイン振興会のご協力のもと、六甲アイランド高校の学生を対象にトークイベントを開催しました。

グッドデザイン賞とは
まず秋元さんより、グッドデザイン賞の仕組みについて簡単にお話いただきました。グッドデザイン賞は、私たちの身の回りのものごとをデザインの対象としてとらえ、それぞれのデザインの質と価値を審査で読み解き、賞を贈ることを通じて社会と共有する仕組みです。グッドデザイン賞の対象は商品や建築に限らず、ソフトウェアやメディア、ビジネスモデルやサービスにも及びます。ここから分かるように、グッドデザイン賞では「デザイン」を「人が、何らかの目的や理想を達成するために意図して築いたものごと」と定義しています。

ものを選ぶときの基準
みなさんは、たくさんある日用品を選ぶとき「デザイン」で選びますか?
アンケート結果によると、多くの人が機能性、使いやすさ、見た目の印象を重視してものを選んでいるのだそうです。では、製品においてデザインはどのような役割を果たしているのでしょうか。

「アタックZERO」のデザイン
ひとつめに、秋元さんより「アタックZERO」のデザインについてご紹介いただきました。この容器デザインは、片手のみでの使用が可能、計量が容易、汚れた部分への直接塗布も可能という特徴があります。これまでの洗剤ボトルだと、キャップを外したところ、注ぎ口が逆向きで注げなかったり、数字が正しく読めないといった小さなストレスがありましたが、このボトルではそのような問題は起こりません。このデザインは、使う人のささやかな「ストレス」や「違和感」を解消するために、細やかな使い勝手に着目しています。それによって、より便利で快適な暮らしが実現されています。

「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」のデザイン
次に、「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」のデザインについて紹介いただきました。このボトルは、オンラインでの箱売りが前提となる商品です。
2009年の発売当初の「い・ろ・は・す」ボトルは、強度を保ちながらPET原料の使用量を削減した軽量構造を持ち、廃棄時にはつぶしてかさを減らせるという画期的な商品でした。
それに対して2020年の「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」では、ロゴを直接刻印し、PETボトルのラベル不使用化という潮流に対応することで、ブランドの存在感をさらに強化しました。リブレスの多面体構造により、強度を保ちながらつぶしやすいという特徴を継承しています。

他にもラベルレスの潮流を汲んだ商品として、首掛け式ラベルを採用したサントリーの「伊右衛門」があります。同商品で2020年夏に行われた、ラベルの裏におみくじが付いている「ラベルをはがして応募しよう!」というプレゼントキャンペーンでは、飲んだ人がラベルをはがしたくなるので、ボトルとラベルとをきちんと分離して廃棄してもらえるという「取り組みとして」のラベルレスのアプローチを行いました。こういったボトルの構造の工夫、そして行動を促す工夫、どちらもがデザインと言えます。

「い・ろ・は・す 」のデザインの変遷を考えると、2009年には、省資源・リサイクル意識の改善等「実益性」の向上が目指されていたのに対し、社会に環境意識が浸透した2020年においては、選ぶ人、飲む人の気持ちを高める「充足感」の向上を目指すことに変化していることが見受けられます。

二つのデザインから読み取れること
最後に、二つのデザインから読み取れる「裏切らない」デザインについてお話いただきました。「アタックZERO」「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」の二つのデザインは、「人の『気持ち』や『感覚』を快くするためのデザイン」であること、そして「使う人が快い経験ができるようにデザインされている」点が共通しています。
今、デザインでは、そのデザインに関わる色々な人(「使う人」だけでなく「作る人」「売る人」「廃棄する人」など)が快い経験ができることが大事にされています。

製品を選ぶとき、最初はデザインを意識せずに選ばれることも多いですが、結果として選んだ人(関わる人)の「気持ち」や「感覚」を損なうことなく、「それでよかった」と快い体験を与えることができる「裏切らない」デザインが今後求められているのではないでしょうか。

6限目の授業時間を使ってのトークイベントでしたが、六甲アイランド高校の皆さんは終始真剣なまなざしでお話を聞いていました。これからデザインの世界に踏み込んでいく皆さんにとって、「デザイン」は身近にあり、そしてその製品に関わる色々な人の心地よい生活を作っているのだということを実感できるトークイベントとなりました。