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2021/4/24

REPORT

グッドデザイン神戸2020 GOOD DESIGN TALK 「デザインはものごとを『自分ごと』にする」レポート

1月13日(水)

「グッドデザイン神戸」の企画は、「デザイン都市・神戸」の皆さんにもっとデザインを身近に感じていただくための取り組みとして2018年から始まり、毎年最新のグッドデザインを展示やトークイベントを通じて伝えてきました。「グッドデザイン神戸2020」の一環として、1月13日(水)に、神戸電子専門学校の学生を対象に、日本デザイン振興会の秋元淳さんをお迎えし「デザインはものごとを『自分ごと』にする」をテーマとして、最新のグッドデザイン賞を紹介するオンライントークイベントを開催しました。当日は建築インテリアデザイン学科、インダストリアルデザイン学科、グラフィックデザイン学科の約180名の学生が視聴しました。

グッドデザイン賞とは
まず秋元さんより、グッドデザイン賞の仕組みについてお話いただきました。グッドデザイン賞は、私たちの身の回りのものごとをデザインの対象として「着目し」、その質と価値を「読み解き」、賞を贈ることを通じて社会にそのデザインを「共有する」仕組みです。
今回のトークイベントは、2020年度の1395件ものグッドデザイン賞受賞作品の中から、特に優れたデザインが対象となる「グッドデザイン金賞」を贈られた19点のうち、「BRING」「まれびとの家」「延岡駅周辺整備プロジェクト」の3点についてお話いただきました。

1.「BRING」
「BRING」は古着を回収して純度の高いポリエステルを取り出し、そのポリエステルを再度服の原料としてアパレルメーカーなどへ提供し、再度服を作る仕組みです。
「BRING」のユニークなポイントは大きく二つあります。まず、これまで困難であった純度の高いポリエステル精製に成功したこと。ポリエステル精製工場は、既存のプラント設備に後付けで設置可能なため、様々な場所での稼働が期待されています。
そしてもう一つが、精製したポリエステルを他社に提供するだけでなく、オリジナルのアパレル製品を開発・販売していることです。「BRING」ロゴマークの蜜蜂のマークが表すように、野山から蜜を集めてはちみつを作る、つまり洋服を集め、独自のアパレル製品を展開している点がデザインのポイントです。

このように「BRING」では、自社でオリジナルの服を作り、エンドユーザーまで提供する仕組みを作ったことで、ユーザーは「自分たちが着ている服がまた新しく生まれ変わる。そして自分は生まれ変わった服を着ている。」ということをリアルに感じ、自分たちはサーキュラーエコノミー(循環型経済)の一員として参加していることを実感できます。

「BRING」のデザインから読み解けること
優れたテクノロジーやシステムを、いかに人々がリアルに共感を寄せられる対象にできるか。そのことによってテクノロジーやシステム本来の価値が発揮される。

2.「まれびとの家」
まれびとの家は、富山県の山奥にてデジタル・ファブリケーション技術で生まれた木造の宿泊施設です。合掌造りのデザインを継承した、山小屋のような雰囲気の建物ですが、「まれびとの家」のユニークな点は、単に特徴的な木造建築物を建てただけでなく、建築を生み出す社会のシステムを改めたことにあります。
建築にあたっては、材料調達、部材の生産、組み立てを30km圏内で完結させています。また建築部材への加工において、デジタルファブリケーションを活用することで、地域内での部材の加工を可能にし、現場施工においても、経験の少ない方でも組み立てられるような製法を使用しています。さらに、完成した建築物の運営も地域の人々が主体となり行っています。
つまり、地域にある素材や文化、地域の人々、労働力を生かして、地域社会における「自主・自立可能な場」を形成しているのです。

まれびとの家は、これまでの建築で当たり前であった「集中/一元/管理」の形式を、地域の人々が自立して創り・運営していく「分散/多元/自立」の形が可能であることを示しています。

「まれびとの家」から読み解けること:
「中央」で「集権的」に管理されてきた建築のシステムを、いかに「地域」と「人々」の手に還元できるか。そのような建築の在り方を通じて、自治・自立を地域社会にもたらす。

3.「延岡駅周辺整備プロジェクト」
JR延岡駅前に、公共機能と商業機能を複合させた施設を整備して、地域の人々の拠点を創出するプロジェクトです。延岡市では、現在人口減少や産業縮小などの課題がありますが、駅を中心としたエリアに賑わいを取り戻し、地域の活力を育むことが目標とされました。
そのために、コミュニティデザイナーの山崎亮さんもプロジェクトに参加し、様々な関係者と地域の人が計画段階から携わり、一体となって設計され、今も運営がなされています。

出来上がった施設「エンクロス」ロゴマークの中に忍ぶ「FREE」の文字には、ここに集まった人々が思い思いに時間を過ごしてほしいという願いが込められています。

「延岡駅周辺整備プロジェクト」から読み解けること:
地域社会の人々が主体となって、ともに新しい公共の場をいかに築いていけるか。エンクロスという建築物は地域の人々が主体的に活動を繰り広げるのに必要な「場」「舞台」として機能している

「デザインはものごとを自分ごとにする」
ここまでお話してきた3つのデザインに共通するのが今回のトークテーマである「デザインはものごとを自分ごとにする」ということです。
今デザインが強く意識し、目指しているテーマは、「いかに人々の共感を得ることができるか」つまりは「いかに人々にとってそれをリアルに『自分ごと』として感じてもらえるか」ということです。

有効な資源である洋服を着ることで、ユーザー自身がサーキュラーエコノミーに積極的に関わることのできる「BRING」、自分たちで資源を調達・加工・組立まで行い建築物を作り、運用も自ら主体的に行う「まれびとの家」、そして駅という場を地域の内外の人々の交流や賑わいの拠点とするべく、地域一体でつくりあげた「延岡駅周辺整備プロジェクト」。
3つのデザインは、方向性や内容は異なるものの、共通しているのは、関わる人が自ら主体的に考えて行動することができる、そのために必要な場や仕組みを作っているという点です。

こういった、ものごとを「自分ごとにする」デザインを通して、私たちはより主体的に社会や暮らしに関わっていくことができるのではないか、と秋元さんはお話されます。
またこういったデザインはテクノロジー・ネットワークの発展により可能とされており、神戸電子専門学校の学生の皆さんには是非これから、自らが学んでいる分野の特性を生かして、デザインの可能性を切り開いてほしいというメッセージでトークイベントは締めくくられました。

お話を終えて
秋元さんのお話を聞いた学生からは、「デザインの幅の広さ、デザインが世の中を変える可能性を感じた」「『自分ごと』を今後の制作する上でのプロセスや考えに生かしたい」「社会問題や環境問題の解決に貢献できるデザイナーになりたいと思った」といった感想がありました。
グッドデザイン賞の受賞作にこめられた思いや経緯を知ることも、ものごとが「自分ごと」となる一つのきっかけではないかと思います。神戸市ではこれからもデザインを身近に感じ、そのプロセスに主体的に参加いただけるような企画を開催していきたいと思います。

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