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2021/5/2

イベントレポート

KIITO運営10年目スペシャルトーク「KIITOのこれまでと、これから」 レポート

3/13(土)

オープンKIITO2021の関連企画として「KIITO運営10年目スペシャルトーク「KIITOのこれまでと、これから」」を開催しました。2012年に開館し、次年度で運営10年目になる当施設でこれまで実施してきた事業を振り返りながら、デザインやアート、クリエイティブができること、またこれからの社会や神戸の街に必要な考え方やKIITOの役割を探ります。講師にセンター長の芹沢高志と副センター長の永田宏和を迎えて、東京と神戸をつなぎオンラインで実施しました。

KIITOでは、副センター長の永田が担当する、社会課題解決を目的としたデザインの考え方を用いたゼミやセミナーとセンター長の芹沢が担当する、社会課題発見を目的としたアート事業やリサーチプログラムの二つの軸が存在します。今回は主にセンター長の芹沢が行ってきたプロジェクトを中心に話を進めていきます。
まず、この9年の振り返りを芹沢は「デザイン・クリエイティブセンターと名を持つ施設だから、デザインというところより、もう少し広いところから考えていくことがセンター長の業務として関わっていきたいと思っていた。」と話を始めます。芹沢が担当する「神戸スタディーズ」というプログラムは、研究者やアーティストなど領域横断的に様々講師を招き「神戸」という土地をリサーチしていくプログラムとして実施しています。このプログラムに対して「デザインセンターとして神戸オリジナルのデザインをつくっていくためには、神戸という土地を知るところから始めなくてはいけないと思った。」と話します。神戸の様々な側面を知るために実際に街を歩くフィールドワークを実施したり、占領期のことを知るために当時の体験をした人から話を聞くなど、ユニークなプログラムを実施してきました。港街である神戸は、外との結びつきが強く今、色々なところで言われている多文化共生も当たり前に行ってきたとまとめます。

次に芹沢が担当してきたアート事業「アーティスト・イン・レジデンス」についての話に移ります。KIITOでは年に1~2名のアーティストを招いて滞在製作を行っていたり、KIITOを舞台にしたプログラムのサポートを行ってきました。その中で2013~2014年にアーティストとして招いた映画監督、濱口竜介さんの話に入ります。濱口さんは神戸を撮影地に「ハッピーアワー」という映像作品を作成しました。ハッピーアワーは4名の女性が抱える家庭や仕事などの不安や悩みを、演技未経験のキャストが演じたことで話題となった作品です。その後も「スパイの妻」など、いくつかの作品を神戸で撮影しています。翌週に開催する、神戸スタディーズ #8「まちで映画が生まれる時」では濱口さんを含めた製作チームに登壇いただきお話を伺います。

レポートはこちら:https://kiito.jp/news/2021/04/09/47753/

芹沢はこのプログラムに対しても「神戸で作品が出来上がっていくことに面白さを感じている」とそのことを話ました。

2012年から二人三脚で運営を進めてきたKIITO、当初のことを振り返り永田は「芹沢さんがはじめにKIITOは生産工場であるべき。と言っていたことを今も覚えているし、目指していている。」「社会課題解決にフォーカスが当たっているが、つくり出すことを常に大切にしている。」と話します。それに対し「9年前確かに大変だったけど、何かをつくり上げていく、あの気持ちはKIITOに関わる全ての人が今も変わらず持っている」と芹沢も話します。

神戸スタディーズの事業を続けていく中で見えた、芹沢さんの中の「神戸オリジナルのデザイン」とは何か、永田から質問があり、芹沢はこう答えます。

「一言でいうのは難しいけど、神戸ってやっぱり港。人や文化、情報が出たり入ったりっていうのを日常的に続けている。それに神戸って水害に震災、戦争だって大きな被害を受けてきて、そんな中で前に進み続けた街。変化し続けた街が神戸なんじゃないかな。港町で、孤立していない、それだけで完結せず作り続けていく力があると思う。」「受け入れる、ウェルカムの気持ちがある反面、自分たちの文化は大切にしていく。そんな気質があるのも神戸らしい。」

それに対して永田も「港性をみんなで守っていかなきゃいけない。心に込めて頑張っていこうよってことなのかもしれない」と返します。

デザイン、アートが街に対してできることは変わってきているのか、実感はあるのかと次の話題に入り、芹沢は「このコロナで人類全員に降りかかっている災害に、臆病になっている。そんな中、自分たちの創造性、イマジネーションもクリエーションも鈍くなってきている気がする。でも、この状況を打破するための創造性が必要だと思う。というと根本の部分はやっぱり変わっていないだろうなって思います。でも、このコロナ禍の中だからこそ、明らかになってきている問題をどう創造的に変えていくのか。っていうと必要な創造性は変わってきている。一度立ち止まって考えなおすいい時期。」と話します。その話を受けて「コロナによる圧力ってすごくあると思います。人間関係が希薄になることもあきらめている。そんな中でクリエイティブってそこをつなげるための武器。ますます重要になってきている気がする。このコロナの経験も忘れてはいけない。よりしっかりとやっていかなければいけない」と思います。と永田が話をまとめました。

KIITO運営10年目にして、このKIITOが辿ってきた道のりを振り返りながら、クリエイティブの可能性を聞く機会になりました。これからもKIITOは神戸の街や世界にインパクトを与えていくような施設になるよう進んでいきますので、これからの動きにもご期待ください。