2021/11/2
イベントレポート
8/17(火)「フラワーロードを軸にSDGs共創インベントを考える」第4回目のレクチャーを実施しました。
日本イーライリリー株式会社コーポレート・アフェアーズ本部の細井宏紀さんと、ReCura.Incの坪田卓巳さんのゲスト講師2名をお迎えしました。
SDGsをメインストリートであるフラワーロードを舞台に落とし込んでいく時にどういうところに価値が生まれてくるのかということを改めて考え直すための機会として、日本イーライリリー株式会社の細井さんからは、企業としてSDGsというテーマで、CSRの一環としての意味合いも含め、どういう活動を展開されているのか、そして坪田さんからは、ReCura.Incと言う事務所を個人事業での活動や、灘区の地域活動支援コーディネーター等、これまで神戸市の色々な取り組みに関わって来られた中から、SDGsのテーマにした部分にフォーカスして、それぞれお話を伺いました。
日本イーライリリー株式会社は、イーライリリー・アンド・カンパニーというグローバルな製薬会社の日本の子会社で、全世界の社員が、企業としての「使命(Our Purpose)」「世界中の人々のより豊かな人生のために、革新的医薬品に思いやりを込めて」を常に意識しながら活動しています。その際の価値基準として、大きく3つ揚げているのが「誠実さ」「卓越性の追求」「人の尊重」です。
「私たちの使命(Our Purpose)」を達成するために持続可能なこと、社会的責任の観点からできること、やるべきことを我々のソーシャルインパクトと整理し、この中に既にSDGs的な意味合い、ESG的な意味合いが含まれている総体と考え、活動を行っています。
ソーシャルインパクトに関する5つの要素
□製薬会社として患者さんにとっての治療へのアクセス、ヘルスケアシステムの改善
□人々の生活の質=Quality of Life(QOL)を改善し、そこを通じてのコミュニティへの貢献
□多様な社員の能力活性、我々の社員一人一人が生き生きと能力を発揮できる環境
□自然環境への負荷の削減
□倫理と責任をともなった事業運営
この5つの要素の中で、人々の QOL やコミュニティへの貢献と、多様な社員の能力活性の2点にフォーカスして、その分野で取り組んでいる5つの事例を今回取り上げます。
「リリー・オンコロジーオン・キャンバス」や「チャイルド・ケモ・ハウスでの活動への貢献」等のがん啓発活動
「リリー・オンコロジーオン・キャンバス」は、がん患者さんやご家族ご友人など関わりのある全ての方々にとって、言葉だけでは伝えきれない思いなど、アート作品を通じて表現して頂き、多くの方と分かち合ってもらう「場」を提供する取り組みです。「アート」を作る過程が「アートセラピー」としての役割を担っていると考えております。本活動を通じてがんになっても自分らしく生きられる社会を実現する一助となることを目指しております。
また、がんの薬を扱っている企業として、「チャイルド・ケモ・ハウス」の設立時より寄付および支援を続けております。毎年実施されているチャリティーウォークにも、2回目から実行委員のメンバーとして企画運営に参加、スポンサー企業として資金面でも支援をしています。当日の受付会場として社屋一階を提供し、ゴールとなっているKIITOには自社ブースを設置し、薬や身体のことを、ワークショップやゲーム感覚で知っていただけるよう取り組んでいます。
「ヘンズツウ部」⇒「分かりづらい健康課題、見えない多様性に優しい職場をつくる」プロジェクト
インクルーシブ・ワークプレイス・デザインツールキットという、企業で行われている見えない多様性に関する活動を事例集としてコンパクトにまとめた30ページほどの冊子と、それでは理解が足りない部分をサポートしてくれるストーリーカードというゲームを作成し、これらは日本イーライリリーのウェブサイトからダウンロード可能です。
ツールのダウンロードページへ:https://www.lilly.co.jp/news/stories/henzutoo/nextstep
「デイ・オブ・サービス」
(世界各地の支店で働く全社員が毎年一斉に取り組む社会貢献活動)活動の内容に応じた金額を会社側が寄付金として積み上げていき、震災や災害復興等の支援に寄付しています。この活動を通じて目指すものは、社員自身のボランタリズム、地域社会への貢献や意識の向上です。寄付先からは使用用途や状況の報告を頂きます。自分がやった活動が色々な人に届き、届いたことを報告書としてフィードバックをもらうことでさらに頑張ろうとなり、ほぼ毎年全社員が何かしらの活動に取り組むという、まさに「正のスパイラル」になっている活動です。
「ダイバーシティ・アンド・インクルージョン」への取り組み
多様な価値観を受け入れ、活かすことが社員と会社にとって重要であり、会社の成熟にもつながると考え、特に女性の社会進出に力を入れています。2021年3月、ネスレ日本社と共同の社員主導型で、両社の全社員に向けての活動を実施しました。
「健康への取り組み」
「安全な職場環境」、「健やかな日常」、「地域コミュニティへの貢献」という3本の軸の上に、Live Your Best Lifeという理念を掲げています。
地域の行政と共同して健康寿命増進のための施策を一緒に検討、取り組んでいます。また神戸市内の学生の皆さんを対象に、社員によるキャリアや働き方に関する講演や意見交換を行い、地域コミュニティへの貢献に努めています。
日本イーライリリーは、製薬会社として事業を展開していく上で、「私達の使命」=「Our Purpose」の達成に向けて、各社員が業務を行う傍らで、日常的に自主的に社会的な課題に目を向けて、それに向けて自分なりの行動の成果を積み上げていくことがソーシャルインパクトにつながっていると信じており、それを最大化できるように取り組みを続けてまいります。
永田|ゼミマスター
企業間の協働事例をもっと市民のみなさんへ知って頂く、また関わって頂ける機会ができたらいいのではないかなと思います。「デイ・オブ・サービス」を実施する日に、何社か合同で、各社ごとに Tシャツは別ですが、皆でボランティア活動するようなことが実現したら、いろんなメッセージが発信できるのかなという風に考えました。
また、「Our Purpose」と何度もおっしゃっているように、皆が1つのビジョンを共有することはすごく大事なことであり、拠り所、旗印の重要性を感じました。
続いて、ReCura.Inc坪田さんからお話を伺います。
社会の流れとすると、2015年から2017年にかけて、NGOがSDGsをキャッチアップし、2017年頃からは大企業がSDGsに取り組み始め、2018年から2019年のタイミングでG20のサミットがあったことを契機に、SDGsを使ったNGOと企業の連携に関する勉強会が全国で行われ、2019年から2020年と徐々に地域のNPOや中小企業にもSDGsの関心やアクションが広がってきています。
自身のキャリアの中で、ソーシャルビジネスの支援、特に学生への支援に興味をもって取り組んでいます。神戸は学生が約7万人いる学生都市ですので、神戸市内で学生と地域がつながってほしいと思って活動してきました。
「NPO法人しゃらく」が運営していたソーシャルキャンパスが学生と地域活動を繋ぐ活動をサポートする場で、神戸市側で学生関係の案件があれば、職員の方から「しゃらく」に相談がくるという関係性があったので、学生が関わる(SDGsで関わっている)社会課題を取り扱っている担当者の方と部局を横断してつながることが多く、そこで伺った事例からいくつかご紹介します。
神戸市内に存在するSDGsの推進拠点や、国連の機関
JICA(ジャイカ)関西の中にあるSDGsプラットフォームは、企業やNPO、行政から金融機関といった色んな企業団体がネットワーキングされているプラットフォームで、HAT神戸にあるJICA関西の1階にあるSDGsコーナーは、子供もさわって学べるような体験型のコーナーになっています。
国連機関であるWHOのアジアの中心拠点がJICA関西に隣接して設置されています。また、三宮の旧居留地にグローバルイノベーションセンタージャパン(GIC)と言う、国連のプロジェクトサービス機関UNOPS(ユノップス)の世界で3番目かつアジア初の拠点が神戸に設置されています。ここは、最新のテクノロジーとプロジェクトを推進していくための課題解決を、ここでモデルケースを作って世界の課題を解決していく実験拠点です。
神戸市の取り組み
□障害者福祉関係「ふれあい商品 商品力向上制度」(兵庫県の同様の取り組み:「スイーツ甲子園」)
□神戸市観光局農水産課の取り組みー都市戦略「食都神戸」2020等
□企画調整局のエネルギー政策課―カーボンニュートラル
NPOでの取り組み事例
□子ども元気ネットワークひょうご事業等
SDGsは、個々人の活動のラベリングのためではなく、活動に対しての色々な視点の増やし方、誰一人として取り残さないための17の視点、できていないところを見つめ直して、どのように解決するかという方法を検討するための、チェックリストとして使えると思います。
ただ、SDGsは万能ではありません。2015年に全会一致で世界が足並みをそろえていく目標を作ることを目指したが故に、宗教やLGBT(Q+)というテーマが敢えて入ってないのです。だからといって、ヒューマンライツ=誰一人として取り残さないということを目指す上で、誰一人というところは、いろんな宗教の方、性的マイノリティの方も当然のように含まれてくるので、今後の重要な課題となります。
また、SDGsには、持続可能な開発目標と言っているように経済成長を前提している面もあります。ただ、いままで各セクターでバラバラなっていた活動が、SDGsのもとに一つの持続可能な社会を目指していくと目標を設定できたこと自体にきっかけとしての価値があります。
そのきっかけを、流行りで終わらせず、継続するのが大切です。だからこそSDGsは応援していかねばなりません。SDGsは今、いろんな社会課題に関心の人たちがいろんな分野から集まる「場」になってきています。この流れは、2030年やそれ以降の持続可能な社会に向けて、続けていくべき前提条件、そのベースになっていくはずです。
永田|ゼミマスター
今後のアクションプランを考える上で、講義の中から刺激とヒントをたくさん頂きました。 今回SDGsというテーマを考えていく中で、非常に壮大ですぐには手応えを感じにくい分、非常に難しいテーマだなという風に改めて思っています。ポイントは、SDGsというテーマをイベントによってどうしたいのかということです。それは、つまり神戸市民とSDGsの関係をどうしたいのか、どうするためにこのイベントをするのかということです。SDGsと市民との関係とは、学びなのか、様々な活動を広げていくことなのか…SDGsに興味がない市民を繋ぐ「場」になっていく。そういう点が非常に重要だなと思っています。今日伺った事例からも分かるように、テーマへの深度が大切です。イベントは打ち上げ花火ではなく、ゴールでもない、何かのきっかけであって、そこから何につなげていくのかというところが大切です。イベントをそれぞれ地域に持って帰って頂くのか、それを学校教育の中に導入していくための入り口にするのか、イベントをどういうきっかけにするのかというところを、大事に議論して積み重ねたいと思います。また、旗印や拠点のようなものが要るのか要らないのかも、重要かもしれません。SDGsはどういう風に捉えるのかを真剣に見つめない限り、違う方向性にいきかねないと感じているので、そこもしっかり意識しながら、これからグループワークでも是非議論していただきたいなと思います。
今回のゲスト講師からの示唆に富むレクチャーを踏まえ、自分たちがこのゼミを通じてSDGsを捉える方向性を今一度明確に意識し、これからのグループワークでの議論を深めて行きたいと思います。
次回8月24日(火)は、グループワークとなります。