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2022/4/1

イベントレポート

トークセッション「KIITO発!新ファッション都市宣言」レポート

神戸ファッション都市宣言から50周年を迎える2023年、新たなファッションの提案と可能性について、神戸芸術工科大学ファッション学科の見寺貞子さんにお話しいただきました。またそれに向けた意思表明とヴィジョンの提案とともに、ご参加いただいた方もご意見をいただきながら、公開企画ミーティングをオンラインで行いました。

表現すること、元気をつなぐこと 洋裁マダム

永田:最初は家のたんすの肥やしになっている着物を持ってきていただいていたんですよね。
見寺:そうです。それをリメイクをするということをしていました。少人数制でみなさんといろいろお話しながら進めていきました。
永田:3期生には男性の高齢の方まで受け入れていますね。
見寺:洋裁マダムだけではなく、やはり男性もおしゃれをして自ら作るということを体験していただこうと、プログラムは毎年考えながら実施しています。
永田:これもみなさんがリメイクした後にファッションショーという晴れの場があって、リメイクそのものに対するモチベーションとかもありますよね。
見寺:なかなか高齢になると自分を表現する、社会の中に参画するという部分が少なくなってくると思うんですけど、私は逆にもっとこれから自由になった自分をいろんなところで表現していただきたいと思っています。
永田:リメイクして普段着にするのもいいのでしょうけれど、表現する、ひらく、見える化するというように活動を魅せることというのはすごく大事な気がします。
見寺:自分の技術が向上し生活はもちろん楽しくなるんですけれど、それを見た人がさらに元気になる、それがどんどん社会に広がっていく、そういう仕組みが今一番大切ではないかと思っています。
永田:この活動を見ていて面白いと思ったのが、その後洋裁マダムたちの方から自分たちのために服を作ってファッションショーをするだけでなく、ちびっこうべで子どもたちに洋裁を教えてくださったり、他の人のために活動をするモチベーションをおっしゃっていました。
見寺:自分の技術を誰かに伝えるときに、こどもはいろんなことに興味があるので、そこに一つのきっかけとして洋裁マダムからいろんなことをお教えいただければいいなと思っていました。

神戸とファッションの歴史
見寺:神戸は昔からおしゃれでハイカラな街として全国に知られていました。そのきっかけとなったのが、1973年に「神戸ファッション都市宣言」を全国に先駆けて提言したことです。この理由には1970年代、高度経済成長期に入って社会では公害問題が取り上げられていました。現在でも基盤は港湾や重化学工業ですが神戸は単一機能都市では経済変動や構造変化に対して抵抗力が弱いのではないか、ということを考えました。オイルショックを期に神戸は多くの産業が関連するファッション分野を中心とした国際ファッション都市を目指しました。その時が掲げたのが1973年の神戸ファッション都市宣言でした。

なぜ神戸がファッション都市宣言を発信することができたのか
見寺:ひとつは神戸の地形や自然環境にあり、海と山に囲まれた自然な神戸ですがおしゃれな都会のイメージも漂います。歴史名所も多くあります。また多国籍な街として表情もあります。このようなイメージの背景には自然環境にあわせて、歴史背景が大きく関係していると思います。1868年明治、神戸港はいち早く開港され西洋文化が入り、それにより急速に神戸の街に普及していきました。また兵庫港開港とともに居留地(外国人移の移住、営業を許可した特別地域)ができ、さらに西洋文化が広がるきっかけとなりました。

神戸が考えるファッションとは
見寺:ファッション産業をアパレルから服飾雑貨だけに限定するのではなく、地域性や市民生活に結び付いた衣・食・住・遊の各分野において新しいライフスタイルを提言する産業というように考えました。2008年に神戸市はユネスコ創造都市ネットワークに認定されました。このネットワークは異なる文化の相互理解や交流を目指す文化的な産業の推進により都市の活性化を目指すことを目的にしました。

神戸ファッションの推移
神戸はファッション産業を軸に、ファッションタウン構想を打ち出しました。
・1981年 ポートアイランド建設 ポートピア博覧会が開催され、ファッションタウンが作られた。そこにはファッション産業とされる企業が誘致された。
・1989年 神戸芸術工科大学の設立 未来に向けての生活提案、新しい文化の創生、限りなく豊かなデザインの世界があると発信。
・1991年 六甲アイランド建設
・1992年 ハーバーランド建設
・1997年 神戸ファッション美術館が六甲アイランドに設立、ファッションについての様々な展示や図書館、セミナーが開催される。

これからの社会におけるファッション

見寺:SDGsの考え方をテーマとした、モノづくりや、コトづくり、支援が重視されると思っています。すべての人が幸せになること、そのための仕組みづくり、デザインを通して今の社会環境を考えて、より良い持続可能な社会をつくることが大きな方向ではないかと考えています。
人生100年時代において、新しいライフスタイルを提案する必要があると考えます。グローバル社会や外国人労働者の増加、共働き、女性の社会進出、すべての国民に活躍の場がある、そういう社会がくればよいと思っています。そこで多様な生き方をサポートするシステムをKIITOを拠点に実践していきたいと考えています。

神戸ファッション宣言50周年に向けた想い
見寺:新型コロナウイルス感染症の終息を願いつつ、この時期だからこそ未来のことを考える、こうありたいということをみんなで考えることが必要ではないかと思います。2023年は神戸のファッション都市宣言から50周年になります。次の未来に必要なファッションを提案したいと思います。テーマは「ダイバーシティファッション」の推進と「ダイバーシティファッションショー」を実施したいと考えています。おしゃれで新しい生活文化を提案してきた神戸から、次の時代に向けてすべての人が幸せに暮らせるダイバーシティを神戸から発信したい、その中でキーワードになるのが「おしゃれ」というファッションだと思っています。そのおしゃれを自分のためだけではなく、発信することが必要ではないかと思っています。ダイバーシティファッションショーを2023年に、神戸の次のステージとしてKIITOから発信できればと思っています。ファッションショーの一番の目的は自分を表現すること、そして見た人も元気になる場ということと考えています。

参加者からの意見
神戸らしいファッション文化を振興する条例が制定されました。ファッション産業などをこれからも市民も一緒に振興していきましょうという内容です。「神戸らしいファッション」というのがなんなのかというのは、まさにダイバーシティ、神戸の歴史からすると多様なものを受け入れてきた、まさに今回のテーマにつ繋がっていくのではないかと思います。(神戸市職員)
・正直モノを作っていくというのは難しい時代になっていて、そのなかでコトを発信していく神戸として考えたときにMade in KOBEとは何か、情報発信をしっかり取り組んでいくということが大切だと思います。(セレクトショップ経営者)
・理学療法士をしていて、いつまでも歩き続けられる体づくりのサポートをしています。モダンシニアファッションショーの手伝いをさせていただいて、体づくりが非常に大切だと思っています。神戸は出かけるところがいっぱいあるります。そこに出かけられる体づくりがとても基本だと思うので、そういった部分で企画に参加できたらと思います。(理学療法士)
・こどもたちもコロナの影響でオンライン授業になったり、デジタル化がされていく中で、アナログでもある洋裁や、年齢の高い人から教えて伝えてもらうのが非常に大事なことだと思いました。いきなりこどもたちにファッションショーをするよ、と言っても難しいと思うので、最初はつくるということに触れてもらい、だんだん広げていくのがいいのではないかと思います。単なる一回だけではなく、継続的に来てもらえるような形で作ったものをつなげいていき、例えばファッションショーの舞台に飾れるようなタペストリーとかを作ってそこにみんなの作ったものが飾られていくとか、そういう風にするとより参加型になるのでいいと思いました。(洋裁マダムメンバー)

今後に向けて
見寺:1995年に阪神淡路大震災にあったと申しましたが、大きなことがあると時代の価値観がすごく変わります。今回のコロナもすごく価値観が変わる時期だと思っていて、それが重なったときに次の時代が生まれるのではないかと思っています。
永田:2023年の一つ目のゴールがこのダイバーシティファッションショーだと思います。これからKIITOの活動を軸に初めていきます。いろんな方が集まるなかで、企画ミーティングを重ねて行ったり、ゆくゆくは実行委員会をつくる形にもしていきたいと思っていいますので、ぜひみなさんとつながっていきたいと思っています。

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