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2022/12/23

イベントレポート

【レポート①】+クリエイティブゼミvol.37 リサーチャー養成編 「リサーチ・リテラシーを学ぶ」例題3:空き家をじっくり考える。

2022年6月28日から全6回+フィールドワーク1回による、空き家問題を考える+クリエイティブゼミが始まりました。
大阪大学COデザインセンター山崎吾郎氏と協働し、フィールドワークに重点を置く「文化人類学」の観点から「リサーチ」にフォーカスした「+クリエイティブゼミ リサーチャー養成編」を行います。

■ ゼミのテーマは「空き家」
人口減少に歯止めがきかない日本では、増え続ける空き家が全国的に大きな社会問題となっています。
全国各地では様々な空き家対策の取り組みが行われ、住居利用にとどまらない多様な活用方法が実践されています。
今回のゼミでは、神戸市長田区を対象エリアに設定し、リサーチ手法や神戸市の現状などを学びながら「空き家」について参加者と共に考えます。

永田:なぜ空き家が空き家になっているのかはとても複雑で、いろんな場所で空き家対策のアクションプランは考えてきましたが、一度立ち戻り課題の元を考えリサーチした方が良いのではないかと思い、再度空き家をテーマにしました。

空き家課題におけるリサーチとプランニング

永田:何か新しいものをつくるのではなく、今あるものを改めて考え直す過程で+クリエイティブという考え方がとても有効だと思います。
今回はフィールドワークなど現場に足を運ぶことを重点に考えて、耳を傾けることが大事だと思っています。効率よく作業を行うために、分担やアイディアを出したり、良いリサーチをするために、「リサーチをデザイン」することが重要だと思います。
KIITOのフィロソフィー(基本理念)である「風・水・土・種」の手法はこうしたリサーチの場にも応用することが出来ます。

■ +クリエイティブ手法を用いたアクションプラン作りにおけるリサーチとチェックに関する考察
種(アクションプラン)の作り方
①自分たちの役割を確認する 今回は「種の人」
②自分たちにとっての「土の人(=ターゲット)」と「水の人(=パートナー)」を設定する
③3つのリサーチを厳密に行う
④3つのリサーチから導き出される、ベストな良い種を集め開発する
⑤土、水、種、それぞれの視点から何度もチェックをする

■ ③3つのリサーチについて
・「土(空き家・空き家オーナー)リサーチ」
 なぜ空いているのに貸さないのかに関して徹底的に調べる。
・「水(パートナー・自治体)リサーチ」
 どういう支援をしているのか、何に困っているのか、どういうデータを持っているのかなどを紐解いていくことで見えてくることがある。
・「種リサーチ」
 先進事例調査。全国でも本当に面白い地域開発が行われているので、ただ調べるだけにとどまらず、そうした事例が生まれてくるメカニズムやポイントや、プロセスを学ぶ。

「社会問題」としての空き家

山崎:一般的な空き家の意味合いとしては、空いていて使われずそのままになっている場所や家を指し、「空き家」と一言にいってもいろんな部類があり、定義もされていますが、この言葉だけではわからないことがたくさんあります。空いていることで、何が問題になっているのかは定義だけみていてもわかりません。
リサーチの一番最初のプロセスとしては、空き家の数と人口の相対的な変動です。さらには神戸市でどうか、長田区ではどうかという地域特有の課題を見ていく必要があります。人口が減っていくことを良しとするか、課題としてとらえているかによって、意識の違いがあります。過疎地を例にすると、空き家を改修すること自体は前向きで楽しい気持ちになりますが、改修したところで人が集まるかというと、そうでもない現実もあります。単に家が空いているということだけが問題ではなく、そのことにどうやって気づくかということがリサーチしていく上で、すごく大事なことになります。地域の人たち、行政が何が問題だと思っているのかなどもとても重要なことです。
空き家活用は大前提として、住民の協力が必要になります。すでに動いている住民主体の空き家対策を知ること、またその人たちが活動できる場を考えることが大切です。遠回りにも感じますが、空き家対策に対して地域に根付いたやり方なのではないかと思います。

プロジェクトを行うとどんなことが行程として想定されるのか
・課題の設定
・日程の確認
・どんな人がいるのか
・身近なところからリサーチ
・現地調査を行う(自分が調べていたことと、実際に見たもののギャップがあるが、そのギャップがとても重要になる)
・地域特有の問題
・実際の調査が始まる
・調査の方向性を何度も再検討する
・発表と提案を行う

■ 問題を理解し、適切に設定する(しなおす)こと
山崎:世の中の問題はものすごく複雑なので、ちゃんと問われていないこともあります。解けないし、解く方法もないのに、問題意識だけが肥大化していくケースはよくあります。1つの空き家を問題とするのではなく、そこに関わる人たちの人間関係をどう作り出すかということを考えることも大切です。リサーチの創造性は、調べることによって問題の見え方が変わることです。

初回ゼミの最後には自己紹介を含め集まった参加者のみなさんからもお話しを伺いました。

次回は7/5(火)の+クリエイティブゼミでは神戸市住宅都市局とまちづくり課の担当の方からお話しをうかがいます。

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