2022/12/23
イベントレポート
空き家をテーマとしたリサーチゼミ、第2回目を実施しました。初回はゼミのテーマについてゼミマスターの永田宏和(KIITO)、山崎吾郎さん(大阪大学COデザインセンター)からレクチャー行いました。本日は、神戸市の空き家の現状について、神戸市建築住宅局政策課空家空地活用担当の和淵大さんと神戸市長田区総務部まちづくり課まちづくり推進担当の渡辺祥弘さんにお越しいただき、神戸市と長田区の現状についてレクチャーをしていただきました。
神戸市の空き家の現状|和淵さん
空き家とは
空き家に対するイメージはそれぞれあり異なります。空き家のように見えても、住んでいるか住んでいないかは、聞いてみなければ分からないのです。空き家活用しましょうと、使用者さんと話をしても、「空き家ではないです」という回答もあります。行政が取り組む空き家と市民が思う空き家の理解にはズレがあるという課題もあります。
空き家には使えるものと使えないものがあります。使える空き家は、売却や賃貸、地域利用などの活用を促します。しかし、使用できない空き家は解体し、土地の活用を促進します。
まちの成り立ちが、空き家増加に影響していると考えています。神戸市は9つの区から成り立っています。2010年頃を人口はピークに達し、その後減少、世帯数は増加しているが、今後はさらに下がってくると予想されています。神戸は平地が非常に狭く、六甲山を削って海を埋め立て開発してきた歴史があります。旧市街地の狭いエリアに建物が並び、住むところが足りない状況から、無造作に住宅が山の斜面にできました。昭和20-30年に建った住宅は、老朽化しボロボロに。斜面地の建物は交通が不便で人気がないため、山麓部に空き屋が増えています。神戸市は今後、郊外のニュータウンも空き家対策が必要であると考えています。
神戸市の空き家率は、13.3%(平成30年度)、全区平均13.6%よりは少し良い状況ですが、人が減ると町に活力がなくなり、空き家が増えると衰退したイメージになり、住みたいと思えない、負のスパイラルに陥ります。
神戸市の取組み
神戸市は、空き家所有者への広報や啓発、空き家空き地の流通促進、空き家空き地の地域利用への支援を行っています。空き家の所有者は、売っても良いが、もっと価値があるとのではと思っており、当時買った値段に見合ってないと納得いかないず、そのままほったらかしていることもあります。家族と一緒に住んでいた思い出があるため、潰したくないという意見も多いです。
所有者へは、空き家と思っていない人に空き屋と言っても伝わらないため、将来空き家になる可能性があることを、どういったメッセージを届けれるか、コピーやキャッチフレーズを考えています。インターネット広告、広告バナーも取り組んでいるおり、窓口に案内する広報もしています。アプローチの仕方もとてもデリケートで難しいと感じています。すまいるネットで空き屋活用の相談を無料で行っており、年間1000件以上の相談が来ています。空き家所有者の中には、地域に貸し出していいという方もおられます。空き屋おこし協力隊として、空き家の所有者へ能動的に働きかけ、相続や権利、建物の境界などを整理し、伴走支援して市場流通にのせる活動も進めているが、あまり良い実績がつくれていません。
長田区の空き家の現状と動き|渡辺さん
長田区とは
長田区は三宮から電車で10分程度のところにあり、北は高取山、中央部の再開発地域、南に漁港があり、人口約97,000人、面積11㎢、南北に細長い区です。お好み焼き屋さんが多く、粉もの集積率が日本一と言われています。昭和40年から人口減少が始まり、現在はピーク時の約半分となっています。明治32年にマッチ産業が盛んになり、大正8年にゴム産業盛んになり、昭32年にケミカルシューズ工業会が設立され、労働者のまちになりました。南部の駒ヶ林は平安時代から続く漁村集落です。平成7年に起きた、阪神淡路大震災では、同時多発火災で甚大な被害を受けました。
最近の傾向としては、韓国、ベトナム、中国の移住者が多く、特にベトナム人コミュニティが増加し、ベトナム料理屋さんも増えています。また平屋などを建築家がリノベーションした物件も増えています。
みなさんは住んでいる家はどのように決めましたか?家賃、学区、築年数、駅からの距離、トイレ風呂がセパレート、ガスの口数…などさまざまな基準で選んだと思います。長田区に多い長屋などは、その判断基準では選びにくいところになります。
まちのプレーヤー
長田区では、空き家の相談に乗ってる方もおり、リノベーション事例が多くあります。コミュニティカフェ運営をされておる方や廃墟をリノベーションして賃貸売却されている人、多文化共生ガーデンなどをしている人などプレーヤーが多くいます。
空き家は何が問題なのか、個人的には、使うことができる建物が放置されているのがもったいない、新築好き、住む場所を学区や駅からの距離で決めている人が多いと思うが、コミュニティがある良さ、中古だからこその楽しさもあると思います。まちの魅力で選ぶことがあってもいいのではないかと考えています。
ゼミマスターコメント|永田
長田区は対象エリアにして良かったと思います。事例がとても多い、いろいろな取り組みがあります。むしろ何もしなくていいのではないかと思うぐらいです。プレーヤーも多く先進事例も多い、だからこそ学ぶべきものがたくさんあるのではないでしょうか。まだない事例、着眼点、ポイントがあると思います。動きがあるまちを調べることで何か見えてくると思うので、アクションのイメージを抱きつつリサーチを進めて欲しいと思いです。
ゼミマスターコメント|山崎さん
リサーチゼミとして、何をリサーチしたらいいかを決める必要があります。調べることはたくさんあり、 個別の空き家の活用のリサーチ、うまくいっている事例、うまくいっていない事例、地域や区域もあります。その地域は何を目指しているのか、30‐40年後にどうなっているべきなのか。空き家のややこしい問題は、根底には日本の人口減があります。全体として大きく見てみると、日本の人口におけるパイの取り合いをしており、この地域が成功しているということは、隣の地域から人が移っているということが同時に起こります。都市をどう見るか、長田区、神戸市がどうなっていくのかも、リサーチの対象になります。地に足の着いた空き家対策を考えるのか、人が住み続けやすい地区をつくっていくための空き家対策なのか、神戸市が全体としてどうなっていくのか50年ぐらいで空き屋を考えるなど、はじめに自分たちの中でリサーチのイメージを作っておいた方が、作業が拡散しないと思います。目の前の面白い部分を追いかけると、情報量もすごいことになってしまうので、関心に即して考えてもらいたいです。
次回はグループに分かれ、リサーチを進めていきます。
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