2023/4/12
イベントレポート
3月28日
地域課題解決+クリエイティブトークを開催しました。第2回のテーマは「地域をつなぐ新しいカタチの市民交流拠点~那覇・丸亀・神戸3拠点からの活動報告~」。那覇市若狭公民館の宮城潤さんと丸亀市市民交流活動センターマルタスの佐藤光さんをゲストに迎えてのトークセッションです。
まず宮城さんより、公民館の歴史についてご説明いただいたあと、住民の自治に関するお話です。
「地域社会の課題が複雑化・深刻化していっていますが、特効薬はなく、住民が自治的に取り組むことが必要です。そのためには住民のやりたいと思う気持ちに寄り添い、後押しする必要があります。後押しすることで何かが実現されると、住民がさらに新しい一歩を踏み出し、またそれをサポートする。これが『住民の自治能力の向上』につながっていきます。そして、活動を自治的・継続的に行うには、真摯に取り組むだけでなく、活動そのものを魅力的にする必要があります。課題について考えていくことは、新しい価値を創造することにつながります。」
これを踏まえた上で、若狭公民館では
・地域課題と活動の魅力を掛け合わせる
・広報活動は発信だけでなく広聴もする
・多様な課題に目を向ける
・協働による取組を行う
・フォロワーとしての役割を担う
・沢山ある活動のコミュニティを顕在化させて後押しする
といった基盤のもと、様々な企画を展開されています。
続いて佐藤さんから宮城さんに質問です。
佐藤さん:どの事業も非常に楽しそうに見えますが、楽しさと、真面目さ・真剣さとのバランスはどのようにとっていらっしゃるのでしょうか。
宮城さん:どちらかを優先するという話でもないと思っています。真面目だけだと、行きたいと思うような事業になかなかならない。目的を達成するためには、楽しくないと継続しないと思います。真剣さと楽しさの重なりをどうやって大きくするかが企画の腕の見せ所ですが、私一人だけで進めるのではなく色々な人の話を聞き、アイデアを出し合いながら企画を練っていきます。
次は佐藤さんのお話です。2周年を迎えたばかりですが、圧倒的な実績を誇るマルタス。その理由が節々に隠されています。
「企画におけるポイントは、市民活動を見える化していること。活動を見られている意識が企画のブラッシュアップ、そしてPRにもつながります。来館者の目に触れるオープンな場所から、対話ベースの活動に合うクローズな場所まで、空間構成も工夫を凝らしており、活動内容に合ったスペースを選べるようになっています。また、館内で実施される市民活動ひとつひとつにマルタスのコーディネーターがつき、伴走支援していきます。」
利用者のサポートだけでなく、市民団体、NPO法人、地元企業との連携など様々なプロジェクトも実施されています。その中のひとつ、未来の地域を担う人材育成につながる『丸亀まるっと!ボードゲーム化プロジェクト』は、マルタスがハブとなってクリエイター・地域の学生・地域のプレイヤーをつなげ、丸亀を舞台としたボードゲームを製作したプロジェクトです。丸亀の調査からはじまり、テーマ設定、企画発表、テストプレイから完成お披露目まで、プロジェクト期間は約8か月。東京ビッグサイトで2023年5月に開催されるゲームマーケットにも出店予定で、ゲーム自体の面白さをPRしつつ、丸亀についての発信も行っていくそうです。
宮城さんから佐藤さんへの質問です。
宮城さん:アイデアを形にするためには相当なエネルギーが必要だと思いますが、ボードゲームのプロジェクトで、苦労した点や、実現に向けてここが肝になったというポイントはありますか。
佐藤さん:ひとつは、地方ではボードゲームクリエイターがなかなか見つからないこと。色々調べて、高松のクリエイターにご依頼することができました。もう一つは、いかにして学校とつながって授業に入り込み、学生を巻き込んでいくかということ。今回は私立中学校の総合学習を毎週1時間いただくことができました。先生方に賛同いただけるかどうかも重要になってきます。
次にKIITOの活動フィロソフィーやプロジェクト事例について永田から紹介し、その後は質疑応答タイムです。参加者の皆さんから39件もの質問が集まりました!
Q:市民の幅広いリクエストに対応し続けるために、受け手に必要なことは何ですか。
佐藤さん:相談のスタンスとして、出来ないとはいわず、出来る方法を考えます。また、相談者の話をしっかりお伺いした上で一緒に課題や選択肢を考え、コンサルっぽくならない伴走支援を心がけています。
宮城さん:まずはどういったリクエストなのかを伺います。個人の自己実現のためだけというのではなく、公民館の中での問題意識と接点のあるもの、つながる可能性をもっているものに対し、折り合いをつけて提案をしていきます。すぐに答えられないリクエストは一旦あたためておくと、暫くたってから何らかのきっかけで新たなつながりが生まれ、進んでいくということもあります。
Q:失敗事例はありますか。
佐藤さん:外部との連携プロジェクトで、最初に進め方の握りがうまくできておらず、参加者数がふるわなかった企画があります。
宮城さん:企画そして広報に力を入れたものの、参加者がわずかだった連続講座がありました。ただ、続けていく中で参加者にも問題意識が芽生えてきたので、その取り組みに対して後押しする方向性で進めたところ、参加者が自発的に動いてくれて良い企画になっていきました。点で見ると失敗でも、その学びをどこで活かすかが大事になってくると思います。
永田:ちびっこうべ初回は、夢のまちがうまく機能していませんでした。そこで『まちづくりゼミ』を開講し、皆さんに失敗を公開・共有した上でアイデアを募り、改善していきました。
Q:「住民の自治能力の向上」について、詳しくお伺いしたいです。
宮城さん:例えば公民館の利用面でいうと、「○○を習いたいから教室を開講してほしい」というリクエストはありますが、それは活動を消費者として求めているだけ。自分が欲しいものを誰かが提供してくれるという流れが当たり前な風潮がありますが、必要だと思うのであれば生み出せば良い。提供する人・受容する人・消費する人という関係性ではなく、皆でつくり、楽しみ、享受するのが当たり前になれば、それが自治能力の向上になると思います。主体的に取り組めることを、皆でやっていくイメージです。
永田:風潮的に「つくらない世の中」になっていると思いますが、信じてその場を作り続けること。積み重ねるうちに、自治能力が育まれると思いました。
Q:どうすれば効果的な広報ができますか。
宮城さん:広報誌に限らず、思いつくことはどんどんやっていこうというスタンスでいます。回覧板だけではエリアが限られるので、新聞折り込み、近隣の小中学校、官公庁など、大変ではありますが思いつく限り配布しています。
佐藤さん:主にインターネットを中心とした広報媒体を活用していますが、紙媒体もしっかり企画をして制作しています。効果的な広報のためには、誰に届けたいかで媒体を選ぶのが良いと思っています。高齢者にはやはり紙媒体が見て頂きやすいので、例えば月間予定表等は紙で作成して掲示していますが、30~40代の女性向けにはInstagramを活用しています。
他にも様々な質問にお答えいただきました。
「地域の場、交流拠点に関心を持っているものの、具体的にどういうことを考え、何をやれば豊かな空間になるのかがわからない…」そんな悩みに対し、沢山のきっかけやヒントをいただいたトークセッションでした。「まだまだお話をききたかった!」という声が終了直後からあがっていました。
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