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2025/4/1

[REPORT]災間スタディーズ「30年目の手記」の展示を行いました。

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)では、2023年11月~2025年3月の期間、災間文化研究会と協働し、災間の社会を生き抜く術として、災厄の経験を分有するための表現の可能性をさぐるリサーチプロジェクト「災間スタディーズ:震災30年目の“分有”をさぐる」に取り組みました。

 

 

活動一環として、阪神・淡路大震災から「30年目の手記」の公募を行いました。「30年目の手記」は、1995年から現在まで震災体験の手記集の出版を行っている「阪神大震災を記録しつづける会」の取り組みをもとに、2021年に東日本大震災の震災手記を集めたプロジェクト「10年目の手記」の方法を援用し、発展させた手記募集プロジェクトです。上記の呼びかけのメッセージとともに、2024年1月17日から約1年にわたって手記を募集しました。

 

 

「30年目の手記」には、神戸を中心に、全国から186篇の手記が届けられました。
186篇の手記は、震災を経験した方、経験していない方、他の震災を目にして想起された中など、沢山の思いを機に綴られた言葉が詰められていました。
広く手記に触れていただける場として、集まった手記のうちの125篇を特設ウェブサイトで公開しました。また、実際に手記を読むことのできる場、手記の言葉に触れていただける場として展示も行いました。

 

 

展示会場は、2階にあるライブラリ。普段は、デザインやアートなどの専門書を集めたライブラリを「災間スタディーズ」の期間中には、協働する研究会メンバーによる書籍や資料を中心とした、震災資料を集めた「分有資料室」として運用をしてきました。資料室では、他にも「阪神大震災を記録しつづける会」のこれまでの出版物、そして実際に届けられた一次資料を展示していました。「30年目の手記」の手記も、この文脈に繋げて見ていただけるように、同じ会場で展示を行いました。

会場には三角形の構造物が吊り下げられ、そこに手記の抄出を短冊のように展示しました。この三角形の構造物は、「30年目の手記」のアートワークを手掛けていただいた五月女哲平さんの作品から、会場構成を担当いただいた片田友樹さんが着想したアイデアです。

 

 

展示会場には、特設サイトで紹介できなかった手記を含め全186篇の手記の中の言葉が並びました。

 

 

会期中には、一般来場者の方のほかに、手記の執筆者の方にも訪れていただき、会場で、お話をすることができました。手記の展示やウェブの公開を喜んで会場に足を運んでくださった方は、ご自身で見に来た方、ご家族と一緒に見に来てくれた方もいらっしゃいました。実際に手記を書いてくださった方とお会いするのは初めてなので、少し緊張しつつも、手記の中の言葉だけではなく、ご本人から被災時のお話や今回の手記についてお話を伺えたことは、尊い時間でした。

このプロジェクトを行わなければ出会えなかった方々や言葉が、星のように会場に散らばり、静かに光を発するような展示会場。
その中を巡りながら、ふと目にとまった言葉から、その言葉の奥に込められたものに思いを馳せる。
震災という出来事を直接的に語る展示ではありませんでしたが、その出来事の中で生まれた言葉があり、その言葉を持つ人々がいるということ。阪神・淡路大震災から30年を迎える2025年に、大きな主語によって見えなくなってしまった、こぼれてしまった言葉や想いを集め、見つめることの大切さに気付かされるプロジェクトになりました。